Jan 26, 2026
馬の話 そのろく

サラたちはお城に戻って、
オウルと面会している。

ふむ。君はエドという名前なのか。
この国は魔族のシモーヌ様が
生み出してくださった常春の国。
暮らしているのはフィギアや置物に
宿っていた精霊たちで、
みんな君と同じような身の上だよ。
では早速みんなに紹介しよう。
ミネルバ君。
はい、では広間の方に。

広間にフクロウの置物たちが
集まっていた。
オウルはエドを紹介している。
ここにいるフクロウたちはみんな、
同じ倉庫に並べて置かれているのを、
シモーヌ様が見つけてくださって、
この世界に送られてきたんだが、
それ以前の境遇は様々。
誰かこれまでに
馬のフィギアを見たものはいるかな。
馬のブロンズ像なら見たことがあります。
民芸品のチャグチャグうまっこならあります。

紹介が終わり、
サラたちはお城の一画の
眺めのいい部屋に案内された。
この部屋を自由に使っていいって言われたのね。
みなさん親切ですね。

話していると、
ミネルバがやってきた。
シモーヌ様がいらっしゃいましたよ。

シモーヌはみすずの家から、
ディアナを連れてきていた。

シモーヌは、
ディアナをマークとエドに紹介している。
お二人は姉妹なんですか。
お顔がそっくりですね。
とマークが言っている。
ちょっと訳があってね。
ディアナは鹿のフィギアの精霊なの。
とシモーヌが言った。

エドはシモーヌに
質問されている。
エドさん、あなた、広場で話した時、
また人を乗せて走りたいって言ってたわね。
ということは、以前にも、
精霊としてその姿になったことがあるっていうこと?
はい。そうなんです。
ずっと昔のことなんですが、
私が馬のフィギアとして骨董品のお店で売られていたとき、
フィギアの中に精霊の私が宿っているのを見つけて、
母親にせがんで買ってくれた幼い女の子がいたんです。
その女の子は私に名前をつけて、
牧草地まで運んで行って、この姿に変えてくれて
深夜に、私に乗って一緒に走り回って遊んでくれたんです。
ふーん。そうなの。
それからどうしたの。
やがて女の子は乗馬遊びに飽きちゃって、
私は子供部屋の棚の隅に置かれたままになりました。
よくあるパターンね。
それからどうしたの?
それから随分時間が経って、
女の子は大人になって外出が多くなりました。
ある日突然、彼女が帰ってきて、
その直後に、家具を残して一家は引っ越して行きました。
その家にはその子と母親が暮らしていたんですが、
母子ともども蒸発したみたいに消えて、
その後、残された空き家に盗みに入った盗賊が、
馬のフィギアである私を見つけて盗み出し、
盗品であることを隠してオークションにかけたんです。
それでそのフィギアを落札した
ジャンさんの手に渡ったというわけなんですね。
とマークが言った。
そうなんです。
本当の話なんでしょうけど、
フィギアに精霊が宿っているのを見抜いて、
変身させて遊んだなんて、
そんな呪力を持つ魔族の子供がいたなんて、
ちょっと信じられない。
とシモーヌが言った。
ずっと話を聴いていたサラが言った。
私何となく心当たりがある。
その女の子の名前はヴィヴィアンでしょう。
それでその子のお母さんの名前はカーミラじゃない?
そ、そうです。

え、どうしてわかったの?
幼い頃からそんな魔力を持っていたなんて、
ヴィヴィアン以外考えられない。
飽きっぽいのも彼女の特徴。
それとね。三年前に彼女はロンドンのカジノで
問題を起こして、地元のマフィア組織に追われていたの。
それで、お母さんのカーミラと一緒に、
別居していた魔術劇場のハリーさんのところに、
緊急避難してきたのよ。
そのまま今でも同居してるけど。
追われていたので、家具類を残したまま、
慌ただしく家を出払ったというわけね。
深夜に牧草地で遊んだって言ったでしょう。
彼女には半分ヴァンパイアの血が入っていて、
子供の頃は、日光が苦手だったって聞いたことがある。
その家ってトランシルヴァニアにあったんでしょう。
はい。
やっぱりね。
あ、ヴィヴィアンなら今、
幽霊船のエクレア号に乗ってるはず。
近いうちに再会できるわよ。
ただ、向こうが覚えてるかな?
なんか問題の多そうな人なのね。
でもエドの探してた人が見つかったのは
よかったわ。

エドはディアナと
野原を走りに行くことになった。
フクロウたちが
挨拶している。
解説)続きます。
Jan 25, 2026
馬の話 そのご

よく見ると、
エドは怪鳥に追われていた。

サラたちの姿に気がついたエドは
駆け寄ってきた。
怪鳥が追いかけてくる。

サラは、
大きな声で呼びかけた。
アーキスさん。
この馬は侵入者じゃないのよ。
シモーヌさんが新しくこの世界に送ってきた
馬のフィギアの精霊で、エドっていうの。

なんだと。そうだったのか。
てっきり侵入してきた夢食いかと思ったよ。
ふむ、あんたは俺がヴィヴィアンと契約を結んだ時、
そばにいたな。
シモーヌさんのことも知ってるなんて、
魔族の仲間なのか。
私はサラで、隣にいるのはマーク。
魔族じゃないけど、みんな友達よ。
私たちはエドに会いにきたの。
エドは新しい住人なのよ。
新しい住人か。まあ、よろしくな。
俺は巡回に戻るよ。

アーキスはそういうと
去っていった。

この世界に送ってもらって
嬉しくて平原を走り回っていたら、
あの怪鳥が追いかけてきたんです。
あれはアーキスって言って、
凶暴な夢くいのモンスターだけど、
この常春の世界が気に入ったらしく、
ヴィヴィアンと契約して
この世界に住まわせてもらう代わりに、
巡回パトロールをしてるの。
今ではガードマンみたいなものね。

そのとき、突然エドが前足を上げていなないた。
今度は何なの?

