Jun 01, 2006

先日、大手新古書店で

単行本500円セールが行われていて、
何冊か買い込んできました。(新刊で買え)
そこら辺のことを。

「雨の名前」(小学館)高橋順子・文 佐藤秀明・写真

これはオールカラーのとても綺麗な本で、
内容、装丁、タイトルを見ると、一時期流行った「○○の名前」シリーズのバッタもんか?
と思わずにはいられませんが、なかなか読み飽きないお得な本です。
春夏秋冬、それぞれの雨の名前がなんと422語も紹介されており、
写真も148点、それに詩人高橋順子さんのエセーが35篇も載っていて楽しめます。
しかしこれほど雨に名前をつけたのは日本人ぐらいではないでしょうか。
どれも個性的で、名前を見ただけで、あ、あんな感じの雨かな、
とわかってしまうぐらいセンシティブです。
私は子供の時は雨が好きだったのに、毎日電車に乗るようになったり、
スーツを着るようになったりすると、いつの間にか雨が嫌いになっていました。
急な雨に降られると、空に向って口汚く罵ってみたり。
雨と言うのは、この地球の上ではごく自然なもので、
やはり文明と言うのはそういうところから離れていくことなのでしょうか。
全ての雨には名前がある、と考えれば、雨が降るのも待ち遠しくなりそうですね。

「生きているのはひまつぶし」(光文社)深沢七郎

これは私の大好きな作家、深沢七郎氏の未発表エセー集です。
オビには女性の服をめくり上げておっぱいなど露出させ、
ご満悦の深沢氏の写真が使われていて、いかにもです。
内容はどうもインタビューを文字に起こしたもののようですね。
大体この人の言うことは無茶苦茶で、
「ケネディが死んだときには赤飯を炊いた」だの、
「ヌードを見るってことは、ごはん食べたり水飲んだりとおなじ、当たり前の事」だの、
あと人類滅亡教なんてのをぶちあげていたり。
言うことはいちいち世間の道徳に反することで、
中にはかなり不謹慎と思える発言もするのですが、
しかしこの人がいうと笑ってしまうんですね。
あはははは。最高最高。
どんどん読めてしまいます。
しかしひまつぶしで生きている割には、帝劇でギター弾いたり、
小説書いて有名になったり、田舎で畑仕事に夢中になったり、
今川焼き屋の親父になったり、この本に書かれているようなことを喋って笑っていたり、
それで食っていけるのですから、やはり天才だったのでしょう。
羨ましい。

「月とアルマジロ」(講談社)樋口直哉
「愛でもない青春でもない旅立たない」(講談社)前田司郎

「群像」の5月号(多分)に新鋭作家特集があり、
面白い人はいないかな、とざっと読んでみたところ、
上記の二人が面白かったので、購入しました。
両者とも、軽い感じの作風で、まあ今風ですね。
重厚さや深刻さはありません。
でも面白いです。
樋口氏の方は、阿部公房とカフカを混ぜてミネラルウォーターで割った感じ。
いい意味で。
この人は「さよなら、アメリカ」という作品で群像の新人賞をとってデビューしたのですが、
日常を、奇抜な事物がぐにゃりとまげて、現実と非現実をくねくねしながら話が進み、
理不尽な結末にたどり着くという作風です。
この作品もなかなか面白いとは思いますが、今後もっと面白くなっていく気がします。
前田氏の方は、本職の方で劇団の作・演出を手がけられているそうで、
言語感覚は抜群です。
あくまで、今風の言語感覚ですが。
舞城王太郎あたりの感じですが、私はこちらの方が、なんか自然で好きです。
劇団で書いているだけあって、内容が無いようでいて実はちゃんと整っています。
読後感もちゃんとあります。
この人はもっとマルチに才能を発揮していくのではないでしょうか。
正直、くだらない小説と言ってしまえばそれまでですが、機会があったら是非どうぞ。
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