ラ ブ ・ レ タ ー



何度でもだして
何度でも振られる
またいつか こんなことをやるにちがいない
ぼくの出したラブ・レターは
渋谷のたばこと塩の博物館の上
上空のあたりで
バラバラに粉々に
砂のようにパラパラと
震えて
なくなってしまった

まるで令嬢のように思った
立てばひまわり
歩く姿は百合の花
においがプーンとやってきて
ぼくはガクンと酔った
キリン淡麗〈生〉より芳しく
バドワイザーよりも軽やかに
モルツ麦芽1〇〇パーセントでもこんなふうにならない
ぼくはラブ・レターを出したのだ

ゴールデン・ウィークで人たちは動きはじめ
ニュースをみれば飛行機に乗ったり
新幹線に乗ったり
ぼくは六畳の部屋で揺れに揺れ
ニューヨークのドル相場よりも乱高下して
下がったと思えば上がり
上がったと思えば下がる
恋のわずらいはイカのなま食よりも微(び)な味わいで
つまずかないところでつまずいて
わけがわからない
ぼくはラブ・レターを出したのだ

解剖をまつヒキガエルのような
刑をまつ囚人のような
答案用紙をまつ制服の生徒のような
そんな気持ちで食べるチキンの揚げ物は
塩が足りない
もっとパリッと
もっと焼け
ぼくはラブ・レターを出したのだ



初出誌 「出来事通信」8号 1999年8月発行