Sep 21, 2006

倉田良成芸術論集を読みながらー「世界の内と外 ウィトゲンシュタイン・ノート」覚書

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 不意にいつか読んだ本の内容が自分にシンクロしてくる事があります。それが大事なときだと思います。ウィトゲンシュタインについては詳しくない僕ですが、純粋に覚書として書きます。

   倉田良成さんが「倉田良成芸術論集」所収の「ウィトゲンシュタイン・ノート」で書いておられたのですが人には心というものがありますね。
心があるというのは神秘なんですね。
ウィトゲンシュタインは「人は死を経験しない」と書いています。それなのに死を悲しみ、死者を大切に思っている心は確かにあります。なぜでしょう。それだけではなく、まだまだ私もわかっていないことも多いと思うのですが死は色んなものを私たちに教えてくれるような気がしきりにしています。私たちは経験していませんが、語りえないところで死者は私たちに光を与えてくれるのではないでしょうか。それは、ウィトゲンシュタインのいうように「現在を生きる」ということではないでしょうか。逆に言えば、死について、思いをいたさないということは生をなおざりにすることに等しいのではないか。彼が第一次大戦の中従軍している間に『論考』が準備されたというのは、戦争の死者に向けてということもあったかもしれません。私たちは、どこでも、どんな形でも祈ることができると思います。記憶が遠くなれば思っているということは 少しずつ減っていくかもしれません。それでも、どこかで祈っているのだと思います。「方便の構造」かもしれませんが何かの「お陰」で生は輝いているのだと思います。祈るということ。親鸞においては 「南無阿弥陀仏」でしたが、そうでなくても、そうであっても。それが宗教という名で呼ばれなくても。
倉田さんの芸術論集をどう読んだらいいか 色々考えたりしていたんですが、単なる芸術についての鑑賞よりも積極的なものを感じました。「ウィトゲンシュタイン・ノート」を読んでこれは自分にとって大事なことが書かれているな、自分に不意に浮かび上がってきたのでした。
 それで、心があるというのは神秘なのですが、そして言葉がありますね。ウィトゲンシュタインは、彼の心というものから自分が言葉にできること、できないことについて丁寧に考えていたんですね。彼がこれは「梯子」だといっているように、在ることから無いことへのプロセスでもあり、そこで私たちは言葉を吟味しなければならないといっているようなのです。倉田さんの読みからは「論考」が重要な表現論だし、祈りの書だとわかりました。
 「人は死を経験しない」と。「現在を生きる」のだと。 ウィトゲンシュタインは倫理的な人だったと、マルコムや色んな解説書程度の知識しかない僕ですが そう思うので、死について厳粛な、それでいてそれが外部から 生を裏づけていると感じていたかなと思うわけです。
 永井均さんが書いていましたが「『論考』の世界は、この私の存在という(世界内の偶然とは次元のちがう) もう一つの偶然によって支えられているのだ」(ウィトゲンシュタイン入門)ということ。ここから、何か「生まれる」ということを想起します。そして『論考』は彼の全身で書かれた芸術ではないか。きちんと『論考』を読んでいないのでなんともいえませんが過去に「ウィトゲンシュタインセレクション」などを読んだ限りではそう思うわけです。世界には彼の言うようにたくさんの事実があって、そこから、世界とは独立した私というものが表現というのを欲するのではないか、そう思ったりするわけです。僕は論理学は苦手なのですが、彼なりの世界の描写で、それは彼のみならずいろんな人の 現実の「逃れがたさ」とその表現なのだ、そして、そこから離陸していく言語世界があるのだと思います。「この私」という奇跡的な存在があって、それは世界と言葉の潜り抜けられるふたつの間の通路であるということが示されています。倉田さんが「身体が裏返らされる」というのはその不思議さに驚かされる感覚ではないでしょうか?在ることから無いことへ、無いことから在ることへ、メビウスのように繰り返される通行というものではないでしょうか?それは生きている中で僕も直に感じたことがあるような感もあるのです。

覚書として書いておきます。
Posted at 08:33 in nikki | WriteBacks (3) | Edit
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ウィトゲンシュタイン・ノート

もう一度読んでみたくなりました。

Posted by 高野五韻 at 2006/09/22 (Fri) 22:42:49

そうですか

高野さん、読んでいただいてありがとうございます!

Posted by 石川和広 at 2006/09/24 (Sun) 09:20:29

ぱらぱら

「論考」を読んでいると、ユーモアさえ感じていいです。

Posted by 石川和広 at 2006/09/24 (Sun) 09:25:33
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