Apr 29, 2025
お引越し

みすずの家への引越しが始まった。
ヤミーとヤッピーは、
家財道具を持って鏡の扉に向かっている。

アイスとフミコが話している。
魔法の力で鏡の扉をこれ以上大きくするのは無理ね。
でもこれでシエルニがぎりぎり
通れる大きさになったわ。

トリコは通れないなあ。
ここに置いていくと
野生に戻っちゃうかしら。
私が連れて行くわ。
とナディアが言った。

結局ナディアとトリコを残して、
一行は鏡の扉を抜けて、
みすずの家の近くの森蔭に移動した。
ツナとレイチェルが出迎えている。

早速サラたちはみすずに挨拶している。
ようこそ。
空いてる部屋を自由に使ってね。
あら赤ちゃんが中で寝ているのね。
とシノが言った。
このこはミミコと言います。
私はシェルニ。シェルター型ロボットです。
人を収納できるんだ。
面白そう。あとで乗せてくれない?
いいですよ。

その頃、ナディアは
トリコに跨って出発していた。
一緒に動いた方が安全だからね。
向こうでティラノサウルスに乗ったのが
いい予行練習になったわ。

岩の門をくぐり。

洞窟を抜けて。

恐竜には目もくれず、
サバンナを走り抜ける。

森林地帯を抜けて。

ようやく湖のほとりに出た。

あそこが新しい家。
この世界のどこかには、
君の両親もいるはずよ。
とナディアはトリコに言った。
解説)
続きます。
Apr 28, 2025
ヤビーたちの家で

その頃、南の世界の
ヤビーたちの家では。
トリコ随分大きくなったわね。
このシチューは君用じゃないのよ。

一晩経つけど、みんな戻ってこないわね。
どうしているのかしら。
アイスの付けている指輪から、
様子がわかるわ。
ちょっと見てみましょう。
とフミコが言った。

フミコが呪文を唱えると、
幻影が浮かび上がった。
誰かの家みたい。
住民がいたんだわ。

みんな楽しそうに食事してるわよ。
美味しそうなもの食べてるなあ。
こっちは毎日ナーガラと、
ドラゴニアベリーなのに。

そうそう。
ミミコをシェルニに
預かってもらいましょう。
何かの時の予行演習ね。

ミミコはシェルニの
頭部のカプセルの中で
頭を覗かせている。
クッションを詰めて、
安全ベルトで固定したから、
お外も眺められるわよ。
この状態で、
ちょっと試しに散歩して来ます。
とシェルニが言った。

シェルニはミミコを乗せて
近くの小川まで歩いて行った。
なんと向こうからトリコがやってくる。

シェルニは素早く手足を引っ込めて、
防御体制を取った。
トリコはこれは何だろうと
つついている。

その頃、家の庭隅に出現した鏡の扉から、
アイスとナディアが現れた。
おかえりなさい。
向こうの世界と鏡の扉で繋げたのね。
さっきあなたたちの様子を魔法で見てたのよ。
とフミコが言った。

アイスは探検してきた北の世界の
様子をみんなに報告している。
恐竜が沢山生息していることを除けば、
ほとんどこっちのジャングルと環境は変わらない。
みすずさんっていう住民もいてね。
彼女の家にお世話になっているんだけど、
こちらの様子を話したら、
よければみんなで引っ越して来たらっていうのよ。
みすずさんの家は広くて快適だし、
ミミコを育てる環境としては、ここより、
ずっといいんじゃないかと思うんだけど。
ただ、
みすずさんと言うのは普通の人じゃなくて
夢食いで、彼女が言うには
あちらの世界は、かって魔族のみた夢が、
消えずに残ったままの夢の世界らしい。
魔族のフミコとしてはどう思う?
そんな世界だとしたら、
夢食いが住みついて当然かもしれないわね。
そういう特別な世界は、見た人が忘れてしまっても、
夢自体に宿った魔力で消えずに残っているのよ。
その力とうまくやっていければ受け入れてもらえる。
ご厚意に甘えて、引越してみればいいんじゃない?
もし問題があれば戻ってくればいいのよ。
ポイントは美味しそうな食べ物ね。
とサラが言った。
解説)
続きます。
Apr 27, 2025
朝の散歩

