管制塔鳥 2005年 那覇

管制塔鳥 2005年 那覇

石川為丸

昼になると
軒下の氷柱もとけ始め
光がいたく目にしみる
死んだ者らのまなざしを思慕して
ゆがんだ心の繭をつくって目を閉じた
もう何も壊れるもののない三月
気まぐれな子供らにわすれられた
小鳥のお墓のように
いつのまにか消えていった
管制塔鳥
鮮血の軋みと引き替えに何に
近づこうとしていたのか
駆け上がった
騒乱の
管制塔 鳥
それから 
空から 
逸れたら
花茎の垂直に
くろずんでいく迅さで
その位置を大きくかえた三月
背信を重ねてひろがる つちふまず
夜明け前から
水晶のかけらをぎしぎし踏んで
退路をひらく
痛むひかがみの丘から
遠く離れたから
転がっている
春を待ちきれずに
枯れた 植木の鉢をかたづけて
管制塔鳥
手遅れにも思えたが
わたしは南へ行くことで
春の
やわらかな泥のなかに
埋葬し終えたはずだった
管制塔鳥
東シナ海へ 海風吹きぬける ここは
陰翳濃い沖縄の街区
遠い 
記憶の石礫をはこぶ
群衆の 波打つようにのぼりつめて
うねる坂 うねる
米軍基地の金網(フェンス)の向こうまで
私たちが投擲した
無数の石礫
たち騒ぐ 騒乱の
管制塔