Apr 26, 2024

春たけなわの日々 そのよん

a1

ミルフィーユは
ジェニーたちの部屋に帰ってきた。

うわ。随分。
と言われている。


a2

すっかり健康そうになって。
せっかく気分転換したから外出しようよ。


a3

ということで、翌朝、
たまきとミルフィーユは
ペンギンにコーヒーを飲みに出かけた。

イメチェンですね。
とはるなに言われている。


a4

二人の姿に気がついて
店内からジュリアナたちがみている。


a5

ジュリアナとエリカは、
日焼け仲間が増えたのね。
と喜んでいる。


a6

ロベリアも顔を覗かせた。
色白で対照的なので登場したようだ。


a7

この夏はこれで。
私はずっとこのままよ。
昔はやってたの?
みんな微妙に違うのね。
などと言い合っている。


a8

その頃、広場に向かった
モモコとナオミは、思わぬ光景に
遭遇していた。


a9

ルビーさん。
これ人形ですよね。
そうみたい。
今朝出現していたのよ。
モモコは、
これって見覚えがある。
と思っていた。


a91

エトナは早速カメラを構えて
撮影している。
この頭、微妙に動くよ。
と、舞が言っている。


a92

誰が置いたか大体見当がつくわね。
でもいつものオブジェとはちょっと違う。
大道芸人たちが演奏できなくて困ってますよ。
どうしましょうか。
燃えないゴミの日はいつだっけ?
などと言っている。



解説)
ちょっとだけ
変わったことが起きたようです。
Posted at 20:26 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 25, 2024

春たけなわの日々 そのさん

a1

天候が回復したようで、
草木は光を浴びている。
モモコとナオミは部屋に帰ってきた。

みんな気分転換したのね。


a2

ミルフィーユも
気分転換してみたら?
どんな感じがいい?
うーん
健康的なのがいいなあ。


a3

ミルフィーユは
サラたちの部屋を訪ねることにした。
なんとなく無茶振りだなあ。


a4

その頃、ハーレーたちは、
道路の傍にバイクを停めて
パトルールの車両を待ちながら、
立ち話をしていた。

境界警備隊っていつ頃できたんですか?
地元で迷いの森って呼ばれていた
森林地帯で、失踪者が相次ぐので、
立ち入り禁止区域になって、
それから軍が調査に入ってからね。
調査隊が部隊毎消えたこともあって、
軍とCGが協力して監視のための
部隊が置かれたのよ。
3年前くらいかしら。
フェンスまで作られて随分物々しいんですね。
色々不可解なことがあるらしくてね。


a5

そこに境界警備隊のバギーが走ってきて、
急停車した。


a6

みんなに紹介したい新人がいて、
あなたたちが来るのを待ってたのよ。
とハーレーが言った。


a7

レイブンとコフィ、
ベレー帽かぶっているのが
リーダーのイメルダよ。
佳奈です、どうぞよろしく。
と佳奈は言った。


a8

あなた、CGのこと知ってる?
とレイブンが言った。

いえ、地球の平和を維持するための
国際的な秘密組織というくらいしか。
そうか、秘密だから無理ないわね。
どんな組織なんですか。
それが秘密なのよ。
新人を混乱させてはダメよ。
とハーレーが言っている。


a9

マヤ、こんなところで珍しいわね。

このところずっと出歩かなかったから、
久しぶりに郊外まで散歩に出て、
ついでに詰所に立ち寄ったら、
みんな出払ってたので帰る途中だったの。
そしたらハーレーたちに出会って。

なるほど。
そういえば、野菜運んでるの見たって聞いたけど。
ああ。あれはね。
暇だからたまに農家の手伝いしてるのよ。

そうなの。
お互い暇だからねー。
とイメルダは言った。


a91

その頃、サラたちの部屋では。

こんな感じだけどどうかしら。
ありがと。嬉しいわ。
すごく健康的で気分転換になります。
とミルフィーユが喜んでいる。



解説)
今回もあまり脈絡なく
時が過ぎていくのでした。
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 24, 2024