夜が明けて、朝もやの中、
弱肉強食のタフな1日が始まっていた。

おはよう。
爽やかな朝ね。
お出かけ?
散歩に出かけるの。
じゃあ私も付き合うわ。
とナディアが言った。

いい天気になりそうね。
恐竜観察には最高。
あら、何の鳴き声かしら。

散歩って。
アンキロサウルスの散歩よ。
私は背中に乗って森林浴。
この子、アンキローって呼んでるの。

ナディアは低空飛行をしながら、
付き合うことにした。
みすずさん、恐竜と会話できるんですか。
少しはね。
それも私がここに住みついた理由の一つよ。

あら。
こっちに来るのは、
やばい奴じゃないですか。

ティラノサウルスは、
巨大な頭部をみすずの至近に伸ばして来た。

今、何言ってたんですか。
俺の背中にも人を乗せてみたいって。

何だかなあ。
とナディアは思っている。
解説)
続きます。
Apr 26, 2025
家でくつろぐ

シノたちも家に招かれ、
自己紹介を終えた後、
一同が揃って居間で歓談している。
みすずは質問ぜめに会っている。
この世界は夢の世界だって、
シノさんから聞きましたが、
誰が見ている夢なんですか。
みすずさんが住んでいるということは、
みすずさんが見ている夢なの?
夢の世界にも果てはあるんですか。
観光客が来るというのはなぜ?
現実の南の森と、
どうして門で繋がっているんでしょう。
あの恐竜たちはなんなんですか?
とても一度には答えきれないわ。
それに全てのことを知ってるわけじゃないの。
と言ってみすずは話し始めた。

まずね。南の森は現実っておっしゃったけど、
一つの世界であるという意味では、
この夢の世界と変わらないのよ。
互いに異なる世界であるというだけ。
生まれては消えていく無数の世界は
それぞれが泡のようなもの。
その世界の間を行き来できるものがいて、
それは夢食いと呼ばれている。
夢食いは姿も性質もさまざまで、
ある世界に入り込んで支配したがるものもいれば、
ひっそりと住みついてその世界を守るものもいる。
気ままな旅人のような夢食いもいる。
ここまでが予備知識ね。
世界の間を行き来できるって、
それは魔族みたいなもの?
確かによく似た力を持っているけれど、
魔族っていうのは一つの世界に住む
人間の中の、特別な力を持つ種族の呼び名だから、
夢食いと魔族とは違うわ。
でもその魔族の持つ力がこの世界に関わっているの。
夢の世界は、普通は泡のように生まれては、
やがて消えてしまうもの。
けれど魔族の中には、稀に、そんな世界の性質を、
変えてしまう力も持っているものがいる。
そういう夢は夢見た人が忘れてしまっても、
実体化したまま残ることがあるの。
いつまでも消えない泡のように。
ここがそんな、
忘れられた夢の世界だというわけなのね。
夢を見ている人がいなくなった夢の世界は、
生きる世界を求める夢食いたちにとっては自由の天地。
私もシノもそんな夢食いの一人なのよ。
私の方が先にここに住み着いていただけ。
他にもそんな夢食いが住んでいるわ。

みすずも私も、さっきの分類だと、
平和主義の夢食いになりそうね。
でも私はみすずと違って、
定住型じゃなくて夢を渡り歩くのが好きなの。
今は恐竜ウォッチングに夢中だけど。
みすずは、ここになぜ恐竜がいるのか、とか、
南の世界に抜ける岩の門については知ってる?
とシノが尋ねた。
恐竜がいる理由は私にもわからないけれど、
夢見ていた人の生まれる前の
胎内の記憶が関係してるのかも。
それは大胆すぎる仮説じゃない?
それに恐竜だけじゃなくて、いろんな時代の
野生動物もいるみたい。
あの鹿もそうなの?
あの子はここに来て最初に知り合った友達。
あと、あの岩の門は夢食いが作ったものじゃないわね。
私が来た時にはすでにあったのよ。
この世界の場合、泡と泡がくっつくように、
何かの理由で、南の別の世界とくっついている。
そこに何かの理由で穴が空いている。
結局、その何かの理由はわからないのね。

やがて会合が終わり、
みんなジャングルを歩いて来て疲れたので、
午後はゆっくり疲れを癒そうということになった。
アイスとみすずが話している。
さっき、この夢の世界に、
他にも夢食いがいるって言ってましたよね。
ええ。この湖に住んでるのよ。
お守りにって、この鈴をもらったの。
ご紹介しましょうか。

ほらあそこ。
本人はカエル王女って名乗ってるわ。
白いカエルは
こちらを見て驚いている。

カエルはこちらに泳いできて、
みすずの膝に飛び乗った。
アイスさん。お久しぶりです。
え、君誰だっけ。
白いカエルに知り合いなんていたかな。
あ、君もしかして。
思い出してくれました?
私、白ガエルになりました。
とカエル王女が言った。
お知り合いだったの?
世間は狭いわね。
とみすずが言った。

