Suigara-yama_OoazaHyo(Kyoko_Umino)

2018-07-15

緑の風と横たわる犬と ─「発掘された日本列島2018」

null

null

null

 久しぶりに都会に行った。電車に乗って。数ヶ月ぶりかもしれない。それも展覧会目的だと、もうどのくらいぶりか。めっきりそのてのものに行かなくなったから。
 体調のせいもあるけれど、興味が美術からすこし違うほうへ向いてきているということもある。考古学というほどではないけれど、縄文的なものに、心が向いてきている。
 ということで、出かけてきたのは、江戸東京博物館の「発掘された日本列島2018  ─新発見考古速報」(2018年6月2日─7月22日、巡回展、以降、石川、岐阜、広島、川崎へ)。これは、近年発掘された遺跡や、研究成果があがったもので、展示可能になったものなどを、文化庁主催で紹介するもの。


 それにしても、暑い一日。今が一番暑いのかしら。
 自宅最寄り駅から、小田急線で新宿へ。そこからのろのろと、各駅停車の総武線で両国に向かう。市ヶ谷あたりで見えるお堀を楽しみに。
 信濃町、四谷、水道橋、市ヶ谷、お茶の水。お堀目当てだったが、神宮外苑など、緑が意外と多いなと、ぼんやりと車窓をみて思う。お堀は真緑。違和感があるのは、わたしがいつも地元でみている水が、もっと澄んでみえるからだろう。
 都心に住んでいるときは、それほど、お堀に、あの不自然なにごった緑色に、違和感を感じなかったのだから。
 そういえば、ここにくる数日前、早朝バイトの帰りに、珍しく湧き水のある池の様子を見に行った。国分寺崖線上の、木々の多い崖下にある。水周りは保護されていて、道路脇の金網ごしにみる感じなので、あまり訪れていなかったのだ。
 目当ての場所は、残念ながら、すこし水量が減っていたような気がした。白いトタン板のようなもので草の侵入を防いでいる。
 地図をみると、この池のとなりにも池がある。やはり金網が張ってあって、入れないように保護してある。前も探してみたのだが、見ることができなかったところで、だめもとで、そちらにいってみたら、池は見えなかったが、湧き水は発見することができた。小さな滝のようになって、すぐに暗渠にもぐってしまう。
 だが見つかってよかった。清冽な水。ちなみにこの湧き水、いや池なのか、名前は上神明池(かみしんめいいけ)という。
 こちらは崖下だが、この崖上のほうを通ったとき、工事していて、「遺跡発掘調査中」とも書いてあった。
 ものすごくおおざっぱにいうと、崖のあるところは、遺跡がでることが多い。なんの遺跡で、なにが出たのだろう? 心が惹かれた。

