4 出版社と詩誌への援助

4 出版社と詩誌への援助




4年ほど前、アイルランドの詩誌「ザ・ショップ」(THE SHOp)に詩を投稿し、採用されたとき、掲載誌と共に20ユーロが送られてきた。写真は同封されていたメモで、「アーツ・カウンシル・オブ・ノーザン・アイルランドからの単発の助成金のおかげで、アイルランド共和国以外も含むザ・ショップの19から21号投稿者に、ふだんより豊富な支払いをすることができました。」と書かれている。英語圏で詩が採用されたのはこの詩誌が初めてで、投稿詩にお金を支払われたことにとても驚いたのだが、そのお金が芸術団体(この場合は北アイルランドのアーツ・カウンシル)の助成金から出ていることに、さらに驚いた。

手元にあるこちらで購入した詩集をめくってみると、アーツ・カウンシルなどの団体から助成金を受けている出版社とそうでない出版社がある。受けている出版社は比較的新しく、個人や少人数による経営の小規模な会社が多い。受けていない出版社はある程度大手で、援助なしでも自力でやっていけるということなのだろう。

ただ詩を中心に出版している出版社の場合は、詩人の間で名前が確立している会社でも、出版界全体から見ると「大手」と認識されていないところが多い。例えばカーカネット・プレス (Carcanet Press)という、こちらの詩人なら誰でも知っている出版社があるのだが、未だにアーツ・カウンシルからの援助を受け続けているようだ。

また、援助を受け続けている出版社でも、援助額が突然減らされたりすることもあり、そのとたん経営が苦しくなったという話もある。

ところが詩誌になると話が違ってきて、手元にある詩誌を調べてみると、詩人たちの間で名が通っていて長年発行されているような詩誌が助成金を受けていて、歴史が浅いような雑誌が受けていなかったりする。考えられる理由は、
  • 詩誌は詩集よりも売り上げが少なく、書店で扱われていることが少ないので利益があまりない。
  • 名の通った詩誌は、依頼原稿だけではなく投稿詩人にも原稿料を渡すところがあるから、そのためのお金が必要(実際わたしが投稿で原稿料をもらった3誌は、アーツ・カウンシルや地方の芸術団体の援助を受けていた)。
反対に、名の通った詩誌のエディターでも、アーツ・カウンシルの援助は特に必要としていないという人たちもいて、「この雑誌はいかなる団体からも助成金を受けていない」と明記している詩誌もある。そういう人の中には、アーツ・カウンシルへの申請と審査がしんどかったり、自分の雑誌の業績を証明などせずに、自由にやっていきたいという人がいるらしい。まあ、助成金を受けていないような詩誌でも、投稿して採用されれば必ず1冊は掲載誌を送ってくれるので、わたしはそれで満足だけれど。