冬 の 駅
二月
うずくまりながら
冬のまわりで
冬のガスストーブのまわりで
駅をおもいだす
笠岡(かさおか) 里庄(さとしょう) 鴨方(かもがた) 岡山(おかやま)
東京(とうきょう) 国立(くにたち)
冬の駅をおもいだす
どの駅もどんよりした空だった
歩いている人は厚い服で
(厚い靴で)
しろい息を長く吐いていた
帰郷の終わる日
笠岡(かさおか)駅には 見覚(みおぼえ)えのある顔が
駅の真ん中に置いてあるベンチに腰かけていた
話しかけない
冬は少し
心が冷たいほうが
生きやすい
窓に近づいて街をみる
窓を少し開けて街をみる
記憶を閉じて
大通りを走る車を聞く
決意とか希望はみえないけれど
冬の街ではあたりまえなのだと思う
灯は輝いている
灯の色だけが輝いている
初出 「中國新聞」朝刊 2005年2月7日掲載
■( )のうち 駅名と、本文11行目の「見覚え」はルビです。