ヤビーさん、よろしくね。
とシノが言っている。
どうぞよろしく。
何してるの?
水筒から水を補給しているんですよ。
胸のマークのところを開けて注ぐんです。
食事しなくていいなんて便利なのね。
そうでしょうか。

やがて、やや早い夕食が始まった。
ここは食材が豊かだなあ。
これ何の肉です?
もちろん恐竜のお肉よ。
などと話している。
ヤビーは見ているだけなのだった。

さっきのみすずさんのお話面白かったわ。
AIが生み出した仮想現実世界ってどうなんでしょう。
仮想現実世界にも異世界からの侵入者が来たんですよ。
とツナが質問している。
一つの世界なら、どこで生じても夢食いが
侵入する可能性はあると思うわ。
私は行ったことないけど。
などと話が弾んでいる。

やがて夜になった。
夢の中でも星空は澄んでいて、
南のジャングルと変わらないわね。

ナディアさん。
洞窟の中でツナさんから、戦時中の話を聞きました。
ナディアさんは戦争中活躍されたんですね。
あなたのお仲間を沢山破壊したという意味ならそうね。
ヤビーは、ナディアさんはCGの最後の生き残りだと
聞いたって言ってました。
作業用ロボットってお喋りなのね。
人類軍の生え抜きの女性戦士部隊CGの噂は
私も聞いていました。
私たちを開発したロボットが、
これでやっとCGと互角に戦えるな。
って言ってたんです。
そうなの?でもみんな死んじゃったからね。
あ。
ナディアは、ふと思い浮かんだことがあったが、
口にしなかった。

アイスは夜が白々と明けそめるまで、
カエル王女と話をしていた。
私が高台の休憩所にある水盤で暮らしていて、
ずっと旅に出た兄の行方を探していたら、
アイスさんが、
わざわざバッグの中に私を入れて、
兄の元に運んでくれたご恩は忘れもしません。
そんなことがあったわね。
あれから兄はあの土地と池を守る誓いを立てて、
今でもあの池をカエルの楽園にしたいと、
頑張っているんですが、
あるとき旅の夢食いカエル娘がやって来て、
その娘から、この自由な夢の世界の噂を聞いて、
私は兄と別れてこの湖に引っ越して来たんです。
せっかく兄妹で再会できたのに。
そうなんですが、兄がその娘に求婚したので、
私は独立を目指すことにしたんです。
そんなことがあったのね。
夢食いカエルは、魔族のみる夢に入り込んではいけない、
というのは父の教えですが、結果的に、
私たち兄妹は、二人とも教えに背いてしまったようです。
でも、この世界は特別。
みすずさんともお友達になれたし。
この湖には恐竜も来るし、大きな古代魚も棲んでいますが、
この世界に来て、私の体が白くなったせいでしょうか。
みんなちゃんと私を見分けて、
食べないでくれているんです。
それは良かったわね。
それはきっと、あなたが兄思いの
善良な夢食いカエルのせいよ。
とアイスは言った。
解説)
続きます。
アイスとカエル兄妹との最後の会話は、
2024年10月17日「賑やかな日々 そのご」
に出てきます。
Apr 25, 2025
みすずの家

アイスたちの一行は、
みすずに先導されて
ジャングルを踏み分けていく。

あれは。
あれはアンキロサウルス。
草食でおとなしい恐竜よ。
尻尾の先がハンマーみたいになっていて、
怒ると怖いけど。

一行は湖のほとりに出た。
ついたわ。向こうに見えるのが私の家。

対岸に建物が見える。
みすずと一緒にいた鹿が
駆け足で戻っていって
振り向いている。

一行は岸沿いに湖のへりを回って
建物の入り口に到着した。
鹿が出迎えている。

一行はみすずに招かれて
室内に入った。
湖に面しているので、
見晴らしはいいわよ。
とみすずが言っている。

案内されて奥のベランダに出ると、
先ほど見た湖の眺望が広がっている。
やはり大きいのがいるのね。
ここにはお魚が豊富なの。

一人住まいにしては、
随分立派なお住まいなんですね。
たまに来客があるから、
おもてなし用なんですよ。
あ、表で声がするわ。
来たみたいね

ヤビーが声のする方角のベランダに出てみると、
ちょうどシノたちが
到着したところだった。
ここもずいぶん貫禄のある建物ね。
でもきっと屋内は快適なのよ。
夢の中なんだから。
などというツナたちの声が聞こえる。
解説)
続きます。
Apr 24, 2025
シノの小屋など

