紫陽花
 

まざりあってはつれない文体、でしたから。彼女になつかしさがお
おいかぶさり、よどんだ虹をおきざりにされ、つまりはがれ、では
もう一度会えるでしょうか、めくれた声がしずむのだった。昨日よ
りも無理な距離が口をつける。うずめつくされ、花よりもうずくま
って、密集のなかにあなたをさがす、いや、さがしたかった。おき
わすれた時間が、ねろねろとかまびすしい、のにかまけた色が白濁
となる。想念だったとなでていた、さわられていたので、ささやき
よりもなおふさわしい幻聴だ。おぼえのない、ききとりたい来年も
またふってはうねり、ひらたさにおぼれるようで、つとひきあげて
しまったのだけれど、とすこしの歳月が顔をふせるのをみたような
気が。いや、逃避のようないたみがふるえるので、いや、それは退
いたものたちの諒解なのだと、つづることをはたとやめる切実が顔
をあげたのかもしれません。そむけたしぐさにひとはけの、とても
音楽のようでした、すきをぬって、あなたのいとしむ。かなうこと
を躊躇する、願いだったかが、いま、のなか、虹よりもなおうすく
なる、のでまだ帰らない。おりたつ気配がくずれるだろうか。くす
みはじめたその際を、いつかが歩き、すべるような口の、ただふく
んでは文字だった。ひとはけ、ひととき、ひきのばした色の名前が
ききたくなる。かわしたことばがすれていた、まじわって、となり
あうどんな関係も、欠如よりもなおおそれだった、から。だれので
もない、おおむねくろい、ねばつくのならまだよかった、かるい、
どこまでもかるい、文章に定着したかった、そうですね? あざや
かさが苦しい、平行して、すこしずつ、浸透するかたさもある。ま
ぎれつつ、どこにもいない彼女でした。しっていた、うつってゆく
色彩がやかましいほどで、しらなかった、決定的なすれちがいなど
ないのだよ、だって、とつづられる文字のくずれる。しんじられな
い憎悪だった、いつくしみだった、花のことばがうつってゆく。い
や、虹のようなとじこめなら、つらなる昨日があったはずだ、おり
かさなって、またこの文章がやってきましたね、いえ、移行するあ
かるさが連綿なのだから、会えないかたちもまたこめられているの
かもしれません。たとえば紙面にいわないことをながめている、彼
女はおおむね三色にすくむのだ、きりとった茎からふたまたになり、
来年は。うすいなまめかしさが花びらになる。血のすじ、のような、
返信めいた、風のふるえがあいさつでした。

(『W3』創刊準備号、2005・7・24より)


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