Jul 20, 2024

フミコの帰郷 そのろく

a1

それにしても、
アイスが早く戻ってきたので驚いたよ。
ジャングルだけでも大変なのに、
そのうえ砂漠を超えて、
飛行機ではるばる海を越えて、
アイスの住む国まで、
急いでも片道で2、3日はかかるだろう。
とクラウドが言った。

フミコの魔法で一瞬で来たのよ。

そんなことが可能なの?

私にはわかるぞ。
リンリンから聞いたことがある。
古代の魔族は魔法で鏡の扉を出現させて
自由に遠方と行き来していたという。
グリューンも使えると言っていた。
とハンスが言った。

そういうことなのよ。
私の住む町にもフラハのような魔族の人たちがいてね。
その一家の娘さんがフミコを蘇生してくれたうえに、
一家の住む魔術劇場っていう館に
フミコは同居させてもらえることになったの。
私は故郷の様子が知りたいというフミコに便乗して、
蘇生が無事に成功したことを
みんなにお知らせしたくて来たんだけど、
あとはマークに会って帰るつもり。
とアイスが言った。


a2

フミコの蘇生が無事に成功したことは、
アーネストやアンドレアにも伝えておくわ。
またいつでも遊びにきてね。
というリンたちに見送られて、
アイスとフミコはクラウドの家を後にした。

マークっていう人は
この集落のリーダーだって言ってたわね。
そうなの。
あなたが無事に蘇生したら
あなたを案内してこの集落に戻ってくるから、
その時また会えるってマークに言ってあったの。
こんなに早くそんな機会が来るとは
思ってなかったけど。


a3

二人はマークの家に向かっていた。

マークはね。
あなたと同じように蘇生した人。
あ、それは全然違うかな。
マークは人間じゃなくて、
6分の1サイズのアクションフィギアの精霊なのよ。
でもずっと自分が人間だと思い込んでいた。
彼は戦争中に兵士として活動していたんだけど、
砂漠で嵐に巻き込まれて、そこを抜け出したら、
戦争がとっくに終わった未来であるような、
この世界に来ていたという。
でもマークが最初に生きていたのは、
誰かの想像が産んだフィギアの精霊たちの世界で、
あなたのように、同じこの世界の過去から
未来に蘇ったというわけじゃなかった。
だからこの世界に馴染めなくて、
ジャングルの奥地に集落を開いたんだけど、
リーダーのくせに寂しがり屋なの。

誰が考えたのかややこしすぎる話ね。


a4

マークの家に着くと、
クラウドの家で見かけたアマンダが
すでに庭仕事の手伝いに来ていた。
庭で草むしりをしていたマークが
気がついて近づいてきた。

アイス。驚いたな。
三日前に帰ったばかりだと思ったら、
何か途中でトラブルがあって
戻って来たのかい。

いいえ。無事に帰国して、
蘇生の呪術に成功したことを伝えに来たのよ。
この人がフミコ。


a5

アイスたちが移動に使った
鏡の扉の説明をすると、話題は
どうしてもその話になった。

鏡の扉と違って、
マークが体験した砂嵐は幽冥界との通路で、
魔法では生み出せないって、
フラウが言っていたけど。

それはその通りね。
誰でも死ぬことはできても、
自分だけの意思で戻って来れるような便利な扉はない。
鏡の扉で行けるのは現実に繋がっている別の場所や
命あるものたちの夢や想像、呪力で作られた異世界。
似ているようで全く別のことなの。

砂嵐の前にいた世界のことは、
もうあまり思い出すこともないけど、
僕はそこで第二次世界大戦の
アフリカ戦線に従軍していた兵士だったんだ。
アイスがよく似た戦争中の異世界に行ったことがあって、
そこではフィギアたちの精霊が暮らしていたというので、
初めて自分もフィギアの精霊だったことを知った。
とマークが言った。


a6

最初は自分が砂漠で戦死して、あの世にいき、
何かの計らいか偶然で、フミコみたいに未来の世界に
蘇ったんだとばかり思っていたけれど、
フラウにも最初からフィギアの精霊だと
わかっていたと言われてちょっとショックだったな。
今はもう昔のことは関係ないけどね。

戦時中だった世界が懐かしくならない?

まあ、ごくたまにはね。

だったら私の知っている、
フィギアの精霊たちの村に案内してあげられるわよ。
前にも言ったように、
私の住む町にいる魔族一家の館には、
彼らの暮らす世界に行ける鏡の扉があるの。
今ではその扉を使って村の住人たちの何人かは、
私たちの町に移り住んでいるわ。

アイス。
そんな面倒なことをしなくても
あなたの呪力で鏡の扉を生み出せば、
直接ここからその村に行けるのよ。

え。

でもまあ手順を踏んだほうがいいわね。
ひとまず魔術劇場のある町に戻って、
その村の人にマークを紹介して
承諾してもらってからのほうがいい。

私の生きていた頃には、
6分の1サイズのアクションフィギアなんてなかったけど、
木や土の人形に宿った精霊たちとはよく遊んだりした。
彼らを憶う人々の願いと彼らの願いが重なって、
そこに意志を持ったものの呪力が加わると
小さな夢のような共同の世界が生まれることがある。
そういう世界はうたかたのように
とても繊細で壊れやすいものなの。
不意の来訪者には拒絶反応を示すこともある。

そうなのね。


a7

アイスが魔術劇場を思い浮かべて
脳裏に浮かんだ言葉を口にすると、
部屋の中に鏡の扉が現れた。

マークさん、
私もアイスの住む町で 
いろんな人に出会うのが楽しみ。
あなたもいらっしゃる?

