Aug 18, 2006

西の魔女が死んだ  梨木香歩

majo

 梨木香歩(一九五九年・鹿児島生まれ)、英国に留学、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。この「西の魔女が死んだ」で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を受賞しているようだ。この他にも別の受賞作品を含めての作品がありますがそこは省きます。賞の価値はよくわかりませんが、注目を集めているらしいこの児童文学者「梨木香歩」に初めて触れたことになるのですが、とてもよい本、素直に「好きです。」と言えます。

 「西の魔女」とは登校拒否の中学生「まい」の英国人のおばあちゃんです。日本人であるおじいちゃんと結婚して日本に来たのです。「まい」のパパは単身赴任中、ママも仕事をしている。「まい」は一人っ子です。学校に行けなくなった「まい」はおばあちゃんの家で暮らすことになりました。そのおばあちゃんの家と広大な庭、現代社会から距離を置いた自然に即した暮らしぶりは、米国バーモント州で暮らす「ターシャ・テューダー」を思い出す。

Tasha-garden

 おばあちゃんは実は魔女だと言う。「まい」の心の立ち直りはその魔女修行にあるのだが、それは単に健康な規則正しい生活をして、からだを動かして働き、自立した考え方、他者を冒涜しない感性を内部に養うことだった。夜更かしだった「まい」におばあちゃんは、彼女のベッドの柱に「たまねぎ」を吊るして、おまじないを唱えるのだった。よく効いた。

   「ナイ、ナイ、スウィーティ」

 「まい」には幼い頃から抱えていた不安があった。それは何気ないパパの言葉に始まっていた。「死」についてパパは「最後の最後、何もない。」と言い、「まいが死んでも、生きている人たちは翌日から変わりない生活をするのか?」という問いかけにも、パパは無造作に「そうだよ。」と答える。

 かつて小さかったわたくしも、どんなに「死」がこわかったことか。その上、死んだら焼かれるという事実に出合った時には「死なない大人になるか?あるいは大人になるということは、死がこわいものでないと感じることなのか?」と考えて、とりあえず大人になるまでの時間の猶予に望みを託すしかなかった。
 それは、時を経てわたくしの子供の問題になった。近所の知りあいの赤ちゃんが死んだ。四歳の息子の友達の弟だったので、息子を連れて葬儀に参列して、小さな柩を見送った。その時の息子は「子供でも死ぬの?」とわたくしを見つめる。「あなたは死なない。」と小声で答えて繋いでいた手を黙って握りなおしただけだった。

 おばあちゃんは「まい」に肉体の「死」を超えた「魂」の不滅を教えるのだ。それを「まい」が本当に理解したのは、おばあちゃんとの生活に別れを告げて、パパの赴任先にママと共に移り住み、新しい学校でなんとか暮している時期に、おばあちゃんが突然亡くなった時だった。

   ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ
   オバアチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ


   「まい」は「アイ ノウ」と答えた。。。

 もう一編「渡りの一日」が収録されているが、それはおばあちゃんの教え通り生きている未来の「まい」の姿かもしれないが。省略。

 (二〇〇一年・新潮文庫)
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