Sep 07, 2006

贈答の詩③ 清水哲男詩集「黄燐と投げ縄」への挨拶詩

05-12-12yuugure2

 清水哲男さんは、この詩集以前に「夕日に赤い帆」「緑の小函」と二冊の詩集が出版されています。「赤」「青」「黄」と交通信号三部作だそうです。ふうむ。「止まれ。」「渡れ。」「注意せよ。渡れる自信ある者は渡れ。」ということになりますね。詩集をぱらぱらとめくりながら読んでいるうちに、「何か書けそうだな。」という気持が動きました。黄色の信号が点滅しているうちに、ちょっと頑張って渡ってみます。作品のなかには、この詩集のなかの言葉をお借りしていますことを明記しておきます。哲男さんからは「こういうケースは高田さんのオリジナルなのですから。」という許可を頂きました。


    兄の記憶

  その先の角を曲がれば
  兄の背中に追いつけるだろうか
  そんなあわい想いをかかえながら
  黄燐の匂う道を辿る

  曲がり角にさしかかって
  ふっとわたくしは想う
  夢のなかで
  やさしく小さな歌を歌ったのは誰だったの?

  数十年生きても
  白く笑う癖は直らない
  戻ることのできない夢が
   兄の背中に今もおぶわれているわけではない・・・・・・

  生きてきたことに間違いはなかった
  死ぬことはきっと間違いなくできる
  あの夕暮れの歩道橋で
  手を振っている幻の人だけが知っていること

  福生セントラルの暗闇に
  今もボールを握ったまま
  佇んでいる少年の兄よ
  わたくしはその時
  金網におでこを貼り付けていた
  眼ばかり大きな少女だった

  曲がり角に佇んで
  電柱のかげに隠れて
  空の魚や
  老いた猫や
  巨きな父上や
  兄の背中をみつめている
  そのわずかな距離の果てしなさ

  まだ、その道に行けない
  頑迷なわたくしの足元では
  言葉の叢が
  一斉に風に騒いでいるから・・・・・・


  (二〇〇五年・書肆山田刊)
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