アーカイブ: 2009年5月

2009/05/31

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詩の歳時記ー285 「明やすし」

妻と浅蜊は厨に泣きぬ明やすし          石原八束  

厨の薄明かりのなかで
日常化された無口な貝の哀しみは
それゆえに姿をもたない
ひそかな音となって
おとこの耳に心地よいものになる

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2009/05/30

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詩の歳時記ー284 「メロン」

メロン掬ふに吃水線をやや冒す         鈴木榮子

地を這う水の球どっしりと実り       
天の底に転がる小宇宙
切り裂けば半球の海
甘き水溢れ 溢れ
吃水線は定まらず

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2009/05/27

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詩の歳時記ー283 「夏野」

頭の中で白い夏野となってゐる             高屋窓秋

孤独の練習開始のベルが鳴るので
頭を真っ白にして 行かなくてはならない
―わたくしを必要とする人がいると仮定する
―それはわたくしを軽んずる人と重複する
このフシギな公式が今日の授業らしい

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2009/05/26

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詩の歳時記ー282 「牡丹」

牡丹ていっくに蕪村ずる二三片         加藤郁乎 

浪漫の花茎を折るように
おとこが立ちはだかった夢の辻がある
「そこから先には往けぬ」と・・・・・・
牡丹の花を手折り
わたくしはかのお方に逢いにゆくのです。
通してください。

  *    *    *

牡丹散って打ち重なりぬ二三片       蕪村

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2009/05/24

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詩の歳時記ー281 「短夜」

    

短夜や乳ぜり啼く児を須可捨焉乎(すてつちまをか)       竹下しづの女

赤児の夜泣きをそそのかす魔物たち
短夜は多忙であろう
啼かせるだけ啼かせてみよ
須可捨焉乎 須可捨焉乎 哀しい母の呪文
明けやすき朝までの出来事にすぎぬ

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2009/05/22

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詩の歳時記ー280 「夏の月」

なほ北に行く汽車とまり夏の月         中村汀女

あなたのすこやかな寝息が聴こえてくるとき
わたくしの胸のなかでは
あなたの列車がガタンと停車する
目を閉じるとわたくしの幻の列車は
あなたより一つ先のまなうらの駅で
シュルシュルと音をたてて停車した

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2009/05/21

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詩の歳時記ー279 「初夏」

初夏に開く郵便切手ほどの窓          有馬朗人

ふたたび夏のはじまり
西の地にいる君の気配が
かすかな音をたててポストに届く
小さな窓からは
遠いものの方がうつくしく見えるものです

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2009/05/20

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詩の歳時記ー278 「五月風」

頬まるくまあるく吹けよ五月風         高田昭子

画家が愛したものは「愛」
愛しきものの素肌の輝き
木漏れ陽の揺らめき
幼きものの天使の時間
ぶらんこ 音楽 街角のカフェ

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2009/05/18

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詩の歳時記ー277 「白牡丹」

うつし世の紅をふふみし白牡丹          加藤耕子

ただ真白に咲く夢のなかから
ふっくらと開きませうか
うつし世には
紅といふ色ありて
とまどいつつ紅ふふむ

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2009/05/16

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詩の歳時記ー276 「薊」

薊濃し磐余(いはれ)の道と聞きしより      八木林之助

磐余の道は死者への道
そこにさしかかる時
薊は静かに色を深め
死者の眠りを覚ますのか
往くものたちの心を引き止めるのか

*   *   *

★大津皇子(おおつのみこ)
百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ

 大津皇子(天武天皇の皇子)は「磐余の池」にて非業の死を迫られたこと、その処刑の直前に、皇子に一目逢おうと駆けつけた「耳面刀自(みみものとじ)=藤原鎌足の女。不比等の妹。大友皇子の妃」の美しさのために、死者となってからも皇子の魂は鎮まることがなく、五十年後に彷徨い出ることになる。その魂に呼ばれたのが、「藤原南家郎女(ふじわらなんけいらつめ)=藤原武智麻呂(むちまろ・不比等の子)の子の豊成の娘」であった。この物語の主軸は、清らかな生者の郎女による、死者大津皇子の「魂鎮め」であるだろう。
 (折口信夫・死者の書より、私的なまとめ。)

★ 山前王(やまさきのおほきみ)
つのさはふ(「いは」の枕詞)磐余の道を朝さらず、行きけむ人の思ひつつ通ひけまくは、霍公鳥鳴く五月には、あやめぐさ、花橘を玉に貫(ぬ)き、かづらにせむと、九月のしぐれの時は、黄葉(もみちば)を折りかざさむと、延(は)ふ葛(くず)の、いや遠(とほ)長く万代(よろずよ)に絶えじと思ひて通ひけむ、君をば明日ゆ、外(よそ)にかも見む・・・・・・
 (石田王が亡くなった時に山前王が詠んだ歌、読み下しです。)