春たけなわの日々 そのに

a1

今日も雨模様で、
木々の緑がしっとりと濡れている。
たまきは部屋に帰ってきた。


a2

髪切ったのね。


a3

なんだか別人みたい。
気分転換よ。


a4

気分転換、気分転換と言いながら
モモコとナオミはサラたちの部屋に出かけていった。


a5

その頃、佳奈をのせた
ハーレーのオートバイは
郊外の道を走っていた。

もうすぐ境界警備隊の詰所に
到着するよ。


a6

誰か歩いてくる人がいる。
あれはマヤよ。彼女もCGのメンバー。
ドルフィンでアンのメンテをしてるって聞いたわ。
え、私見たことないですけど。


a7

マヤが軽く手をかざして、
ハーレーはバイクを止めた。

後ろの子は佳奈、この春入ったばかりのCGの新人よ。
まだ研修中でドルフィンのスタッフっていうことに
なってる。
とハーレーがマヤに佳奈を紹介した。

どうぞよろしく。
私はマヤ。去年の7月にアンのメンテナンスっていうことで、
不在中だったレイチェルの代わりにドルフィンに配属されたの。
あなたの1年先輩っていうことになるわね。
レイチェルが帰ってきて交代でメンテナンスしている。
でも顔を合わせたことなかったわね。

私、10日前にドルフィンに配属されたばかりなんです。
でもこの町に来たのは去年の暮れで、あちこちの家を回って、
学校の自由研究で名前の由来調べをやってました。
そしたら、CGにスカウトされて。
今までお会いしたことなかったのは、逆に珍しいですね。

最近はシェリー研究所に篭りきりで、
アンのメンテもレイチェルに任せきりだったからね。
あ、今みんなパトロールに出てて詰所にいないわよ。
ここで待ってれば、もうすぐ通ると思う。
とマヤは言った。


a8

その頃、サラたちの部屋では、
二人の髪型の気分転換が終わっていた。

後ろで編んでまとめてもらったの。
とナオミが言った。


a9

私はちょんまげを
おろしてもらったの。
とモモコが言った。


a91

二人はたまには
気分転換しないと。
と言っている。



解説)
たまきとナオミとモモコのヘッド、
いずれも古くからのストックで、
10数年前には登場していたことが
あったと思います。
Posted at 21:52 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 23, 2024

春たけなわの日々

a1

たまきもサラに
髪を短くしてもらった。

さっぱりしたわ。


a2

どんな感じかな。


a3

そんなに日焼けしてたっけ?
ルージュの色も変えたのね。
などと言われている。


a4

その頃、広場では、
ハーレーと佳奈がオートバイに乗っていた。

今日は時間があるから、
このまま郊外の境界警備隊の詰所まで帰って、
この新人を仲間に紹介してくるよ。


a5

二人を乗せたバイクは
Uターンすると、
排気音とともに走り去っていった。


a6

詰所には軍の兵士たちもいるんでしょう。
CGの一員だって疑われないですか。
そう思われても特に問題ないのよ。
そう言われればそうですね。


a7

隣のマンゴー亭では、
サルバドールが、ジェニーフレンドたちの
会話に参加していた。

今走っていったオートバイ、
スワット仕様だったでしょ。
とロベリアが言っている。


a8

サルバドールさん。
ご支援のお申し出はありがたいんですが、
私、ヴィオリンはあくまでも趣味なんで、
プロの演奏家になるつもりはないんです。
と奈々子は言っている。

それはなんとも残念ですなあ。


a9

こんなに本人の意思がはっきりしてると、
夢の中に忍び込めそうもないなあ。
とサルバドールは思っている。



解説)
あれこれと
春の日が過ぎていきます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 22, 2024

