はじめに
ずっと喫茶店で詩を書くということをしてきたが、2002年8月に第3詩集『大きな窓』を出したあと、喫茶店で詩を書くということが終わったという感じがあった。ぼくのなかで喫茶店の大きな窓から人や風景を見ながら、意識しながら詩を書くという行為は終わったと思った。
少なくともいつも書いていた喫茶店の2階の大きな窓のそばの席から書くということは終わったと思った。
まだ喫茶店で書くということを続けるべきなのかどうか、試してみようと、この街の他の喫茶店をさがし、窓のそばの席を探してみた。いくつかの喫茶店の席に座って詩を書いてみたが、しっくりくるところはなかった。この街にはもうぼくの座る、詩を書くために座る喫茶店はないのだと考えた。そして今度は自分の部屋で書くのだという思いが生まれた。
自分の部屋で窓を向いた場所に机を置いて書くのだ。しかし狭い。ぼくの6畳1間のアパートの部屋は狭すぎる。窓の外の広がりもない。
そうしてぼくはいつのまにか引越ししている。今度の部屋は5階にあり、視界のなかは建物がほとんどだが、「遠く」も「外」も受感できる。ここがぼくの「喫茶店」になるのだろうと考えている。
布村浩一