う、うん。
もちろん。
その前に庭仕事を手伝ってくれている
アマンダに留守番を頼んでくるよ。
この集落には泥棒なんていないけど、
猿が来て時々悪戯するんだ。


a8

マークはアマンダに訳を話して
留守番を頼んでいる。
貴重品は何もないけど、
大きな鳥の羽根だけが気がかりなんだ。

いいわよ。鏡の扉を使って行くなんて
フラウが聞いたらきっと羨ましがるわね。


a9

かくてアイスたちは
魔術劇場に戻って行った。
グリーンマンが
ちょっと悩ましそうな顔をして
その動きをじっと眺めている。



解説)
続きます
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Jul 19, 2024

フミコの帰郷 そのご

a1

コーヒーを飲んでいたフラハは、
裏庭に突然鏡の扉が出現したので驚いている。


a2

扉からは、アイスが、
知らない女性を連れて現れた。

君は先日マークと一緒に来た
アイス君だったな。
呪力がさっぱりだった君が
鏡の扉を使ったのか?

あ、まあそのようです。
あちらの女性はフミコよ。
この前の頭蓋骨、無事に蘇生に成功したの。


a3

フラハとアイスは
冗談のような挨拶を交わしている。

あなたがフラハさんね。
私の蘇生を試みてくださった方だと
アイスから伺いました。
私はフミコ、その昔魔族の都で
暮らしていました。

おお、伝承どうりだったわけか。

突然驚かせて悪かったけれど、
フミコの蘇生を気にかけてくれていた皆さんに、
特にハンスさんに早く伝えたくて、
この集落に戻ってきたの。
とアイスが言った。


a4

鏡の扉には出現させる呪文と、
移動するための呪文があるんだったな。
魔術の書があれば私にも可能なんだが。

魔術の書。私もハリーさんの魔術劇場で、
拝見しました。
でも私が生きていたのは、
その書物が編纂されるずっと前のこと。
呪力のある人はみんな自分で呪文を生み出す
力を持っていたのよ。

そうかハリーに会ったのか。
蘇生の呪文を唱えたのはやはりあいつだったか。

そうじゃなくて、フミコを蘇生させたのは、
私が言ってたハリーの娘のヴィヴィアンっていう悪魔。
とアイスが言った。
そうだ、フミコの蘇生って言えば
そのことをハンスさんたちに伝えにきたんだった。
そろそろ行かないと。


a5

ということで、
アイスとフミコはフラハの家を後にした。

フラハさん、ずいぶん鏡の扉にこだわっていたわね。
どこでも扉を生み出すことができれば便利でしょう。
今のあなたにはそれが可能なのよ。
でも無闇に使うべきじゃない。
鏡の扉に頼りすぎると肥り過ぎたりして
悲惨なことになるわ。
健康のために歩きましょう。


a6

二人はクラウドの家のまえにたどり着いた。
みんないるかなあ。


a7

アイスがあまりにも早く
戻ってきたので、
みんな何があったのかと驚いていたが、
魔術で蘇生したフミコが一緒にいるとを聞くと、
最初の驚きは別の驚きに変わっていった。


a8

お父さん、これで心置きなく
リンリンに会いに行けるわね。

うん。グリューンとの約束が果たせたことになるからな。
グリューンはもうフミコさんに会って、
知っているんだろうけど。
あ、グリューンっていうのは
グリーンマンのことですよ。
フミコさん、グリューンは元気でしたか?

ええ、今たぶんその辺にいると思いますわ。
とフミコは言った。


a9

なんとグリーンマンは、
ジャングルの茂みから姿を現した。
ハンスを見つめて
喜んでいるようにも見ようと思えば見える。

なんとあんなところに。

私たちについてきたんです。
そういうとフミコは、
何やらグリーマンに聞こえない声で
話しかけている。


a91

しばらくしてグリーンマンの姿は
ジャングルの中に消えていた。

何を話していたんです?

茂みから私たちの様子を見ていて、
ハンスさんがいるのに気がついて、
思わず顔を出したらしいわ。
ハンスさんが蘇生したことは、
リンリンから聞いて知ってたって。

シーザーがリンリンに
伝えてくれたんだわ。
とアイスが言った。

ハンスさん、
あなたが約束を守ってくれたことを、
すごく喜んでいましたよ。
リンリンも会いたがっているって。

そ、そうでしたか。

ずっと私たちについていきたいけど、
遺跡からあまり離れると
遺跡やジャングルを守れなくなる。
とも言ってた。
あなたはもう自由なんだから、
好きにしていいのよ。
って言っておいたわ。
あれで結構悩んでいるのよ。

複雑なストーカー心理なのね。
とアイスが言った。



解説)
続きます。
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Jul 18, 2024

フミコの帰郷 そのよん

a1

二人が月の扉のある部屋に戻ると、
リザードがまっていた。

おお、フミコ、蘇ったのだな。
ここの月の扉が使われたので、
もしやと思ってきてみたら、
やはりお前だったか。

リザード、本当に久しぶりね。
あなたが魔族の蘇生の呪文を
アイスに教えてくれたおかげで、
蘇ることができたの。
感謝してるわ。


a2

大昔の仲間内の戦争の結果、
というか、正確にはお前が死んでからのことだが、
我々レプテュリアンはむやみに人間と
接触してはならないという決まりになったんだ。
戦争が起きたのも、我々だけが
魔族と接触して文化を分かち合い、
仲間の嫉妬を買ったしまったのが原因だったからな。
ここの再興計画が中断したのもそのせいで、
魔族の協力が得られなくなったのでね。

だから人間に我々が記録した魔族の
呪文を教えるのは協定違反だったんだが、
あのグリーンマンの身の上が哀れでね。
再会を果たして自由にしてやったかい。

フミコはアイスにも話した
グリーンマンや動物たちとのやりとりを、
リザードにも伝えた。


a3

なんとそんなことを言ったか。
お前のかけた魔法が強力すぎたのかもしれないな。
はは冗談だよ。
彼らが遺跡とその周辺を
これからも守ってくれるのは
我々にとっても好都合だ。

私が蘇ったことをお仲間に知らせたの?