ティモテのことなど

a1

今日は時々小雨。
モモコはジェニーたちの部屋に
帰ってきている。


a2

雨があがるとウグイスが鳴いて
教えてくれるのがいい感じね。
たまきはさっそく散歩に行ったよ。


a3

それでその巨人って
どんな人だったの。
隣のキッチンにいたから、
姿を見たわけじゃないのよ。
見つかったらどうなるの。
モスラに出てくる妖精みたいになるのかな。
古すぎてわからない。
などと話している。


a4

隣の高台では、
たまきがティモテと出会って
話していた。

この近くに、
すごく器用な人がいるって聞いて。
きっとサラのことね。
私知ってるから連れてってあげる。


a5

たまきはティモテをサラに紹介している。

あなた、印象的な長い髪で
コンテストで優勝した人でしょう?
そうなんですけど、
髪を短くしたいんです。
もう地面に届きそうで。


a6

その頃広場には、
CGのハーレーが遊びに来ていた。


a7

調子はどう?

私が境界警備隊に配属されたのは
去年の9月だけど、
至って平穏よ。もう暇で暇で。
そういえば新人が入ったって聞いたけど。


a8

もう噂になってるのね。こちらが佳奈ちゃん。
表向きはドルフィンのスタッフっていうことに
なってるから、よろしくね。

どうも。佳奈です。
ルビーさん。ベーカリーの皆さんの他にも、
身分を隠してるCGのメンバーって、
この町にいるんですか?

いるわよ。
今度紹介するわ。


a9

その頃、サラたちの部屋では、
ティモテのヘアーカットが終わっていた。


a91

こんな感じよ。
わーすっきりしました。
私も短くしてもらおうかな。
とたまきが言っている。



解説)
ティモテの長髪は、ヘッド全体を交換しているだけで、
実際に髪をカットしたわけではありません。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 21, 2024

ジェーンの世界 帰還

a1

ジェーンが投げ上げた紐を伝って、
3人はサイドテーブルの上に
登って行った。
エリコは花瓶に生けられた小枝に
器用に体を絡ませて見下ろしている。


a2

モモコ、あなたたちは今
とても危険な状態にあるの。
居間の隅にある扉のついた建物。
あれが見つかれば大変なことになるのよ。

あ、うん。
でもエリコはどうして私がここにいるって
わかったの?
私はいつもあなたの心の中にいる。
と言っても、私の体は迷いの森にあるんだけど。
あなたがどこにいるのか位はわかるのよ。
あなたは第二のお母さんだからね。
そう言ってエリコは微笑んだ。

それで急いでやってきてみたら、
すごく危ないことになってた。


a3

エリコの忠告を受けて、
二人は元の世界に戻ることにした。

慌ただしかったけど、楽しかった。
テレビ体操も覚えたし。
また遊びに来るからね。
とモモコが言っている。


a4

二人の姿が鏡の扉の中に
吸い込まれるように消えると、
魔術劇場も消えてしまった。


a5

モモコたちは、
魔術劇場の応接間に帰り着いた。

やあ、おかえり。
それはなんだね?
とハリーが言っている。


a6

モモコは異世界での出来事をハリーに話した。

なるほど、忠告してくれたエリコというのは、
迷いの森に住む生き物で、
君たちの行った世界は、
迷いの森とも繋がっているんだね。

迷いの森の奥にあの世界があって
エリコたちだけが通れる通路があるんです。

ふむ。私たち魔族の先祖が、
迷いの森からやってきたという
古い言い伝えがあるんだ。
もしかすると、その世界が
私たち魔族の故郷かもしれないなあ。

じゃあ、ジェーンは、
魔族のご先祖様の一族かもしれないですね。
魔法なんて全然使えないみたいですけど。

ふむ。
このクラッカーうまいなあ。
それで、トマソン氏はいかがでしたかな。


a7

ジェーンにもらったイチゴを食べて、
ここが夢ではなくて現実だと実感した時から、
なんだか自分が変わったような気がしていたんです。
そうしたら、こっちの世界で眠っていた筈の
僕の体が消えちゃったって、モモコさんに教えられて。

