Nov 07, 2008

ヴィルヘルム・ハンマースホイ・静かなる詩情

Hammershoi-1
 結婚後の後姿の妻イーダ。婚約中のイーダ・イルステズの肖像(これを観た詩人リルケはハンマースホイに会いに行ったそうですが)。この違いは???

 六日午後、上野の西洋美術館にて観てまいりました。快晴の比較的あたたかな日ではありましたが、何故か館内の空気は乾燥していて寒いほどでした。これから行かれる方はどうぞ温かくしていらしてくださいね。(目が乾き、喉が痛かったです。)画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの国デンマークは寒い国なのでしょうか?などと思いつつ、静かな絵画たちとお目にかかれました。ようこそ日本へ。

 十九世紀末のデンマークを代表する画家「ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)」は、コペンハーゲン美術アカデミーで学んだ後、「自由展」と呼ばれる分離派に参加、アカデミーとは一線を画する活動によって生前にヨーロッパで高い評価を受けた、北欧の象徴主義美術を代表する画家でしょう。

 没後は忘れ去られましたが、一九七七年~七八年にコペンハーゲンのオードロプゴー美術館長アネ=ビアギデ・フォンスマークが監修したオルセー美術館、グッゲンハイム美術館の回顧展によって復活しました。二〇〇三年にはフェリックス・クレマーによってハンブルク美術館でハンマースホイ展が開催され、開館以来最大の入場者数を記録したとのことでした。

 十七世紀オランダ絵画に強い影響を受けたハンマースホイの画風は、「フェルメール!!」に似た静謐で古典的な室内表現を特徴とし、デンマークはもとより、ドイツやフランス、イタリアにおいても高い評価を得ました。オランダ風の写実主義で表わされたハンマースホイの住居「ストランゲーゼ三十番地のアパート」を舞台に、妻のイーダは顔を鑑賞者に向けることなく、その後姿ばかりが繰り返し描かれています。さらに、ドイツ・ロマン派の巨匠カスパー・ダーヴィット・フリードリヒの影響もあるようです。

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 (室内、フレズレクスベア・アリ)窓辺からおとずれる光りが生かされていますね。

 女性の後姿(ほとんどが妻のイーダです。あるいは身近な人。)がある室内風景画、あるいは人間が一切描かれていない建物や木々、水辺の風景、その絵画は無音の世界を思わせます。オランダ風の写実主義とドイツ・ロマン派的な要素の融合の中に、ヴィルヘルム・ハンマースホイの世界が創りあげられたのでしょう。さらに彼は注文に応じて、知らない人を描くことはなかったのでした。

 【つぶやき】
 ヴィルヘルム・ハンマースホイは、ほとんど妻イーダの後姿ばかり描いていますが、そのうなじの美しいことよ。たった一枚あった妻の前向きの顔は三十代でありながら、何故か疲労したような、放心したような、決して美しい顔ではありませんでした。彼はなにを伝えようとしたのでしょうか?
Posted at 13:33 in nikki | WriteBacks (0) | Edit
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