巨大なカマキリが近づいてきたのだった。

これはこれはサラさん。
また観光ですか。
とカマキリは言った。
あ、紹介するわ。
こちらはマークで、
この馬はエド。
あなたと同じフィギアの精霊で、
エドはこの世界の新しいお仲間よ。
そうでしたか。
それはどうぞよろしく。
あ、それからお花畑を走る時は、
前方に注意してくださいね。
時々私が寝てますから。

いったんお城に戻ってフクロウたちにも
挨拶した方がいいわよ。
あなたのことは話題になっているみたいだし。
分かりました。
そうしましょう。
ところで、あなたパニくると、
馬の声になるのね。
なぜかそうなんです。
解説)
続きます。
24日土曜日の更新が25日にずれ込んだので、
いつも夜の8時過ぎ頃にしている本日分の更新は、
お休みします。
Jan 23, 2026
馬の話 そのよん

サラとマークは、鏡の扉を抜けて、
常春の精霊の国のお城の一室に現れた。
随分立派な部屋ですねえ。

話声を聞きつけて執事のミネルバがやってきた。
これはこれはサラさん。
去年の9月以来のお越しですね。
また観光においでですか。
おひさしぶり。
今回はちょっとすることがあって。
こちらはマークさん。
これは肉まんのお土産よ。
国王代理のオウルさんは起きてる?
珍しく起きていらっしゃいます。
さっそくご案内しましょう。

応接間に案内されると、
オウルがソファに座っていた。
これはこれはサラさん。
お元気でしたか。

サラはマークを紹介して、
つい最近、この世界に馬が
やってこなかったかと尋ねた。

はいはい。
報告を受けたばかりですよ。
それで昼寝を起こされたんです。
なんでもお花畑のあたりを
元気よく走り回っているとか。
あれはまたシモーヌ様が、
送り込まれたフィギアの精霊なんでしょうか。
そうなのよ。
さっそく会いに行ってみるわ。

オウルとミネルバに見送られて、
二人はお城を後にした。

随分、立派なお城と庭園ですね。
この世界をシモーヌさんが魔法で作ったんですか。
そうみたいね。
私たちの現実世界からいえば、
幻なんでしょうけど、
私たちの現実世界も人間の脳が
脳同士だけで分かり合えるように
生み出した幻想みたいなものだから、
同じようなものかもしれないわね。
難しいこと言いますね。

おお桜が満開ですね。
ここは常春の世界なの。

前に来たから覚えてる。
お花畑はこの辺りよ。

遠くで馬のいななく声がした。
あ、あそこにエドが。
解説)
続きます。
Jan 22, 2026
馬の話 そのさん

シモーヌさん、その魔法はここではまずいわ。
とルビーが言っている。

あ、ごめんなさい。
いつもは慎重に場所を選ぶんだけど、
なぜかついその気になっちゃって。
今、観光客はいないみたいだし、
ルビーに注意されても、
ヴィヴィアンはいつも平気で魔法を使うから、
住民はもう慣れっこ。
そんなに気にすることないわよ。
とサラが言った。

じゃあエド、
とりあえずあなたを
常春の国に送ってあげましょう。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
エドは元のフィギアの姿に戻ったように見えた。

このフィギアは。
精霊の元の体だから大事にしてね。
壊したりすると、精霊が戻れなくなるから。
なるほど、
精霊が抜け出しても元の器は残る。
兵士たちのフィギアと同じなんですね。

私はパリのアンティークのお店に戻る。
貝殻を金庫に保管して、お店の仕事を終えたら、
またみすずの家に行って、
ディアナたちに鹿せんべいを渡してから、
常春の国に行ってみるつもり。
それでサラ、
もしよかったら。
先に常春の国に行って
エドの話を聞いてあげてほしい、
っていうんでしょう。
よくわかったわね。
なぜかそんな普通の展開になる気がしたの。
いいわよ。
マークさんもいらっしゃる?
はい。お供します。
馬の姿でも、同じサイズのフィギアの
精霊仲間だと思うと、他人事とは思えない。
とマークは言った。

シモーヌが立ち去った後、
関係者はマンゴー亭で話し合っている。
ジャンさん。そのエドっていう馬のフィギアの
元の持ち主のことはわかる?
いえ、オークションで入手したので。
でも主催者に聞けば何かわかるかな。
今度会ったら聞いてみますよ。
とジャンが言った。
お願いね。
それからサラはルビーに、
船の旅やマーレのいた島の話などを
かいつまんで伝えた。
ハリーさんにも話しておきたかったけど。
わかったわ。
アイスやヴィヴィアンは元気なのね。
ハリーに会ったら伝えとく。

サラはバー・デジャの門番をしている
ヨシフにも話しかけている。
あなたたちとクックドゥーとは、
魔術劇場で寝泊まりしてるんでしょう。
はい、そういえば最近見かけませんが。
家事をしてくれているデュアンが
気にしてました。
あの人、海の世界で航海してるの。
しばらく戻ってこないかも。
そーなんですね。
みんなにも伝えておきます。