ふむ。モモコさんが探しに行かなければ、
それこそ神隠しに合うところでしたな。

感謝してます。
オブジェのヒントは見つからなかったんですが、
向こうではジェーンに色々案内してもらったんです。
あれ作ろうかなあ。

a8


ハリーへの報告を済ませてモモコが
魔術劇場から出ると、
広場はかわりなくぼちぼち賑わっていた。


a9

その透明なレインシューズ
かっこいいわね。
と舞に言われている。



解説)
長いようであっという間の、
モモコたちの冒険が終わったのでした。
Posted at 20:30 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 20, 2024

ジェーンの世界 そのじゅう

a1

モモコは、
家の主がリモコンの操作をしているのを、
キッチンテーブルの上で見ていた。


a2

家の主はケトルに水を入れて火にかけ、
冷蔵庫の扉を開けて食パンやマーガリンを探している。
いつもの行動パターンだ。


a3

ジェーンは、素早く身を翻して、
椅子の上に滑り降りた。


a4

ここなら安全。
カリカリとコーヒー豆を挽く音がして、
やがてトースターから食パンが跳ね上がる音や、
淹れたての珈琲の香りが漂ってきた。


a5

ジェーンは椅子の上に潜んで
朝食中の家の主人と一緒に
テレビニュースを視聴していた。
あ、カーテンがずれちゃってる!
気がつかれなきゃいいけど。
とジェーンは思った。


a6

やがて家の主が朝食を済ませて
二階に引き上げた後、
ジェーンはテーブルの上に
開封されたクラッカーの箱を見つけた。


a7

ジェーンはクラッカーの包みを抱えて、
無事にモモコたちのところに戻ってきた。

心配してたのよ。
大丈夫、いつものことだから。


a8

その時、モモコの頭の中で、
懐かしい声がした。
モモコ聞こえる?
上よ上。


a9

モモコが見上げると、
サイドテーブルの上の花瓶の中に
巨大な虫のようなものの姿が見えた。

あ、エリコ。



解説)
続きます。
Posted at 20:28 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 19, 2024

ジェーンの世界 そのきゅう

a1

家の主人も二階の寝室で眠りこみ、
夜も更けて居間のサイドテーブルの縁から
かすかな明かりが漏れている。


a2

書籍で遮蔽されたテーブルの棚の中では、
ジェーンたちがプチトマトを食べながら
歓談していた。

それとこれとは、大根と牛蒡くらいの違いよ、
いいえ、レンコンとちくわくらいの違いはあるわ。
などと話している。


a3

やっぱりこの世界楽しいわ。
プチトマトがこんなに大きいなんて。


a4

暮らしていくのは結構大変なのよ。
毎日危険と隣り合わせで。
紙芝居にしたら面白いでしょうね。
なぜ紙芝居なの?
レトロなのがいいんですよ。
そういえばトマソンさん
芸術家だったんだ。
好きなことしているだけですよ。
みんな人生は芸術なんです。


a5

3人の話は尽きず、
春の夜は更けて行った。


a6

翌朝。
モモコは、ジェーンから分けて貰った
輪ゴムと指サックで履き物を作っている。


a7

嬉しいなー。
ジェーンとおんなじだ。


a8

その時、遠くでドンドンという物音が聞こえた。
人が階段を降りてくる音のようだ。

モモコさん、
登ってきてください。
とトマソンが呼んでいる。


a9

二人は棚の中に隠れて
推移を見守っている。


a91

どこかでリモコンのスイッチが押され、
モニターに画像が映し出された。

あ、テレビ体操だ。
モモコはどこに?
キッチンの方に出かけてるはずです。



解説)
よくわからない事態に。
Posted at 20:28 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 18, 2024

ジェーンの世界 そのはち

b1

鏡の扉から出て来たモモコは
居間のガラス戸沿いに歩いて行った。


b2

あ、あれはトマソンさんだ。


b3

トマソンは大きな鉢を押して
位置をずらせている最中だった。


b4

声をかけると
トマソンは振り向いた。

モモコさん。
どうしてここに。

魔術劇場の寝室で
ずっと眠っていた
あなたの体が
消えちゃったのよ。

え、そんなことが。


b5

この世界で眠って起きても、
この世界の夢から覚めないんです。
体も消えちゃったとなると、
やっぱりもう戻れないのかなあ。
だから私が助けに来たのよ。

などと二人で話していると、
キッチンの方から
プチトマトを抱えたジェーンがやって来た。


b6

モモコ、久しぶりね。
どうやってここに?

