Dec 26, 2008

アルツハイマー型老年認知症

mama

 来年は亡母の年(丑年)です。誕生日は今の天皇と同じ日で、母の十歳の誕生日に天皇は生まれたわけです。生きていれば、来年は九十六歳になったのですね。年賀状を書きながら、亡母を思い出しましたので、少しだけ書いてみます。

 タイトルにあるような、この手の本は読まないようにしています。それは現実問題として亡母が「痴呆←これは現在では差別用語ですか?」だったからです。ですから医学者は本当に解明したのか?と今でも疑っているのです。体験から申し上げれば、これは個人差があって、分類したり、体系づけたりできるものか?と不遜にも思うのです。また、これは「我が母の物語」として、わたくし個人が書いておきたいものだからでしょうね。

 母はいつも着物を着て、朝には鏡に向かってお化粧して、おしゃれでまめに働いた主婦でした。それが「痴呆」になってからは、新しい衣類を買ってあげても、バッグを買ってあげても「わたしのものではない。」と言って、いつも同じものを着て、同じバッグを持っているようになりました。わたくしは似たものを買ってきて、こっそりと取り替えていました。

 それから、よく聞くお話ですが「お金を盗まれた。」と言うような被害妄想を言い出す痴呆老人も多いそうですが、母は全くそれがありませんでした。痴呆になる前からお金の管理をわたくしに任せたものの、いつの間にか家政婦さんにはチップをあげるてるし(家政婦さんへの支払いは、紹介所に払うものです。)、母が騙されてお金を出す危険から守らなければならなかった。

 そして、一番辛かったことは、末娘のわたくしの名前を忘れて、母の一番下の妹の名前を呼ぶようになったことでした。でもこの時に気付きました。痴呆になった老人がどこへ還っていくのか?それは生涯のなかで一番幸せだった時代に還るものなのです。それは、幼いわたくしを育てた戦中戦後の辛い時代(敗戦。満洲からの引揚げ。戦後の貧しい暮らし。)ではなく、それ以前の母の娘時代だったということです。

 さらに言えば、痴呆老人は、その人の生涯からうまれた個性を表出します。母は可愛い少女のままでした。父と姉の看取りが繋がって、母を施設に入れなければならなかったことが今でも悔やまれます。いつもそばにいて、語りあうことができたなら、母の痴呆はあれほどに進行しなかったでしょうね。
Posted at 15:03 in nikki | WriteBacks (3) | Edit
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その人の生涯は・・・

拝読してつくずく思ったのですが、「人の生涯」は遺された者が補完するのかなあ、と。その人は亡くなって身体は消えるのですが、生涯がどうであったかは遺された者の意識の中で補完形成されるのではないでしょうか。

あきこさんの母上の生涯は、あきこさんがこれを思いこれを書かなければ何も残さず消えてしまっていたのではないでしょうか(いえ、自分は自分の親の「生涯」を思い描きながら書いていますが)。あ、手記は残っていましたね。

あきこさんが母上の「生涯」を補完し、珠のように磨いておられる、美しいものを見た気持ちです。

Posted by リベル at 2008/12/27 (Sat) 05:46:35

一部訂正します

(いえ、自分は自分の親の「生涯」を思い描きながら書いていますが)→(いえ、自分は自分の親の「生涯」を反省も篭めて思いながら書いていますが)

Posted by リベル at 2008/12/27 (Sat) 05:56:20

ありがとうございます。

いつかどこかでそのような詩を書いたような記憶があって、捜してみましたが、みつかりませんでした。それはこのようなものだったと記憶しています。

どのような死も未完のままです
生き残された者たちがその死を完成させるのではないか

また、柳田邦男の「犠牲〈サクリファイス〉わが息子・脳死の11日」のなかには「二人称の死」という表現がありましたね。息子の死は完成しても、家族がそれを納得できるまでの死を言うようです。

並列させて柳田氏の言葉を置くのは、恐れ多いことですが。。。

Posted by あきこ at 2008/12/27 (Sat) 19:06:38
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