いや知らせるつもりもないよ。
知らせても、再生を繰り返して
生き継いでいる仲間も少なくなり、
お前の強大な呪力のことを覚えているものは、
もうほとんどいないだろう。

私はたまたまジャングルにリクガメ探しにきて、
知り合ったチンパンジーのリンリンに
何度かここの遺跡にまつわる昔語りをしていて、
お前のことをよく覚えていただけだ。
そうしたらグリーンマンの、お前を慕う、
哀れな話を聞いたのだよ。

あなたたちのリクガメ収集の趣味は変わってないのね。
とフミコが言った。

そうなんだ。
あ、そろそろおやつの時間なので
失礼するよ。
とリザードは言った。


a4

あっという間に行っちゃったわね。
レプティリアンって、
1日に何回おやつを食べるのかな。

ねえフミコ、もしできたら、
私、あなたの蘇生が成功したことを、
一緒にいった人たちにも教えてあげたいんだけど。
みんなどうなったか気にしていると思うの。

アイスはフミコより先に蘇ったハンスが、
特に気にかけていたことをかいつまんで話した。

鏡の扉を使ったらマークの集落にも行けるの?
とアイスが言った。

場所が特定できれば、どこにでも行けるわよ。
それはどのあたりにあるの?
この上にある集落の遺跡から
谷の渓流を越えてジャングルの斜面を登って
半日くらいの距離にある。

私が生きていた頃には、
都の近くにそんな集落なんてなかったわ。

マークっていう人が開拓したんだって。
それでマークの集落ってみんな呼んでる。
そこにはフラハっていう魔族の魔術師も住んでるの。
フラハは、あなたを甦らそうとしてくれた人よ。
呪力不足で頭蓋骨が震えただけで、
うまくいかなかったけれど。

ああ、なんとなく思い出した。
魔族の人だったら、
鏡の扉のことも知っているから
驚くこともないでしょう。
その人の家に行きましょう。

その前に、色々お世話になった
あなたに呪力を授けるから。


a5

そういうと、
フミコは持っていた肩飾りを手に取って、
肩飾りに嵌め込まれていた一粒の宝石を外し、
呪文を唱えた。

するとその宝石の嵌め込まれた
金の指輪が出現した。

これは私とグリーンマンからの
感謝の気持ちとして受け取って。


a6

フミコはアイスに向かって
呪文を唱えてから言った。

私は今、あなたに呪力を授けたの。
この指輪はあなたの呪力を昂めてくれる。


a7

どの指にはめればいいの?

右手の中指がいいのよ。
指輪には他にも効力があるけど、
それははめているとわかるわ。


a8

じゃあ、出発しましょう。
そのフラハの家の様子を思い浮かべて。
そして浮かんできた言葉を唱えるのよ。


a9

アイスが言われた通り、
フラハの家を思い浮かべて
脳裏に浮かんできた言葉を唱えると、
部屋の中に鏡の扉が出現した。
扉は中空に浮かんでいる。

こんなことが。

レプテュリアンの月の扉を使うと、
またリザードに迷惑かけるから。

彼らの月の扉や光の石は
たいてい固定された装置のようなもので、
マニュアルにある呪文で行き来するの。
魔族に伝わる鏡の扉は、
そういう使い方もできるし、
その都度出現させることもできる。
コツを覚えれば簡単で
ずっと便利よ。



解説)
続きます。
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Jul 17, 2024

フミコの帰郷 そのさん

a1

これでみんな見て回ったわ。
あとは地底の都の跡ね。


a2,jpg

二人は前にアイスがリザードと会話した
廃墟の一室に出た。

ここに出られるんだ。
彼らの月の扉を使ったの?

そうなの。
ここに来るためにリザードたちが
使っていた扉があったのを思い出したの。
今唱えたのは彼らの呪文よ。


a3

二人は回廊を歩いていく。

こんなふうに普通に呼吸できる空間を
少しずつ広げていく計画だったんだけど、
ここは私が死ぬ前とあまり変わっていない。


a4

あそこから外の様子を
見られるはず。
とフミコは言った。


a5

これを映し出しているのは、
私たちの魔法じゃなくて
リザードたちの技術。
彼らは水中が苦手だから。


a6

すっかり水草に覆われているけど、
華やかな都だったのよ。


a7

あ、マービーだ。
とアイスが言った。

マービーって、あの生き物のこと?

ええ。マービーはグリーンマンみたいに、
ここで誕生した変異種じゃないかって、
リザードが言っていたわ。
マービーが生まれたのは、
あなたが亡くなって後のことだって。
でもいつもここで何をしてるのか、
リザードもよく知らないって言ってたわよ。


a8

ここでは都の一部を再興するために、
リザードたちと協力して
魔法を相当使ったから、そのせいで
生まれたんでしょうね。
誰かが住んでくれれば嬉しいわ。
とフミコは言った。

マービーは姿を見られていることに
気が付かずに遠ざかっていった。


a9

水底にはマービーがゴルゴーって呼んでた
タコと魚のキメラみたいな
生き物もいたわよ。

ふーん。
長い歳月の間に私の知らないことが
色々と起きていたのね。

ジャングルには、
リンリンやシーザーっていう、
知能が進化した動物たちも生まれているの。



解説)
続きます。
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Jul 16, 2024

フミコの帰郷 そのに

a1

鏡の扉を抜けると、
そこは山の遺跡の中の広場だった。

ここに水盤があるね。
この側の石畳の下に
私たちより前に来たハンスっていう探検家が、
フミコのお墓の副葬品を集めて
隠してあるって聞いたよ。

ええ、さっき肩飾りを受け取ったとき、
グリーンマンも言ってたわ。
そんなことも話してたんだ。
彼はああみえて結構お利口さんなのよ。


a2

ここはね。
山の上にあって気候がいいから、
避暑地になっていたの。
山頂の展望台とも近いし。
展望台って、ストーンサークルのことかな。

そこには展望台って呼ばれる施設があって、
周囲の巨石群は、空から都を訪れる人たちのための、
目印になったりしていた。
でも戦争の時に徹底的に破壊された。

二人は建物の中に入っていく。


a3

確かに風が通り抜けて見晴らしも良くて、
気持ちがいいところね。
そうでしょう。
ここで友達とおしゃべりしたり
お昼寝するのが最高だった。


a4

ところでさっき
グリーンマンと話してたのはね。
とフミコが言った。

「あなたは長い間、ここが廃墟になってからも、
いつか私が蘇ることを信じて、
ずっとこの土地を守っていてくれたけれど、
もうそれも終わり。
私は私が死んだ後も、残された人たちが
安全に暮らせるように、あなたや動物たちに
この土地を守るように魔法をかけた。
でも長い歳月が流れ、住む人はもう誰もいない。
あなたは充分立派に役目を果たしてくれた。
もう自由になれるように魔法を解いてあげる」
って、私が言ったの。
そうしたらグリーンマンはちょっと考え込んでから、
これまで通りでいいって言ったのよ。

