Dec 12, 2025
サバンナへの散歩 そのに

テリジノサウルスたちは
しきりにシェルを転がしたり
引っ掻いたりしていたが。

とうとう諦めて
去っていった。

シノさん、大丈夫ですか?
支障ないわ。
シェルは核攻撃にも耐えられる
シェルター仕様だからね。
さてと、先に進みましょうか。

一行はさらにジャングルを進み。

ようやく視界が開ける場所に出た。
あの平べったい木が見えるってことは、
もうサバンナが間近よ。
マジか。
今の駄洒落なの?

一行は広々としたサバンナ地域に到着した。

哺乳類かしら。
奇妙な動物もいるのね。
シマキリンと名付けましょう。

エトナはさっそく撮影を初めている。
きっと珍種なんだろうなあ。

あら、ティラノサウルスのお出ましよ。
シノ、乗る?
またあとでお願い。
ちょっと手足を伸ばしていたいの。
私の内部座席は狭いのが難点ですね。
解説)
続きます。
Dec 11, 2025
サバンナへの散歩

森の小屋にようこそ。
とシノが言っている。

壁のポスターは恐竜マップですね。
そうなの。
私も最初この夢の世界には、
恐竜がいるって聞いて来たのよ。
あなたたちと同じ観光客ね。
居心地が良くてここに棲みついちゃたけど。
シノさんは、
どんな種類の夢食いなんですか。
私は好奇心旺盛な夢食いで、
いろんな人の夢を渡り歩くことが好きなの。
私のせいで旅行好きになる人もいる。
この小屋に落ち着いてからも、
南の未来の世界やあなたたちの世界にも
遊びに行ったわ。

シノは佳奈に優勝トロフィを見せている。
これは、今年の5月にもらったの。
いいなあ。
私は広場のベーカリーに来て、
もう二年くらいになりますけど、
まだコスプレコンテストで
優勝したことないんですよ。
エトナたちは
窓の外で気持ちよさそうに飛ぶ
翼竜を眺めている。

ではそろそろ出かけましょうか。
シノはシェルに
頭上のハッチを開けてもらい、
シェルの中に乗り込んだ。
わーかっこいいですね。

4人はサバンナに向かっていく。
そのカメラ、ニコンですね。
ボニーさんに予備に借りてきたの。

4人はジャングルを進んでいく。
まるで道になってるみたい。
プラキオサウルスみたいな
大型恐竜の群れが通ると、
こんなふうな細道ができるのよ。

やがて見晴らしいのいい
小さな広場のようなところにでた。
あ、あれは?
テリジノサウルスだわ。
腕に巨大なかぎ爪を持ってるけど、
植物食の恐竜よ。

エトナは密かに近づいて
撮影を始めたが、
気づかれてしまったようだ。

なんと仲間が来て、
エトナは囲まれてしまった。
シノの乗ったシェルが
突進していく。

シノは首を引っ込め、注意を惹くために
耳障りな騒音を発しながら、
手足を折りたたんで
球状の防御体制をとっている。
テリジノサウルスは
しきりにかぎ爪で引っ掻いている。
エトナは駆け戻ってきた。
エトナ、こっちこっち。
恐竜がシェルに気を取られている間に
隠れましょう。
解説)
続きます。
Dec 10, 2025
シノの小屋まで

みすずの家を出た4人は
シノの小屋に向かっている。

4人は湖の岸辺から、
森に分け入る道に入っていく。

シノは通い慣れた道のように
すいすいと先導していく。
小屋まで遠いんですか。
割と近くよ。

行手を横切って
恐竜が走っていく。
あれはラプトルみたいですね。
と佳奈が言った。
よく知ってるのね。
映画見たので。

新たに恐竜が現れた。
ラプトルを追っているようだ。
あれはなんでしょ。
アクロカントサウルスよ。
凶暴な肉食恐竜だから
見つからないように。

追うのを諦めたみたいですね。
ラプトルの方が俊敏だからね。

エトナは後ろ姿を撮影している。
すごい迫力だったなあ。
ダリオさんのいた世界にも
恐竜っているの?
いたっていう話ですよ。
やはり大昔に滅びちゃいましたが。

一行はしばらくジャングルの中を進み。

シノの小屋にたどり着いた。

小屋の中からロボットが出てきた。
シノ。おかえりなさい。
ただいま。お客様をお連れしたわ。
こちらはシェル。
とても頼りになる私の相棒なの。
解説)
続きます。
Dec 09, 2025
森の散歩へ

まじかで恐竜が見られて
すごく楽しかったわ。
ところでシビルさんは
夢食いなんでしょう。
夢食いって、
夢に棲みついたり、
夢をコントロールする存在で、
いろんな種類がいるって、
みすずさんが言ってたけど、
初めて聞く言葉で驚いちゃった。
シビルさんはどんな夢食いなの?