サラとマークは、
お土産の肉まんを買い込むと広場を去っていった。
サラたち、常春の国に行ったんですか。
いいなあ。
佳奈は長期休暇取ったばかりでしょ。
と言われている。
解説)
続きます。
Jan 21, 2026
馬の話 そのに

サラはジャンたちにシモーヌを紹介して、
一緒に肉まんを食べることにした。
シモーヌが骨董品の売買をしているというので、
フィギアの話題で盛り上がっている。
このお馬さん、1/6のスケールで、
けっこう精密に出来てるのね。
兵士のフィギアとセットで売られているのも
あるんですよ。

そういえばマークさんは、
フィギアの兵士の精霊なんでしょう。
以前にいたフィギアの世界には軍馬もいたの?
ほとんど覚えていないですが、
戦場だったので、当然いたと思いますよ。

この馬はちょっと歩き出しそうな
ポーズをしているのね。
それは骨董のオークションで手に入れたものです。
かなり年季が入ってますが、
微妙なポーズが面白いでしょう。
あら。この馬のフィギアには、
精霊が宿っているわ。
とシモーヌが言った。

え、やっぱりそうなんですか。
とジャンが言った。
普段、倉庫の陳列棚に置いてあるんですが、
時々移動してることがあったんです。
僕のコレクションしている兵士のフィギアには、
そういう精霊を宿したのが多くて、
彼らは異世界の村で暮らしていましたが、
色々な出来事の末に、
ハリーさんやヴィヴィアンさんが
魔法でサイズを変えてくれて、
今では、何人かはこちらの世界に移住して、
人間と同じように郊外で暮らしています。
ジョー軍曹やエルザや、
ギルダやロンメル将軍たちね。
とサラが言った。
僕も住む世界は違いますが、
別世界から来たフィギアの精霊らしくて、
彼らと同じ身の上のようです。
今でもどうも釈然としませんが。
とマークが言った。

この馬は、以前乗り手と一緒にいたらしい。
またその人を乗せて走りたいって言ってるわ。
シモーヌさんは魔族で、
これまで沢山のフィギアや置物に宿った
精霊たちを見つけては、
別世界を作ってそこに送って
自由にしてあげているの。
私その常春の国に遊びに行ったから知ってる。
とサラが言った。
そーなんですか。
だったら、ぜひその馬の願いを叶えてあげてください。
他の兵士フィギアの精霊たちも喜ぶでしょう。
とジャンが言った。
なにか始まるのかな。
とレイとアンナが興味津々で立ち聞きしている。

ここでやっちゃうの?
善は急げでしょ。
シモーヌさんも、
ヴィヴィアンと同じようなことをいうのね。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
広場に忽然と馬が現れた。

ベーカリーから
佳奈やルビーや舞が何事が起きたかと
やってきた。
今、煙の中から出てきたよね。
魔法なんでしょ。

ありがとうございます。
私はエドワードと言います。
エドと呼んでください。
と馬は話した。

う~まがしゃべる。
そ~んなパカな🎵
と大道芸人が歌っている。
古すぎる歌ね。
聞かなかったことにしよう。
とサラは思っている。
解説)
続きます。
Jan 20, 2026
馬の話

帰っちゃうと寂しくなりますね。
帰るって言っても、鏡の扉を使えば
いつでも来られるんだから、
全然感動の別れっていう感じじゃないけどね。
などとシノとクックドゥーが話している。
奥でもサラたちが話していた。
シモーヌはフミコと一緒に?
しばらく帰ってないし、
マーレからもらった祖母の貝殻を、
フランスのお店に保管しに戻るつもり。
サラは?
私は今度のことを
魔術劇場のハリーさんに報告しに行く。
クックドゥーが航海に出たことも、
知らせないと。
じゃあ途中まで一緒に行きましょう。
私、広場のマンゴー亭に
注文していたものがあるの。
ついでに肉まんでも食べましょう。

二人はサラたちの部屋に
戻ってきた。
お帰りなさい。
と言われている。

サラは、お土産のたこ焼きと
夢の見られる貝殻を持っている。
帰ってきて早々だけど、
ちょっと広場まで行ってくる。

これは美味しそうなたこ焼きだね。
あ、サラ、今日は風があって寒いから、
暖かくしていったほうがいいわよ。

さっそく二人は広場に出かけた。

今年の干支はうま。
丙午か。

マンゴー亭には先客がいた。

ジャンとマークが、
馬のフィギアを並べて話し込んでいる。
ジャンがコレクションのフィギアを
マークに見せるために持ってきたようだ。

注文していたもの出来てますか。
はい。これです。

何なのそれ?
特別に鹿せんべいを焼いてもらったの。
ディアナとピリカへのお土産よ。
味見してみる?
解説)
続きます。
Jan 19, 2026
新たな船出

おはよう。
昨晩はちょっと
飲みすぎちゃったみたい。

ダリオさんおはよ。
潮風が気持ちいいですよ。
みんな早起きなのね。

昨夜は楽しかったわ。
みんなこれからどうするのかしら。
フミコはみすずの家に戻るって言ってたよ。
砂漠の家でラルゴとシェルが留守番してるから、
セリーヌたちはたぶんそこに帰る。
私は、まだ何も決めてないけど、
ヴィヴィアン次第ね。
彼女のお目付け役のつもりなの。
とアイスが言った。
本当は一緒に冒険がしたいんでしょ。
クックドゥーはどうするのかしら。
船長なら向こうのテーブルにいるわよ。