彼のいうのには、
何百年かに一度は、昔ここに住んでいた
人の子孫がこの遺跡を訪れることがあって、
伝承の記憶をよすがに、
都のいにしえの栄華を偲んでいくそうなの。
自分ではもう先祖の過去も知らずに
導かれるように来る人もいるという。
その人にとって、そんな体験は
一生に一度きりのことかもしれない。
でもその一度きりの体験の記憶が、
世代を超えて蘇り、繰り返されているんだと。
そんな魔族の末裔の訪問が絶えるまで、
この土地を守り続けたいというのよ。

その気持ちは嬉しいけど、
って私が言いかけたら、
いつの間にか周りに寄ってきていた動物たちが、
そうだそうだって言い出しちゃって。
私泣きそうになって、
わかったわかったって言って
逃げてきたの。


a5

ここは広場。子供がよく走って
よそ見してつまづいて転んで泣いてたわ。


a6

まるで別の星で見た記憶のように、
鮮やかに蘇る。


a7

あんなところにグリーンマンが。
彼はこの土地の中ならどこにでも
鏡の扉を出現させることができるから、
ああやってついてくるのよ。
次は祭壇のある湖の洞窟に行きましょう。


a8

ここの扉は特別なの?
ここだけは光る石でできてるの。
リザードたちの月の扉と同じ
仕組みが残っている。
彼らと一緒に暮らしていた頃の名残よ。


a9

ラッセルたちから話は聞いてたけど、
ここはすごいな。
魔族たちはこの土地に来て、
最初はこの洞窟に住んだと言われてる。
横穴式の住居跡があるはずよ。


a91

ここは私の墓所。
元は別世界に旅立つ人たちのための
特別な鏡の扉が置かれた祭壇だったの。
そんな場所にみんなで私を葬ってくれた。

グリーンマンがまた来てるわよ。
こっちにくればいいのに。
ああしてついてきて
覗いてみてるのが好きなのよ。
しょうもないやつなのね。



解説)
続きます。
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Jul 15, 2024

フミコの帰郷

a1

鏡の扉が現れたのは、
集落の遺跡の建物の中だった。


a2

鏡をすり抜けてフミコが姿を現した。


a3

続いてアイスもやってきた。
ああ、こんなふうに変わり果てて。
とフミコが言っている。


a4

ジャングルの眺めは変わらない。


a5

あそこの石畳が動いて、
地下へ降りる階段が開いたんだけど。
ええ、その仕掛け覚えてるわ。
戦さの前には仕掛けはなくて、
誰でも自由に降りていけたの。


a6

二人は集落の遺跡の外に出て、
遺跡前の広場を歩いている。

ここには賑やかな市が立ったの。
魔族以外の人たちとの交易も盛んだった。

この城塞都市みたいな造りはどうして。
最初は他の部族からの攻撃を防ぐためだった。
でもこんな風にしたのは、むしろ権威付のためよ。
この牢固で神聖そうな壁のおかげで、
地上での争いはほとんどなくなった。


a7

ちょっとだけ一人にしてね。
と言ってフミコは広場に佇んでいた。
はるか昔を思い出しているようだ。


a8

やがてジャングルの茂みから
グリーンマンが姿を現した。
嬉しそうな顔をしているようにも
見ようと思えば見える。


a9

フミコも気がついて
グリーンマンに近づいていった。
グリーンマンはバッグから
肩飾りを取り出して、
フミコに差し出している。

二人は声に出さない会話をしていた。
グリーンマンの顔には
やはり嬉しさが滲み出ている気がする。


a91

私の頭蓋骨を受け取ってくれて、
魔術師を見つけて私を蘇らせてくれたあなたに、
お礼を言いたいって言ってる。

お礼なんて。
まあよかったよかった。
と照れながらアイスは言った。


a92

やがて周りに動物たちが集まってきた。
フミコはかなり長い間、
アイスには聞き取れない会話をしていた。


a93

二人は鏡の扉のある建物に戻った。

アイスは他の遺跡は見たの?
調査隊は三つのグループに分かれて別行動したからね。
私が見たのはこの集落跡と地下の都だけ。
だったらこれから見てまわりましょう。
どんな様子か知りたいの。
と肩飾りを外したフミコが言った。

うん。ところでさっき
何話してたの?
色々とね。あとで話すわ。



解説)
続きます。
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Jul 14, 2024

フミコとの対話

a1

魔術劇場では
4人が応接室でくつろいでいた。


a2

どうです。その魔術書を読まれた感想は。
出版されたのは随分昔で、
古いものと聞くが。


a3

私からすれば新情報が盛り沢山です。
特に黒表紙の本は薬草のことで為になるわ。
赤い表紙の本はほとんど既知の呪文ばかり。
でもこんなマニュアルがあると便利ですね。
私たちは文字を持たなかったから。

でもすらすらお読みになって。

読むというより感じとるんです。


a4

カメ新聞か。
これ見るの久しぶり。
去年の一月以来かしら。
レプテュリアンが地底世界や
月の裏側で発行している新聞だって、
そのとき管理局のミラが言ってたけど、
私は彼らには直接会ったことがない。
フミコは昔仲良くしてたんでしょう。

