夏の名残り
桐田さんからの定期便「断簡風信」187号が届く。彼の膨大な読書メモである。その本の紹介文を読んでいると、わたしも読んだような錯覚に陥るほど、彼の解説は適切である。しかし今回の封筒の手触りはいつもの違う。予告通り桐田さんはその便箋の間に「線香花火」をしのばせていたのだった。便箋はかすかに「火薬」の匂い……う〜〜む。「爆発物取締り法違反」にひっかかりそうな(はは!)贈り物である。もしも警察犬がいたら噛みつかれるやもしれぬ。
夜、外に出るととても涼しい。もう秋がきているようだ。夏の名残りの花火遊びをしながら、「うふふ!これは燃えるようなお便りだな。」とひそかに思う。ただし、わたしだけに送ったものではないのだ。念の為。
手花火を命継ぐごと燃やすなり 石田波郷
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