私は夢に入り込んで夢見る人に
インスピレーションを与える夢食いなの。
私が住み着くと、その人には
予知する力がよく働くようになる。
そういう能力は元々その人が
持って生まれた力なんだけどね。
その力を目覚めさせるだけなんだけど。
私のせいで予言者や巫女になる人もいる。
すごいんですね。
私の夢にできてほしいなー。
その人の持っている資質によるのよ。
耐性がないと壊れちゃう人もいるから。
すごいんですね。
私の夢には来ないでください。
私も消耗するからね。
そういう力を呼び起こすには、
その人にも私にも深い静寂や孤独が必要。
私は今はこの夢の世界で静養中なの。
でも世捨て人っていうわけじゃないのよ。
何事もバランスが大切。

佳奈とエトナはみすずの家に戻ることにした。
佳奈は色々お世話になりました
と言っている。
エトナは棚に飾ってある
優勝トロフィを見つけた。

シビルに呪文を唱えてもらい、
佳奈とエトナはみすずの家に戻ってきた。
お帰りなさい。
シノとダリオさんも着いたところよ。
とみすずが言った。

振り返ったシノが、
あ。こんにちわ。
と言っている。

4人は互いに挨拶をして
名前を名乗りあった。
みすずから事情は聞いたわ。
恐竜見物に来たんですってね。
ちょうど私もダリオさんに
この世界を案内するところだったの。
一緒に行動しましょう。
とシノが言った。

佳奈とエトナは、シビルの暮らしている
島で見た恐竜の話をしている。
最果ての火山島か。
あそこは肉食恐竜がいないから安全ね。
この前みすずさんから
この世界全体の見取り図みたいなことを
教えてもらいましたが、
どんなルートで行くんですか。
とエトナが尋ねた。
私の住む森の中の小屋まで行ってから
サバンナまで出かけるかな。
すごく広いから、
空を飛んだり魔法を使わないと
最果ての砂漠や小島や雪山にはたどり着けない。
南の洞窟を抜けて未来世界に行くのもいいけど、
それも徒歩だとかなりの強行軍になるわね。
でも恐竜を観察するには
森の中やサバンナで十分よ。
ダリオさんは魔族だって聞きましたけど、
魔法を使えるんですか?
僕は、別世界から来た魔族なんだ。
君たちの住む世界のアフリカに、
鏡の扉を通り抜けて来たんだけど、
どうも呪文体系が違うせいか、
この世界では魔法がうまく使えない。
ダリオさんの住む世界を
案内してもらったけど、
そこはすごかったわよ。
世界のスケールがみんな6倍なの。
とシノが言った。
その話はまた今度にしようよ。
ややこしくなるから。
とダリオが言った。

じゃあそろそろ出発しましょう。
とりあえず私の小屋まで。
シェルが留守番してくれているはず。
シェルって誰ですか?
あ、そうか。
みんな知らないのね。
シェルはシェルター型のロボットよ。
だるまさんみたいな形をしてるの。

かくて4人は
みすずの家を後にした。
みすずとピリカが
見送っている。
解説)
続きます。
Dec 08, 2025
島の散歩

エトナはカメラを構えている。
逃げないんですね。
大人しいのよ。

ここはシダが多いの。
恐竜がいるかもしれないから、
群生地に行ってみましょう。

あ、いましたよ。

佳奈の近くのシダの茂みから
ガリミムスが立ち上がった。
あらら。

エトナはさっそく
カメラを構えている。
ガリミムスは特に臆する様子もなく
シビルたちを眺めている。

3人は休憩している。
この島の恐竜たちは、
みんなシビルさんに懐いているんですか。
懐いているわけじゃないけど、
襲っては来ないわ。
前に火山の噴火があって森林が焼けた時、
フミコが来て魔法で森を修復したのよ。
その時のことを覚えているんじゃないかしら。