クックドゥーとセリーヌは
海図を広げていた。
記憶だと、この海域の無人島に
クリスタル真珠があるんだ。
探しにいくんですか?
ずっとハリーさんたちにお世話になってたからね。
魔術劇場の皆さんにプレゼントしたいんだ。
クックドゥーさん、ちょっと。
とサラが声をかけた。

やあサラ、何かな。
どうやら海に戻る気になったみたいね。
そうなんだ。
みんな帰っちゃうみたいだけど。
サラも行っちゃうの?
ええ。それで思いついたんだけど、
あなたの船旅のお仲間を誘ってくるわ。
そういうとサラは
鏡の扉に向かった。

しばらくして、
サラは船に戻ってきた。
サラが連れてきたのは、
ジョー軍曹とエルザだった。
やあキャップテン。
去年のハロウィンでは
その海賊コートをお借りできて助かりました。
海賊は憧れだったんですよ。
とジョー軍曹が言った。
無人島で宝探しをするそうね。
ジョー軍曹は元上官。今では
仲のいい友達なので、お話を伺って、
私も寄せてもらいました。
とエルザが言った。
おお、
君たちでしたか。
やはり持つべきものは友人だなあ。

クックドゥーは、
軍曹たちに船を案内している。
潮風が気持ちいいわね。
おや、なんの音だろう。

エクレア号のマストに
帆がスルスルと張られ、
錨が巻き上げられて、
船は島の浅瀬から離れていった。

船は目的地に進路をとったようで、
島が次第に遠ざかっていく。
海図の必要ないんじゃない?
とサラが言っている。
解説)
続きます。
Jan 18, 2026
マーレとの会話

夕暮れになり、
サラとクックドゥーは
沈む夕日を見ていた。
サラはクックドゥーに
マーレのことを知っているかどうか
尋ねた。
姿は見たことないですが、
島に貝殻を拾いに行くたびに、
誰かがいるという雰囲気は、
いつも感じていました。

そこにマーレがやってきた。
あ、きてくれたんですね。
約束したからね。
クックドゥー、久しぶりね。
とはいえ、こうして直接会うのは初めてだけど。

私はあなたが初めて島に来た時から
覚えているわ。
あなたが夢見る貝殻の虜になって、
やがて航海中に嵐で死んでしまって、
骸骨になって蘇ってからのことは、
トンピリビから聞いているの。
そーなんでしたか。
あなたの愛したこの船。このエクレア号も
あなたと運命を共にしたけれど、
あなたは改心して夢の航海を諦めたでしょ。
集めた夢見る貝殻もサラに譲ってしまった。
そーなんですよ。
海の思い出は封印したんです。
それで乗り手がいなくなったエクレア号は、
あなたと一緒に航海したいという願いを抱いて
貝の見る夢の海を彷徨っていたのよ。
そーなんですか。
それは知らなかったなあ。
生前の世界に執着したあなたが
貝の夢に人を誘う死霊になって蘇ったように、
エクレア号も意思をもつ夢食いのような存在になったの。
それでこの船の中で不思議なことが起こるのね。
あ、マーレさん。
そろそろ船室に入りませんか。
みんながお話を聞きたがっています。
とサラが言った。

食堂にみんなが集まっていた。
大ダコのくれた足を調理したんですよ。
たこわさもタコの握り寿司もたこ焼きもあります。
素敵な歓迎をありがとう。
それではみなさん
質問をどうぞ。
とマーレが言った。

私たちは、忘れられた夢の世界から、
このエクレア号に乗って、
船の進むままにこの島に辿り着いたんですが、
ここも忘れられた夢の世界の一部なんですか?
それとも隣り合った別世界で、
どこか途中で境界を越えてきたんですか。
とシノが尋ねた。
忘れられた夢の世界って
あなたたちが呼んでいるのは、
シモーヌさんのお婆さまが見ていた夢の世界。
お婆さまは病で亡くなられたけれど、
最後まで見ていたその夢の世界に魔法をかけて、
消えないようにしたの。
その世界の中でお婆さまは今も生きているとも言えるわ。
この島はお婆さまの故郷で、最後に見た夢の一部分。
そういう意味では二つの世界に境界はないとも言えるけれど、
遥かな海で隔てられている。
お婆さまの夢の中でもその深さが違う世界なの。
別世界って言ってもいいくらいにね。
祖母は、私と鹿のフィギアの精霊のディアナを
その忘れられた夢の世界の森に招いたんです。
私たちはそこで楽しい時間を過ごした。
ディアナだけその世界に取り残されてしまったけれど。
祖母が私にオウム貝の貝殻を渡したかったのなら、
なぜその時、夢の中で渡してくれなかったのかしら。
とシモーヌが尋ねた。
お婆さまはもう亡くなる間際で、
夢の中であなたたちに語りかける力を
持っていらっしゃらなかったのよ。
ディアナだけが夢に取り残されたのもそのせいね。
お婆さまは、それで貝殻のことを私に託されたの。

