Aug 19, 2006

このブログも盆休みでしたが、

そろそろ再開することにいたしませう。

斎藤恵子さんの第二詩集「夕区」(思潮社刊)を読みました。
前詩集の「樹間」より、斎藤さん独特の世界がはっきりと姿を現してきた作品です。
その世界はなんとも静かで不可思議であり、
空気には薄い悲しみが溶けて漂っているようです。
心象風景ともいえるフィクション性の高い世界ですが、なんとも奇妙な魅力があり、
また、不自然さが全く感じられないのは、著者の筆力の高さを再確認させられます。
その世界で詩人の魂は色々と姿を変えながら、様々な事象を経験し、
その不可思議さの奥に向って、言葉を触手のように伸ばし、何かを掴もうとしています。
フィクション性の高い世界でありながら、そこには確かなリアリティがあり、
なので読み手も知らず知らずのうちに、一緒に手を伸ばしてしまいます。
掴もうとするものは、生まれたときに失ったもののようでもあり、
また渡されなかったもののようでもあり、
あるいは…と、自分の内にあるものを探しながら、色々と思いを馳せさせられます。
このあたりの、読み手の心をさりげなく動かしていく手腕も見事です。
さらにこの詩集では、詩のスタイルのバリエーションも豊富になり、
詩集内の小宇宙を立体的に確立することに成功しています。
自分の世界を持っている人の作品は、読んでいてとても安心できます。
わざわざ強い言葉を使わなくとも、その世界を描くだけで、
著者の思いが伝わってきます。
なかなか読みにくい詩集と言うジャンルの中で、作品集として明確な姿を持ち、
受け入れやすく、かつ内容に深みがあるこの詩集の存在は貴重です。
なにより読んでいてとても面白い。
繰り返し読める詩集としてお薦めします。
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