雲の言葉
2002年―秋


盲い人
そして半身の萎えている人を
車椅子に乗せて
秋の道をゆっくりと押してゆく

あなたの感じとるものを
ひとつづつ思い描いてみる
歩道の舗石の上をゆく
車椅子の規則的な振動
風 温度 湿度……
落葉の渇いた音
ひかりは?
わたしはひととき目を閉じる

「雲はありますか?」
唐突にあなたが言った
「雲について話して下さい
 方角は西の空がいい
 どんな形ですか?
 流れていますか?」

試されている
あなたにではなく 言葉に

か細く萎えた腕をひっそりと伸ばして
空をまさぐるその腕を引き寄せる
「これはくちづけ あなたのママンの……
 そこから遠い雲の記憶を呼び出してください」

「うろこ雲……」
あなたのママンの空には
いつまでも夕暮が来ない


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