Jun 05, 2006
オイスター・ボーイの憂鬱な死 ティム・バートン
ティム・バートンは一九六八年ロスアンゼルス生まれ。ディズニー・スタジオアニメーターとしてスタートし、その後「エド・ウッド」「シザーハンズ」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「マーズ・アタック」を発表した映画監督であり、俳優でもあるらしい。多才な方のようだ。わたしは「シザーハンズ」しか観ていないような気がしますが、これはとても深い記憶として残るファンタジー映画でした。
「シザーハンズ」の主人公は限りなく人間に近いロボットでした。しかし手が鋏で出来ていて、その手を人間のような手に取り変える寸前に、彼を作った博士は急死してしまう。それでも彼は町に出て、人々との交流や恋などもあったが、やがてまた深い森のなかの博士の家に独り戻ることになる。それから幾十年クリスマスの夜に降る雪の意味を知っているのは、彼の恋人だけだった。
さて、この本は絵本詩集のようである。絵も詩もティム・バートンのかいたものです。奇妙と言えば奇妙、残酷と言えば残酷、面白いと言えば面白い、哀しいと言えばこれまた大いに哀しい。なんとも表現しがたいのですが、思わず最後まで読み通してしまった。人間のようで人間ではない生き物ばかりが登場しますが、そこに込められたメッセージが黙ってひしめいているようでした。
たとえば表題作の「オイスター・ボーイの憂鬱な死」では、砂浜でプロポーズし、海辺で結婚式を挙げた夫婦の間に産まれた子供は多すぎる手足のついた「オイスター」だった。子供は結局父親に殺されて食べられてしまうのです。あるいはここに挙げたイラストのように「じーっと見る。」ばかりの少女が、その二つの目を休息させるために海の中と砂浜のパラソルの下に置いたとか。。。わたくしの凡々たる感性を大きくはずれているもので、自らの感覚を総動員させた次第でありました。ううむ。大騒ぎ。。。絵本詩集製作中のわたくしとしては、素通りできない本でありました。
(一九九九年・河出書房新社刊)
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