アーカイブ: 2009年4月

2009/04/30

Permalink 21:36:20, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 1105 Japanese (JP)

詩の歳時記ー262 「耕して」

気の遠くなるまで生きて耕して        永田耕一郎

段畑であれば天辺まで
平地であれば地平線まで
果てしなく天の鍬が振り下ろされて
農夫は寡黙に耕してゆく
遅い夕暮まで 天の糸は撓むことなく

永続的リンク

2009/04/29

Permalink 15:35:43, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 580 Japanese (JP)

詩の歳時記ー261 「種子を蒔く」

きのふてふ遥かな昔種子を蒔く           能村登四郎

農夫の温い手のひらの種子は
陽をあびて しずかに深呼吸する
永い時間のなかで
繰り返されてきたいのちのリンケージ
息をつめて静かに落ちよ 

永続的リンク

2009/04/28

Permalink 02:15:58, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 530 Japanese (JP)

詩の歳時記ー260 「雲雀」

天に穴ありて落ちくる雲雀かな         野村喜舟

告天子は知っている
一枚の空には抜け穴があることを 
何度も 何度も 太陽を目指しては
うつくしい悲鳴とともに
空からこぼれてくる

永続的リンク

2009/04/27

Permalink 14:39:40, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 635 Japanese (JP)

詩の歳時記ー259 「春疾風」

春疾風ビルの谷間の擦過傷          高田昭子

あなたも傷だらけね。
そう思ってみれば
あなたの言葉なんて遠い子守唄よ
今夜はぐっすりと眠れそうよ
暁に沈黙するのは あなた? わたくし?

永続的リンク

2009/04/26

Permalink 22:21:02, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 645 Japanese (JP)

詩の歳時記ー258 「新樹」


 (Photo by Umikyon)

新樹どち裹まんとし溢れんとす          中村草田男

季節ごとに
「新樹」と繰り返し名付けられ
人々は樹々に裹まれ 青ざめた微笑みを浮かべ 
溢れこぼれる光の欠片のなかに立ちつくす
水鏡 水鏡 世界は美しく反転する

2009/04/25

Permalink 16:44:22, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 553 Japanese (JP)

詩の歳時記ー257 「葉桜」

葉桜の中の無数の空さわぐ         篠原梵

一枚の春の空ではない
無数の葉裏に空がやどる
風が吹けば
雨が降れば
空は輪唱

永続的リンク

2009/04/24

Permalink 11:45:16, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 751 Japanese (JP)

詩の歳時記ー256 「つばくらめ」


  (Photo by Denden)

つばくらめ無一物とはかく自在          行方克巳

図書館の入口には 春の注意書き
「糞にご注意ください」
見上げれば 今年もつばくらめの巣がある
重い本を返却 また借り出して
それでも人間は「自在」の知恵すら授からず

2009/04/22

Permalink 02:27:03, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 1090 Japanese (JP)

詩の歳時記ー255 「緑」

非常口に緑の男いつも逃げ        田川飛旅子     

逃げ足の早い男ね
背中ばかり見せて
振り向きもせずに
あの闇の中にむかって 走って
行けども行けども ひとりぼっち

永続的リンク

2009/04/21

Permalink 02:05:07, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 566 Japanese (JP)

詩の歳時記ー254 「春」

ポストまで歩けば二分走れば春          鎌倉佐弓

春風に切手を貼って
北の国のあなたに送ります
花びらを添付して
そちらの目覚めの悪い花守りに
伝言をお願いいたします かしこ

永続的リンク

2009/04/20

Permalink 12:35:44, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 6859 Japanese (JP)

詩の歳時記ー253 「桃の花」

傷舐めて母は万能桃の花          茨木和生

幼い児の温いいのちの力あればこそ
母の万能は神のごとく
ちいさきもののあやうさが
母の眠っていた力を呼び出した
桃の花咲く季節を繰り返し 生きてきたのだね

2009/04/17

Permalink 16:01:20, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 1620 Japanese (JP)

詩の歳時記ー252 「海女」

海女沈むとき一対の土不踏          橋詰沙尋     

まだ海は冷たい
海女は季節を切り裂いて飛び込む
豊かな肉体の沈みきらぬ一瞬に
女の足は整えられる
土不踏は一尾となって

2009/04/15

Permalink 21:21:57, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 651 Japanese (JP)

詩の歳時記ー251 「陽炎」

甕埋めむ陽炎くらき土の中     多田智満子

 この句は死に近い病床で書かれ、157句が遺句集『風のかたみ』としてまとめられ、2003年1月の告別式の際に配られたものです。おそらく詩人「多田智満子」の唯一の句集でしょう。編者は高橋睦郎。

 何ゆえに甕を土のなかに埋めるのか?この句の「甕埋めむ」の「甕」は「柩」への予感でしょうか?