お婆さまがマーレさんに指輪を託された時、
お婆さまはもう亡くなられていたのよね?
だとすれば、ここは一体。
とフミコが言った。
ここはお婆さまの故郷の島。
お婆さまにとっては夢の中だけど、
かって魔族の住む都があった実在の世界なの。
この島には古代の魔族たちのかけた
深い魔法がかかっている。
亡くなった魔族の魂はここに帰ってくるのよ。
フミコさん。
あなたも古代魔族の生き残りとか。
魔族が土地にかける魔法のことはご存知でしょう。
その影響で、グリーンマンや
マービーみたいな魔法生物が生まれるのよね。
とアイスが言った。
もしかして、あなたもそのお仲間?
古代の魔族がこの島にかけた魔法によって生まれた
魔法生物なの?
とヴィヴィアンが尋ねた。

私のことはなんといえばいいかしら。
古代魔族がこの島に移り住んで都を開く、
もっとっずっと前からこの島にいるわ。
土地の精霊みたいなもの?
それとも、バルやバーンやスーラみたいな
元素の精霊?
いろんな精霊を知ってるのね。
もし私が精霊だとしたら、たぶん海や貝の精霊ね。
自分のことはよくわからないんだけど、
オウム貝の貝殻のベッドで眠り、
アンモナイトの貝殻で夢を見ているの。
アンモナイトの夢って、
どんな夢なんですか?
とシノが尋ねた。
ジュラ紀や白亜紀の思い出の夢よ。
恐竜たちも出てくる。

質問攻めが一段落して
歓迎の宴も終わり、
アイスたちは甲板で休憩している。
ここに住んでいた魔族が、
魔法で貝殻に夢見る力を与えたって
噂があるらしいんですが本当なんですか?
また質問?
そうね。本当は少し違う。
もともとこの島の貝殻は夢見る力を持っていたのよ。
ここは精霊の宿った貝殻たちの墓所だったの。
島に来た魔族がそれを見つけて、
ここが特別な土地であることを知り、
この島に住むことを決めたの。
シモーヌのお婆さまのように、
事情があって島を離れた魔族は
故郷を偲ぶためにそんな貝殻を持っていった。
やがて島の魔族の都は滅び、長い時がたち、
離散した魔族が持っていた夢を見られる貝殻は、
人間の手に渡ることもあって、
手に入れれば、ひと財産築けると考える船乗りもいた。
だから何人もの冒険者が島のある場所を探しまくり、
運よく見つけた船乗りが、魔族の遺跡と関連づけて、
そんな噂を広めたんでしょうね。
クックドゥーもそんな冒険者の一人だった。
彼の場合は、貝の夢の依存症になっちゃったけど。

クックドゥーは
これからどうするの?
また魔術劇場に帰って平穏に暮らす?
なんでもご存知なんですね。
海の世界のことは諦めたつもりだったんですが、
エクレア号に戻ると懐かしくて。
船が船長を失って途方に暮れて
夢の海を漂っていたので、
シモーヌさんを呼ぶのを手伝ってもらったの。
今は操舵する乗組員がいなくても自力で航海できる
立派な幽霊船になったのよ。
苦労をかけたんですね。
だったら乗組員を勧誘しなくても
一緒に航海ができそうだ。
また宝探しをしようかなあ。

エクレア号はクックドゥーの言葉に応えるように、
一斉に船のあちこちに灯りを点した。
解説)
続きます。
Jan 17, 2026
思わぬ出会い そのに

サラたちは水辺で休憩している。
冷たくて気持ちがいいわ。
とフミコが言っている。
サラはアイスに、
水盤から現れたマーレから、
シモーヌが祖母の形見の貝殻を
渡されたことを話した。
お婆さまの望みだったそうよ。
なるほどねえ。
それが船がこの島に呼び寄せられた
理由だったんだ。
でもアイスがこの泉の中で
鏡の扉を見つけたのは、
別のことよね。
どこまでが偶然なんだろうね。

マーレとマービーは
仲良くなったようだ。
マービーは小さな滝に打たれて
懸命に尾鰭を振っている。
楽しいわ。
こうしてると立ってるみたいでしょ。
私、こういうの初めてなの。
そういうのを
鯉の滝登りっていうのよ。

しばらく時が経った。
あ、そろそろ戻る。
また遊びにくるね。
マービーは
みんなに手を振ると
水中に没していった。

マーレはサラたちに
顔を向けていった。
そこの銀髪の方、
アイスさんっていうのね。
泉の中に隠されていた古い魔族の
鏡の扉を見つけるなんて素晴らしいわ。
マービーは水没した地下都市で暮らす魔法生物。
あなたのおかげでいいお友達になれた。

さてそろそろ私も戻るわ。
お婆さまとの約束も果たせたし。
あのー、山ほど質問したいことが
あるんですけど。
とサラが言った。
ふーん。
いいわよ。
じゃあ日暮にでも船に伺うわ。
そういうと、
マーレの姿は水中に没していった。

サラたちも船に戻ることにした。

船の近くの砂浜に
大きな亀のような動物がいるのを
サラが見つけた。
これはなあに?
クリプトドンっていうらしい。
新生代の生き物で、アルマジロの仲間ですって。
今朝、砂浜で魚を獲ってる時にも見かけて、
セリーヌが教えてくれたの。
砂漠にも居たって言ってたわ。
とアイスが言った。
砂漠にもいた古代の生き物か。ということは、
この島にも恐竜がいるのかしら。

