Nov 08, 2007
「生まれて」を読みながら思ったこと (1)プラス(2)
樋口えみこさんに初めて会ったのは去年の12月で、年末孤独症に悩むぼくが樋口さんに忘年会をやろうと言いつのって会ったのだと思う。もうひとりJ さんという人がくるはずだったが、現れず、樋口さんとふたりで忘年会をやることになった。樋口えみこという人のイメージは『キテ。』という個人誌に樋口さん自身で描いている自分のスケッチ、髪はボサボサでこたつに入り、ちゃんちゃんこを着てみかんを食べ、みかんの皮がそばに転がっている絵でぼくの中ではできあがっており、非女性的なまったく遠慮せずに言いたいことを言う女の人だと思っていた。
しかし待ち合わせの新宿駅にあらわれた樋口さんはピンクのコートを着た美しいすらりとした大人のおんなという感じでぼくはかなりまごついたのだ。
この『生まれて』という詩集には21編の詩。樋口えみこはこの中でピンクのコートを着た自分を選び取っているといえる。その立ち位置から書かれている詩、詩行がもっとも多い。本音やせつなさはピンクのコートを着たあなたから多く出てきている。ぼくには手ごわい相手だ。
『生まれて』には強烈な詩が多いが、ひとりフラフラと屋上にあがって歌う「キテ」がいい詩だと思う。
キテ
ある日、
道ばたに眠る人の
独り言の中にそっと潜む
懐かしいヒトの調べ
ヒトは
鳴き方を忘れそう
ポケットに
手をさしこんで
人込みの中でときどき
確かめてみる
かすかな
その音色
強くつかむと
指が切れる
切なくて
あったかい
泥のように
いやされる
毒を秘め
ひょうひょうと流れる
風の軽さで
子どもの頃の
水の気持ちの
一瞬を
よみがえらせて
濁っていく私の心を
そわそわと
揺する
頼るものなく
張られた網を
平気なフリで
渡っていくのが見える
落ちても
ヒトのままでいる
強いあなただ
その声、
ただれた傷口に
甘く染み
ビルの屋上で
ふと
空の青さに
目をとめさせるもの
美しい
ヒトの鳴き声よ
キテ
*全行引用
この『生まれて』という詩集のなかには自分と向き合っているときには出てこない詩行がある。そこにひっかかった。樋口えみこはこの詩集全体としてはピンクのコートを着たまま書いている。ぼくはそのことに違和感をもつ。
だけれども『生まれて』は詩を書かない人、ふだん詩を読まない人がページを開いたときに、目とこころをとめさせ、詩の中にひっぱりこんでいく力を持っているかもしれない。
詩集を読みすすめながら、これは何だろうと思いつつ、樋口えみこの生きてきたこと。体験してきたこと。母への憎しみを持ったこだわり、妹との葛藤、出会った男たちとの性愛とわかれ、たしかに見てしまった悲しみがつたわってくるのだ。
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