京やまと行
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京やまと行                



近鉄特急で京都から奈良へ、木津川を渡って入る
夏川を越ゆれば青き寧楽(なら)の天
                                       
 伎芸天
秋篠の悲にまた逢はん夏の果て
                                       
夕暮れ、暗峠より大阪方面を見る
かなかなのくらがり越しに茅渟(ちぬ)の海

菊の香にくらがり登る節句かな 芭蕉没年吟
くらがりや秋漸(ヤヤ)近き石畳
                                       
法隆寺はもと唯識の寺
白秋や堂はいかなる裂(きれ)の跡

竜田の祭神は風の神
そのかみの韓紅(からくれなゐ)は風の色

正暦寺は南都諸白(なんともろはく)発祥の山寺で、そこで三界万霊塔に会う
蒜(ひる)でやる三界衆生も夏木陰

山上より平野を見、信貴山縁起絵巻のことなど考える
信貴生駒てのひらに青田にほふ如
     
奈良は巨刹の門前町として今に残る
平城(なら)ゆけば百日紅くれのこりたり
                                       
翌日京都に移動。鴨川川床(かわゆか)の夕、酒なくては京は味気なし
冷酒くむ他界のごとくにぎやかに

川かぜや薄がききたる夕すゞみ 芭蕉
床涼みものみな浅く料(れう)らるる

鴨川の夏、わが若年
上京ははや闇のなか鮓(すし)光る
                         
 鹿苑寺
うつつなき箔に沈むや夏の楼
 
 雲龍図を見たあと、ことの符合に驚く
龍を見てのち妙心寺大白雨

妙心寺から仁和寺まで、日が翳る
蝉啼くや御室(おむろ)につづく風の道

又平にあふや御室の花ざかり 蕪村
又平も蕪村も留守ぞ夏の山
                           
河原院跡は六条御息所の俤。うき人を枳殻(きこく)垣よりくゞらせん 芭蕉付合
羅(うすもの)の主の香ふかき枳殻垣

タクシーで四条へ。昔から河原町をさまようと、なぜか必ずこの小路に遭遇してしまう
蛸薬師つね遭ふわれや鄙の海人(あま)

二年つづけての真夏、南禅寺界隈で湯豆腐をいただいたことがある。京人はいかに
湯奴を夏食ふわれや鄙をとこ

新幹線で帰路につく
あはく酔へ左に秋の伊吹山
この夏も栞とならむ海くれて

*奈良二泊京二泊。立秋過ぎの旅行ゆえ、季語は夏と秋、その他ごちゃごちゃである。

2002・8月


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