二つ池(2022)

二つ池(2022)

岡田すみれこ

ある日別れがやってきた
秋の終わりだった
わたしは枯れ葉を踏んで
木の根に躓きながら
池のところへと急いだ
池はやはり表情を変えずに
木立の中で沈黙していた
わたしはスマホをだして
何枚も写真を撮った
まるでコドモの写真を撮るように
双子なので少し離れて全体を写したり
また近づいて池の表情を眺めたりした
それから黙って少しづつ離れ
森の外れの家まで戻ってきた
帰る場所だと思っていたのに
わたしはまた引っ越すのだ
そのことをようやく理解した冬
再び二つ池を訪れた
すると驚いたことに
池には鴨が飛来していた
ゆっくりと水面で羽を休めている
ここで鳥を見たのは初めてだった
木漏れ日のひかりが落ちてきて
「だいじょうぶ」と言葉に換えた
またここへ来れば良い
鬱蒼とした森をぬけて池を見つけ
自慢するようにあなたに見せたあの時のように
何度でも歩いて来よう
深いみどり色は大人しい竜の双眸だから
かならずわたしを待つだろう
冬には水鳥を遊ばせながら
微かなひかりを水面に映すだろう
約束もせずにあなたに出会えたように
森の外れに家はなくても
わたしはどこへでも一人で行けるはずだから