火山の見える
高台に行ってみましょう。

今も燻っているんですね。
水晶玉に封印されていた
火の精霊バーンのせいで噴火したんだけど、
水の精霊バルやヴィヴィアンたちの働きで
なんとか鎮火して、
今は元の姿に戻ったのよ。
噴火見たかったなあ。

3人は帰路についた。
この島の恐竜で、私が見かけるのは、
さっきの二種類くらいね。
島全体を調べたわけじゃないから、
他にもいるかもしれないけど。

散歩を終えて、
3人は小屋に帰り着いた。
解説)
続きます。
Dec 07, 2025
散歩の続き

佳奈とエトナは
みすずの家に戻ってきた。
あら、あそこの人誰かしら。
広場で見たことあるわよ。
8月初めのコンテストで優勝した人じゃない?
名前は忘れちゃったけど。

キッチンでみすずに出会った。
お帰りなさい。
湖畔の散歩はどうだった?
感動しました。
やはり本物は違うわ。
あのー、2階のベランダで
オレンジ色の髪の人を見かけたんですが。
ああ。
彼女はあなたたちが散歩をしている間に
遊びに来たの。

みすずはシビルを紹介している。
私はシビル。
あなたたち、コンテストで優勝した時、
広場で喝采してくれたわね。
よく覚えているわ。
私はエトナといいます。
あの時のことは私も覚えてます。
オレンジ色のその髪型は
すごくユニークなので忘れないわ。
私は佳奈。私も覚えてます。
サラたちと一緒にジープで
郊外に行った人でしょ。

4人はコーヒーを飲みながら話している。
この忘れられた夢の世界の中央部には
森林地帯が広がっていて、
そのちょうど真ん中くらいにこの家はあるの。
東に行くとサバンナがあり、やがて砂漠地域。
北に行くと海に出て、その向こうに小島がある。
西に行くと雪に覆われた山脈がある。
この世界には空き家が点在していて、
この世界を訪れた夢食いたちは、
そういう家を見つけて住み着くことがある。
森の中の小屋にはシノが住んでいるし、
東の砂漠の家にはセリーヌが住んでいる。
西の雪山の小屋にはラルゴが住んでいるし、
北の小島の家にシビルが住んでいるのよ。
随分広い世界なんですね。
そうなの。
でも、そういうことがわかったのはつい最近のこと。
アイスやヴィヴィアンが空を飛んで
最果ての地域の様子を教えてくれたの。
私たちが暮らすのはだいたいこの森の中だけ。
遠出をするのは危険だからね。
まだわからないことも多いのよ。

ヤミーがバナナを運んできた。
気楽に恐竜観察ができると思って来たけど、
けっこう危険が多くて大変な世界なんですね。
遠出ができないのは残念だなあ。
この湖の周辺なら大丈夫よ。
それにシノかナディアが帰ってくれば、
森の中ならガイドしてくれる。
彼女たちが戻ってくるまで待つのなら、
私の住む島に来てみる?
大人しい草食恐竜しかいないから。
とシビルが言った。

佳奈とエトナは
シビルの言葉に甘えることにした。
シビルさんも魔法を使えるんですか?
私は魔法は使えないけど、
行き来するために、
アイスに呪文だけ教えてもらったのよ。

3人は北の小島の
シビルの住む家に移動した。

霧が濃くて雰囲気あるところですねー。
そうでしょ。
火山の島だから割と温暖で、
静かな一人暮らしには最適。

あれはサイカニア。
みすずたちの住む森にいるのとは、
別種みたいだけど、
大人しい草食恐竜よ。
いい感じだなあ。
解説)
続きます。
Dec 06, 2025
岸辺の散歩

ディアナがいれば案内役を頼めるけど、
あいにく留守だし、えーっとシノは。
シノはハロウィーンに町に来てたけど、
帰る時にダリオさんと旅行するって言ってた。
ダリオさんの住む世界を見てから、
こっちの世界を案内するって言ってたから、
そろそろ戻ってくると思うわ。
とサラが言った。
シノは森の中の小屋に住んでるの。
恐竜観察の好きな夢食いなので、
頼めば喜んで案内してくれるはず。

