Sep 12, 2007

小石

連絡を待っている 
連絡が来ない
そうして
あたしの前から彼が
去って行ったのだとようやく理解するとき
それをいつもあたしは
男の思いやりだと考えていた
『沈黙』というかたちで示された終止符を
何度も見つめてきた
あたしを傷付けないために
彼は黙って消えたのだと
都合よく考えようとしながらも
その静かな衝撃に耐えながら
あたしはまた一歩 森の奥へと入って行く

冷たい小石を拾ってポケットで温めながら
手は無意識に石の汚れを拭っている
彼はいい人だったに違いない
困ったようにあたしを見つめていた眼差しに
気がつかないふりをしながらよそ見をし
本当に寒かったので身体を寄せた

沈黙、という手段は 卑怯ではないよと
あたしは自分と男に伝えたいのに
もう その方法がない
彼は遠くて
あたしの感覚は麻痺している
好きだったあの低い声
含羞んだような笑顔とあたたかい手
もう届かないのだと何度も気がつくために
感情の池の淵を覗こうとする

静まり返った森の中で
ポケットの小石だけが
自分を支えている
けれど致命的な何か、はすでに刻印されているのかもしれず、、、
それを取り出して眺めることは
今は できそうにそうにない


        2005/10
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