船に戻ると甲板にシノたちがいた。
たこ焼きを食べているようだ。
お帰りなさい。
今出来立てよ。
とセリーヌが言っている。

程なく、
ヴィヴィアンが島の視察から戻ってきた。

ヴィヴィアンは、アイスとサラから
遺跡で起きた出来事を聞いている。
島の上を飛んでゆっくり回ってきたけど、
特に何も見つからなかった。
その間に面白そうなことが起こっていたのね。
フミコと、向こうにいる
シモーヌさんも島に来てたなんて。
あなたとは初対面だけど、
噂は色々聞いてるわ。
とヴィヴィアンはシモーヌに声をかけるように言った。
私も。ヴィヴィアンさんのことは色々と。
ご両親にもお会いしたんですよ。
とシモーヌが言った。
そうらしいわね。
魔族の仲間と知り合うのは嬉しいけど、
そのマーレっていう女性は、何者なの?
古代に魔族の都があった島の住人なら、
やはり魔族の末裔っていうことかしら。
わからない。
夕暮れ時に船に来てくれるっていうから、
その時に尋ねてみましょう。
このたこ焼き美味しいわね。
解説)
続きます。
Jan 16, 2026
思わぬ出会い

驚かせちゃったかしら。
ご丁寧な挨拶をありがとう。
礼儀正しい魔族の方ね。
私の名はマーレ。

あなたたちのことは
トンピリビから聞いています。
あなたがシモーヌさんね。
顔立ちがお婆さまによくにてらっしゃるわ。
そうそう。
あなたにお渡しするものがあるの。

そういうとマーレの姿は水中に没し、
程なく貝殻を二つ手にして浮上してきた。

このオウム貝の貝殻は
シモーヌさんのお婆さまから預かっていたもの。
孫のシモーヌがいつかここに来たら、
渡して欲しいと頼まれたのよ。
祖母がそんなことを。
お婆さまはこの貝殻をあなたに譲るつもりでいたの。
でも病で倒れてそのことが果たせなかった。
そのことが心残りだと言って、
最後に見た夢の中で、私に託して逝かれたのよ。
孫のシモーヌには、自分がそうしてきたように、
時々、この貝の夢を見て故郷を偲んで欲しいって。
祖母がそんなことを。

これで約束が果たせたわ。
あ、あなたがサラね。
これはあなたが、
昨日ここに戻してくれた貝殻。
あなたの優しい気持ちはよくわかったけれど、
この貝殻はもうあなたのもの。
また手元に置いて、時々は潮騒の音を聞いてあげて。
いいんですか?
トンピリビは、これで貝が安らかに眠れるって、
言ってましたけど。
それは嘘じゃないけど、忘れられた永遠の眠りよ。
人間に潮騒を聞いてもらえることで貝の思い出も蘇る。
この貝も、心の優しいあなたに、
そうして欲しいって希んでいるの。
そ、そうなんですか。
じゃあ喜んで頂戴して大事にします。
ところで質問してもいいですか?
何なりとどうぞ。
マーレさんって、
ちゃんと両足があるんですね。
さっきすごく気になったんですけど。
そこなの?
あの大きなオウム貝は
私のベッドのようなもの。
その時、泉の方で、
水しぶきが上がる音がした。
あ、アイス、
戻ってきたんだ。

一行が降りていくと、
泉には見知らぬ女性の姿があった。
あれは誰?

女性はもの珍しそうに
周囲を見回している。

やがてアイスも水中から
浮かんできて顔を見せた。
やあ。
つい話し込んじゃって遅くなっちゃた。
この人はマービーって言うんだ。
と言っている。
マービーも
どうぞよろしくと言っている。

アイスはサラたちに説明している。
やはり泉の底の方の岩陰に、
常設タイプの鏡の扉があったのよ。
そこを抜けると、
フミコの住んでいたアフリカの遺跡の
今では水没している地下都市の中の
民家の屋内につながっていたの。
そこで以前調査した時知り合ったマービーに再会して、
久しぶりなんで話し込んじゃってね。
水の中なんでしょ。
レプティリアンたちが使う
空気のある部屋があるのよ。
あれ、あそこにいるのは?
とアイスが尋ねた。
あの人はマーレさん。
素性はよくわからないけど
この島の住人みたいで魔族か精霊みたいな感じがする。
夢見る貝のこともよく知ってるみたいだったわ。
マービーとマーレは
何やら話しているようだった。
解説)
続きます。
Jan 15, 2026
遺跡にいく

4人はさっそく遺跡に向かった。

ここがそうよ。
石造りのアーチに囲まれた、
小さな泉があるの。
ふーん。
確かにあの石組みは、
古代の魔族の建築様式ね。

フミコは挨拶の呪文を唱えている。
応えるように不意に風が吹き、
木々の梢がさわさわと葉ずれの音を立てた。

こんな絶海の孤島みたいなところで、
文明が栄えてたなんて不思議な気がする。
魔族たちは便利な道具を
使いこなしていたからね。
あ、鏡の扉のことね。
あれがあれば確かにどこにでも行けたはず。
古代の都には、魔族でなくても使えるように、
特定の場所に行ける常設式の扉があったの。
当時、アフリカで栄えていた
私たちの都とも繋がっていたかもしれない。
でも戦争の時、レプティリアンたちによって、
見つかり次第徹底的に破壊されてしまった。
あら、アイスどうしたの?

