Suigara-yama_OoazaHyo(Kyoko_Umino)

2020-02-25

猫ちゃん柳と梅たちと府中市郷土の森博物館など

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 沈丁花がもう、あちこちで香りを放っている。姿をみせる前から、かくれんぼした子のように、匂いでヒントをくれているのだった。
 家の近くの梅も満開だ。そういえば、このところ例年のように足を運んでいる、府中市郷土の森博物館の「郷土の森 梅まつり」(2020年2月1日─3月8日)。出かけたのはいつだったろう。二月の八日(土曜日)、もう三週間以上前になってしまう。
 春のこの時期はそれぐらい間が開いてしまうと、もはや別の季節…。
 言い訳をすると、しばらく風邪を引いていた。年のせいだろうか。この頃、風邪がゆっくりと身体に留まるようになってきている。ひきはじめは気のせいかなと思うぐらい、わずかな喉の違和感。それが確信的に風邪の症状になるまで数日。以後も長い。鼻に来て、つぎに頭痛、微熱、喉の違和感が痛みに変わり……。倦怠感、節々の痛み、以前はほぼ微熱だけですんだのだが、このごろはきちんと風邪の症状が出るようになってきている。微熱で抑えていたのに、その堰がよわまったので、べつの症状たちの力を借りるようになったのだろうかと、勝手に素人判断をする。だが、それがいいこともある。以前、微熱で症状が治まっていたときは、微熱がひいた後も全身倦怠感などが残った。この頃は鼻や咳などに分散されたせいか、以前のだるさや微熱がほとんど出ないので、割と元気に動けてしまう。今の時期は、例年にみない、新型ウイルスのことがあるので、外に出るときはマスクをしてはいるけれど、これも人に移さないようにとのことだけ、個人的には必要を感じていない。ともかく、その風邪をもう三週間は引いている、以前に比べて症状に出るようになった分、元気に過ごせるようになっているとはいえ、それでもほぼ寝込んだりしていた時期もあった。なんだか、呼んでもいないのに来て居座っている精霊かなにかのようだ。丁重に帰って頂くようにおもてなしをしている。風邪薬を飲んだり、身体が温まるものを食べたり、休みの前日はニンニクを食べたり。
 その風邪と付き合っているうち、季節がすぎてしまったのだった、まだ引き始めのころは冬の気配だらけだったというのに、ほとんど治りかけている今、もはやとうに春一番も吹いてしまった。

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 マンションの植え込みの木瓜の花も咲きだした。アジサイの芽も黄緑色のやわらかそうな色彩が目立ちはじめた。俳句の春の季語のひとつである「猫の恋」の季節もはじまった。駐輪場ちかくで雌猫が恋をささやく、ダミ声をあたりに発している、そして雄たちの騒動。
 で、梅祭りだ。また記憶をたどって、二月八日の府中に戻ってみる。
 ここも家から車だと近いこともあって、近年は毎年のように赴いている場所。二月初旬だと梅よりも開花時期がはやいロウバイが咲いているのにも会うことが。それと二月初旬だけではないだろう、もっと季節が下がってもおそらくつぼみを付けているであろう、水辺沿いのネコヤナギたちにも会いたかった。さらにまるでそこにいるうちに化石になってしまったかのような珪化木たちが屋外で保存されているところ、縄文時代中期の遺跡を移設し、造型保存した「柄鏡形敷石建物跡」にも、博物館本館の常設展示室の縄文時代の土器や土偶にも……会いたいものばかり。こんなふうに挙げてゆくと、自分がどれほど、ここ「府中市郷土の森博物館」が好きなのか、気づく。
 森というか公園自体が博物館になっている不思議な施設だ。移築復原した建物たちも森のなかでたたずんでいる。入口前には物産館もあり、府中の野菜や観光お土産的なものを売っている。このことにいつも優しい違和感をすこし覚えるのだった。うちからほんの十数キロ離れただけのところで、旅にでたような、不思議な感覚。今回は買わなかったが、地ビール、郷土の森博物館の梅干し、野菜、お菓子などをもとめたことがある。
 二月の八日、まだ寒かったと思う。けれども晴れていた。寒いときに晴れていると、もうそれだけでうれしい。
 そのころ、梅はまだ種類によってはぽつぽつと咲いているぐらいだった。おおむね静かに梅を愛でる人たち。年配の方々が多い。静かにスマホや携帯、一眼レフのカメラなどを梅に向けている。あるいは梅と自らを一緒に撮影。
 全体的にはまだまだ最盛期というわけではなかったが、ほぼ満開の梅もあり、そこに人が群れをなしているのがほほえましかった。みんな梅を、春を求めているようで。

