異名街
─曼珠沙華

よばれかたがあなたをちがった。という分岐点が、あまたあふれ、
こばんだので、ひきとめるどんな手段も辞さないかたちで、わたし
は街にはぐれていった。接合はますますなつくようにこぼれはじめ、
種のなさを気にとめずにいる。いわば決別からはじめようとめぐっ
たんです。舌曲がり草によせて、おとこたちをことばが不在だ。つ
みかさねた日付は、結実のかわりにはってゆくのだろう。いにしえ
の文体が浜にあがった。そうして、となりを分断するんです、あい
たかった。あるいはおもかげだったかをすてようと、下流にひきさ
くわたしのうかぶ。
死人花というのですから、したたるどんな言説もこわれた球根をい
そがなくてはならない、という関係もまた、なんどでもわたしたち
にうそぶいていた。つらなって、むかれながらもつぎ目はえらばれ、
つまりまぶされてゆくのだった。こごえるやわ肌を聞こえましたか。
あなたにそって、またぐようにもたげた茎なので、接した箇所をた
ずさえ、生きている毒をかかげたくなります。花弁のはげしさがだ
れかを思い出し、かわきをぬれる岸でした。枯らしてゆく軌跡によ
せて、生きましたか、じゅうぶんに死にたかった。たちつくして風
はいない。
上流のほそさがなおやましくからみつくのでした。はがれる生を名
前にたくし、かのじょたちは街をしりめに、ぬくもって、またつめ
たくなってゆく。反映はほそすぎてみえません。石女花を自在にだ
きしめ、おとこはとじこめるまもなく、わたしにぬぐう。すべての
嘘くささをにじませつつ、赤裸々な行間にひたしたかったのかもし
れない。相思華は岸で両側を、すでにもうあかかった。葉をくださ
い、あるいは花を。たどりついたとなりでは、いつでも街をわすれ
るので、おかえりなさい、と波紋にたわめる。
吉凶をやぶくように、天からふってきた花でした。別の名からほど
かれた鱗茎では、とけることなく土の茂みをさききっている。墓花
としてうまれるんです、わかれるんです。文字数すれすれににくむ
ことをほとばしらせ、あなたをとても下流でした。まだふるえがぬ
れますか。ふきぬける風に、ちぎれるような会話があった。あらげ
た希望があかさをくぎり、葉脈にそってたちあがる。いまにも街は
はじかれ、もどるのだろう。淵のおもいがやすらぐ悪寒に、水が接
点をしばしつむった。伝言のきわでしびれた舌先をおぼえたい。


*幽霊花、火事花、痺れ花、捨て子草、彼岸花…。曼珠沙華には異名が多い。また葉が枯れた後に花が咲き、花後に葉が伸びることから「花は葉を思い、葉は花を思う」と、韓国では「サンチョ(相思華)」と呼ぶ。

初出:『現代詩図鑑』2006.11


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