ディアナかシノが戻ってくるまで、
危険だから遠出はしないほうがいいわよ。
戻ってきたら案内を頼みましょう。
それまでは家の近くにいて。
そこの湖の周りでも恐竜観察はできるから。
そーなんですね。
じゃあ、早速散歩に行ってきます。

みすずさんって親切な人ね。
恐竜に乗ってたのには驚いたわ。

みすずさんが言ってたみたいに、
湖の周りをぐるっと回ってみよう。

二人はヤミーに出会った。
さっきはどうも。
わー、バナナが取れるのね。
お一つ、いかがですか。
あ、この道はジャングルに続いています。
曲がらずにまっすぐ行けば湖を回れますよ。

二人は湖の岸沿いに直進することにした。
なんかワクワクしちゃうね。

草食恐竜のサイカニアが水を飲んでいる。
すごいすごい。
あ、あれは溺れているのかしら。
気持ちよさそうよ。
水浴びしてるんじゃない?
岸から転げ落ちたようにも見えるけど。

サイカニアたちが去ったので、
二人はさらに進んでいった。
大きいわねー。

プラキオサウルスは、悠然と
湖面を眺めていた。
魚影を見ているようだ。
解説)
続きます。
Dec 05, 2025
みすずの家で

サラが呪文を唱えると扉が開き、
3人はさっそくみすずの家に向かった。

3人は鏡の扉を抜けて、
みすずの家に到着した。
あら誰もいないのね。
ちょっと様子を見てくるから
ここで待ってて。

佳奈とエトナは、
湖の景色を眺めている。
ここがジェラシックワールドね。

サラはフミコと一緒に戻ってきた。

佳奈さんとエトナさんね。歓迎するわ。
といっても私の家じゃないけど。
とフミコが言った。
お世話になります。
今、みすずは散歩に出かけてるの。
あいにくディアナも精霊たちの国に出かけていて留守。
佳奈さん、サラから話を聞いたけど、
クリスマスまでの長期休暇なんですってね。
恐竜観察をするなら、この家を拠点にするといいわ。
泊まれる部屋を準備するからゆっくりしていって。
みんなに紹介するわ。

一行はフミコに案内されて、
一階のキッチンに向かった。
この子はミミコ。私と同じ魔族なのよ。
そこにいるのはピリカと言って、
子鹿のフィギアの精霊。

ミミコが泣き出したので、
フミコは部屋に連れて行き、
サラが案内することになった。
湖に面した廊下の向こうに
カエルがいる。
あれはカエル王女。
有名な夢食いのカエル大王の娘さんよ。
夢食いってなんですか。
夢の中に出現して夢に棲みついたり、
夢をコントロールしようとする存在の呼び名。
いろんな種類がいるの。
この家の主人のみすずも夢食いよ。
ふーん。
そういえば、ここは夢の中なんですね。
そうよ。
ここは忘れられた夢の世界。

一行が廊下を歩いていくと、
ロボットたちに出会った。
ちょうどよかった。
ロボットの皆さんを紹介するわ。
青いのがヤミー、赤いのがヤッピー。
向こうでオウム貝を採取してるのがヤビー。
みんな未来世界から来て、
ここで暮らしてるのよ。
コンニチワ。
こちらは佳奈とエトナ。
この世界に恐竜観察に来たの。
しばらく泊めてもらうみたいだから、
仲良くしてあげてね。
お世話になります。

サラはもう帰っちゃうの。
ええ。広場に戻る時は、
魔族のフミコに頼んでね。
彼女が呪文を知ってるから。
あ、なんだろう。
地響きがして、
ジャングルがわさわさ揺れていますよ。
と佳奈が行った。

ジャングルの中から
アンキロサウルスに跨ったみすずが現れた。
あらサラ。お客さん?
二人は恐竜観察に来たの。
しばらく泊めてもらえる?
もちろん大歓迎よ。
お二人とも普通の人間みたいね。
現実世界の広場でお見かけしたかしら。
みすずさんですね。
私はエトナと言います、どうぞよろしく。
6月初めのコンテストで優勝されたの覚えてますよ。
お世話になります。
私は佳奈。いつも広場のベーカリーにいます。
10月のハロウィーン月間にも来られたでしょう。
すごい恐竜に乗ってるみたいですが、
恐竜ってそんなに懐くものなんですか?
この子は特別。アンキローっていうのよ。
解説)
続きます。
Dec 04, 2025
クリスマスシーズン そのさん

