Aug 21, 2007

アンクレット

きっとわたしは 
あなたの気持ちを繋ぎとめるために
頷いたのだ
でも 卑怯者にはなりたくないな
わたしの有罪判決は
あなたの心には届いていない
ただ ふいにかすめた毒の香りが
あなたを惑わせたのに違いない

あなたは わたしの身につけているものを
すべて取り去り
「きれいだ」と 何度も言ってくれた
あなたがあまりに静かに
そっとつよく
わたしを抱いたので
わたしはあやうく
恋人の面影を見失いそうになった

大切にしてきたものは これで壊れてしまわないか
それは何?
それは温めてきたあなたとわたしの
微妙な安定感
あるいは恋人のこころとわたしのこころ

怖くはないの?と聞いたら
「こわい」と言った
まるで若い愛人のように
知りたいことさえ
知ろうともせずに・・・

わたしはもちろん娼婦でもなく
睫毛を伏せる少女でもない
ましてや時計を見上げる
童話の主人公である筈もないけれど
限られた時刻が
自分を見張っていることを知っている

わたしは駅の人込みにまぎれ
混雑する夕方のスーパーに辿りつこうとする
主婦だから
あなたがわたしの素足に飾りたいものは
きっと似合わない
でもそれが
秘密の約束なら
やっぱり欲しいかな

躊躇いと首肯の連鎖は
寡黙なあなたを
共犯者に仕立てるかもしれない
繋ぎとめるなんて たやすいことと
いつかわたしが教えてあげる
ありふれた御伽噺みたいに
こわくないように気をつけながらね



2005/11
Posted at 14:30 in poem | WriteBacks (0) | Edit
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