Jul 12, 2006

足立和夫さんの新詩集

「暗中」(草原詩社)を読みました。
この詩集、面白いです。

ひとつひとつの詩が、長く深い考察の末に行き着いたものであることを感じます。
突発的なひらめきから生まれたのでないゆえに、神がかり的な言葉の流れはありませんが、
常にしっかりとした足運びであり、読み手の手を引く力は確固として一定で、
読み手は安心して詩人の世界を歩いていけます。

また、深い思索が行き着いたところに発生した作品群であるので、
ひとつひとつの詩に新たな発見が提示されており、
読み手は、書き手と共にその発見に居合わせることができます。
その発見は、不可思議な詩の世界のなかにあっても真実を感じさせ、
ふと目の前が明るくなったような気持ちになります。

この詩集が描くのは、世界の認識です。
そして観察する世界は、地下街であったり、通勤電車であったり、機械であったりと、
殺伐とした風景ですが、それと対峙し観察する詩人の感覚はユーモアを保ち、
この詩人ならではの思いがけない真実を探り当てています。
それは決してひとりよがりのものではなく、読み手とともに発見することを望んだもので、
なんだか夜更けに入ったラーメン屋で、偶然隣に座った人が話し出したような妙な親しみやすさ、
そのあたり、詩人の体温が感じられます。

また、この詩集には夜が多く登場します。
詩人は人工的な光の下で人間の生活をし、
その人工的な光の下でだけ見える真実をつかんでいきます。
そうしたからといって、詩人の生活が変わることはなく、淡々と続いて行くのですが、
その場に一瞬存在した光を、詩人は上手く捉えて詩集の頁に貼り付けることを遂行し、
それが詩人の存在意義となっています。

ひとつの詩にひとつの発見。
そこに居合わせられたことの幸福。
詩を一篇読むことは、新しいことをひとつ知ることでなければならないと、
この詩集を読んで改めて思います。
読者を選ばない詩集であり、多くのひとに体験して欲しい詩集です。
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