夢を見てるわけじゃなくて、
前と同じように魔術劇場の扉を使ってきたの。
トマソンさんの体がなくなっちゃって、
本人を探しに来たんだけど、
扉が見つかると大変だから急いで帰らないと。


b7

3人は居間の隅にある
魔術劇場の前まで行った。

せっかく来たんだから、
もう少しゆっくりしたいなあ。
僕もまだ作りたいオブジェのヒントを
見つけていないんです。
だったらカーテンで隠せば
きっと見つからないわよ。


b8

ジェーンたちはカーテンを引っ張って、
魔術劇場を覆い隠している。


b9

こんなんで大丈夫かなあ。
とモモコは思っている。


b91

モモコがサイドテーブルの横に戻ると、
ジェーンたちはサイドテーブルの棚の中に
プチトマトを運び入れていた。
さっきトマソンが動かしていた鉢は、
足場用に使われていたのだった。


b92

ここは仮の棲家なのよ。
とジェーンが言っている。


b93

サイドテーブルの棚の中は、
3方をカーテンと家具と、
並んだ書籍に囲まれ、
タオル地の掛けられた箱の横に、
狭い入り口のある空間だった。

棚板の上には古い手袋や端切れが敷き詰められ、
非常用の照明器具らしきものが
横倒しにされたままになっている。




解説)
すぐ戻るつもりが
なんとなく思わぬ展開に。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 17, 2024

ジェーンの世界 そのなな

a1

モモコが扉を抜けると、
そこは魔術劇場の応接間だった。

ここにはほぼ2年ぶりですかな。
そろそろおいでになる頃かと
思っていましたよ。
とハリーが言った。


a2

トマソンさんがずっと眠ったままだと聞いて、
気になって来たんです。
この前トマソンさんにお会いした時、
いつも見ているっていう
夢の世界のスケッチを見せてくれたんですけど、
その世界が、私がジェーンに会った世界に
そっくりだったの。
ずっと眠り続けているっていうことは、
その世界に行ったままなんじゃないかって。


a3

そうでしょうとも。
私も同じことを考えていました。

私は魔術劇場の中で、魔法の力を使って、
その人が望む世界に行ける、
鏡の扉を作り出すことができますが、
それはあくまでも個人的な思いを
魔法の力で実体化する夢のような世界です。
けれど、かってモモコさんが訪れ、
今はトマソン氏も訪れていると思われる
ジェーンが住む世界というのは、
そうした個人的な夢や願望をもとに
魔法で生み出される異世界とは
かなり異質なのです。


a4

この古い魔術の本を紐解いて
調べてみたのですが、
本来、願望と魔法の力だけでは行けない世界です。
だからトマソン氏に取り憑いた凄腕の夢魔である
サルバドールでさえ入り込むことができなかった。

私は何年も前に迷いの森を探検して、
ジェーンの住む世界に行き着いたことがあったの。
でもその時は、見えない境界に阻まれて、
入り込むことができなかった。
でもなぜか私だけがハリーさんの
魔法の力を借りれば行けるのね。


a5

その時、鏡の扉が開いて
デュアンがやってきた。

今、トマソンさんの寝室に
様子を見に行ったんですが、
姿が消えていました。


a6

ふーむ。
どうやら肉体があちらの世界に
移動してしまったようだ。

そんなことってあるんですか。

私、兵隊さんたちの村で、
話していた途中でジェーンが消えちゃったりするの
体験したことがあるわ。
とモモコが言った。


a7

このままだと、
トマソンさんこの世界から
いなくなっちゃうよ。
私呼びに行ってくる。

勇気あるなあ。
とデュアンは思っている。


a8

訪問は2度目だからわかっていると思うけど、
向こうの世界には
扉が魔術劇場ごと出現するはずだ。
劇場が見つかって扉が取り上げられると、
戻れなくなるから気をつけて。
とハリーが言った。


a9

モモコが鏡の扉を抜けると、
そこは巨大な居間の隅だった。



解説)
モモコがジェーンの住む世界に
行きたくて、アイスと二人で
迷いの森を探検した経緯は、
2021年5月6日「モモコの計画」から
2021年5月12日「帰還まで」に
描かれています。

