Apr 30, 2025
新しい家で

この部屋からは湖が見えて
見晴らしがいいでしょう。
風もよく通るし、
ミミコを寝かしつけるのにいいわね。

シェルニがミミコを預けにきた。
運んでくれてどうもありがとう。
このお部屋をミミコ用に
使わせてもらうことになったの。
それはよかったですね。
あ、ナディアさんが、
トリコと一緒に到着したので、
居間にみんなが集まるみたいです。

やがて会合が開かれた。
これで皆さん全員揃ったのね。
私たちの世界にようこそ。
私はこの家に住んでいて、
名前ははみすずと言います。
この家はゲストハウスのようなもので、
観光客用にお部屋が沢山あるので
お好みの部屋を使ってね。

引っ越してきたメンバーが自己紹介した後、
サラが言った。
みすずさんは、夢食いだって聞きましたが、
ここに泊まりにくる観光客っていうのも
みんなそうなんですか。
そうね。隣にいるシノも夢食いだし、
普通の人が来たのは、あなたたちが初めてかも。
サラさんは普通の人のようだけど、
「夢食い」なんていう言葉、よくご存知なのね。
私は普通の暮らしがしたいんですけど、
周りの環境のせいで、情報過多なんですよ。
魔族とか宇宙人とかロボットとか、
変わった知り合いが沢山できちゃって。
あ、普通の暮らしって言えば、
今日でもう4月も終わりなのね。
今月はずっと局長と過ごしていて、
コンテストに参加登録するの忘れてたわ。
なんなのそれ?
私たちの住む町では、
毎月コスプレコンテストが開催されて、
参加登録すると、翌月の優勝者の発表時に、
もれなく参加賞のチョコがもらえるんです。

それって面白そうね。
とシノが言った。
あなたたちは南のジャングルにある
廃屋から引っ越して来たっていう話だけど、
さらに別の世界の町から来た人もいるのね。
色々訳ありなのよ。
私も普通の人間だけど、
さる事情でフミコと同じように魔法が使えるの。
南の世界からここに来たように、
その町と直接行き来できるような、
鏡の扉を作ることができるわ。
サラ、登録にはまだ間に合うから、
一旦帰って登録してきたら?
町の様子も知りたいし。
とアイスが言った。
私もサラさんについていっていいかしら。
とシノが言った。
いろんな世界に興味があるの。

サラはアイスの作る鏡の扉で、
シノを連れて一旦町に戻ることになり、
みんなは持ち込んだ家財道具の整理や
自分の部屋を選ぶために居間を出て行った。
フミコさんは魔族の方なんですね。
ここは魔族の人が見た夢の世界。
魔法の力で消えずに残っているみたいなの。
もしその力に生命が宿っているなら、
あなたが訪れてくれて喜んでいると思うわ。
そうだと私も嬉しいけど。
あ、私、
サラに持ってきて欲しいものがあるんだった。
とフミコが言った。

アイスは屋内に呪文を唱えて扉を出現させている。
これが魔族の作る鏡の扉ってやつね。
とシノが言っている。
サラ、ついでにあの呪具を部屋から
持ってきてくれない?
必要になるかもしれないから。
いいわよ。

サラはシノを連れて、
アイスの作った鏡の扉を抜けて、
自分たちの部屋に戻ってきた。
サラは早速メアリーから、
フミコの呪具を受け取っている。
バッグに入れて持っていくといいわ。
ノヴァさんは?
ここでしばらく帰りを待ってたけど、
さすがに宇宙人は外泊禁止だからって、
アフリカのホテル・ナジャに戻っていったわよ。
シノはジェットに
コーヒー飲みます?
と言われている。

二人は広場に出かけた。
コンテストの参加登録ね。
今月も新規の参加者がいないのよ。
あ、あの人の登録も頼むわ。
シノって言って、私のお友達なの。

サラたちは広場で、肉まんを買いに来ていた
研究所のシェリー博士とばったり出会った。
博士お久しぶり。
ああ、サラ。あなたたちの部屋の扉から、
仮想現実世界によく似た別世界に行くって、
レイチェルとツナが出かけたままなんだけど。
ナディアも一緒で、みんな元気でいますよ。
すごい計算をしてるって聞きましたけど、
研究所のAIの調子はどうなんです?
ちょっと難しいわね。
転送装置はもう使えないかもしれない。
だとするとツナもナディアも
もう元の世界に戻れないっていうことですか。
ミューが残ったNPCたちだけでも、
なんとかしようとしてるみたいだけど。
世界が消去されてしまう前に、
彼らを異世界に送れないか試しているのよ。
そんなことできるのかしら。
確かに私たち夢食いのように、
別の夢の世界に移動できれば、
元いた夢の世界が消滅してしまっても、
そこで存在することはできるわね。
でもAIの作った仮想現実世界なんでしょう。
どうやって脱出するのかしら。
と横で聞いていたシノが言った。

話は尽きなかったけれど、
サラとシノは博士と別れ、
みすずの家に戻ってきた。
サラはフミコに、
頼まれていた呪具を渡している。
ありがとう。
これで強力な呪文が使えるわ。
ヤミーがそのボトルはなんですか。
と訊いている。

あ、それはお醤油よ。
調理に使おうと思って、
冷蔵庫から持ち出してきたの。
さすがサラさんだなあ。
夕食が楽しみね。
などと話している。
解説)
続きます。
WriteBacks
http://www.haizara.net/~shimirin/blog/kirita/blosxom.cgi/20250430202303.trackback
writeback message: Ready to post a comment.