しかられた神さま   川崎洋
                (1930〜2004)

   ずっと ずっと むかしから
   北海道に住んでいたアイヌの人たちは
   いろりの火のそばでも家のなかでも
   川でも野でも森でも狩りのときでも
   いつも神さまといっしょだったって
   その姿は見えないけれど
   いつも神さまといっしょだったって
   だから たとえばさ
   夜 川の水をくむときは
   まず水の神さまの名前を呼んで
   神さまを起こしてから くんだんだって
   神さまも夫婦で住んでいるから
   お二人の名前を呼んだんだって
   でもさ
   子どもが川におぼれたりすると
   ちゃんと見張っていなかったからだと
   水の神さまは いくら神さまでも
   人間からしかられたんだって

――『しかられた神さま・1981年・理論社刊』より――

方言の採集などでも知られる詩人で放送作家の川崎洋は、2004年10月21日に腎不全のため神奈川県横須賀市の病院で死去されました。74歳でした。

東京生まれ。西南学院専門学校中退。53年に茨木のり子と詩誌「櫂」を創刊。谷川俊太郎らを同人に加え、活発な詩作を展開した。その傍ら71年にはラジオドラマ「ジャンボ・アフリカ」の脚本で、放送作家として初めて芸術選奨文部大臣賞を受けた。87年、詩集「ビスケットの空カン」で第17回高見順賞。98年、編著書「日本方言詩集」「かがやく日本語の悪態」などで、第36回藤村記念歴程賞を受賞した。その他「方言再考」「日本語探検」などの著書もある。

川崎洋の訃報を知って、一番はじめにわたしの心をよぎったのはこの「しかられた神さま」だった。川崎洋にはお目にかかったことはないがずっと好きだった。だからふいに死なれてしまったような気がするのだ。川崎洋といつも一緒にいる神さまが見張っていなかったからだと、わたしがしかっていいのよね。

   そんな神さまは橋の下に捨てちゃうぞ!
   橋の下にも神さまがいるんだって
   森にも山にも神さまはいるんだって
   どこにでも神さまはいるんだって
   じゃぁ、天の神さま。お願いします。このお話の続きを……。


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