Dec 10, 2006

「百事大吉」と「片側通行」

 金井雄二の個人詩誌「独合点」87号を読む。今年5回目の発行とのこと。がんばるなあ。


 ゲストは金井裕美子。金井裕美子さんは隔月刊で出している高崎現代詩の会の会誌「Scramble」の編集者であり、やはり隔月刊の詩誌で、今年5月の時点で133号まで出している「東国」の会員であり、また詩と評論の誌である「Direction」の同人であり、ほかに青木幹枝との共同編集・発行で手作り新聞「青金新聞」を出している。主婦で、働いてもいるはずだから、すごい。このエネルギーはなんだ。

 数年前に「百事大吉」と大書きした年賀状をくれて、ぼくには守り札のように思えて、部屋の壁に今も貼ってある。

 金井裕美子さんの書いた詩のなかで、ぼくの好きな詩である「片側通行」を全行引用で紹介したい。いい詩です。この詩は群馬県文学賞を受賞している。




片側通行     金井裕美子



白と赤の旗を握りしめたまま
老いた男が叱られている

いくども頭を下げて
あやまって うなだれて
若くたくましい日に焼けた作業員の
荒らげた声をあびている

拡張工事中の道路わき
通行を止められたかたわらを
いく台もの車が通り抜けていく

叱られる理由(わけ)は
エアコンの送風音にまぎれてしまって
聞こえてはこないけれど
汗を拭うふりをして
上着のそでで巧みにぬぐった
言いようのなさはつつぬけだ

見ているのを
気づかれたらいけない思いがして
湿ったくろい盛土に目を逸らしたのだ
男たちの足元には
ねこじゃらしがゆれている

いつまでも止ってなんていられない
切りかわったばかりの青緑(あお)い三〇秒
ゆるされないかたわらで
やれることといったら
アクセルを踏みこむぐらいのことだ




*( )はルビです
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