交雑バッハ シンフォニア第1番ハ長調

交雑バッハ シンフォニア第1番ハ長調

有働 薫

3声の優雅な曲である
3声に移るとさらに深みが増す
2声ではやや旋律が勝った印象なのに
3声に入って依然旋律が走りながら痩せた感じが取れて
ハーモニーの弾力が生まれている
海岸から戻って来て冬の弾力性がこころよい
家族のなかに居る安らぎ
ふっくらした温かみ
哀しみをしばらく脇へ寄せておくことができる
いずれまた出会わなければならない
辛さ厳しさを
少しの間保留にさせてくれる
ひと時のポーズ
首のないはだかの人形
しかし残酷ではない
それは悲惨の象徴ではあるのだが
その上に生かされているのだと
今ではもう知っている
近付く死の報せでもある
廊下暗がりに置かれた市松人形
幅広の袋帯をからだにきつく巻き付けている
生かされている
生かされてきた
そのあとの安らぎが近付いている