Mar 29, 2006

小熊秀雄童話集

oguma

 小熊秀雄は一九〇一年(明治三十四年)北海道小樽に生れる。二十歳の徴兵検査の折に、母マツの私生児だったことがわかる。養鶏場番人、炭焼き手伝い、鰊漁場労働、職工、伐木人夫、呉服店員などさまざまな仕事についていたが、一九二二年文才を認められて旭川新聞社の社会部記者となり、その後文芸欄を担当し、詩、童話、美術作品などを発表する。肺結核のため一九四〇年に夭逝。

 これは十八話からなる童話集です。登場するのは人間だけではなく、家畜や狼、魚や花や野菜など、さまざまな生き物に託されて、短いお話は展開されています。これらの童話の背景には、小熊自身が私生児だったこと、さまざまな過酷な職業体験、北海道という土地の特性、貧しかったことへの哀しみと、それを言葉の力でなぐさめようとする想いと、貧しき者からの鋭い社会批判があるように思われました。

 これに加えて、二〇〇四年、「池袋モンパルナス 小熊秀雄と画家たちの青春」展における、野見山暁治と窪島誠一郎の対談が収められています。このお二人は「無言館」の活動によって「菊池寛賞」を共に受賞されています。「池袋モンパルナス」とは、小熊秀雄の詩のタイトルから生れた言葉でしょう。

   池袋モンパルナスに夜が来た
   学生、無頼漢、芸術家が街に出る

 この対談のなかで、小熊秀雄の絵の特徴にふれていますが、小熊が記者時代にはカメラがなかったので、写真の代わりにスケッチをした。それが彼の絵画の出発点だったという。「記憶を記録する。」ことが小熊の絵画だったと。。。これは童話のなかにも息づいているように思えてならない。

(二〇〇六年・清流出版刊)
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