Aug 09, 2006
台風
台風の影響で朝から雨が降る。風がよく通って室温は30度を越えなかった。午後1時すぎから晴れそうな空になった。藤沢周平の「一茶」(文春文庫)読み終わる。
藤沢周平の小説を読んできて、初めて救いのない、癒しのない小説に出会った。「痩蛙まけるな一茶是にあり」で知られる俳人小林一茶を主人公にした物語で、江戸時代に俳句で身をたてようと思った者のそうとう暗い生涯が描かれる。
江戸時代、俳句で食べられる者は、弟子を極めて数多く作った者に限られていて、一茶はそうではなかった。一茶がどうやって「食べた」かといえば、「江戸の俳人」の看板で、地方の、俳句に関心を持つある程度の財産を持った者の所を訪ね歩き、何泊かの飯をいただき、運がよければ路銀を包んでもらえる、という旅をして食いつないでいく。そして何年かの寄食の旅をつづけた後、江戸に帰る。これを繰り返している。
食べられれば御の字という江戸時代であっても、愉快な飯の食い方じゃないし、年をとり、身体が衰えると行き倒れになったりする。こういう食べ方を一茶より先に「開発」した露光は誰にもみとられず死んでしまう。もちろんこんな暮らしをつづけても金は貯まらない。
一茶のやむをえないとはいえ、執着心の強さが最後まで書かれていて、癒しにはならないのだが、藤沢周平が何でこういう物語を書いたかといえば、やはり自分が小説を書いて、食べていた人間だからだろうと思う。現実を書きたかったんだろうな。
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