いい人たちですよ。
特に私たちと交流していた人たちは。

新聞に書き写してある蘇生の呪文は、
水没した都でリザードが教えてくれたのよ。
彼らは魔族の呪文を聞き取って記録保存していたの。
とアイスが言った。

あなたは地下の都まで行ったのね。
水没した都の一部の再建を、彼らと協力してやっていたの。
私はその途中で死んじゃったんですけど、
あれがどうなったのか。


a5

フミコは立ち上がると、
さっと手を振って、短く呪文を唱えた。

するとそこに扉が現れた。

a6

この館は魔法陣の上に建てられているんですね。
魔法の効力が素晴らしいわ。
この扉は今、私の故郷の集落の跡と繋がっています。
そこに行っても、もう人は誰もいないことはわかっていますが、
そこに私の帰りをずっと待っているものがいるんです。
彼に私が蘇ったことを知らせに行ってきます。


a7

なるほど、お見事な呪文ですな。
鏡の扉は、この魔術劇場の中では、
各部屋の出入り口にも使っています。
あなた専用の部屋もすぐ用意しますから、
お戻りになったら是非自由にお使いください。

重ね重ね、ありがとうございます。
今の私に人間の知り合いはあなた方だけ。
必要なことを済ませたら、
また戻ってきて、お世話になりますわ。
その節はどうぞよろしく。


a8

私も一緒に行っていい?
もちろんよアイス。
こんなふうに呪文を呟いて。

二人は鏡の扉の中に消えていった。


a9

お前、とんでもない人を蘇らせたな。
そうなの?
あの人の特別な能力は、
多分生き物全般に呪力を授けることができることだ。
それって変わった能力なの?
魔族というのは魔法が使えるだけで
体は普通の人間とかわらないだろう。
彼女は普通の人間にも呪力を与えて、
魔族と同等の力を持つようにしてしまえるのさ。
ふーん、そのどこが凄いのか、
いまいちよくわからないけど。
まあいいさ。
くれぐれも仲良くやってくれよ。
喧嘩する理由なんてないよ。
いい人みたいだし。



解説)
続きます。
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Jul 13, 2024

新たな出会いなど

a1

喫茶ペンギンの前で、
バグとミラが話している。
はるなが今日のサービスはバナナです。
と言っている。


a2

今度の波動はすごかったね。
発信源はこのすぐ近くだよ。あんな強力なの、
これまで体感したことがなかった。

この近くっていうことは、
魔族のハリー一家が怪しいわね。

使われたのは前のと同じタイプの蘇生の呪文だ。

情報管理部に戻って、
詳細を確かめてこようか。


a3

でも報告あげても、
局長動くかなあ。
あ、このバナナ甘くておいしいね。
なんだか癖になりそう。


a4

友達の佳奈から、
さっき旅行のお土産にもらったんです。
佳奈はアフリカに行ってたんですよ。
とはるなは嬉しそうに言った。


a5

その頃、魔術劇場に招かれたフミコは、
ハリーに面会していた。

おや、これは新しいお客人かな。
フミコって言います。


a6

アイスは知ってるわよね。
うん。顔馴染みだよ。
フミコはね。大昔にアフリカで生きていた魔族の人、
私が魔法を使って頭蓋骨から蘇生したのよ。

なんとお前、あの蘇生の呪文を唱えたのか。

正確には古代の魔族が使っていた呪文だけどね。
アフリカで栄えていた古代の魔族っていうと、
お父さんのご先祖かもしれないわよね。

ふむ。魔族と言っても色々だからね。
アフリカに魔族たちの都があったという話は聞いているが、
それ以前に、すでに魔族は世界に分散していた。

よくご存知ですね。
おっしゃる通りですわ。
私たちの都の歴史は、
魔族全体の歴史のごく一部なのです。
とフミコは言った。


a7

その頃、マンゴー亭では、
ルビーたちが話していた。

それでラッセル、
これからどうするの。


a8

あそこの遺跡調査はほぼ終わり、
副葬品が入手できれば希少で学術的な価値もあるが、
なにせ所有者が蘇っちゃったからね。
遺跡の存在もとても公表するわけにいかない。
最終的にはクラウドたちと相談して決めることだけど。
僕はまたどこか別の秘境を探すよ。


a9

いくつになっても探検をやめないで、
新たなロマンを求め続けるあなたらしいわね。
それでさっき話していた大きな鳥の羽根の話は?

うん、巨大な鳥の発見にはロマンがあるんだが、
もし魔法や魔族が絡んでいるとすると、
僕の求めるロマンとはちょっと違うんだなあ。


a91

私は一人でも出かけて行って、
マークと一緒にその鳥を探したい。
せっかく友達になれたんだし。
でもマークの集落まではあまりにも遠いのよね。
と佳奈は言った。



解説)
続きます。
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Jul 12, 2024

蘇生の呪術

a1

佳奈がお土産のバナナを
知り合いに配りにいったあと、
二階のデジャから肉まんを食べに
ヴィヴィアンが降りてきた。

おや、アイス。
しばらくぶりね。
休暇で旅行にいってたんだって?
と言っている。


a2

アイスは、
実はあなたに頼みたいことがあるんだけど。
と言って、かいつまんで、
ヴィヴィアンに旅先でのいきさつを説明した。

ふーん。アイスの直々のご指名とあれば、
断るわけにいかないわね。


a3

アイスはヴィヴィアンにカメ新聞を
手渡した。
この呪文、魔法の書に載っているのと
微妙に違うわね。
古代の魔族はこんなふうに唱えていたんだ。

できそう?
微妙な違いだからすぐ暗記できるよ。
でも死者の頭蓋骨の蘇生はやったことがない。
自然の摂理に反する呪法で、
蘇る途中で失敗すると恐ろしいことが起きるから、
滅多なことで使うなって、
ハリーに釘を刺されてるのよ。


a4

でもやっちゃうけど。
というと、
ヴィヴィアンは両手をかざして
呪文を唱え始めた。


a5

あたりに薄い煙がたちのぼり。

しかし頭蓋骨は小刻みに震えただけで、
何も起きなかった。


a6

こうなったら、本気を出すわ。
そういうとヴィヴィアンは
本来の悪魔の姿に変身した。
呪文を唱え指先に思念を集中している。


a7

ヴィヴィアンの目がひときわ輝いている。


a8

すると、頭蓋骨の輪郭が薄らぎ、
薄い煙の中から女性が現れた。


a9

あなたが蘇らせてくれたのね。
どうもありがとう。
わたしはフミコ。
とその女性は言った。


a91

どういたしまして。
お礼ならそこにいるアイスに言って。
私は頼まれてお手伝いしただけなの。
だけどエネルギー使いすぎて、
流石にもうフラフラよ。
とヴィヴィアンは言った。


a92

アイス。あなたのことは知ってるわ。
あなたも蘇生の呪文を唱えてくれたでしょう。
その時は、あなたたちのいうグリーンマンを
呼び出すためだったけど、
あの時私の意識は目覚めかけていたの。

