Aug 06, 2009

現代詩手帖創刊50年祭

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 「現代詩手帖・8月号」を久しぶりに購入しました。これは大方のページをさいて、上記の大型イヴェントの報告書となっていたからです。「これからの詩どうなる」というのが、この催しものが掲げたテーマなのですが、この言葉は舌足らずで寒いですね。


 この「前座←谷川さん本人がおっしゃっています。念の為。」は、「谷川俊太郎、賢作父子」の楽しい会話と朗読と音楽でした。テーマは「詩ってなんだろう」でした。

 「そういうもんなんですよ。言語っつうのは。自分で出そう出そうとすると、なかなか出てこなくて。おれレモンのしぼりかすって自分で思ったことがあるんですよ。君(賢作)ぐらいの年ごろのときに。いまはしぼりかすなんて、自分がそんなに豊かだとは思わない。自分をからっぽにしておけば何でも入ってくるから、それを拒まなければいいっていう、大変にいい加減な感じですね。」←いかにも谷川俊太郎らしい言葉です。


 ここから2つくらいのプログラムは飛ばして、1番気になっていた「吉本隆明」の講演の記録を読みました。テーマは「孤立の技法」です。聞き手は「瀬尾育生」です。雑誌に掲載された吉本隆明は車椅子で壇上にいらっしゃいましたが、おだやかな表情をなさっています。いいのです。誰がなんと言おうとも、人は老いる。そこまでの時間のなかでどれほど真摯に「詩」と向き合っていらしたのか?それを忘れてはいませぬ。吉本隆明を過去へ送ることは誰であろうとも許さない。

 「すぐれた詩人たちのあとを追っかけて、書きつづけてゆくこと以外に、これからの詩の未来が開けてくるということはありえない。」←長い講演記録のなかから、この言葉を両手でしっかりと掬いとりました。


 次は「詩の現在をめぐって」と題されたシンポジウムで、パネラーは、北川透、藤井貞和、荒川洋治、稲川方人、井坂洋子、松浦寿輝、野村喜和夫、城戸朱理。司会は和合亮一です。大分時間が押してきたようで、パネラーは3分という持ち時間でした。長い催し物によくある「おせおせ」タイムだったようです。ここで気になった言葉だけを抜粋します。


★ 北川透
「詩の孤立は絶対的に擁護されなければならない。そうしないと、詩の言葉は次の世代、また次の世代に繋がってゆかない。リレーされていかない。」

「自由詩の今日というのは、言葉が裸の状態で置かれていることでしょう。(中略)この時代に詩が自由であること、つまり裸であることは一見清潔に見える。それは言葉がノイズに近い状態ということで、これが果たして時間的に空間的に遠くに届く言葉でありうるか?」

★ 松浦寿輝
「われわれが生きている世界というものはひとつの大きなテクストであって、それを一枚の紙のながにぎゅっと握り締めて、ほんの十数行ぐらいに凝縮したエッセンス、それが詩。それが読まれるということがない限り、凝縮されたものがもとの世界の大きさにまで戻るということがない。」

★ 野村喜和夫
「凧というのは地上におしとどめようとする力とそれから風に運ばれて行こうとする力のせめぎあい、あるいはぎりぎりの均衡だと思うんですけれども、その凧の舞い狂う姿。これが今の詩、あるいは僕が夢見ているこれからの詩のあり方。」

★ 城戸朱理
「〈前衛俳句〉〈前衛短歌〉は〈戦後詩〉と同時期ではあっても、〈前衛詩〉というものはなかった。〈定型詩〉を失ったがゆえに、私たちの書く詩はつねに前衛でなければならなかったのではないか。」

★ 稲川方人
「敵対すべきははっきりと敵対し、議論すべきは議論する、解体すべきものは解体する、破壊するものは破壊する、という意志を持った詩人が1人でもいれば、現代詩は信頼の足る文学の形式を失わないと思います。」

★ 井坂洋子
「牟礼慶子詩集《夢の庭へ》の最後の詩の最終連に《詩は次の世代のためのものかもしれない》という、オーエンの詩の1行が引用されていました。ああ、人間というものを信じている言葉だと思いました。」


以上、ランダムに勝手に選び出しました。わたくしのこれからの詩作の道標として。
また、そのほかのプログラムについては省きます。あしからず。
Posted at 16:45 in book | WriteBacks (0) | Edit
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