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 個人的になじみがあるのが白梅なので、白梅にばかり眼がいくが、白梅と紅梅がならぶと色彩が華やかになるなと、いとしく思う。空は蒼。
 お目当てのひとつであるロウバイの小径へ。こちらはほぼ満開。蝋を塗ったような、ぷっくりと厚い花びらたちが、黄色く照っている。早春のまだ弱い陽射しのなかで、太陽光をそっと助けるように咲いている姿が神々くすらある。おもわず花びらのさわりたくなる。蝋の梅、ロウバイ。また今年も会えたなあと思う。連れ合いは火を付けたらすぐに燃えそうだなあといっていた。春の黄色い蝋燭。

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 ロウバイの小径を抜け、出口のほうへ歩くとネコヤナギのある、湧水の豊富な国分寺崖線をあらわしたハケの流れに着くのだが、戻って、野外ステージのあるほう、珪化木を見に行く。目的のひとつだったのに、森が広くて、梅たちをぼうっと見ているうちに、通り過ぎてしまったのだ。
 珪化木は、案内によると秋田県大内村の水田から発掘されたものを府中市が寄贈をうけたとある。森の中で、ひっそりと切り株のように眠っている。前にもここで触れたが、珪化木は樹木の化石。木の原型のまま、二酸化珪素、瑪瑙状に変化したもので、この化石は白亜紀後期の七〇〇〇万年前のものだとか。
 植物のまま石になった、そのことにとても惹かれる。柔らかさと硬さの共存、生と死の、永遠と限りある命たちの融合。たんに今そこにある切り株たちが七〇〇〇万年前のものだということにも感動する。ともかく、また今年もその石の側面に触った。

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 そうして、珪化木の生える場所から、ネコヤナギの生える水辺へ。まだ少し早い季節で、いないかもしれない、期待と不安におののきながら、覚えている場所に向かう。
 いた。猫のようにふわふわとしたつぼみの花穂たちが、陽射しをうけて銀色に輝いている。「猫の恋」のように、春をつげる猫たちだ。ふんわりと寒さを耐えるような毛たちが、とてもしみる。
 子どもの頃から猫が傍らにいた。猫は大切な存在だった。そのこともあるだろう。子どもの時、ネコヤナギをドライフラワーにしたものを大事に宝箱にしまっていた。ネコチャンヤナギと勝手にいつしか呼んでいた。「ネコヤナギ」という言葉に、いろいろな意味をこめて、みてしまっている。
 ともあれネコヤナギには、大切な思い出たちを感じてなのか惹かれるのだった。早春のやさしい呪文をおびた、いや、そんなわたしの勝手な思惑をものともせず、普段どおりに、いつもの季節のように、たわわに毛をつけているネコヤナギたち。


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 ちなみに、その後、家の近くのお花屋さんで、ネコヤナギ、正式にはこちらはアカメヤナギというが、ともかく売っているのを目にして、ほっこりしている。やわらかい、小さな猫たちが眠っているようなつぼみたち。
 購入して、家でその姿を見つめようかしらといつも思うのだけれど、お花屋さんで見るだけでなんだか満足してしまう。まるで、お花屋さんでいましも生をともしているような気がして。あの府中市郷土の森博物館のネコヤナギたちのように。いや、切り花としてそこにあるのだから、根本的に違うだろう。切り花としてある彼らは、そのまま、生を終えるのだ。ならば、切り花を購入するべきなのでは……。また、次に来たときに考えよう。明日考えよう。「Tomorrow is another day」、映画『風と共に去りぬ』のラストの台詞を思い浮かべた。これも子どもの時よりは、もうすこし大きくなって、中学生の頃から好きな言葉なので、連想したのだろう。子どもの時も中学生の時も、もはや遠いから、けれども、わたしのなかでかすかに灯っているから。明日になったら、家にネコちゃんヤナギたちは来ているのだろうか。来ていないかもしれないし、来ているかもしれないが、どちらにせよ、勝手な言い分だ。
 ネコヤナギたちに府中市郷土の森博物館で会った後、先に書いた縄文の遺跡、そして博物館の本館というか、建物へ、常設展へ。また縄文土器たち、土偶たちをみて、力を頂く。

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 前述のとおり、府中市郷土の森博物館の梅祭りに出かけたのは三週間前の出来事だ。もはや今日は、あのお花屋さんで売られていたネコヤナギが姿を消してしまった。代わりにそこにいたのは、桃の節句ということで、桃の花、そしてなぜか青い麦。
 今年は暖冬だったのか、春が来るのが早い。春が一年で一番好きな季節なので、二月の末に春をこれほど感じられることに、うれしい戸惑いがある。啓蟄もまだなのに。
 木瓜の花にメジロが止まっている。空高く鳴いているのはあれはシジュウカラ。春を告げる鳥たちもわたしに温もりをあたえてくれる。家の近くでは、ロウバイはもはやとっくに花を終え、おなじ黄色い花ならマンサクが目につきだした。そしてわたしはといえば、ようやく風邪がいなくなってくれたらしい。猫がどこかでまた鳴いた。


posted at 19:18:00 on 2020-02-25 by umikyon - Category: General

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