Suigara-yama_OoazaHyo(Kyoko_Umino)

2019-07-15

空と地を水が──見えない、いなくなり、見えにくいものたちへ

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 以前にも書いたけれど、うちの近くに、雨などで地下水位があがったときだけ現われる小さな川がある。一年の大半は、川の筋だけが残っていることが多い。直線距離にしてどのくらいだろうか。グーグルマップで見てみると200メートルぐらい。ただそこに川としては載っていない。流れ自体はとなり町の池から始まっている。ほとんどが暗渠になっていたりしているが、全長は二キロ弱だろうか。お寺の敷地にあるはじまりの池も、昔は湧水池だったのだが、今は井戸を掘削して復元している。だから今の川はどうなっているのか、実はよくわからない。池からしばらくゆくと大通り(ここも以前は野川が流れていたらしい、一の橋、二の橋、名前だけが残っている。こちらは流路を変えたのだ)があり、それを渡ると川の名前を冠した緑道の公園がある。その下に川が流れているのかどうかも不明。一度緑道から、川の跡を下ってみようかと思ったが、緑道が終わってから、すぐにわからなくなって断念した。そして一キロとちょっと行くと、うちの近く。ほとんど突然に川は現われる。ちなみにそこからさらに100メートルほど上流にあたる部分に、ほんのすこしだけ、こちらはもっと短く50メートルにも満たない川が現われ、すぐに暗渠になってゆく。最初、これが同じ川かどうかわからなかったが、区で出している公園マップみたいなものをもらってきて見てみると、そちらには流れが載っており、うちの近くの川も、その短い流れも、おそらく同じものなのだろうと推測できた。道が入り組んでいるから、わかりにくかったのだが、マップで見ると、すっきりと暗渠がつながってみえたのだ。
 ともかく、うちの近くの川。近所の湧水も流れ込んでいるからか、それに地下水由来だからか、水が流れているときは、とても澄んだ流れとなっている。近所の湧水といったが、こちらも今はほとんど湧き出ていない。やはり地下水位があがったときだけ。
 昔、十年ぐらい前だろうか、インターネットで検索したら、その湧水が、名水として記事になり載っていたことがあった。その当時でさえ、さらに遡って十年以上前の記事のようだったので、もはや今ではネットでは記事自体を探すことができない。
 十年ぐらい前に、その記事を頼りに家の近所を探してみたことがあった。湧水…名水…、庭に細長いくぼみがあるお宅があって、多分そこなのだろうと思ったが、見たときは流れていなかったし、わからないままだった。うちの近くに名水と呼ばれるものがあったなんて……、探検する気分だったのを憶えている。わくわくとした気持ちが最初にあり、見つからなかったことで、それをすこしさびしく思ったものだった。そのときも、小さな川は涸れたままだった。うちの近くといっても、道を一本挟んでいて、普段はほとんど通らない。なので、川はもはや涸れたままそこにあるのだろうとずっと、何年も思っていた。流れが復活することがあると知ったのは、何年前だったか。数年前に過ぎないのではなかったか。
 そして、去年だったか、名水として載った湧水ではなく、その数十メートル先で、別の湧水が流れ込んでいるのを発見した。小さな流れが小さな川に合流するような感じだ。これもうれしかった。なぜ水に関することが、こんなにわたしをゆさぶるのだろうか。

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 この頃、梅雨ということもあって、雨水が多いから、多分……と当たりをつけて、流れを見に行くと、結構水量が復活していた。それに雨だというのに水が澄んでいる。そしてつい最近まで、川のほとりには古く、読めなくなった立て札があったのだが、それが新しくなっていた。
「 かつては、狛江市の泉竜寺を水源とする清水川が府中崖線に沿って、この場所を流れていました。この場所は府中崖線の崖下にあたり、湧水がしみ出る場所でした。近年の都市化に伴い、水量は少なくなってきましたが、今でも地下水位が高くなると湧水を見ることができます。」
 崖線とは、河川や海などの浸食作用でできた崖地の連なりで、崖線には、連続した緑が存在する場合が多く、崖下には、雨水や地下水からなる湧水が流れ出ることも多い。うちの近くにはこのほかに国分寺崖線もある。
 ここも崖下だったのかと思う。周りは平坦で、高低差もないし、あまり崖下という感じもしない。けれども、たしかにもうすこしはなれると登り坂があるので(それが国分寺崖線だ)、土地は低い、いわゆるハケ下ということなのか……。
 水が好きなので、実感がないけれど、やはり立て札はうれしかった。わたしはなぜ、こんなに水が好きなのだろうか。その川は、今日も、梅雨のせいだろう、きれいな水が流れていた。水が流れているだけで、じんとする。冬などはとくに涸れていることが多いのだが。雨のふる空と水の流れる台地はつながっている……。

 実はこの文章を書いている途中でパソコンの外付けHDDが壊れた。この文章も含めてすべてHDDに保存する癖を付けていたので、いろいろ少し困った。途中の原稿、メモ、写真、一切合切、保存していたデータがある日突然読めなくなった。
 データ復旧サービスに頼んで、復旧したデータを新しい外付けHDDに入れてもらった。その期間約一週間。今回のことで少なからずショックを受けた。過信を反省していた、というべきか。突然に終わりはやってくる。終わりに対して、たいていは、受け入れつつある自分がいたつもりだったが、書いたものたちなどに対してだけ、過信していたことや、よりどころにしていた保存場所が、安全ではないと思い知らされたことに対して、心を暗くしていたのかもしれない。
 新しい外付けHDDにフォルダーがあり、その名前が「復旧データ」とあったのが戒める証拠のようで、もの悲しかった。そこを開くと、今までのデータが入っている。
 もう過信してはいけないのだと、とりあえず外付けのSSDという記憶媒体を新たに購入した。予備というかクローンというか。それと、クラウドサービスを使うことにした。書きかけのものなどはクラウドで保存して、書き上げたものだけHDDとSSDに保存すればいい。SSDはHDDに比べて壊れにくいらしいが、壊れたとなるとデータを読み出すのが難しいらしい。けれども両方一度に壊れることはないだろう……。
 
 壊れてからの一週間、通ることは通っていたのだが、あの小さな川のことを考えることもおろそかになっていた。
 また少しづつ。知らないお宅の庭のくぼみ、名水と紹介されていたであろうそこの水もどうやら復活していた。ただくぼみの先に土管があり、そこに水が流れ、地下に潜ってゆくようだったので、あの川に注いでいる姿はわからなかったが。
 空と大地はつながっている。今日も雨。
 うちの近くで、この頃、猫の親子を目にするのが、密かな楽しみになっているのだが、あの親子たちは雨の時はどうしているのだろうか。

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posted at 00:01:00 on 2019-07-15 by umikyon - Category: General

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