モモコとジェーンが会話中に
ジェーンが消えてしまうエピソードは、
2021年9月8日「願いのままに」。
その前後の回を見ると経緯がわかります。
Posted at 20:26 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 16, 2024

ジェーンの世界 そのろく

a1

ジェーンは面白そうなものが見たいという
トマソンを案内していた。

これは、からくり人形よ。
ゼンマイ仕掛けで、お茶を運ぶの。
随分埃をかぶっていますね。
ずっと前からあるけど、
私も動いてるところは見たことがないわ。


a2

これはカラー写真付きの葉書ですね。


a3

ずっと前から送ってくれる人がいて、
届くと大抵この箱に収納されているのよ。
花や虫や鳥の写真に季節感が溢れてるから
いつも覗くのが楽しみ。


a4

世界が変わって、
その頃サラたちの部屋では、
みんなでお茶を飲んでいた。


a5

そこに佳奈がやってきた。
就職の報告をしにきたようだ。


a6

私、ドルフィン工房のスタッフになれたんです。
この町に住めるようになって嬉しい。
サラ先輩、皆さんも、
これからもよろしくお願いします。


a7

こちらこそ。
良かったですねー。
とジェイソンも言っている。


a8

その頃広場ではそこそこの賑わいだった。


a9

これは倉庫に入荷した
新しい浮世絵です。
これで確か4枚目ね。
永谷園の鮭茶漬け食べたくなってきた。
などと言っている。


a91

あら、佳奈ちゃんは?

サラ先輩のところに
挨拶に行くとか言ってたよ。


a92

モモコは魔術劇場の入り口の
扉の管理をしているエヴァに話しかけていた。

トマソンさんが何日も眠ったままだって
聞いたんですけど。
そうなの。そのことを聞いて、
きっとあなたが訪ねてくるだろうって、
ハリーさんが言ってたわ。
どうぞ中へ。



解説)
なんとなく散漫に
少しずつ進展しています。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 15, 2024

ジェーンの世界 そのご

a1

ジェーンたちは
炬燵の裾で話していた。

あ、ジェーンさん。
僕まだこの世界にいるんだ。
そうみたいね。
よく眠ってたわよ。


a2

今日はいい天気。
居間の網戸を閉め忘れてるなんて、
ラッキーだわ。
外に出かけるんですか。


a3

滅多にないことだからね。
それにお花も見てみみたい。


a4

一面の桜ですね。
あっちの方に行ってみましょう。


a5

シュールな世界だなあ。


a6

巨人が電気工事してますよ。
見つかると危険だから、
引き返しましょう。


a7

ここもやばくないですか。
ちょっと見るだけ。


a8

ここなら安全よ。
巨大だけどシャガの花綺麗ですね。


a9

もう筍が。
今年は気温が高かったので、
例年より半月ほど早いって、
居間のテレビで言ってたわ。


a91

クリスマスローズや
スノーポピーが咲いてる。

眠って目が覚めても
こっちの世界。
僕もう戻れないのかなあ。
どうなんでしょう。
私にはわからないわ。



解説)
今日は天気が良かったので、
屋外で撮影して合成しました。
Posted at 20:46 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 14, 2024

ジェーンの世界 そのよん

a1

ベランダにはヴィヴィアンもやってきて
サルバドールと話していた。

トマソン氏が何日も眠ったままらしいのよ。
あなたが夢魔として取り憑いているんでしょう。
起こすことはできないの?