私呪力や魔力なんて全然ないのよ。

無心の境地は似たようなものなのよ。
だから私はあなたにも呪力を授けられるわ。
グリーンマンにそうしたようにね。


a93

あら、あなたって変幻自在なのね。
そうか。あなたも当然魔族なのね。
でもそんな変身ができるっていうことは。

私は魔族というか、
魔族とヴァンパイアのハイブリッドで生まれて、
それからなぜか悪魔になったのよ。
ヴィヴィアンっていうの。
パワーを使い切ったみたいだし、
普段はこの姿の方が楽だから。

そうだ。父にも紹介したいから、
すぐそこの魔術劇場に来ない?
父は純正魔族だし、あなた方の子孫かもしれない。

喜んで伺うわ。



解説)
続きます。
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Jul 11, 2024

旅行の報告

a1

4人を乗せたジープは、
町の広場に到着した。


a2

随分早かったのね。
とルビーが言っている。


a3

うん色々と事情があってね。
とラッセル。


a4

アイスと佳奈は
竹の飾り付けを見ている。

そういえば七夕だったんだね。
私も短冊に願いごと書きたかったなあ。
と佳奈が言っている。
何書くの?
いつか先輩みたいになりたいって。


a5

3人はルビーに遺跡調査旅行の
報告をしている。

なるほど、色々大変だったのね。
それってお土産?


a6

このキノコはバター炒めが美味しいらしいよ。
現地でも滅多に手に入らないんだってさ。

このバナナは、帰りに寄った村で、
叩き売りしてたの。
現地ではいつでも手に入るんだって。
と佳奈が言った。


a7

それでそれが問題の頭蓋骨ね。
ヴィヴィアンはどこに?
デジャにいると思うよ。
あれ、調査隊って、
もう一人いたんじゃなかった?
ブラッドならドルフィンのベランダに。


a8

ブラッドはベランダで、
マヤたちと話していた。

アフリカの夜空って
澄んでいてとても綺麗なんだ。
天の川がこうさーっと流れててさ。
七夕のこと思い出しちゃった。


a9

私ちょっと用事思い出したから、
席外すわ。
とナディアが言っている。



解説)
続きます。
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Jul 10, 2024

帰り道

a1

翌朝、リンとクラウドと
マークに見送られて、
ラッセルたち4人は帰路についた。


a2

時は省略するかのように流れ、
一行はジャングルを踏み分け、
目印の湖に行き着くと、
さらにジャングルを歩いて
川の上流から小舟ではるばると渓流を下り。


a3

ジャングルと砂漠との境界にある
村に到着したのは夕暮れまじかに
なっていた。


a4

CGのアフリカ支部にいる
久美子に連絡したら、
空港から明日の午後にたつ
輸送機があるって教えてくれたわ。
とアイスが言っている。

今日はこの村で一泊して
明日早朝に出て空港に向かおう。


a5

やがて夕暮れになった。
越えてきたジャングルの彼方に
夕日が沈んでいく。


a6

夜になってアイスと佳奈が
宿の周辺を散歩している。

こういう裸電球って
南国の旅情を感じるのよね。
などと話している。


a7

4人は村の屋台のような簡易食堂で、
夕食を摂ることにした。

マークの見せてくれた鳥の羽根。
大きかったね。
翼の風切羽根のようだったけど、
全体を想像すると巨大すぎる。
普通ありえないよ。
誰かが魔法をかけたんじゃない?
ジャングルの別の場所にも、
フラハみたいな魔法使いが
住んでいるっていうこと?
古代の都が衰退して、離散した魔族たちの
一部は周辺の部族に溶け込んだんだろう。
古代の魔族の末裔がいてもおかしくはない。

確かに翼竜なみの巨大な鳥を
見つけたら大発見だけど。
マークはきっとまたみんなと会いたくて
あの話をしたんだよ。
もっと近いといいのにね。


a8

翌朝、駐車場に停めてあったジープに
4人は乗って村を後にした。


a9

ジープは空港に向けてまっしぐら。
時は矢のように流れていく。


a91

到着した空港には、
CGの支部から出向いてくれた久美子が待っていた。

麻薬とか危ないもの持ってないでしょうね。
CGの専用輸送機に
コネで乗るんだからチェックはないけど、
見つかるとただじゃ済まないわよ。
普通のお土産の他に頭蓋骨が一つ。
それアイスの趣味なの?
と言われている。


a92

かくて一行を乗せた輸送機は
無事空港を発進し、
時はまたしても省略するかのように流れ、
10数時間のフライトののち
一行は帰国したのだった。



解説)
続きます。
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Jul 09, 2024

マークの家に寄る

a1

フラハの家では
佳奈とラッセルが加わって、
話に花が咲いていた。

ハンスさん。
ゴリラのシーザーのことはご存知なんですか。
私がいた時はまだ生まれてなかったな。
私の頭蓋骨を家宝にしてくれていたと、
さっきリンから聞いたが。

ハンスさんはこれからどうされるんです?
生き返ったばかりでまだ何も。

しばらくはクラウドの家で静養よ。

そのうちリンリンにも会いたいが、
自分だけ生き返って、
フミコの蘇生が叶わない以上、
なんだか申し訳ないなあ。

それを聞いていたアイスが、
ラッセルさん、帰りの出発を早めませんか。
と言った。
そうだね。明日にでも出ようか。


a2

なんか大勢で押しかけちゃったみたいで。
いやいやなかなか楽しかったぞ。
何かあればまた来るといい。
アイス君とやら、君は魔術はさっぱりなようだが、
なかなか見所がある。
それ褒めてるんですよね。


