Oct 23, 2007

外へ

チューブがひとつ、またひとつと抜けていく。 
表情に落ち着きが戻り、「自分」を取り戻していく。

わたしのバスが到着する頃合いに、娘は車椅子で病室を出て、
病院、外来棟付近の花屋あたりまで迎えに来ていた。

近づいて行くと、見知らぬおばさんと話している。
わたしを見つけ「母です」と娘が言うとその女性はニッコリと笑った。
「可愛いお嬢ちゃんですねぇ」と言われる。
思わず「はい」と素直に肯いていた。

実際、娘は「小人さんの三角帽子」が似合っている。
長い茶色い髪はふわふわと帽子からだして肩にかかっていた。
わたしが持って行った襟ぐりの大きなシャツを着ている。
ズボンは恋人がユニクロで買ってくれた子供サイズだ。

わたしを待つ短い時間に三人もの人に声をかけられたと言う。
「大丈夫ですか?」「車椅子、押しましょうか?」
そして年配のその女性。
「どうしたの?」と聞かれたそうだ。
「交通事故で足を怪我しました」と答えると娘の外見を見て
「お顔も?」・・・・「はい」。。。
「あらぁ、、そう、。でも良かったわね、お目々が大丈夫で」

「はい」と答えるしかなかったと言う。
いえ、片目は見えませんと言ったら話が長くなるから、と呟いていた。

病気と闘ってきた娘は同情されることが大嫌いだ。
可愛そうに、と言われたり、泣いたりされることを 十代の頃から嫌悪してきた。

内部障害、という言葉があるけれど内臓の重い持病は外見では判らない。
今回、きっと顔の傷も癒えたらどこにでもいる大きな目の若い女性だ。

また、いろんな事柄にぶつかって行くに違いない。
悔しい思いや、悲しい思いも、たくさんするだろう。
母親のわたしは再び黙って見守るしかない。
でも、彼女の意識はもう外へと向かっている。
障壁がひとを「逞しく」成長させることは疑いようもない事実だ。

Posted at 22:31 in nikki | WriteBacks (3) | Edit
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