広場ではクリスマスシーズン用の
飾り付けがほぼ完了していた。

今年もベーカリーの出店が作られ、
アルバイトのフローラもやってきて、
クリスマスケーキや七面鳥の予約受付や、
各種ケーキの販売を初めている。

毎年恒例で、
広場の出店は歳末の風物詩ね。
今年はちょっと値上がりしてるのよ。
やっぱり。

サンタも視察に来ていた。

今年も早いお出ましですね。
視察を終えたら、
肉まんを食べるのが楽しみなんだよ。

ドルフィンで旅行用に着替えして
装備を整えた佳奈がルビーと話している。

すっかり準備ができたようね。
護身用にこの銃を持って行って。
いいんですか。
随分頑丈そうな銃ですね。

CGで開発された最新式の拳銃よ。
少佐から特別に譲り受けたの。
どっかでみたようなデザイン。
あ、ブレードランナーの。
ええ、デザイン担当者が
SF映画オタクだったからって言ってたわ。

そこにカメラマニアのエトナがやってきた。
佳奈、恐竜を見に旅行に行くそうね。
私も一緒に行っていい?
もちろん。
マヤ先輩にも声をかけたんだけど、
レイチェルさんがいないので、
アンのメンテがあるからって断られちゃった。
二人の方が何かと安全。
と佳奈が言った。
エトナは、デイリープラネット紙と
フリーカメラマンとして契約してるでしょ。
鏡の扉や異世界のことは秘密だから、
撮影しても恐竜の写真は使えないわよ。
とルビーが言った。
はい。そこのところは承知しています。
純粋に趣味として撮影したいんです。

佳奈とエトナは
サラたちの部屋に向かった。
解説)
続きます。
Dec 03, 2025
クリスマスシーズン そのに

文学青年は
近くの神社の境内を散歩している。

ジェニーたちの部屋には、
恒例のクリスマス用の飾り物がレンタルされていた。
今年もミニツリーね。

文学青年が帰ってきた。
おかえりー。
神社の銀杏が綺麗だったよ。
おや、今年もミニツリーか。
これから粉雪をかけるところ。
とたまきが言っている。

たまきはミニツリーに、
小麦粉を振りかけた。
いい感じね。
と言っている。

探偵事務所にも
リタがドルフィンの倉庫から
ミニツリーを運んできた。

小麦粉じゃなくて、
粉砂糖の方がキラキラして
いいんじゃない?
それはもったいないよ。

サラたちの部屋には、
佳奈がクリスマスグッズを運んできた。
ご苦労さまと言われている。

人気のミニツリーは品切れで、
キューピーのサンタを持ってきました。

これ可愛いくて大好きよ。
ところでサラ。
私クリスマスまで休暇をもらったの。
それでレイチェルさんが言ってた
恐竜がいる世界に行ってみたいんだけど、
そこは未来の世界で、
鏡の扉を使わないと行けないんでしょ。
それでルビー先輩に言ったら、
サラなら呪文を知ってるって。
ふーん。
いいわよ。連れて行ってあげる。
恐竜は未来の世界にもいるけど、
もとは忘れられた夢の世界から来たもの。
そっちの方が恐竜が沢山いるから、
観察しに行くならそっちの方がおすすめね。
そーなんだ。
その世界には、広場のコンテストで優勝した
みすずやディアナが暮らしている家がある。
フミコもそこでミミコっていう子供の
世話をしているから、そこに行きましょう。
きっと歓迎してくれると思うわ。
でもね。家の周りで観察するだけならいいけど、
遠出してあちこち見て回りたいなら
それなりの装備はして行った方がいい。
わかったわ。
準備して出直ししてくる、
解説)
続きます。
Dec 02, 2025
クリスマスシーズン

