Dec 22, 2005

前回と順番が逆になってしまいましたが、

去る12月17日(土)、
「遊戯空間公演
 あらゆるものからせみが生まれてしまえ
 あらゆるものは抜け殻になってしまえ
 ~和合亮一の現代詩によるコラボレーション~」
を見てきました。
これは詩人和合亮一さんの第三詩集「誕生」を舞台化するという試みでした。

場所はJR四谷駅から徒歩7分ほどのところにあるコア石響。
一日二回の公演で、私は19:00からの回にお邪魔しました。
会場は20メートル四方ほどの空間で、
その片側にお客さんが4,50人、
もう片側で出演者が演技をされるという形でしたので、
目の前で演技を見ることが出来ました。
出演者は男女8人、それにピアノで音楽がつくという形。

出演者は黒か白のシンプルな衣装を着て、
小道具は詩集「誕生」以外殆ど使わず、
あるときは静かに、あるときは叫びながら大きくアクションをつけて、
和合さんの詩を演じられました。

演ぜられた詩は全部で十篇。

「世界」は、出演者全員にて様々な方向へ向って詩を発し、
「事件」は、並んだ一組の男女が掛け合うようにして言葉を投げかけ、
「タイフーン・ジェーン」は、女性ひとりがまず直立して詩を読み、
そして同じ詩を、男性がビニール傘の芯だけを槍のように突き出しながら唱え練り歩き、
「犬を探して下さい、探して下さいよ。」では、詩集を胸の前にかざした貧相な男性が、
客席の前列に座った人に向って、ひとりずつ探して欲しい犬の特徴をコミカルに説明してまわり、
「生誕」では、大きな詩集を抱えたひとりの女性が、3人の女性を引き連れ、
生誕した「うずまきちゃん」に向って底抜けの笑顔で呼びかけ、
「WAR」では、男性4人が代わる代わるに荒々しく詩を怒号しながら、
戦場の丘で目まぐるしい動きを展開し、
その直後に同じ詩を、中心となったひとりの男性が静かに唱え、
「バンザイ、バンザイ、バンザイ!」では、教師となった女性が明るい声で、
生徒となって並んでしゃがんだ他7人のメンバーに、バンザイしなさいと強要し、
「OCEAN」では、暗い舞台で照明を当てられた女性が横座りして詩をつぶやき、
「フライング」では、床に等間隔に三冊並べられた詩集の向こうに出来た淵を見つめながら、
男がひとり詩を独白し、
「変声期」では、再び出演者全員が横一列に並んで客席に向い真っ直ぐ詩の言葉を投げかけ、
公演は終了しました。
時間にしておよそ1時間半。

と、言葉でずらずらと書き連ねただけでは、当日の熱気は少しも伝わらないのですが、
出演者の方々は非常な熱演をされ、客席もみなじっと演技に見入り、
緊張感のある空間が生ぜられていました。

私の率直な感想としては、かなり面白かった!
詩を表現する形としては、紙の上に置かれた文字と朗読が主として挙げられますが、
さらに新たなひとつの方法を目撃することが出来ました。

今回は演劇と詩のコラボレーションという形でしたが、
良かったと思うのは、演劇に近づき過ぎず、また朗読という形にも近づき過ぎず、
ほぼその中間地点で作品が作られていたということです。
実は公演を実際に見るまでは、
恐らくどちらかに近づいたものなのだろうという思いを正直もっていましたが、
嬉しいほうへ裏切られました。

コラボレーションとは、双方の魅力が、
双方によって充分に引き出され、尚且つそこに化学変化が起こり、
1+1が2以上のものになって、初めて成功といえるものだと思います。
今回の演目は激しい動きと大きな声を伴うものが多く、
するとそこでは和合さんの強い詩の言葉が化学変化を起こし、
活字で読むよりさらに鮮烈な、新しい生命を持って実空間に出現していました。
そして一番重要な目的である、お客さんの心の内へと突き刺さることに成功していたと思います。

公演がはねたあと、
私は一緒に行った竹内敏喜さんとともに打ち上げに参加させていただき、
和合さんや思潮社の方々、それに詩人の方々ともお話が出来ました。
現代詩図鑑などに作品を寄せられている枝川理恵さんからは、
短篇小説アンソロジー「夢」を、
現代詩手帖投稿欄で活躍されている橘上さんからは、
オルタナ的に激しい朗読CD「できない」をいただきました。
お二人には、お礼に私の拙詩集を進呈。
詩談議に花が咲き、すっかり長居してしまって、危なく終電に遅れるところでした。

今回は、良いものを見たご報告ということで、長文も致し方ありませんね。
最後まで読んでくださった方、心より御礼申し上げます。
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