a3

ということで一行は
フラハの家を後にすることになった。

マークが、明日帰るんなら、
準備もあるだろうけど、
名残惜しいから、
これから僕の家に遊びに来ないか。
と言っている。
アイスと佳奈は是非行ってみたいわ、
と言っている。


a4

ということで、フラハの家からの帰り道。
マークの家へは、ラッセルも付き合うことになった。
リンはまた変わったトカゲに見とれている。


a5

この辺おかしなトカゲが多いのよね。


a6

蔓草の門の前でリンとハンス親子と別れて
4人はマークの家に向かっている。

佳奈は草陰で何かしているシーザーを見かけた。
シーザーは大きな袋のようなものを
背負っている。


a7

シーザーはマークとも知り合いのようだ。

キノコを採っていたんです。
みなさんにもお分けますよ。
それは嬉しいね。
これはバター炒めにすると美味いんだ。
とマークが言っている。

あなたにお礼にもらった頭蓋骨の人、
蘇生したのよ。ハンスさんっていう人。
と佳奈が言った。
それは良かったですね。
リンリンに会ったら伝えておきます。


a8

ちょっとひらけた場所に
マークの住居はあった。
あれが僕の家だよ。
とマークが言っている。


a9

見通しのいいリビングね。

裏手にジャングルが迫っているんだ。
何もないけどくつろいで。
と言っている。


a91

しばらくして、
マークはそうそうと言って
隣室から大きな羽根を持ってきた。

ラッセルにこれを見せたかったんだ。
僕も君のいろんな秘境探索の話に刺激されてね。
ジャングルの奥地に探検に行ったんだけど、
ある山の山腹で見つけたんだよ。
あの遺跡とは全然別の方角だよ。
だけどこんなに巨大な鳥の羽根って見たことある?


a92

君とブラッドもアイスも佳奈も
あの遺跡の調査を終えて、
ここに来る機会はもうないかもしれないね。
でも、改めていつか
この鳥の調査をするっていうんなら、
その時には僕が案内役で付き合うよ。
とマークは言った。


わかった。ブラッドと相談してみる。
とラッセルが言った。

私はもしフミコの蘇生がうまく行ったら、
フミコを案内してここに戻ってくることになるわ。
その時また会えるわよ。
とアイスは言った。



解説)
続きます。
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Jul 08, 2024

追加の訪問

b1

クラウドの家では、
寝坊した佳奈がアマンダと話している。

先輩たち頭蓋骨持ってもう出かけたのね。
私も気になるから行ってみたいんだけど。
集落の外れのフラハさんの家って、
遠いんですか?
そんなことないですよ。
道順教えましょうか。
だったら僕も気になるから、
散歩がてら付き合うよ。
とコーヒーを飲んでいたラッセルが言った。


b2

二人はフラハの家に向かって行く。
ほぼ一本道なんだね。


b3

その頃、フラハの家では、
ハンスがリンからナイフを借りていた。
お父さん。それどうするの。


b4

さっき鏡を見たら、
髭剃りたくなっちゃって、
と言っている。


b5

隣室では3人が話し込んでいた。

フラハ、これまであまりあの遺跡については、
君と話題にしたことはなかったけど、
君の知っている伝承には、魔術師フミコについての
言い伝えはなかったの?
とマークが言った。

その名前は聞いたことがなかったな。
私が聞いたのはその昔あそこに
魔族たちが暮らしていたということや、
住民たちは鏡の扉を使って自由に
往来していたというようなことだ。
トカゲ人間同士の戦争があって、
それに巻き込まれて人々が去り、
都が衰退して滅んだという話は知らなかったよ。

フラハさんも魔族なんでしょう。
ハリーやマーリンを知っているというし、
それも相当な呪力の持ち主なのは、
ハンスさんをあっさり蘇生させたのを見てもわかる。
そんなあなたが、
フミコのことを知らなかったなんて不思議。

そう思うのも無理はないが、
我々魔族にとっても、あまりにも昔のことだからな。
君たちが聞いたというその名前も、
同時代に生きていたというトカゲ人間だからこそ、
覚えていて、リンリンというチンパンジーにも伝えたのだろう。
それに魔族はもう今では都も国も持たず、
世界中に離散してひっそりと暮らしている。

君たちの話で興味深かったのは、
都の住民だった大部分の魔族は、
争いを逃れて異世界に去ったということだが、
我々魔族に伝わる古い伝承では、
我々はむしろ異世界からやってきたという、
話が残っていることだ。

ああ、その話、ハリーから聞いたことがある。
とアイスが言った。
私たちの暮らす町のすぐ近くに、
迷いの森と呼ばれる地域があって、先祖は、
そこから来たという言い伝えがあるって言ってたわ。
町には迷いの森の泉に湧いた不思議な水も、
地下水として流れ込んでいる。
ハリーはそんな土地柄が気に入って、
魔術劇場ごと移り住んでいるの。

ふうん。それは良いところのようだな。
いつか遊びに行ってみたいものだ。

話が広がりすぎない程度にね。
と誰かが言った。


b6

ラッセルと佳奈は
フラハの家にたどり着いた。
ここね。

ちょうど家の前に出てきたリンが、
二人に気づいた。

つい気になって様子を見に来たんだけど、
蘇生は成功したの?
ええ。父だけは。
フミコの頭蓋骨はだめだった。
あ、今父を呼んでくるわ。


b7

リンはハンスを呼びに行った。
お父さん、佳奈とラッセルが
来てくれたの。
紹介するから。
あ、その顔。


b8

さっぱりしたけど、口髭だけ残したのね。
うん。なんとなく今の気分で。
と言っている。


b9

ハンスはラッセルと佳奈に
紹介されている。
リンさんの父君で、
探検家のヨハネスさんですね。
無事のご生還おめでとうございます。
ああ、ありがとう。
そうか、生還か。
まさに文字どうりのようですな。