今の話を聞いていて、
ちょっとこの泉が気になってね。
彼らに見つからないように扉を設置するなら、
どこにするかなって。
確かレプティリアンたちは
水が苦手だったはず。

ちょっと潜って確かめてみるわ。
さすがアイス。
気をつけてね。

アイスなかなか戻ってこないね。
あのうえはどうなっているの。
とシモーヌが言った。
あ、説明し忘れてた。
この泉の水源となってる
湧き水が出てくる水盤があるのよ。

3人は石段を登って行った。
ここって祭壇の跡なの?

フミコはまた
挨拶の呪文を唱えている。

すると、
水の中から大きなオウム貝が浮上し、
貝の中から女性の姿が現れた。
その女性はフミコたちに
顔を向けた。
解説)
続きます。
Jan 14, 2026
島の話など

アイスはみすずの家にやってきた。
アイス、今年は初めてね。
おめでとう。
フミコ?
ミミコと部屋にいるわよ。

魔族の都の話?
ちょうどシモーヌが遊びに来てるから、
そっちで話しましょう。

アイスさん、去年はお世話になりました。
今年もどうぞよろしく。
とシモーヌが言った。
常春の国を一巡り散歩してから、
お城で別れたんでしたね。
フクロウたちは元気ですか?
みんな元気よ。
歓迎会はやめてって言ったのに、
フクロウたちに引き止められて
結局お城で年末年始を過ごしちゃった。
ひと月ぶりにここに来たの。

ディアナも話を聞きにやってきた。
それで魔族の都の話って?
アイスは、ヴィヴィアンと二人で、
北の海辺で見つけた海賊船を調べていたら、
船がかってに動き始め、
小島にたどり着いたことを話した。
そこは海の夢が見られる貝殻の採れる島で、
何度も訪れたことのある船長の話によると、
昔、魔族の都があったという噂があるんですって。
確かに島にはそれらしき遺跡があるの。
そんな古代の都のこと知ってる?
大昔には、
魔族は世界のあちこちで繁栄していたから、
そういう島もいくつかあったわ。
でもレプティリアンたちの戦争に巻き込まれて、
その時にほとんど滅びたのよ。
とフミコが言った。
今、海の夢が見られる貝殻って言ったでしょ。
とシモーヌが言った。
ええ。

私の祖母も、そういう貝殻を持っていたわ。
気分が沈んでいるとき潮騒を聞いて眠るって言ってた。
それを聞くと、故郷の夢が見られるっていうのよ。
その貝殻はどうしたの?
小さなオウム貝の貝殻
探したけれど遺品の中には見つからなかったの。
ふーん。それでなんとなく謎が解けてきたわ。
と話を聞いていたアイスが言った。
え、どういうこと?
あの島は、多分あなたのお婆さまの故郷。
お婆さまは、あの島に暮らしていた魔族の末裔だったのよ。
この忘れられた夢の世界が、
お婆さまが亡くなる間際に見た夢の世界だとすれば、
その夢に思い出の故郷が繋がっているのもわかる。
どうして船がそこに向ったのかな?
きっと何かわけがあるはずね。
シモーヌ。あなたも一緒に行ってみましょうよ。

キッチンに出向いて、アイスはヤッピーから
サラに頼まれた醤油を借りている。
これですね。
ありがと。
また補充するから、
半分分けてね。

3人で島に向かうことなった。
この世界には、まだまだ
謎が多いわね。
海があることも
知らなかったですし。
とみすずとディアナが言っている。

3人が鏡の扉を抜けると
そこは船室だった。
早かったわね。
そちらこそ。
忘れずにお醤油持ってきてくれた?
とサラが言っている。

サラはシモーヌとフミコを
みんなに紹介している。
ヴィヴィアンはまだ島の調査から
戻ってないけど、これで船にいる全員よ。
キャップテン・クックドゥーや
シモーヌさんとは、初対面の人もいるわね。
クックドゥーって
お料理が得意そうなお名前ですね。
とシモーヌが言っている。
解説)
続きます。
Jan 13, 2026
朝の出来事

船で朝食が始まった。

結局捌いたのは一種類だけか。
食べられるのかなあ。
私はバナナとイチゴで充分。
アイス味見してみてよ。
とサラが言っている。

その時、
何かがぶつかる音がして、
船が揺れた。
ダリオ、どうしたの?
それがまたあのタコが。

タコが船に迫っている。
あ、ごめん。
引き寄せの呪文を解くのを忘れてた。
とヴィヴィアンが言っている。

ヴィヴイアンは呪文を唱えている。
その上、何か会話しているようだ。

タコは去っていった。
どういうことだったの。
タコは自分の体が思い通りにならず、
船に引き寄せられていくので
パニックになっていたわ。
解放してあげたら喜んでいた。
お礼に足を一本くれるって。

セリーヌは鉈で
タコの置いて行った
足を切ろうとしている。
足を一本くれるなんて
大サービスだね。
タコの足って
また生えてくるのよ。
タコわさにしましょうか。
たこ焼きがいいなあ。

さっき思いついたんだけど、
フミコを呼んでこようと思うの。
とアイスが言っている。
魔族の都のことならきっと詳しいし、
この島のことも知ってるかもしれない。
それも一案ね。
私は空から島を一巡りしてみる。
山の向こう側も見てくるわ。
とヴィヴィアンが言った。
私は家に帰って
広場でわさびを買ってくる。
あ、お醤油はみすずのところにあるから、
アイスに頼むわね。
とサラが言っている。