ラルゴがアイスの危機を救ったあと、
アイスは仲間と合流するからと言って、
飛び去っていった。
ナディアたちはシノに案内されて
森の中を進んでいく。
ラルゴさん武器の扱い上手なのね。
私も前に襲われたことがあるんですよ。
あの怪鳥は南のジャングルにもいるんです。
プテラノドンのことね。
きっと岩の門を抜けていくんだわ。
みすずの家までもうすぐだけど、
私の小屋に寄っていく?
観光で来たって言ってたけど、
シノさんも、ここで暮らしているんですか。
空き家を借りてるだけなのよ。

あそこが私の小屋。
なんというか貫禄のたたずまいね。

中に入ってみると、居心地良さそうだなあ。
何もないけど、くつろいでちょうだい。

シノさんは、ここで何を?
主に恐竜のウオッチングね。
1億何千年も前に生きていた生き物が
リアルに見られるなんて素敵でしょう。
でも誰かの夢の中なんでしょう。
生きた実物なんて誰も見た人はいない。
夢の中だからこそ可能なのよ。
この小屋は安全なんですか。
壊されたら別の小屋を探すの。
でも滅多にそういうことは起きないわ。
彼らはいつも食べ物を探すのに夢中だから。
壁に恐竜の種別のイラストが
貼ってある。恐竜オタクなんですね。
とラルゴが言った。
あ、噂をすればなんとやら。
と窓の外を見ていたナディアが言った。

あれはなんていう恐竜?
ガリミムス。足が早くて頭がいい。
飛んでいるのはさっきの仲間ね。プテラノドン。
サバンナで戦っていた恐竜たちは?
アクロカントサウルスとサイカニアだったわ。

特に要注意なのは巨大なティラノサウルスね。
肉食で割と凶暴なの。
それって多分、
私がサバンナで食べられそうになった奴よ。
とナディアが言った。
そんなことがあったの?
などと小屋の中で話している。

一方、アイスは川沿いに低空飛行をして、
目印にしていた赤いヤビーの姿を見つけて
舞い降りてきた。

アイスはみすずを紹介されている。
僕がワニに襲われたところ、
恐竜がそのワニをくわえてすごいことになり、
その時、みすずさんが声をかけてくれて
みんなで逃げてきたんですよ。
とヤビーが言った。

お二人のお話によると、
皆さんは南の森から探索に来られたとか。
6人で来られたって聞きましたけど。
二手に分かれて探検しているんです。
別グループの3人も森に来ているんですよ。
今空中から確認してきたばかり。
あ、もう一人小銃を背負った
黒髪の知らない女性がいたかな。
それはシノね。シノはその人たちを
私に紹介するつもりなんでしょう。
じゃあ、これから私の家に参りましょう。
たぶんそこで合流できますよ。
とみすずは言った。
解説)
続きます。
Apr 23, 2025
アイスたちの探索 そのに

ワニはヤビーを川の深みに
引き摺り込もうとしているようだ。
レイチェルは銃を構えた。
その時ワニの背後に黒い影が。

なんと恐竜がワニをくわえている。
こっちに来て。
と背後から女性が声をかけた。

女性に先導されて、
ヤビーとレイチェルはその場を逃れた。

ここまで来ればもう大丈夫。
ワニを食べている間は追ってこないわ。
助かりました。
ところであなたは?
わたしはみすず。
この森で暮らしています。
あなたたちは旅の人?
さっきはその姿に驚いて引いちゃったけど。
ヤビーは作業用ロボットなんです。
私たちは南の森から来ました。
私はレイチェル。
初めての場所なので探索しているんです。
あの岩の門を潜ってきたのね。
もうご存知かもしれないけど、
ここは南の森と隔てられた
恐竜たちの住む夢の世界。
何もないけど、自由に恐竜たちを観察できるわ。
だからたまに訪れる人がいる。
今もシノっていうひとが観光に来てるのよ。

その頃、アイスは森の上空を飛び回っていた。
やっぱり透明な大気のバリアがあって、
南の森に行こうとすると跳ね返されちゃう。
ここは別世界なのね。

そのときアイスは、
背後からこちらに向かってくる怪鳥の姿に気がついた。
これはまずい。
羽根に跨った状態では戦えそうもない。

旋回して低空に逃げ切ろうとしたアイスめがけて、
怪鳥は至近に迫ってきた。
このままじゃ無理か。

その時、派手な爆裂音がして、
怪鳥の体がちりじりに弾け飛んだ。

低空に降下してみると、
ナディアたちの一行が見えた。
今の爆発はラルゴの撃った
ロケットランチャーだったようだ。
だから上空は危険だって
言ったでしょう。
とナディアが叫んでいる。
解説)
続きます。
Apr 22, 2025
アイスたちの探索

