Apr 03, 2006

見守っている                

ベランダですわって
タバコを吸っている
カラスの鳴き声が聞こえてくる
黒い羽をのばしてカラスが雨の中を横切っていく

落ちていくもの
ぼくの場合 思い出の中を
きれいできたなくて
人のいない思い出の砂嵐の中を
そして
美しく横切っていく平凡で気高い鳥

ぼくの体の中は波打ち
しかしまだ踊っていない
うなだれるにはまだ早い
ビルがたくさん立っている中を
かあかあと飛んでいく
ぼくはカラスになりたい気分だ

犬のほえる声が聞こえて
少しはっとした
生きものの声が耳打ちする
なんとかゆらゆら暮らしているが
「お前の本当の幸せは広い広い海の中にある」

だから大丈夫
苦しい思い出に苛まれていても不器用に歩いていても
大丈夫
「わたしたちが見守っているから」と

くぐもった空の中 四月の雨が少しやさしくなった
いくつかの鉢植え





(注)合評会提出作品
合評会で、一人は、「波打つ」という表現と「海」が重なって「幸せ」は自分の中にあるのかなといっていました。あと人は愛情を持って本人を「見守っている」しかできないからといっていました。親心のようなものをそのコメントから感じました。
もう一人は、前半空を見ていて、そこは狭くて犬がほえるところで、読者も一緒に世界が広がるといってました。詩空間の変化に着目してくれた感想だと思いました。

読んでくださった方よかったらコメントください。この詩に限らずでいいです。よろしくです☆
Posted at 01:03 in poem | WriteBacks (2) | Edit
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初めまして、こんにちは。

 犬の吠える声が聞こえて
 少しはっとした
 生きものの声が耳打ちする

のところが、好きです。それまで、自分の中だけに向かっていた想いが、ここでぱっと外へ開かれていく感じがします。語り手と「気づき」を共有した感じがしました。
ここに描かれている四月の雨は、最初は憂鬱なものなのかもしれませんが、それを受け入れると、優しい雨になるのかも・・・と思いました。いきものだけじゃなく、もしかしたら雨も見守っていてくれているのかも・・・なんて、私の考えすぎでしょうか。
最終行の
 いくつかの鉢植え
も好きです。
雨が降らなきゃ、植物は生きていけないですもの。

自分勝手な思い込みの感想でごめんなさい。
それでは、失礼しました。



 

Posted by つきのひかり at 2006/05/28 (Sun) 17:06:02

はじめまして

つきのひかりさん、感想ありがとうございます。
そうですね。考えすぎじゃないと思います。植物や生命を生かす雨かもしれませんね。
本当にあったことを書いたのだけれど、気づきを共有していただけるのは、とてもうれしいし、詩にはそういう効用があればいいなと思っています。
ではまた☆

Posted by 石川和広 at 2006/06/01 (Thu) 13:40:16
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