どうも調子が狂うわねえ。
と言いながら、
ヴィヴィアンは飛んでいった。
解説)
続きます。
Jan 12, 2026
朝食の準備

おはよう。
今日もいい天気ね。

ダリオさんおはよ。
アイスたちは?
朝食用に魚を獲るって
出かけましたよ。

二人は様子を見にいくことにした。
あ、浜辺の方にいるかも。
ここから砂浜が続いているのよ。

波がきれいね。

やがて波打ち際に、
アイスとセリーヌの姿が見えた。

随分獲れたのね。
変わった魚類ばかりだけどね。
食べられるのかな。
ヴィヴィアンと
クックドゥーは?
岩場の方に行ったみたいだよ。

ヴィヴィアンは
魔法で魚類を引き寄せていた。
便利な魔法ですなー。
最近覚えたの。
私のパワーは増している。

見慣れない魚類が集まってくる。
とても食べられそうもないわね。

ヴィヴィアンさん。
あのタコが。
引き寄せられてきたのね。
もう船に戻りましょう。
解説)
昨日は画像テキストは制作してあったものの、
アップするのを完璧に忘れていて、
パスしてしまいました。
Jan 10, 2026
遺跡のことなど

一行はそれぞれ
海景を満喫している。

海を見ていて思いついたんだけど、
この貝、さっきの水盤に戻そうと思うの。
海の夢が見られる貴重な巻貝なんでしょ。
とアイスが言った。
そうなんだけど、
貝の見せてくれる夢は、
きっと貝の思い出の世界なのよ。
ということは、もともとこの貝は、
この島で生きていたんじゃない?
故郷に帰してあげようと思ったの。
そうかもしれないけど、
そうじゃないかもしれない。
でも思いついたのなら実行すべきね。
とヴィヴィアンが言った。

サラは水盤まで戻っていって、
巻貝を水盤の中にそっと戻した。

するとトンピリビが飛んできて、
石段の上に止まった。
良いことをしましたね。
これで巻貝も安らかに眠れると思います。
あら、あなた人の言葉が話せるの?
モノマネ鳥は仮の姿で、
私は精霊なんですよ。
この島でクックドゥーと出会って以来、
ずっと彼に付きそっていますが。
あの木の上で、
ずっと私たちの行動を見てたのね。
それに、前に私の見た夢にも出てきたでしょう。
そうですね。
この島は、確かにあの巻貝の故郷。
私の故郷でもあるんです。
今ここは夢の中じゃないのよね。
でもどうしてこんなことに。
この島のことなら、
クックドゥーに聞くといいですよ。

クックドゥーか。
そういえば彼は、
島影を見ても特に驚かなかったわね。
ダリオと二人で船で留守番するって言って
上陸も辞退したわね。

とりあえず一行は
船に戻ることにした。
ヴィヴィアンは空が飛べていいなあ。
とシノが言っている。

船に戻ると、
夕暮れになっていた。
お帰りなさい。
もう夕食の支度ができてますよ。
とダリオが言っている。

みんなで夕食のテーブルを囲んでいる。
アイスがリュックに詰めてきた食材で、
調理された料理が並んでいる。
それでさあ。
クックドゥー。
あなたがこの島のことを知ってるって、
トンピリビが言ってたわよ。
あ、そうでしたか。
実はそうなんですよ。
島に上陸しなかったのにも
訳があるんでしょう。
実はそうなんですよ。
私がこの島を見つけたのは遥か昔、
まだ私が生きていてバリバリの
海賊船の船長をやっていた頃のことです。
海の夢が見られる貝を拾える島があるという、
船乗りたちの噂を聞いて立ち寄ったのですが、
確かにその通りで、
私はその夢の虜になりました。
それで溺死してからもその夢の中に、
生者を船員として勧誘しようとしていた。
そうなんですよ。
私にとっては自分の運命を狂わせてしまった、
あまり思い出したくない島だったんです。
でも生前何度も通いましたから、
このエクレア号がその島に向かっていると知っても、
驚きはありませんでした。
この船に魂があれば、そこに行くだろうなと。

アイスとヴィヴィアンがこの船を発見して、
久しぶりに乗員を乗せた船は喜んで
本能的にこの島に向かったというわけね。
とサラが言った。
そういう比喩が正しいかわかりませんが、
こいつはそういう奴なんですよ。
ちなみにエクレアというのは、
フランス語で稲妻という意味です。
かっこいいでしょう。

でもエクレア号が、
どうして忘れられた夢の世界の岸辺に
停泊していたのかしら。
その船は嵐で沈没したんでしょう。
夢の中では不滅なんですよ。
貝のみる夢の中では私と一緒にいて、
募集して契約した船員たちと一緒に
宝探しの航海を続けるんです。
というつもりでしたが、
ヴィヴィアンさんに諭されて悔い改めたんです。
そうだったわね。
私はあの遺跡が気になるわ。
島に古代文明があったっていう名残でしょ。
何度も島に来たのなら、クックドゥーさん、
何かご存知ないの?
とシノが言った。
大昔に魔族の都があったっていう
話は聞いたことがあります。
その魔族が島の巻貝に魔法をかけて
故郷を夢見る力を与えたっていうんです。
確かめようのない噂話ですが。
とクックドゥーが言った。
元は魔族の住んでいた島か。
島全体に魔法がかけられている
可能性はあるわね。
それで私たちが招かれたとか。
まさか。
だったら住人がいるの?
とりあえず
何か手掛かりがないか、
明日からゆっくり探索してみましょう。
解説)
続きます。