a2

確かに取り憑いてはいたんですが、
彼がいるのは夢の世界じゃなく、
実在する異世界なんです。
私はそのきっかけを与えただけで、
私がその世界に導いたというより、
その世界が彼の眠りに引き寄せられてしまったんです。
最初に迷いの森で眠ったせいかもしれない。
起きてこないのは、
彼自身が目覚めるのを望んでいないからですよ。
すごいオブジェのヒントでも見つけて
夢中になっているのかもしれない。
次の作品が楽しみだなあ。


a3

随分、気楽なものなのね。
あなたは芸術のためなら人を破滅に追いやることも
あるって聞いてるから、無理ないのかもしれないけど。
とヴィヴィアンが言った。

私は本人の願いを手助けしてあげるだけですよ。
芸術作品のためなら命も惜しくないという人もいるんです。
おお、この音色美しいですなあ。

ずっと眠ったまま夢を見ているとしたら、
私と同じね。
とメルティが言った。


a4

ヴィヴィアンはデジャに戻った。

どうも埒があかなかったわ。
サルバドールの関心は、
ヴァイオリンの音色。
次は奈々子に取り憑くつもりなのかしら。


a5

そのトマソン氏のいる異世界のことなんだが、
全てが6倍のスケールでできているというんだろう。
そういう世界だったら、
一昨年に魔術劇場にやってきたモモコという娘さんを
鏡の扉を使って案内したのを思い出したよ。
とハリーが言った。

そんなことがあったの?

お前が知らないのも無理もない。
あれはたしか、お前とカーミラが魔術劇場にやってくる
直前のことだったからな。

ハリーの後ろで二人のやりとりを聞いていたマリアが、
私もそのとき黒猫に変身して一緒に行ったのよ。
モモコの友達のジェーンという人がいたわ。
と言った。


a6

その頃、ベランダで
ヴィヴィアンたちの話を立ち聞きしていた
キャサリンが、
二階の部屋に戻って報告していた。

魔術劇場に住んでるトマソンさんが
何日も目を覚まさないんだって。

あの人、この前この部屋に来た時も、
突然すやすや眠っちゃったからね。


a7

トマソンさん、ずっとあっちの世界にいるんだ。
もしかしてジェーンと出会えたのかなあ。
とモモコは想像していた。


a8

広場では、
佳奈がルビーと話していた。

しばらくぶりね。
と言われている。


a9

この春、卒業して、
勧誘されてCGに就職したんですど、
採用試験もなかったんです。
と佳奈は言った。


a91

あなたの適性や成績は全てしらべてあるの。
CGは秘密組織だから、
表向きはドルフィン工房に
スタッフとして就職したことになってる。
この先、本部に出向いて、いろいろ、
特殊な訓練受けるでしょうけど頑張ってね。
この服装も支給されたんですけど。
誰の案かしら。好きな服着ていいのよ。



解説)
ハリーが思い出したのは、
2022年3月14日「モモコの体験」
からの小旅行のことを指しています。
Posted at 21:02 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 13, 2024

ジェーンの世界 そのさん

a1

デジャを訪れたメルティは、
ヴィヴィアンとハリーとの話を続けていた。

眠り続けてるっていうトマソンさんのことを話すとね。
とヴィヴィアンがメルティに言っている。


a2

あなたはサルバドールのことを覚えているでしょう。
忘れもしません。
去年の4月19日、私の夢に入り込んできて
シュレディンガーと対決した夢魔でしょう。

トマソンさんには、そのサルバドールが憑依しているのよ。
トマソンさんが眠り続けているっていうことは、
夢を見続けているっていうこと。
サルバドールが何か知ってるに違いないわ。

