Sep 05, 2007
詩と思想9月号の詩誌評
海埜今日子さんが担当しておられる詩誌評欄にて、拙作がその中に紹介されていました。詩誌「索」終刊号に掲載されたものです。海埜さんは、4月号でも拙作に触れてくださっていました。索も終刊したので、終刊号に掲載された『台風の夜』を全文掲載します。自分では評価がなかなか難しい作品です。台風の夜
石川和広
人の話し声、車の音、美しいものもあるかもしれない、この町で。
空は晴れている。小さい雲が流れる。やっと春が来たようだ。
人のいない家には、人のいない匂いがして、ここに人がいないことを感じる。無を感じるというのだろうか。からだはこの部屋にいるのだが、死んだおじいさんとおばあさんの住んでいた家にお邪魔する。しばらく、本当の体はからっぽになる。留守にして、留守にお邪魔する。庭に木が植わっている。生垣が見える。ここがおじいさんがいた茶の間だ。悲しいというのではない。あそこには、おばあさんがぶつぶついいながら、家事をしていた。夏であり、台風が来ていた。こわかった。ドキドキした。おじいさんが、パッチ姿で、風呂から上がってきた。おじいさんの兵隊に行ったときの写真。美しい馬のようだ。限りなく限りなく夜は続いていくように思える。雨戸ががたがたする。わたしは弟と、お父さんの間で布団に入っていた。おじいさんは早く寝て、おじいさんと同じ空気を吸っているのだと思うと安心した。居間で母がテレビを見ている。風の音が鳴り、いやな気持ちになり、しばらく目を開けて天井の模様を見ていた。やがて眠った。
からだが半分くらい戻ってきてタバコを吸った。
このブログのコメントの仕方がちょっと変わりました。スパムコメント対策のため詳しくいえませんが、書いてくださる方はこれから、ちょっとご注意ください。追記として…無事、ふたつの〆切もなんとかクリアできました。8月は忙しかったので今は放心状態。いしいしんじさんの『ぶらんこ乗り』はひさしぶりにドキドキ読んだ小説でした。いしいさんの『トリツカレ男』も読んでみましたが、『ぶらんこ乗り』の方が僕は好みです。
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