 以下は無駄話です。

 「甕を埋める」という人間の行為は歴史のなかで、何度か発掘されてはいるらしいのです。中国では女の児が産まれた時に、お酒を入れた甕を土に埋めて、その児が嫁ぐ日の祝い酒としたそうです。

 日本では女の児誕生の日には「桐の樹」を植えますね。嫁ぐ時にはそれで「箪笥」を作って嫁入り道具としたそうです。「甕」には関係ないようですが、女児誕生が人間の命の鎖の役割を果たしているという慣習的な点が似ています。

 さらに江戸時代の住居跡の発掘調査では、裏庭などに「甕」を埋めたことが証明されているようです。用途はさまざまで、「水甕」説、「食品保存」説、「便器」説、「柩」説などなど。

 もう1つ、これはわたくしの単なる連想ですが。第二次大戦時の日本軍に密かにあった部隊のなかに「防水班」という研究機関がありました。そこでは、野戦に出る兵士の飲料水の確保が重大な仕事でした。(伝染病者を出さないためです。)
 この飲料水をどのように作ったのか?南方のある島では、原住民に伝染病がない。清潔な水を飲んでいたことに目をつけた研究班は、島民が水の浄化をどのようにしているのかを調べたところ、その土地特有の土でできた素焼きの甕から滲み出る水を飲んでいたそうです。それが日本兵の飲料水を作るヒントとなったそうです。
 これは前記した「水甕」説につながりませんか?

永続的リンク

2009/04/14

Permalink 22:18:56, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 998 Japanese (JP)

詩の歳時記ー250 「春の空」

首長ききりんの上の春の空          後藤比奈夫

昔の詩人が言いました
「空はどこからどこまであるのか」
君の長い首のどのあたりが空ですか?
いいえ 
地上のものたちは すべて空に触れている

永続的リンク

2009/04/13

Permalink 22:09:50, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 679 Japanese (JP)

詩の歳時記ー249 「春日」

大いなる春日の翼垂れてあり        鈴木花蓑

春の陽はおおきな翼をつけて
天から降りてくるのか
地上に翼を垂れる時
陽の鳥の胸元では
幼児のまぶたがかすかにふるえた

2009/04/12

Permalink 21:44:52, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 512 Japanese (JP)

詩の歳時記ー248 「朧」

折鶴をひらけばいちまいの朧       澁谷道

春の宵に 折りあげて
手のひらにのせ
温いいのちを吹きこむ
均衡のとれないいのちの軽さよ
ほぐしてしまえばおぼろになって

永続的リンク

2009/04/08

Permalink 15:17:49, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 633 Japanese (JP)

詩の歳時記ー247 「花あかり」

天と地と中に息して花あかり             角川春樹

点々と灯りある賑わいの消えた夜更け
地に途方もなく張り出した根の先から
細い枝先まで
桜の古木は深い息をはく
そして大きな天の灯りとなるのだった

永続的リンク

2009/04/07

Permalink 20:30:11, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 574 Japanese (JP)

詩の歳時記ー246 「芽吹き」

芽吹きつつ木は木の容思ひ出す          名村早智子

繰りかえされた春のはじまり
おずおずと樹々たちが芽吹く
芽吹きながら思い出そうとしている
去年の姿 空の高さを
今年の空を手探りながら

永続的リンク

2009/04/06

Permalink 12:51:03, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 536 Japanese (JP)

詩の歳時記ー245 「たらの芽」

たらの芽や棘ある身よりやわくふく        高田昭子

幾多繰りかえされた春
寂しさの芽吹きも繰りかえされる
わたくしの身はやわい
こころのうちもやわい 
手折らないで

永続的リンク

2009/04/03

Permalink 16:44:17, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 597 Japanese (JP)

詩の歳時記ー244 「さくら」

さきみちてさくらあをざめゐたるかな        野澤節子

春雷におびえ
疾風によじれて
咲き満ちたさくらはすでにふるえている
散ってゆく時間 空の青さ
葉桜の輝くみどりの時間へと

永続的リンク

2009/04/01

Permalink 21:36:33, カテゴリ: 詩の歳時記, views: 817 Japanese (JP)

詩の歳時記ー243 「おぼろ夜」

おぼろ夜のかたまりとしてものおもふ        加藤楸邨

抱きよせても 抱きよせても
胸のなかから漂い出てしまうもの
手のひらに包んでも
かすかな指の隙間から消えてしまうもの
せめて名前をつけてあげよう 「朧」と。

永続的リンク

こくりこ日記

高田昭子のb2evolution blogです。
吸殻山383番地の家に戻る。
中央1番地に戻る。

  • 最新 (キャッシュ)
  • 最新 (キャッシュされない)
2009年4月
<<  <   >  >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

検索

カテゴリ


いろいろ

このブログの配信 XML

What is RSS?

powered by
b2evolution