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2009/05/15

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詩の歳時記ー275 「えご」

夕空の碧まだ昏れずえごの花      畠中じゆん

五月の碧空は
一日の暮れることを忘れたように
窓辺に揺れている淡いひかり
えごの樹の葉陰に
白き花ひっそりとひしめいて

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2009/05/14

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詩の歳時記ー274 「あかしや」

姨捨やあかしやの花りりと垂れ        小檜山繁子

哀しき老女は美しく舞う
山懐の静けさに似て
ちよろずのやさしき知恵に似て
りりと りりと
花房が垂れるにまかせて

2009/05/12

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詩の歳時記ー273 「蝶」

日をたたむ蝶の翅やくれの鐘           望月宋屋

入相の鐘の音が
薄暮の空に漣をたてている
一日をたたむように
蝶は静かに翅をたたむ
わたくしは今日のこころを眠らせる

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2009/05/10

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詩の歳時記ー272 「初夏」

初夏やわれは母なり母はなし         高田昭子

少女に帰ってしまった老母は
叔母の名前でわたくしを呼んで
「お父様とお母様がいないの。」と泣いていました。
不在のままに時は過ぎて・・・・・・
天の母よ。わたくしは今を生きている母です。

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2009/05/09

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詩の歳時記ー271 「蜆汁」

命とはこんな温度か蜆汁        つぶやく堂やんま 

両の手のひらで椀を持ち 啜る
口腔のなかで温い折り合いをつけて
咽喉元を下りてゆく海山の香り
さまざまなものたちの温度差が
寄り添うような春の夜に

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2009/05/08

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詩の歳時記ー270 「あやめ」

あやめ咲けり白馬岳(はくば)削りて落ち来し水        村山古郷

季節は確かな足取りで廻る
白馬岳に代掻き馬の雪形が出来るころ
田畑は大きく息をはき
雪解け水の落下音に耳をすます
庭のあやめが揺れる一日

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2009/05/07

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詩の歳時記ー269 「バラ散る」

バラ散るや己がくずれし音の中          中村汀女

一輪の薔薇が散る さわさわさわさわ・・・
一夜の春の枕辺に ざわざわざわざわ・・・
ひとのこころも崩れやすきもの
薔薇の棘ありて 遠きひと死にても
薔薇は今年も咲き継いでいる

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2009/05/06

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詩の歳時記ー268 「春の灯」

春の灯や女はもたぬのどぼとけ          日野草城

鬱の性差について おとこが解きあかす。
おとこは一点集中型のちいさな鬱
おんなは瑣末なものたちのおほきな塊の鬱だそうな・・・
それでおんなの鬱は救済されたのか?
あれは野太いおとこの声だけでした。

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2009/05/05

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詩の歳時記ー267 「子供の日」

子供の日小さくなりし靴いくつ          林翔

寝返りをうつと
いのちの牽引機が大急ぎで働いて
子供はまどろみながらおおきくなる
目覚めるたびに歳月を脱いで 
真新しい靴をはいて朝の道を歩く

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2009/05/04

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詩の歳時記ー266 「若葉風」


  (Photo by Umikyon)

沼の色変りどほしや若葉風          黒髪

樹々の若葉の色々
水面に映る光と空の色々
しなやかに したたかに
朝も昼も夕べも変幻する
映像の吃水線 絶えず揺れて

  *   *   *

この俳人「黒髪」がどのような時代で、どのような方なのか調べられません。どなたかご存知の方は教えて下さいませ。出典は虚子編「新歳時記・三省堂」です。この歳時記は、たとえば「中村汀女」のようにフルネームで書いてありませんので、わかりにくいのです。

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2009/05/03

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詩の歳時記ー265 「春の空」


  (Photo by Umikyon)

死は春の空の渚に遊ぶべし        石原八束

若葉が遊ぶ空の奥には
幾重にも折りたたまれた空がある
空を水を真似て死者も遊ぶ
空の折れ線を
折ったり 開いたり

2009/05/02

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詩の歳時記ー264 「受験生」

受験生禁句坂道甘蕉皮          高田昭子

漢字俳句ですが
ちょっと時期が遅かったようね。
滑る関係言語は禁句。
――桜散る――
でもきっと来年も咲くわ。

  *     *     *

お粗末さまでした(^^)。

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2009/05/01

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詩の歳時記ー263 「髪洗ふ」

    

髪洗ふ羽化の半ばの容して           赤松蕙子

洗髪のたびに
少女は少しずつ少女を脱いでゆく
濡れた髪を梳ると
たちのぼってくる微かな潮の匂い
母が遠くなったり 近くなったり・・・・・・

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高田昭子のb2evolution blogです。
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