Nov 25, 2007

静かな石(意志)

「読んだつもり」でいたけれど、読んでいなかった小説に時々出会う。
確かに読んだのに、まったく覚えていなかったりするのもあるし、 記憶自体が曖昧になっている本もある。
宮沢賢治の短編、『気のいい火山弾』を最近、読んだ。
以前にも読んだと思う(手元にあったから)、でも軽く読み飛ばしていたのかもしれない。賢治さんを「軽く」読み飛ばしてしまうなんて、、!
その大きな黒い石はまるくてかどがない。
いつも静かにじっと座っていて、みんなにからかわれながらも、ゆったりと受け答えして過ごしている。
深い霧がたちこめる日は空も野原も眺めが悪いので、他の石たちはその まるい大きな石をからかって過ごすのだ。
「べゴ石」と鈍重な牛に例えて名を呼ばれながら、長いこと座り続けている。
石が好きだった賢治らしい作品だと思う。
「愚かに見える賢者の話」と解説されている。

大きな石は最後に大学の研究者に発見されて、「素晴らしい!」と絶賛され「火山弾の典型的な標本」として運ばれて行く。
からかっていたかどのある石たちは、ため息・・・。
黙ってにこにこしていた石はやがて「皆さん、ながながお世話さまでした」と挨拶をして荷馬車に積まれる。

みんなの揶揄に耐えてきたその石に救済があったようにみえるのだが、 「わたしの行くところはここのように明るく楽しいところではありません」と言い残して去っていく。「私共はみんな、自分でできることをしなければなりません」という言葉にすべてが表れている。それがメッセージなのだと思った。
Posted at 23:17 in nikki | WriteBacks (0) | Edit
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