Apr 24, 2008

つぐない

tugunai

監督:ジョー・ライト

原作:イアン・マキューアン著 『贖罪』

キャスト:
ブライオニー:シーアシャ・ローハン・・・ロモーラ・ガライ・・・ヴァネッサ・レッドグレイヴ
セシーリア:キーラ・ナイトレイ
ロビー:ジェームズ・マカヴォイ


 まずは、フィリップ・クローデルの小説「灰色の魂」から引用したい言葉があります。

 『人はひとつの国に暮せるように、悔恨のなかで生きられるものだということだ。』

 この映画の舞台は第二次世界大戦前のイングランド。ある政府官僚一家には、大学を卒業したばかりの美しい長女「セシーリア」と、作家を夢みる十三歳の次女「ブライオニー」の二人の娘がいる。二人は共に、使用人の息子で幼なじみの「ロビー」に恋していたが、彼はまだ幼い「ブライオニー」の気持には気付かずに、「セシーリア」との恋におちる。

 そんな折に、屋敷内で「強姦事件」が起きる。被害者は屋敷に同居していた親戚の娘。その強姦犯人が「ロビー」だと「ブライオニー」が偽証する。十三歳の少女の嫉妬がここまでの大きな罪を犯してしまう。。。しかしここでちょっと疑問なのは、この十三歳の少女の証言だけで、彼が刑務所に入ることだ。政府官僚の娘の証言がそこまでの力を持っていた時代だったのだろうか?しかしこの「偽証」が「つぐない」というドラマの出発点の役割は果たしているのだ。なんとも居心地が悪いなぁ。。。

 そして時代は急速に第二次世界大戦に突入してゆく。刑務所よりも戦場を希望した「ロビー」は、当然困難な兵役につくことになるが、「セシーリア」に束の間逢える時間はわずかに持てた。ここで思いがけなく、古いロシア映画(一九五九年作)「誓いの休暇」を思い出す。

 成長して看護婦になった「ブライオニー」は二人の前で謝罪をするが、彼は汚名が晴れないままに戦病死。姉も戦禍で死亡する。二人に赦されないままに「ブライオニー」の罪は生涯のものとなる。生き残った彼女は作家となるが、いのちの汀で絶筆とも処女作とも言える小説のなかで、すべてを告白する。「墓場まで持っていく秘密」とはしないことがキリスト教的な考え方なのか?その老作家を演じたのが「ヴァネッサ・レッドグレイヴ」・・・素敵な老女優(^^)。。。

 ざっと、あらすじはこのようなものですが、映画を観終わってから、しばし考えました。この映画のメイン・テーマはなんだったのか?戦争が「ブライオニー」の「つぐない」を阻んだ?「戦争」という人類最大最悪の罪と、十三歳の少女の犯した罪とが、秤にかけられるものではない。これが小説だとすると、「戦争」は時代背景にすぎないのか?この戦争が一人の少女をどのように成長させていったのか?ということが中心ではなく、戦争と少女の偽証とが、恋人たちの運命を翻弄し、そして殺した、ということだろうか?

 原作がどこまで書きこんでいるのかは未読なのでわかりかねる。「ブライオニー」の生涯がこの映画だけでは見えにくいようだ。多くの小説や映画の背景には「戦争」がある。言い換えればそれほどに人間の歴史は戦争の歴史かもしれないのだ。その歴史のなかに、もみくしゃにされ、ひきちぎられた一通の手紙のように十三歳の少女の罪が暗い風のように時間を覆っていたようだった。

 第八十回アカデミー賞作曲賞受賞作品
 本年度アカデミー賞の作品賞候補作

【追記】

 ある先輩女性詩人の言葉も思い出しました。「あなたは悪意の言葉に傷つけられた。その原因がわからないと?一番わかりやすい原因はあります。それは大方は嫉妬です。」その時は驚きましたが、やがて納得しました。なんだか思い出すものの方が多かったようですね。
Posted at 23:09 in movie | WriteBacks (2) | Edit
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