Feb 01, 2006

静かな海

よろよろと海岸線を歩いていると
月が見えた
タバコの煙が風に乗って流れた
ああ俺は
照らす光におびえながら立っている
それから海に向かって眼をやった
錆びた商店街が背中にあった
波は無限に近く色を変えながら
どぶ川の色で
俺とは無関係に東のほうへ流れていく
漁船が見えた
うすもやに鬼火のようにちらちらと
眼の中を光が曳いてゆく

さっき夕方まで、子どもと海辺の公園で
砂遊びをしていた
トンネルを作って子どもの手を
静かに握った
「おっちゃん、トンネルつながってるなあ」と子どもはいった
最近の時勢このままでは誘拐犯とまちがわれるなあと思いながら
それでも、遊んでくれるんで、遊んだ

そして部屋に帰って薬を飲んでテレビをつけっぱなしにしながら
眠った
いつもの海に近くない俺の部屋だった
夢だった
鷺が「死にたくないよう」と鳴いた
俺みたいな顔をしていた。
寝言で起きた
死にたくないようといったようだった
それから、夢に向かっている友達の夢を見た
そいつは、ぼくをはげましながら、みづからも世間を恐れている
いいやつかもしれないと思って
手を握ろうとしたけど、そいつは透明だった
生活が散文の羅列になり、文字が何千行浮かび上がっては消えた
もう詩が書けないと思うと、父が出てきて、母と空を飛んで
「和広ラーメンを食べなさい」といった
それから、二人は黒い鳥になって、闇の中に消えた

最後にいつもの部屋で俺は、コタツに入って
うつらうつら考え込んでいると、まぶしい光が差し込み
いやに明るいのに惑いふらふらと立ち上がると
そこは繁華街の裏の路地でコケが生えて
二人がセックスしていた
俺はつまずいてつまずいて
どこへもいけないとおもうと起きた

静かな海に入って眠ろうと思う
そうすれば仕事どうするかの答えは出るだろう
Posted at 13:26 in poem | WriteBacks (0) | Edit
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