朝のリレー   谷川俊太郎
             (1931〜東京生まれ)


   カムチャッカの若者が
   きりんの夢を見ているとき
   メキシコの娘は
   朝もやの中でバスを待っている
   ニューヨークの少女が
   ほほえみながら寝がえりをうつとき
   ローマの少年は
   柱頭を染める朝陽にウインクする
   この地球では
   いつもどこかで朝がはじまっている

   ぼくらは朝をリレーするのだ
   経度から経度へと
   そうしていわば交替で地球を守る
   眠る前のひととき耳をすますと
   どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
   それはあなたの送った朝を
   誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
   
    "Morning Relay" by Shuntaro Tanigawa

    While a young man in Kamchatka
    Dreams of a giraffe

    A young girl in Mexico
    Waits for the bus in the morning haze

    While a little girl in New York
    Rolls over in her bed with a smile

    A little boy in Rome
    Winks at the morning sun that colors the column capital

    On this Earth
    Always, somewhere, morning is starting

    We are relaying morning

    From longitude to longitude
    Taking turns protecting Earth, as it were

    Prick up your ears awhile before you go to sleep
    And, somewhere, far away, you'll hear an alarm clock ringing

    It's proof that someone has firmly caught
    The morning you've passed on


谷川俊太郎のこの作品をわたしが初めて耳にしたのは、テレビ・コマーシャルから。すぐに「谷川俊太郎の詩ではないか?」とわかるものだった。解説はいらないでしょう。どの時代にも息づく詩であろうと思います。もしも平和な時代が訪れたときにはこの詩はさらに輝くはずだ。「リレー」というタイトルに従って、おそれながらわたくしの詩でバトン・タッチさせていただきます。


   この星  高田昭子  

   午後の陽だまりで
   わたしの子供がまどろんでいるとき
   君の国では明るい月が高くのぼり
   あなたの国では朝餉を囲んでいるだろう
   ――時は途方に暮れている

   いま わたしの国を温めている太陽は
   君の国からめぐってきた
   そしてやがてあなたの国へ朝を届けるだろう
   ――時がひそかに立ち上がり
     武器を手にする気配がする

   太陽が一日をかけてめぐってゆく
   この小さな星の
   わたしたちの時間が凍えてゆく

   愛よ 立ちなさい。

   この星には
   戦争と正義を一つの箱に入れて
   一羽の白い鳩に変えてみせる
   魔術師たちがいる

   わたしたちが
   その魔法にかけられる前に
   愛よ 立ちなさい。   (1991年1月16日に。)


前ページ     次ページ


声 「非戦」を読む 目次に戻るHaizara net(top page)Shimirin's HomePageUrokocitySiteMap