060‐7
顔をあげると
レースのカーテンが風でたわみ
光の池をつくっている
そこに窓の外のタブの木の葉っぱが
影を落とす
風がゆるむと影たちは黙り
風をはらむとチラチラおしゃべりを始める
汐のにおいがするね
そろそろキスの季節だね
きのうあげたよ、5ひき
まだ、こんなだけど
6月も20日をすぎて
光のあふれる季節
明日からは蟻の一歩ほどずつ
光がけずられ
葉っぱの影も徒長する
今日は今日で終わり
太ももの内側を蚊に食われた
今日のレシート
063-2
目が届いた先に
輪ゴムが一本やすんでいる
ほぼまんまるにひろがって
うつろに口をあけている
やすむ前はどこで
何をしていたのだろう
(リレキショ、テイシュツサレタシ)
体一本で守ってきたものを
なつかしんでいるのか
与えてあげようか
これから守るべきもの
輪ゴムとして生まれてきたからには
かの締め殺しの木のように
何かにからみたいという欲求を
いつもかかえているのかな
それが君の存在価値だからね
(ジャ、オレノソンザイカチトハ・・・)
テーブルの上の一本のくたびれた輪ゴムよ
30秒ぐらい間だけど
今、君をちゃんと見ているよ
5行詩
だれか見知らぬ人から手紙をもらいたい
手紙、にはそんな誘惑がある
その文字は砂漠で踊る蛇の足跡に似ている
その言葉はすみれ柄のジグソーパズルのピースに似ている
今、この星のどこかの浜辺に緑色のガラスの瓶が打ち上げられた