ナディアたちと二手に分かれたアイスたちは
急斜面の崖を登っていた。
私は必死で蔓草を伝って登ったけど、
あなたは吸盤がついてるし、
手足が伸びて楽そうね。
とレイチェルが言っている。

ヤビーは崖を登り切った。
何か見えますか。
見渡す限りジャングルよ。

南のジャングルと
あんまり変わらないなあ。
本当に別世界なんでしょうか。

私、ちょっと高く上がって、
周りの様子や
透明なバリアの存在を確かめてくる。
とアイスがいった。
私たちを見失わないでね。
ヤビーの赤い色を目印にするから、
もし川があったら、
川筋にでもいてちょうだい。
上から見つけやすいから。
そういうと
アイスは上昇していった。

二人はジャングルを進んでいく。
南のジャングルとは、
やっぱり違いますね。

小川がこの先で、
本流に注いでいるみたいだから、
そこでアイスさんの戻るのを待ちましょう。

あ、あそこに誰か。

二人の姿に驚いたようで、
女性と鹿は走り去っていった。

追っていくと、
さっきの鹿が振り向いている。
レイチェルさん、そこに。
水辺の草むらからワニが這い出してきた。

ワニは素早い動きで
ヤビーに襲いかかった。
解説)
続きます。
Apr 21, 2025
サバンナを越えて

ここが夢の中なんて信じられないなあ。
その彼女ってどこにいるんですか。
サバンナに来ることもあるけど、
みすずなら大抵西の森の家にいるわ。
西の森っていうと、
多分アイスたちが探検に行った方角だよ。
私たちも行ってみよう。
暇だから案内してあげる。
とシノが言った。

あれやばくないですか。
近くに行かなければ大丈夫よ。

一同は、足早に立ち去っている。
ジェラシックパークみたいだなあ。

ナディアはちょっと興味を惹かれて
恐竜同士の戦いを見ていくことにした。
これは結構な迫力だわ。

ナディアは戦いに見とれている。
あの尻尾のぶんまわしは、
なかなかのものね。

不意に背後から暖かな鼻息が。

空気をつんざくような咆吼と共に
恐竜は歯を剥いて口を開けている。
ナディアは、全速でジャンプした。

恐竜は辺りを眺めまわしている。
危ないところだったわ。

ナディアはみんなのいるところまで
飛んで行った。
どこで油を売っていたの?
ようやく森林地帯に到着したみたいよ。
と言われている。
解説)
続きます。
Apr 20, 2025
洞窟を抜けて

ナディアたちは洞窟の探検に向かった。
私が先導するから、
後からついてきて。
とナディアが言っている。

ナーガラの死骸も
卵の殻も無くなっている。

三人は洞窟内をしばらく進んで行った。
ナディアさんて勇敢なんですね。
本人は話したがらないけど、
彼女は戦時中、英雄視されていたのよ。
機械軍からは逆にとても恐れられていた。
あなたも戦場で出会わなくてよかったわね。
あ、薄明かりが見えるわ。

やっと出口が見えた。

やっぱり外は明るくていいなあ。

あ、あそこに誰かいますよ。
ナディアは浮上して身構えている。

あの洞窟を抜けてきたのね。
あなたたちも観光に来たの?
観光って、私たちは
南のジャングルから探検に来たんですよ。
ここはどうなっているんです。

ご覧の通り、起伏のある草原に
まばらに樹木のあるサバンナ地域ね。
もっと西に行けば森林があるし、
東には砂漠が広がっているわ。
あ、まだ名乗ってなかったわね。
私の名前はシノ。
ナディアとツナとラルゴです。

ここは観光地なんですか?
夢食いの仲間たちの間ではかなり有名ね。
じゃああなたは夢食いで、
ここは誰かの夢の中っていうこと?
そういうこと。
でも詳しいことは知らないの。
彼女に聞けばわかるかな。
解説)
続きます。
Apr 19, 2025
さらなる探検へ

トリコ成長が早すぎない?
一回り大きくなった気がするわ。
ああやって
ずっと食べ続けですからね。

ツナとレイチェルはシェルター型ロボットを
検分していた。
正面のカバーが開いたわ。
仮想現実世界で見つけたシェルと同じタイプね。
壊れてなければ操作は簡単。ここのレバーを引けば。

低い起動音がして、正面カバーが閉じ、
背面カバーが開くと、
折りたたまれていた両足が伸びて、
シェルター型ロボットは立ち上がった。
やったわ。
認識機能はどうかしら。