でもサルバドールさんは、
あれから迷いの森に帰ったはずですよね。

あなたは知らないかも知らないけど、
先月、町に戻ってきたのよ。


a3

サルバドールは、トマソン氏と迷いの森で知り合い、
彼の芸術家としての才能に惹かれて、
自分でも入り込めない特異な異世界に
トマソン氏の夢を導いたらしいんだ。
その世界でトマソン氏がインスピレーションを得て、
制作したオブジェの実物を、自分の目で確認するために
この町にやってきたという話だよ。


a4

サルバドールなら、今ベランダにいますよ。
と、広場を眺めていたゼロが言った。


a5

ガラス戸越しに見る広場は
相変わらず賑わっていた。


a6

子供達とアベルが
ローラースケートやスケートボードで遊んでいる。


a7

奈々子のヴァイオリンの音色に
みんな聴き入っている。

この技巧、パガニーニも真っ青だ。
と誰かが言った。


a8

ベランダでもサルバドールが
深刻そうな顔で
ヴァイオリンの音色に聴き入っていた。


a9

そこにメルティがやってきた。
サルバドールさん、お久しぶり。

あ、ちょっと待って。
今いいところだから。
とサルバドールが言った。



解説)
鈴木すずの乗っている
スケートボード(キーホルダー)は
ダイソーで購入しました。
Posted at 21:58 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Apr 12, 2024

ジェーンの世界 そのに

b1

ジェーンはフォークを手にして、
男(トマソン)に声をかけてみることにした。

こんにちわ。
あなたはどなた?

トマソンは最初びっくりしたものの、
ひと月ほど前にモモコから聞いていた、
夢の世界に住む女性の話を思い出した。


b2

僕はトマソンと言います。
もしかして、あなたはジェーンという名前ですか?

え。どうして知ってるの?

やっぱりそうか。
僕は今、夢の世界にいるんです。
僕と同じ夢を見たことがあるっていうモモコっていう人が、
そこにジェーンっていう友達が一人で暮らしているって、
教えてくれました。

ふーん。モモコの住んでる世界から来たのね。
最近会ってないけど、彼女元気なのかな。


b3

トマソンは、自分が
実物の6倍のスケールのオブジェを作る
造形作家であり、路上アーティストであること、
完璧な作品を作りたいと望んでいたら、
ある時から、全てが6倍のスケールの
夢ばかり見るようになったこと、
それ以来、夢を見るたびに、
制作するオブジェのモティーフを求めて、
夢の世界を探索していることなどを話した。

でも、あなたがここに暮らしているっていうことは、
ここは夢の世界じゃなくて、モモコさんが
言っていたように、実在する別の世界なんですね。

どうもそういうことみたいね。
でもあなたがこれまで何度もここに来てたのなら、
お互い気がつきそうなものだけど。

それは僕もそう思います。
ただ、僕のみる夢は最初はぼやけていたんです。
最近どんどん風景がクリアになって、
現実感が増してきて、もう起きている時と変わらない。
こうしてあなたと出会えたのも、
そういう変化と関係があるのかもしれません。


b4

あ、あそこに美味しそうなイチゴがあるわ。
とジェーンが言った。


b5

ジェーンたちはテーブルから床に降り立った。
ちょっと待っててね。
と言ってジェーンはキッチンの隅に隠してあった
紐を持ってきて投げ上げ、
手挽きコーヒーミルの金具に引っ掛けて、
器用に登っていった。

紐の輪に足をかけて、ゆっくり登って。
と言っている。


b6

いつもこんなことしてるんですか?
もちろんよ。


b7

二人はガスレンジを横切って、
苺の入った網かごの置かれた
まな板のある場所までたどり着いた。

これ美味しそう。
もらっちゃうんですか?


b8

借りるだけなの。
ちゃんと書き置きしておくから。
いいのかなあ。


b9

ついでにお水も汲んでおくわ。
指サックの靴が役にたっている。


b91

ジェーンは、
カッターの刃で作ったナイフで
イチゴをスライスして、
ボトルのキャプに水を注いだ。

二人は明るい出窓のスペースで
イチゴを食べている。

この甘酸っぱさ、絶対夢じゃない。
とトマソンが言っている。




解説)
今回は合成なしのオールロケでした。

トマソンがモモコからジェーンの話を聞いたのは、
2024年3月9日「春の足音 そのろく」でのことです。
Posted at 20:28 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
April 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
 
       
Search

Categories
Archives
Syndicate this site (XML)

Powered by
blosxom 2.0
and
modified by
blosxom starter kit

新規投稿