Jun 03, 2006

ダ・ヴィンチ・コード

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 監督  ロン・ハワード

 過日、桐田さんと吉祥寺に買い物に行って、気まぐれに「夕方からダ・ヴィンチ・コードを観ようか?」ということになった。夕方からの上映時間まで、初夏の気持のいい井の頭公園を散歩。映画館では一階から三階までの階段を二列に並ばされて十分くらい開場時間を待ちましたが、入場制限になるほどのことではなく、ほぼ満席という状況だった。

 「ダ・ヴィンチ・コード」の話題性が高いのは何故なのか?という興味はあった。テーマが「イエス・キリスト」の今までの定説を覆すということですから、これはあらゆる面で物議を醸す要素は大きかったのでしょう。過去の歴史のなかでは「宗教戦争」というものが多々あったのですからね。これは大雑把に言えば「イエス・キリスト」は妻帯者だったという新説なのです。定説を守るがために、その子孫たちは次々に歴史から抹殺され続けてきた。その生き延びた末裔とされるのがヒロインのソフィー・ヌヴーだったということ。

 ソフィー・ヌヴーの両親は、そのために交通事故に偽装されて殺された。同時に殺されるはずだった彼女は助かった。その幼い彼女を「祖父」だと偽って引き取り育てたのは、ルーブル美術館長のジャック・ソニエールだったが、彼も夜の館内で殺される。ダ・ヴィンチの「ウィトルウィス的人体図」のように。彼の死体の周囲の床や壁には暗号が書かれていた。

   フランス司法警察暗号解読官であるソフィー・ヌヴーと、その夜にジャック・ソニエールに会う予定だったハーヴァード大学の宗教象徴学教授ロバート・ラングストンはその殺人現場で会う。そこから二人は殺人者からの逃亡とダ・ヴィンチの絵画「最後の晩餐」や「「モナリザ」や「岩窟の聖母」にかくされた意味の解読とで急テンポに映画は展開してゆく。そのスピード感のために大事なテーマを振り落としてしまいそうな感じがあって不安ばかりがつきまとう。

 一番心に残ったのは、キリストの末裔だとされているソフィー・ヌヴーの少女期の両親の事故死からはじまった、自らのルーツ探しでした。ルーツを断ち切られた人間の「果てしのなさ」みたいなものが切ない。「イエス・ キリスト」がマリアの処女受胎によって生まれようが、妻帯者の男であろうが、わたしにはどちらでもいいことだが、今生きているソフィー・ヌヴーが、おだやかにみずからの運命を積極的に生きること、超えることだけだろう。

 原作は未読ですが、読むかどうかは未定です。映画と原作の落差はいつでもありえる。
Posted at 21:51 in movie | WriteBacks (2) | Edit
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私は映画も原作も未読。
ただ漠然とした疑問は、この映画でも、この映画に対する反応でも解るように、キリスト教の諸国では多大に宗教的権威が社会に対する支配権を、この21世紀にまで保存しているようです。
おっしゃっているように、人間の幸福という点からは、相反して衝突する事態が多く起こって来た歴史はありますね。
私が哲学好きだから、こんな疑問を持つのかも知れませんけど、実際に若いころは宗教学者や牧師さんたちに「私は哲学者だ。」と都合の良い理屈をつけては、哲学的・神学的論争を挑んでました。
邪魔臭い宗教は、私は明らかに嫌い。それと何にすれ、人間の自由とか幸福を排除するものは「良くない」ものだし、魂を救うような素朴な宗教・宗教心は「良いもの」だという帰結になるはずです。
この映画のストーリーも、映画の放映そのものがスキャンダルになること自体、あまり理解できないでいます。製作者もそうらしいですね。

Posted by tomizawa at 2006/06/04 (Sun) 02:06:17

宗教

これについて考える時に、わたしはいつも二つのことを思います。
一つはアメリカという国家の強引な侵略による成立の源には、先住民の土着の宗教と言語の徹底的な排除があったことです。アメリカはこれを最も恐れたのでしょう。
もう一つは、ナイジェリアのノーベル賞作家「ウォレ・ショインカ」は、土着の宗教とキリスト教の共存によって、はじめて豊かな人間社会が成立するというようなことを書いています。

人間がなにものかについて考える時、最も必要なことは論理ではなく感性ではないのか?というのがわたしの基本的な姿勢です。

Posted by たかたあきこ at 2006/06/04 (Sun) 13:13:04
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