側面のカバーが開いて、
中から両腕が伸びてきた。
燃料が減衰しています。
至急燃料を補給してください。
と言っている。
燃料って、お水だったわね。
今貰ってくるわ。
あ、前にあなたと同じタイプのロボットに、
シェルっていう名前をつけたことがあるの。
あなたの名前は、
シェルニにするから、よろしくね。
シェルニですか。なんと安易な。
あ、了解しました。燃料をお願いします。

やがて、探索に出発するメンバーが
庭に集まっていた。
留守番はフミコとサラと、
シェルニって名付けたロボットと、
ヤミーとヤッピーに任せるわ。
みんな準備はいいかな。
いいけど、あの門のある場所まで
川をさかのぼって徒歩で行くのには、
かなりの距離があるわよ。
とナディアが言った。
もちろん魔法を使っていくのよ。
ナディア、その岩の門があった風景を
思い浮かべてみて。
とアイスが言った。

アイスが呪文を唱えると、
背景に川の上流にあった岩の門のイメージが見えた。
みんな驚いている。
私がこの情景を思い描いて、
心に浮かぶ呪文を唱えるのよ。

位置はあの辺がいいかな。
庭の隅に鏡の扉が現れた。
超便利な魔法ね。
なんでもありすぎじゃない?
とツナが言っている。

一行は鏡の扉を抜けて、
岩の門の前に移動してきた。
この向こうが別世界なんですか。
どうもそうらしい。でも、
未知の世界なのはこっちと同じようなものよ。

一行はトンネルを潜り抜けた。
空気が微妙に違う気がするなあ。
けっこう急斜面ですね。
ナディア。ここでふたてに別れましょう。
私とレイチェルとヤビーは
この崖を登ってみる。
あなたとツナとラルゴは
洞窟の奥を探検してみて。
とアイスが言った。
アイス。危険だから、
あまり上空は飛ばない方がいいわよ。
とナディアが言った。
了解。
解説)
続きます。
Apr 18, 2025
新たな計画

これ、恐竜の子供って確か?
いつか図鑑で見たトリケラトプスの
幼体によく似てるのよ。形だけだけど。
それって成長すると、
どのくらいの大きさになるの?
確か全長9メートル、体重12トンくらいだって。
名前つけてないんでしょ。
トリコにしたら?
まだ飼うと決めたわけじゃないのよ。
勝手について来たんだから。
植物食だから放し飼いにしてればいいのよ。
あちらにテーブルが用意できました。
とヤミーが言った。

ラルゴはミミコと再会していた。
ラルゴさん。あなたが第一発見者だったのね。
ミミコがヤビーさんに頼んで
探してもらっていた人はあなただったって、
言っているわ。
戻って来てくれて、とても嬉しいって。
僕の確信は外れちゃったみたいですね。
てっきりフミコさんのことだと思ったんですが。
とヤビーが言った。
でも変ですね。
私はご覧の通り通り人間ではありません。
とラルゴが言った。
ミミコは、心が人間だって言ってるわ。

探索の結果の報告の会合が開かれている。
アイスは、ラルゴの住む家を見つけて、
ラルゴに事情を聞いたこと、
二人で戻ってくる途中で
シェルター型ロボットを見つけたことや、
ブラッキーを退治したことなどを話した。
ナディアは、北に向かって飛行している途中、
透明なバリアに阻まれ、
その先に進めなかったこと、
突然怪鳥に襲われて地上に落ちてしまったこと、
不思議な岩の門を見つけて、
その先の洞窟で、卵を狙うナーガラを退治したら、
卵からかえったトリコがついて来たことなどを話した。
いろいろ成果があったわね。
これからやってみたいことは、二つ。
とアイスが言った。
一つはなんと言っても北方の調査ね。
私は、以前迷いの森っていう所に探検に行って、
そこで、透明なバリアに対面したことがある。
バリアの向こうに世界があるのに入り込めないの。
でもナディアの潜った岩の門は、
その向こうに通じているんだと思うわ。
魔法が使えるようになって、
そういう異世界との間を繋ぐ、
扉のようなものがあるのはわかるのよ。
その場所に調査に行きましょう。
もう一つは?
それはシェルター型ロボットの回収ね。
これはラルゴさんと、
作業用ロボットの皆さんにお願いするわ。
動くかどうか試してみたいの。
もしロボットが使えるなら、何かの時に、
ミミコをシェルターに避難させることができる。
私はまず飛行装置の修理をしなくちゃ。
とナディアが言った。
シチューあんまり減ってないわね。
味付けの問題でしょうか。
などとサラとヤミーが話している。

会合ののち、ロボットたちはさっそく、
シェルター型ロボットの回収に出かけて行った。
フミコにさっき聞いたんだけど、
ラルゴさんが、人間の心を持っているって、
ミミコが言ったんですってね。
とサラが言った。