null

 実は体調のせいか、江戸東京博物館の展覧会も、行こうかなあぐらいで、あまり気乗りがしなかったのだった。ああ、もしかすると、この工事のことが頭にあって、行こうという後押しをもらったのかもしれない。
 それと。上神明池を含む、国分寺崖線、緑深いあたりにきたとき、空気が変わった。それまで、うだるほど暑かったのに、冷たい、やさしい風が吹いたのだ。崖下は、片方が緑、もう片方は住宅地、緑に囲まれた、というほどではないのに、空気がひんやりとした。ここちよかった。
 電車に戻ろう。車窓から、にごった緑の堀、堀の際の街路樹などを眺め、そういえば、あのあたり、実際に歩いたり、自転車で通ったりしたことがあったが、空気が変わるほどの、ひんやり感を感じたことはなかったなあと思っていた。なにが違うのだろうか。ことばでは自分でも理解できていないのだが、暑そうな外を眺めていて、なんとなく、どこかで腑に落ちたような気がした。
 さて、展覧会へ、博物館の特別展ではなく、常設展示会場での企画展。何回かここに来ているので、江戸の紹介、展示などの常設は、ざっとみるだけにした。ただ歌舞伎の舞台を模したイベント会場で、なにかイベントをしているらしく、マイクまで使っているので、正直、かなりうるさい。企画展入口が見えたが、あきらかに音がみる妨げになるだろうと、終わるまで時間をつぶすことにした。どこにいったのか、おそらく江戸時代ではなく、明治あたりに逃げ込んだ。鹿鳴館、行灯とガス灯、裸電球の明るさの違い。
 やっと、イベントが終わったので、晴れて目的の企画展へ。
 HPなどから。「全国で毎年8000件近い発掘調査が実施されていますが、その成果に実際に触れる機会は極めて限られています。そこで、近年、とくに注目された出土品を中心とした展示を構成し、全国を巡回させることにより、多くの方が埋蔵文化財に親しみ、その保護の重要性に関する理解を深める機会となる展覧会を開催します。今年度は、特集として文様や彩色が施された装飾古墳の調査・保護についてもご紹介します。」とある。
 わたしの興味は、縄文時代に向いているので、とくに千葉県の加曽利貝塚のコーナーに心惹かれた。去年の秋に実際に訪れたところでもあるので、なおさらだ。南貝塚から剥ぎ取った地層断面の展示もあった。およそ4000年前から3000年前の断面。
 そして土偶、縄文土器を調べる指標となった加曽利E式、B式の、それぞれの土器の展示。
 あとで、このあたりのことも触れるけれど、これらの縄文や旧石器時代を長めにみて、後は簡単にすませて、一周がすんだ。企画展脇で、ビデオ上映がされている。六本ぐらい、計一時間。みたいものは、縄文だけなのだが、まだだいぶ時間がありそうだ。どうしようかなと迷いながら、また、企画展入口に戻ったら、ちょうど文化庁文化財調査官による展示解説が始まるところだったので、参加することにした。最初は申し訳ないが、時間つぶし程度に考えていたが、とんでもない、参加できて、とてもよかった。
 自分が興味なく素通りしてしまったものたちの、解説が、とくによかった。こうして解説されなければ、きっとその存在の大切さが無縁だったものたち。
 たとえば、剣の柄。柄の部分は木製だったりするので、ほとんど現存することが難しく、出土されないそうだ。だが、長年水に浸かっていたおかげで、見つけることができた漆塗りの柄とか、噴火災害によって、埋まった遺跡の発掘の、その生活跡の生々しさとか、秀吉が行った京都復興を物語る出土品とか。奈良時代、孝兼女帝から寵愛をうけたとされる道鏡一族ゆかりの、豪奢さがうかがえる建物跡とか。銅鐸は、どこから出るかわからない、工事現場で、突然出土することが多いとか。
 お話ししてくれた方は、古代が専門で、埴輪が大好きとのことだったが、縄文のこともだいぶ時間をかけて話されていたので(好きな古代よりも、時間をかけてしまっていると本人が語っていた)、ありがたかった。
 そのなかで、加曽利貝塚のこと。ここでは犬が丁寧に埋葬されている。そのことは前から知っていたのだけれど、去年の秋に訪れた加曽利博物館では、展示をみることがなかった。実は今回、はじめて、その埋葬された犬を見たのだ。ほんとうに、やさしく、そっと置かれたような埋葬のされかただった。横むきになった犬。ちなみにこの犬の存在があったから、加曽利貝塚のイメージキャラクターは、カソリーヌとなっている。
 それはともかく、展示解説でも、そのことが触れられていた。犬は狩猟などで供をしていたもので、いわばパートナーだったのでは、だから、こんなかたちで埋葬されたのではと。
 それが実感として感じられる横たわり方だった。
 日本では普通、骨はなかなか残らない。残るのは、貝塚の貝のカルシウムのおかげ、貝塚はゴミ捨て場と習ったと思うのですが、たしかにそうした面もあるけれど、人骨や、こわれた土偶などもあり、もっとちがう、豊かな意味もあった場所だったのではなかったかとも。
 個人的には、わたしは、貝などはあまりゴミと言った感じがしない。貝殻はきれいだもの。あるいは、ゴミという観念がいまとはだいぶちがったのではないかしら。土に還るものたちとか。壊された土偶の多さなども頭にいれて、土、死と再生のこととかも思う。
 展示解説、決められた時間は四〇分ということだったけれど、だいぶ時間オーバーして話してくださっていた。
 おわって、さきほどのビデオ上映コーナーにいったら、あと10分ぐらいで、加曽利貝塚の上映になるらしかったので、こちらもありがたかった。
 特別史跡になるということで、記念、紹介的につくったビデオだった。
 ちなみに、特別史跡。これも、今回、文化庁調査員の方のお話で知ったのだけれど、国宝と同じ、いや、それよりも狭き門で、貴重なものが選ばれるのだとか。加曽利貝塚は、今現在、62番目で、特別史跡も同じ数。つまりいちばん最後に認定されたもの。
 ビデオ上映もみて、また企画展のほうへ、足をはこぶ。さきほどの展示解説を、かみしめたかったのだ。
 そうこうしているうち、時間がだいぶ経ってしまった。三時間ぐらい館内にいたのだろうか。
 足がだいぶ疲れていたが、長いこといるこができて、それがうれしかった。
 
