もみじの寺 2002年―秋
山寺への石段の勾配はきつく
生きる者たちを苦しめる
そのさらに上にいる死者たちに
辿りつくまでに
幾度も立ち止まり
呼吸を整えるのだった
石段に もみじ散りしく
幻の幼子の紅い手の痕が
鮮やかに石段を埋め尽くしている
あの子たちは まだ
二足だけではその石段を昇れない
一つの山を越えるように
一段づつ昇ってゆく
淡い息づかい
まだ立ち止まることを覚えていないらしい
もみじ 散りやまず
おびただしい小さな手の平
赤く染められて
死者たちのいるところまで
幻の幼子の行進は続いている |