あまり思い出したくないことだけど、
その意味はわかるわ。
とナディアが言った。
あのラルゴ4型は機械軍によって戦争末期に開発された。
純粋な戦闘用ロボットじゃなくて、
機械軍に捕虜となった優秀な人間の兵士の
脳を組み込んだサイボーグだって噂があったの。
その人の個人的な記憶を一切消し去って、
兵士の身体の運動能力だけを利用しているっていう。
そういうサイボーグ化は人類の側もやっていたけど、
改造前の人格も消しちゃうなんて彼ららしい発想だわ。

人間だった頃の人格の記憶は消し去られていたけど、
深層にある人間的な感情や心の動き方が、
ミミコの泣き声で蘇ったという訳ね。
それでラルゴは、生理的な感情にかられて、
ミミコを抱いて戦場を逃れて森に隠れ住んでいた。
感情を取り戻したせいで、
ロボットの仲間たちを裏切った罪悪感に
ずっと苦しめられていたなんて。

その時、ジャングルの中から
なんとツナとレイチェルが現れた。
サラの部屋の鏡の扉から来ちゃった。
ここは仮想現実世界とよく似たジャングルで、
ロボットたちが暮らして居るんでしょう。
サバイバルのプロとロボット学者のお出ましよ。
と言っている。

呼ばれてないけど、
しばらく戻れそうもないとなると、
仮想現実の世界が恋しくなっちゃってね。
中毒なのよ。
機材を持ってきたわ。
何かのお役に立つでしょう。
などと二人は押しかけた言い訳をしている。

そこにタイミングよく、
ロボットたちが戻ってきた。
シェルター型ロボットを運んできましたよ。
と言っている。
解説)
続きます。
Apr 17, 2025
アイスの帰還

アイスはラルゴ4型を説得して、
二人でヤビーたちの家に向かった。
しかしあなたは
冷酷非情な戦闘用ロボットのはず。
どうしてミミコの命を助けて、
戦場から離脱することにしたの?
それに、戦争を忌避して恥ずかしいなんて、
繊細な感情も持ってるみたいだし。
瓦礫の山の側でミミコの泣き声を聞いた時、
何かが解除されたような気がしたんです。
別の何かに促されるような感じで、
自分でもよくわからないんですが。

ミミコがテレパシーで働きかけたのかなあ。
あ、ヤビーたちの家に向かうルートは
覚えているのね。
はいほぼ一直線で向かっていますよ。

あら、こんなところに何か。
金属製の球体が
半ば草に埋もれている。

これは戦争末期に人類の側が作った
シェルター型ロボットのようですね。
内部が空洞になっていて、
人を収納できるはずですが、
中には誰もいないようです。

その時、茂みに潜んでいた巨大な蜘蛛が現れ、
ひょんと球体の上に飛び乗った。

アイスの銃弾に、蜘蛛は地上に
落ちて動かなくなった。
すごい早打ちですね。
これはブラッキーと言って、
ネット状に細かな群体を張り巡らして
獲物を身動きできないようにしてから
捕食する生き物です。
多分シェルターを巣にしたかったんでしょうが、
入り込むのは無理ですね。

川音が聞こえるわ。
もうすぐそこです。
割と近かったのね。
さっきのシェルター型ロボット、
回収することはできないかな?
作業用ロボットたちに手伝って貰えば、
なんとかなるでしょう。
動くかどうかわかりませんが。

二人はヤビーたちの家に帰り着いた。
ちょっと懐かしいなあ。

アイスたちが正面の庭にいくと、
すでにナディアが戻ってきていた。
おや、変わった生き物がいるのね。
サラが恐竜の子供じゃないかって。
北の方の洞窟で生まれて私について来たのよ。
あなたも変わったお連れがいるのね。
南の方の廃屋で暮らしていた
ロボットよ。
そのスタイルは知ってるわ。
戦争末期に機械軍が投入したラルゴ4型。
全部破壊されたと聞いてたけど
生き残っていたのね。
え、そうなの?
私は戦線を離脱して森に隠れていたんです。
それで生き残ってしまったんです。
とラルゴ4型が言った。
ラルゴ4型か。言いにくいから、
ラルゴでいいわね。
どうぞよろしくラルゴさん。私はサラよ。
そちらはナディアと後ろにいるのはヤビー。
アイス、シチューができたから食べましょう。
解説)
続きます。
Apr 16, 2025
ナディアの探索