クリスマスシーズンを迎えて、
広場では飾り付けが始まった。

ドルフィンの倉庫から、
様々な飾り物が搬出されている。

ドルフィンのマスターは、クリスマスツリーの
埃を払っている。
倉庫に新しく入荷したグッズはないんですか。
君たちの被っている帽子くらいかな。

佳奈はルビーと話している。
もうすぐ休暇もらえるんですね。
クリスマスの飾り付けが終わったら、
旅行に行こうと思います。

楽しんでいらっしゃい。
行先はアフリカかしら。
マークの村外れにはホテルもできたっていうし、
佳奈も去年遺跡探検に行ったから、
知り合いも多いんでしょう。

マークの村も魅力的ですが、
できたら恐竜を見に行きたいんです。
ハロウィーンの時に、
広場に帰ってきたレイチェルさんが、
「向こうの世界はまるでジェラシックワールドよ」
って言ってたでしょう。
私も今年の8月に、ジョー軍曹とエルザと一緒に
映画「ジェラシックワールド」を見に行ったので、
その言葉が気になっちゃって。
でも、レイチェルさんが行ったのは未来の世界。
鏡の扉を使わないと行けないんですよね。
行先の呪文を知らないと行けないわね。
レイチェルもツナもナディアも、
アイスもヴィヴィアンもフミコも、
あいにく今はこの町にはいない。
あ、サラに頼んでみたら?
サラたちの部屋に固定式の鏡の扉があって、
サラなら呪文を知っているはずよ。
ついでに配給するクリスマスグッズを
サラたちの家に届けてね。
わかりました。

広場の近隣にはドルフィンの倉庫から
クリスマスグッズが配給されて
飾られるのは近年の恒例になっていた。
高台の休憩所でも。

喫茶ペンギンにも。

広場でも飾り付けが進んでいた。

マンゴー亭の軒先でも。
あの箱の中身、毎年気になるのよね。
解説)
続きます。
Dec 01, 2025
コンテストの優勝者の発表

早くも師走。
広場では平穏な朝が訪れていた。

アンナとレイは
クリスマスシーズン用の
帽子を支給されていた。
これチャイナドレスに
全然似合わないと思わない?
色はマッチしてるわよ。

ベーカリーのテーブル席では、
ルビーたちが月例のコスプレコンテストの
優勝者の選考会をしていた。
先月は新しい登録者っていなかったわね。
シモーヌっていう観光客の人が来たけど、
彼女は参加登録しなかったし。
この町の住民の常連から選びましょう。
みんな参加賞のチョコレート狙いで
最近は手を抜いて普段着で登録するから
選ぶのが難しいのよ。

佳奈とリタが、
参加賞のチョコレートが入った、
掴み取り用の箱を運んできた。
ルビー、そろそろ発表予定の時間よ。

結局決まらなかったなあ。
いつもながら私に一任されちゃた。

ルビーは広場を眺めている。

ルビーはマイクをオンにして
発表を始めた。
みなさん。
先月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
厳正中立な審査の結果、
優勝されたのは
赤い帽子を被ったレイさんです。

レイ、良かったわね。

万来の拍手と歓声の中、
レイは優勝トロフィを授与されている。

私が優勝した理由聞いてもいいですか。
クリスマスシーズンの到来を
象徴するコスプレっていうところかしら。
とルビーが言った。
この帽子、さっき支給されて
被ったばかりなんですけど。
細かいことはいいのよ。
解説)
続きます。
Nov 30, 2025
洞窟で

3人は雪山を登っていく。

この景色見覚えがある。
洞窟はこのあたりのはずよ。
とアイスが言った。

あったあった。

ここを抜けて来て、
初めてこちらの世界を見つけたのよ。
私とトロンが、
向こうの入り口を雪で埋め戻したから、
今は行き来できないようなっている。
とアイスが言った。
不思議ね。
この世界を作った時、
そんな別世界との通路を
作った記憶はないんだけど。
とシモーヌが言った。
あ、誰か来るわ。
とディアナが言った。

洞窟の奥からフクロウがやってきた。

ディアナ様。
アイスさんですね。
それにあなたはもしかして。
とフクロウが言った。
私の名はシモーヌ。
あなたも私が倉庫で見つけて
この世界に招いたフクロウの置物の精霊ね。
お名前はなんていうの?
オルペミと言います。

