May 01, 2006

4月29日は予告どおり、

劇団遊戯空間による舞台、
詩×劇「世界が脳になってしまったので少年は左に回らない」
を観劇してきました。

原作には詩人和合亮一さんの最新詩集「地球頭脳詩篇」と、既刊の「AFTER」
「RAINBOW」に収録された詩篇がそのまま使われました。
前回の公演では、和合氏の第三詩集「誕生」の収録作のみを使っていたのに対して、
今回は以前に出された2冊の詩集の収録作も合わせて使われたことにより、
詩集単体の劇化というより、詩人和合亮一の世界自体を劇化したものとなっていました。

役者さんの動きが大きく派手だった前回の公演に比べ、
今回は動きを最小限に抑えて、声の表現による空間の現出に重きが置かれたことにより、
非常にストイックなものとなっていました。
そのぶん、観客は和合さんの独特な言葉に全身耳にして聴き取ることとなり、
客席には否応なしの緊張感が張り詰めていました。
また殆ど脈絡を感じさせず、しかも非常に長い文脚である和合さんの詩の言葉が、
役者さんの口から延々と唱えられ続けるのを見ているうち、突然それが止まってしまって、
劇自体が崩壊してしまうのではないかという不安感も漂っていました。
それも含めた緊張感が、言葉を舞台から客席の観客ひとりひとりの胸の内へと運んでいく、
水の流れのようなものになっていたと思います。
タイトルに、世界が脳になってしまったので、という言葉が使われていますが、
まさに舞台と客席を含んだ空間の全てが、ひとりの詩人の脳内と化していました。
そこでしか通用し得ない言語によって成される詩人の思考と妄想を、
観客は目の当たりにし、共有します。
和合さんの詩の言葉は難解と言われますが、ここではそれがごく普通の言語として流通し、
さらに役者さんの演技と演出家さんの手腕によって、
この特殊な脳は確かに実現されていました。
前回とは違ったアプローチを、失敗を恐れずされていたことは重要でした。
詩を劇化する試みを、遊戯空間はこれから先も続けられていくようです。
公演が行われるたびに、劇の肉体となる詩に様々なポーズをとらせ、
やがてそれが最終的な姿へと昇華していく過程を、今回は見られたと思います。

公演が終わったあとは、和合亮一さんと演出家の篠本賢一さん、
そして遊戯空間文藝部の荒井純さんによるアフタートークが行われました。
ここでは、篠本さんが和合さんの作品を舞台化することになった経緯や、
舞台化に際しての企み、そして荒井さんと和合さんの出会いなどの貴重なお話が、
1時間ほどに渡って大いに語られました。
私が興味を引かれたのは、和合さんの言葉の原点が、
唐十郎の公演を見たことがきっかけであるとのお話でした。
和合さんの地元福島に唐十郎のテント劇団がやってきて、
そこで奔放に繰り広げられる演劇の様を見てショックを受け、
さらに劇の最後に舞台の後ろのセットがバタンと倒れ、
その向こうに現実の福島の町並みが見えたとき、
和合さんは、ああ、俺はこれをやりたかったんだ、と思われたそうです。
そこから、あの特異な言語が生まれてきたと知ったとき、
私はとても納得しました。
上手く説明できませんが、和合さんの言語とは、
非日常が打ち破られた瞬間にだけ垣間見える日常であるのではないでしょうか。
想像力をたくましくすれば、あらゆる言語はそこから生まれてくるのかもしれません。
(すいません、すこしわけわかんなくなりました…)

アフタートークの後は、例によって、
来ていらした詩人の方々と一緒に飲みに行きました。
メンバーは一緒に観劇した竹内敏喜さんと、岡山からいらっしゃった斎藤恵子さん、
森川雅美さん、渡辺めぐみさん、えこし会の林花子さん、
そして福島からいらっしゃった虹色詩人団のみなさんです。
公演の合間を縫って和合さん、演出家の篠本さん、荒井純さんもいらしてくれて、
いろいろとお話を聞くことができました。
遠くからお越しのため、時間に制限がある方が多かったので、
残念ながら全ての方と長くお話をすることは出来ませんでしたが、
その中でも、約2ヶ月ぶりの再会である斎藤恵子さん、
そして今回初めてお目にかかる渡辺めぐみさんとお話が出来たのは嬉しいことでした。
渡辺さんは多くの詩誌で精力的に詩を発表されておられるので、
その作品に接する機会は多かったのですが、お話させていただくのは今回が初めてでした。
その作風から、少々特殊な性格の方かもしれない(失礼!)と思っていたのですが、
お話させていただくと、非常に気さくで話しやすい方でした。
馴れ馴れしくも詩集の交換などまでさせていただきました。感謝。

飲み会中、段々と人が抜けていって、最後まで残っていたのは私と、
虹色詩人団の西口さん、そしてまたもやおなじみ竹内敏喜氏という野郎三人。
この三人で和気あいあいと、
しかしかなり熱く論争を繰り広げて、あっという間に時間は過ぎていきました。
11時前にお開き。
さて、今回の竹内氏の記憶はいかほどでしょうか?

もうひとつ嬉しいニュース。
森川雅美さんが「千年紀文学」(千年紀文学の会発行)という隔月誌に、
私の拙作の書評を書いてくださいました。
著者本人が意識していなかった部分まで鋭く深く読み込んでくださり、
これはもう大変な感激です。
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