Oct 12, 2006

拾い読み「小林秀雄対話集」

 今日は仕事でした。明日も仕事です。
 なんかですね、久しぶりに、「小林秀雄対話集」を開いておりました。帯には「近代日本の最高の知性が語る美の真実と人生の妙味」と書いているのですが、中にあるのは、今の文芸雑誌にはのらないような、全然気取りのない対談だと思います。私はしかと小林秀雄さんの全貌というか、なにがしかを把握しているとはとてもいえない立場にいるのですが、ハスに構えてないですね。論理の運びこそ、何だかアイロニカルというか、モダーンな感じなのですが、「そうかな?」とか「そうかね」といっている感じが、やっぱり文学者も生きているなあと思うのです。坂口安吾をいなしている感じとか、なんか正しいとか間違っているとかそういうレベルを超えとります。ぱらぱらしか読んでいないのですが、正宗白鳥がすごいですね。脳がぐらぐらしてきます。以下括弧内は引用です。

 正宗「文学って、それは何か知らんけどな、僕はまあ、ヤソなんかに入ったこともあったが、僕は文学なんかどうでもいい。人間の生きる悩み、どうして生きるか。この世に人類というものが発生した苦労だな。そういうようなところに、いつも惹かれるんだな(中略)」
 「どうでもいい」ってすごいな。また、こんなのも。
小林「藤村という人はまずいですか」
正宗「まずいな。それは徳田秋声なんかの小説よりまずいですよ。(中略)(「破戒」、「東方の門」「夜明け前」は:石川註)自分の呟きをネチネチ、ネチネチ書いとるな。」
 そしてこんなことも。「あれはヘタなところがいいんだな。下手でこつこつ苦労してたんだな。あの女の関係だってそうだ(中略)」

 キリがないのでやめときますが、今の時代には見られない、率直な感覚があります。大きな感覚で藤村に対しています。「人間の生きる悩み」も藤村に対する感受です。文学って、こんなんだったんだなあ。深沢七郎とのつきあいでも思いましたが、白鳥さん、すごいです。小林さんの「まずいですか」というツッコミもいいですね。

 *「小林秀雄対話集」講談社文芸文庫2005より引用
Posted at 01:33 in nikki | WriteBacks (0) | Edit
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