雪山を散歩してたんですが、
吹雪がひどくなって、
この洞窟に避難していたんです。
うたた寝していたら、
話し声が聞こえたので。
吹雪はもう収まっているわよ。
でもどうして私の名前まで知ってるの?
とアイスが言った。
今年の6月の終わり頃、
ディアナ様が帰ってこられた時、
一緒におられたじゃないですか。
あの時、オウル様が王座の間に
みんなを集められたでしょう。
あの場所に私もいたんですよ。
そうだったのね。
あなたたちの姿はみんな個性的だけど、
数が多いからとても覚えきれなかった。
オルぺミさん、それで、この洞窟の奥は?
とアイスが尋ねた。
行き止まりですよ。
出口は雪で埋まっています。

雪山は天候が変わりやすいのね。
また吹雪かないうちに山を降りましょう。

時は省略するかのように流れ、
一行はお城の近くまで帰ってきた。
解説)
続きます。
Nov 29, 2025
散歩の続き

3人は見晴らしのいい高台から
湖の湖畔に降りて行った。
あれは恐竜?

庭園で見かけたフクロウたちがやってきた。
ディアナ様、お連れの方は、
やっぱりあの時の方だったんですね。
庭園でお見かけしてオウル様にお聞きしたんです。
散歩されているとのことで、
もしかしたらら、ここに来られるんじゃないかと
お待ちしていたんですよ。
庭園でアコーディオン弾いてた方たちね。
あの恐竜は?
あれはドラゴンドラと言って、
遊覧船なんですよ。
以前、観光にいらしたサラさんとピリカさんを、
お乗せしたこともあります。
湖を一周するんです。
お乗りになりますか。
楽しそうだけど、
今はあちこち見て回ってるの。
またいつかね。
とシモーヌが言った。

3人は話しながら、
森の中の細道を歩いている。
この世界を作るときに、
湖にあんな遊覧船を浮かべた記憶がないんだけど。
とシモーヌが言っている。
私も遊んだ記憶がないです。
とディアナが言った。
乗り物なんでしょ。フクロウたちが自分たちで
作ったんじゃないの?
あ、あそこにウサギがいるわ。
とアイスが言った。

アイスは、初めてこの世界に来た今年の6月に、
やはり森の中で三匹のウサギに出会って、
お城へ行く道を教えてもらったことを
思い出して、近づいていった。
やっぱりあの時のウサギだわ。
こんにちわ。

ウサギたちは驚いているようだ。
ディアナ戻ってきたのね?
それにこの世界の創造主のシモーヌも。
と一匹が言った。
私のことを知ってるのね。
私は昔のことをあんまりよく思い出せないの。
私は昔ここに住んでいたらしいけど。
とディアナが言った。
あなたたちはウサギのフィギアの精霊?
私も見覚えがないんだけど。
とシモーヌが言った。
それは無理ないわ。
あなたにお目にかかるのは初めてなのよ。
でもあなたのことはよく知ってるの。
私たちは洞窟を通ってこの世界に来て、
この森に住んでるの。
だったら隣の忘れられた夢の世界から侵入した
夢食いじゃないの?
とアイスが言った。
夢食いとも精霊とも違うわ。
でも詳しいことは秘密なのよ。
秘密秘密と、ウサギたちは
口々に言った。

3人は謎めいたウサギたちと別れて
散歩を続けることにした。

ずっと見に来なかった間に
この世界、随分変わっちゃったみたいね。
今のウサギたちは何だったのかしら。
とシモーヌが言っている。
私のこと覚えてたみたいだから、
ずっと前からいたみたい。
シモーヌさんのことも知ってるって
言ってたし。