ナディアは茂みの中から身を起こした。
下の森ばかり見ててすっかり油断してた。
木の枝がクッションになって助かったわ。

装置が損傷したせいで、
羽ばたく速度が落ちている。
もう上空を飛ぶのは無理ね。
近くに渓流があれば、
川筋を辿って帰れるんだけど。

ナディアは川を見つけた。
ついでだから、
もう少し上流に行ってみるか。

ゆっくりと低空飛行していくと
岩壁を抜ける門のような地形があった。
この辺りはバリアのあった空域の筈だけど、
この門の向こうからは風が吹き込んでくる。

門を抜けると、
大気の密度が微妙に変わった感じがする。
正面の斜面に洞窟がある。

ナディアが洞窟を覗き込むと、
二匹のナーガラが大きな卵に
群がっているのが見えた。

ナディアは銃を抜くと
素早い動作で二匹の蛇の頭を吹き飛ばした。

ひびの入っていた卵の殻が割れて
なんと牙を持った生き物が顔を出した。
ナーガラは君が出て来るのを、
待っていたのね。
危ないところだったわ。

門のこちら側の大気は明らかに違う。
洞窟の奥や崖の上も調べたいけど、
この状態じゃ深入りは危険ね。
一旦報告に戻ることにしたナディアが、
洞窟を出て、門に向かうと、
生き物が後から追ってきた。

ツノのある生き物は、
ゆっくり低空飛行してヤビーたちの家に戻る
ナディアの後をついて来る。
ま、いいか。
解説)
続きます。
Apr 15, 2025
アイスの探索

アイスは家の中を
調べてみることにした。

誰かいますか?

室内はがらんとしている。

なんと奥の部屋に、変わったスタイルの
ロボットが立っていた。
アイスはヤビーの追憶の情景イメージで、
このロボットを見たことを思い出した。
ロケットランチャーを手にしているようだ。
えっと君は?
私は元機械軍兵士です。
あなたはさっき空を飛んでいた人ですね。
怪鳥かと思って狙い撃ちするところでしたよ。
よく見ると人間が鳥の羽根に跨っているので、
撃つのをやめましたが、
ここに降りて来るとは思わなかったな。

どこから来たんです?
北のジャングルにここと同じような廃屋があって、
作業用ロボット三体と人間の赤ん坊が暮らしているの。
私はそこから来たのよ。生存者を探しているの。
みんな元気でしたか。その家なら知ってますよ。
元々私が赤ん坊と一緒に住んでいたんです。
あの赤ん坊は、実は最終戦争の時、
空爆された地域の瓦礫の陰で
泣いていたのを見つけたんです。
私は赤ん坊を抱いて軍を逃亡して
森に逃れてあの家に隠れて暮らしていたんです。
しかし戦争が終わり、
ある時、作業用ロボットたちが近くに来たので、
赤ん坊を置いたまま、あの家を出たんです。
私より彼らが育てる方がいいですから。
作業用ロボットも同じ機械軍だったんでしょう。
もう戦争は終わったし元は味方同士じゃないの。
私は逃亡者ですから。顔を合わせるのが気まずくて。
繊細なのね。
あの赤ん坊は、ミミコという名前ね。
あなたがつけたの?
自分で言ってましたよ。
あの子はテレパシーが使えるんです。
ミミコはね。南の方に人間がいるから、
探してきて欲しいって、作業用ロボットの一人に頼んだの。
それで探しに出たロボットが、途中で記憶を失って、
異世界に迷い込んで私たちの世界に来たの。
私たちはそのロボットと一緒に
この世界に来たっていうわけ。
複雑そうな話ですね。
南の方の人間ってあなたのことじゃない?
ミミコはあなたに戻ってきて欲しいんじゃないかしら?
私は戦闘用ロボット、ラルゴ4型ですよ。
この姿を見てください。ありえないですよ。

二人の話は続いていた。
あなたはこれまで生存者の姿は見なかった?
巨大化した昆虫やトカゲは見かけましたが、
ロボットや人間は見たことないですね。
さっき怪鳥って言ってたわよね。
ええ、けっこう大きな鳥が飛んでくるんです。
一度襲われたことがあるんで、
見かけたらランチャーで脅かすことにしているんですよ。
武器があると心強いわね。
あなた、やっぱりミミコのところに戻るべきよ。
その方がミミコも安全でしょう。
そうでしょうか。

その頃ナディアはどうするか迷っていた。
透明なバリアでこれ以上進めそうもないし、
建物らしきものも見あたらない。
一旦戻った方がいいかなあ。

その時、ナディアは突然頭上から
急降下してきた怪鳥に不意をつかれた。

鋭い爪が飛行装置のスイッチに引っかかり、
翼の停止したナディアは
応戦するすべもなく森林に落ちて行った。
解説)
続きます。