水 温
目の前の窓は閉まっている
もう一つの窓は半分あいて
動かない椅子がみえた
10月の部屋の温度は
冷房も暖房もいらない
この1と月だけの温度
温度が下がると蛍光灯は黒ずんでいる
畳の色はおとなしい
窓の外の空気は色がなくなってしまった
秋のようなものに空はなったのだ
去年の五月から失望をくりかえす
会った人間たちをまちがっていると思った
触れたところが痛んでいる
雨がふり出して
点々の雨が落ちてくる
自転車のすわる所に水滴
洗濯をはじめようと思って
押し入れから下着類と靴下を出す
洗濯しながら
雑草がアパートの回りを囲んでいるのに気づく
土曜の朝は
品川まで行く
そこから歩くのだろうか バスに乗るのだろうか
ぼくが触(さわ)りに行くのは
ビルの中の冷えた一室
初出誌 「CASCO」1号 1999年5月発行