セコイヤの大木の根元に
腹這いになっていた大トカゲが、
アイスたちに気がついたようで身を起こした。
前にもここで出会ったわね。
こんにちわ。
とアイスが言った。

ふむ。君とは五ヶ月ぶりだな。
おやこれはこれは、シモーヌさん。
なんとディアナも一緒か。
あなたのことは覚えてるわ。
フクロウたちと仲良くやってる?
とシモーヌが言った。
もちろんですよ。
とはいえ私は森の中で暮らしていて、
普段あんまり交流はないんですが。
私はね。ディアナのためにこの世界を作ってから
今までずっとここを訪れたことがなかったの。
それで忘れられた夢の世界でディアナと再会して、
彼女が長い間この世界から失踪していたことも知った。
彼女もよく覚えていないみたいなので、
その出来事のいきさつを知りたいのよ。
何か思い出せる?
とシモーヌが尋ねた。
ディアナがいなくなった時、
女王様がいなくなったと大騒ぎしていたから
フクロウたちの方がよく知っていると思いますよ。
ディアナは突然いなくなったらしいです。
フクロウたちは国中を捜索して、
雪山に洞窟を発見して、隣の世界にまで
捜索隊を出したと聞いています。
でも結局見つからずじまいでした。
ディアナ、今までどこに行ってたんだい。
と大トカゲが言った。
私は覚えていないのよ。
気がつくと記憶を失って森の中にいたの。
ずっとその森で知り合った夢食いたちと暮らしていた。
そこがこの国と洞窟で繋がっている隣の
忘れられた夢の世界だったって知ったのは最近のこと。
残念だけど、あなたのことも覚えていないの。
とディアナが言った。
ウサギたちのことは何か知ってる?
とアイスが尋ねた。
あれはいつの間にか森に住み着いた
気のいい無害な連中ですよ。
洞窟から来たって言ってたわよ。
それは初めて聞くなあ。
てっきりシモーヌさんが招き入れたんだとばっかり。
フクロウたちが洞窟を発見したんだと思ってましたが、
まだディアナがいなくなる前から
ウサギたちはこの森にいましたから、その頃から
洞窟は別世界と繋がっていたんでしょうね。

3人は洞窟まで行ってみることにして、
雪山を登っている。
色々聞いたけど、ディアナの失踪の時の様子について、
手がかりってほとんどつかめなかったわね。
逆に謎が増えたみたい。
解説)
続きます。
Nov 28, 2025
常春の国で

3人は城を出て散歩に出かけた。
オウルたちに見送られている。

庭園ではフクロウたちが
アコーディオンを弾いていた。
平和そうね。

今の人、あの方じゃない?
まさか。
と飛び上がって噂している。

この世界を作った時に来て以来ね。
近くに森や湖があるはずよ。
私、失踪する前に、
ここにいた頃のことは、
よく覚えてないんです。
でも歩いていると、
なんとなく思い出しそう。
とディアナが言った。
私は雪山の洞窟からお城までのルートは知ってる。
お城の周辺を散歩したセリーヌが、
湖があるって言ってたわ。
とアイスが言った。

天気が良くて、お花見日和ですね。
常春の国だからね。

あそこにカマキリがいますよ。

カマキリはシモーヌを見ると
近づいてきた。
もしかして、あなたは私をここに
連れてきてくれた方でしょう。
おかげ様で楽しく暮らしています。
それはよかったわね。

3人は、見晴らしのいい湖のほとりにでた。
怪鳥が近づいてくる。
今度は何かしら。

怪鳥は一行のまじかに急降下して
ホバリングしている。
アイスは胸ポケットの銃を抜いて、
とっさに身構えた。
おいおい、俺は怪しいものじゃないよ。
お城の庭園の彫像の家に住んでいる
アーキスっていうんだ。
ヴィヴィアンっていう悪魔と契約して、
この国の巡回パトロールしている。
あんたたちのことは、オウル様から聞いた。
この世界を作ったシモーヌっていう人が
来ているっていうんで、
巡回のついでに挨拶しに来たんだ。
それはわざわざどうも。
私がシモーヌよ。
とシモーヌが言った。
そうか、俺は夢食いのアーキス。
あんたは魔族なんだな。魔族は、
こんな世界を作れるんだからすごいものだな。
いろいろ話をしたいところだが、
あんたたちは散歩の途中みたいだし、
俺も巡回の途中なんだ。そろそろ行くよ。

アーキスは飛び去っていった。
この世界にも夢食いモンスターが住んでるの?
彼の名前を聞いて思い出したけど、
ヴィヴィアンが彼のことを言ってたわ。
雪山の洞窟を通って偶然この世界に
紛れ込んだ夢食いモンスターがいて、
この世界が気に入って定住したがっていたから、
望み通りにしてあげたって言ってた。
アーキスっていう名前もヴィヴィアンが
名付けてあげたんだって。
とアイスが言った。
もともと夢食いモンスターは
侵入した世界を征服したがるものでしょう。
だめだったら別の世界を求めて消えていくはず。
それが巡回パトロールをしてこの世界を守っているなんて。
悪魔との契約だからね。
ヴィヴィアンがどんな契約をしたんだか。
解説)
続きます。