 帰りに、新宿に寄った。現在、上野で縄文展が開催されているので、その関連で、ミニフェアを紀伊國屋書店で行っているらしいと知ったので。
 そちらは、ごめんなさいだが、思っていたよりも? だったけれど、ふだん、もはや新宿ですら、ゆく機会がなくなってしまったので、確かめることができてよかった。ビルの一階に、標本や化石を売っている店があるので、そちらものぞく。このごろ、ほしいと思って探している珪化木、あったが、ちょっとちがう。でも、これも見ることができ、触ることができて、心がすこしうるおった。
 帰り道。通りはまだ明るく、暑かったので、なるべく地下街を通って過ごした。久しぶりだったので、地下街の出入り口を、間違えてしまう。つい、昔、勤めが新宿だったころ、利用していたところをのぼってしまったのだ。
 登ると魚の壁画がある。新宿もだいぶ変わってしまって、駅ビルも変わってしまったが、この魚たちだけは、変わらないなあと、眺めた。そこで、あれ、この魚たち、ずいぶん久しぶりにみるなあと、間違いに気づいたのだった。この魚のいる通路は、今は使わないのだと。
 都会や過去から離れてしまったのだなあと感慨がすこしおこったが、それだけだ。でも、壁画の魚たちに、久しぶりにあえてうれしかった。おそらく5年ぶり以上。
 少し疲れていたので、帰りは各駅停車で、座って帰ることにした。
 うたたねしていたので、最寄り駅についたら、もうほとんど、夜の気配。わずかに西のほうが、明るいぐらいだ。
 国分寺崖線下のスーパーに寄るので、駐輪場に自転車を停めた。すると、ヒグラシの声がした。
 今年はまだ、蝉の声を聞かないなあと思っていたら、いきなり、大好きなヒグラシの声を聞いた。カナカナカナと、さびしいような、かなしいような、そんなすこしの痛みをおぼえてしまう、せつない声だ。
 この声が、蝉のはじまりでいいのだろうか。いいのだろう。暑いことは暑いが、日差しがないぶん、暑さがだいぶ収まってきている。うちにかえったら、それでも二度目のシャワーを浴びるだろうけれど。
 家についても、足がじんじんしている。シャワーをあび、簡単な食事をすませたら、ほとんどすぐに寝てしまった。それでも、出かけることができてよかった。
 翌朝、というか、書いている今日。家のまわりでは、まだセミの声を聞かない。 


posted at 21:09:36 on 2018-07-15 by umikyon - Category: General

Comments

mySQL error with query SELECT c.citem as itemid, c.cnumber as commentid, c.cbody as body, c.cuser as user, c.cmail as userid, c.cemail as email, c.cmember as memberid, c.ctime, c.chost as host, c.cip as ip, c.cblog as blogid FROM nucleus_comment as c WHERE c.citem=7886 ORDER BY c.ctime: Unknown column 'c.cemail' in 'field list'

No comments yet

Add Comments