解説)
続きます。
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Jul 07, 2024

七夕の日

a1

ところ変わって、
ここは町の広場。


a2

今日は七夕なので
竹が飾り付けられている。


a3

6月のコスプレコンテストは、
優勝者がいなかったんですね。
と今井舞がルビーに訊いている。

常連の応募者は多かったけど、
新規の参加登録者がいなくて、
協議の結果、優勝者なしで来月に持ち越し。
でも優勝者がいなくても参加賞はもらえるから。
みんなそっちがお目当てですからね。


a4

ナオミがコンテストの参加賞を
もらいにきていた。

今月はチョコパフか。
これ両手で掬っていいんですよね?
うん。


a5

参加賞をもらってナオミが帰宅すると、
たまきが短冊に願いごとを書いていた。


a6

これ、前にも書いたっけ?
もし人形なれたらどうするの。
人間の真似をして暮らすのよ。
複雑なのね。


a7

喫茶ペンギンの前でも、
はるながチョコパフをサービスに出していた。
バグとミラが何やら話している。


この前の波動。
どこかで魔族の蘇生の呪文が使われたようだね。
情報管理部は動かないの?

一応局長には伝えたわ。
でも反応はいつも通り。
世界はそこだけじゃないんだから、
って取り合ってもらえなかった。
局長は注意勧告に行くのが面倒なのよ。


a8

あの呪文が頻繁に使われるようになると、
ここの世界にとっては結構おおごとなんだけどなあ。
成功するには相当な呪力が必要なはずだけど、
そんなことのできる魔術師っていたっけ。
呪文を使った魔術師は特定できているの?


a9

一応情報管理部でチェックしてみたら、
波動の発生源はアフリカのジャングル。
大昔に魔族の都があった場所の近くね。
使ったのはそこに住む
フラハっていう男性の魔術師らしい。
これまで問題を起こした記録はないんだけど、
数百年は生きてる。


ふーん、そんな人がまだいたんだ。


a91

夜になって、
広場のベランダで、マヤとナディアの親子が
星空の天の川を眺めていた。
年に一度会える遠距離恋愛か。
ロマンチックね。
誰かのこと考えてる?



解説)続きます。
6月2日以降、生成AIで作った画像を使って、
撮影した人物画像と切り貼り合成してましたが、
今回は七夕なので気分を変えて、
久しぶりに情景セットで撮影しました。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 06, 2024

フラハの家で

a1

夜が明けた。

おはよ。今朝も快晴ね。
おはようございます。
あ、アイスさん。
リンとマークが待ってますよ。


a2

3人はさっそくフラハの家に向かった。

みんな早起きなのね。
ここでは夜明けとともに。

リンは変わったトカゲに見とれているようだ。


a3

フラハは家の戸口で
3人を出迎えてくれていた。


a4

こちらはリン。
ご存知と思いますが、
この集落でクラウド博士と一緒に遺跡の研究をしている。
今回の遺跡調査にも参加した人です。
とマークはリンをフラハに紹介した。

何度か見かけて顔は知っているが、
直接に対面してお会いするのは初めてだな。
何やら大変なものをバッグにお持ちのようだ。
ようこそ。どうぞよろしく。
とフラハは言った。

今日はそのことで伺ったんです。
実はバッグの中に二つの人の頭蓋骨が入っています。
それらを蘇生させていただけないかと。

なんとそんな難しいことを頼みにきたのか。
まあ、あっちで話を聞こう。
とフラハは言った。


a5

3人は遺跡調査で分かったことのあらましを
口々にフラハに話した。

それでこの頭蓋骨から、ハンスという人物と、
フミコという魔術師を蘇生させろというのか。
動物や物品に宿っている精霊に働きかけて
人間の姿で目覚めさせることはできるが、
頭蓋骨から死者を蘇生させるのは難しいんだぞ。

集落にたまに来る原住民たちの間では、
あなたならできるだろうっていう噂ですよ。
とマークがいい、
強力な魔術師だったらできるかもしれないって
リンリンも言っていました。
とリンも言った。

頼まれて古いトーテムの精霊を
呼び出したりしてやったりしたからな。
噂は尾鰭がつくものだよ。
その場に突然人の姿が現れるので。
同じことのように思えるかもしれないが、
生きている精霊に働きかけるのはわけが違う。
幽冥界に働きかけるわけだから、
強力な呪力と特別な呪文が必要なのだ。


そうその特別な呪文を、
教えてもらってきたって、さっき話したでしょう。
とアイスはかめ新聞をフラハに示した。

そ、そうだったな。
ではやってみるか。


a6

かめ新聞に書き付けられた呪文を暗記してから、
フラハはハンスの頭蓋骨を前にして、
呪文を唱えはじめた。

その槍も必要なんですか。
これは気持ちの問題だよ。


a7

薄い煙が立ち上ると、
頭蓋骨の輪郭が薄れていき
なんとハンスが蘇った。

ここはどこ?
と呟いている。


a8

お父さん、わかる?
リンよ。

駆け寄ったリンから話を聞いたハンスは
記憶を取り戻し、事態が飲み込めたようだった。


a9

フラハは続けて
フミコの頭蓋骨に向かって呪文を唱えたが、
頭蓋骨は微妙に振動しただけで、
何も起こらなかった。

うーむ。反応はするものの。
これは私の呪力不足のせいだろう。


a91

フミコと同時代に生きていた魔族の魔術師でも
蘇らせることができなかったというじゃないか。
それから途方も無い時が経っているし、
相当な呪力の持ち主でないとこれは
不可能だろうな。

分かったわ。
私魔族にも魔法にも詳しくないけど、
一人だけ心当たりがあるの。
とアイスが言った。


ハリーかい。それともマーリンかな。
確かに彼らは優れた魔術師だ。
だがあいつらとは何百年もの付き合いだが、
別の場所に移動できる鏡の扉や、
共同で夢見る異世界を生み出すことができても、
死者を蘇らせたという話は聞いたことがないぞ。

ハリーの養女で、マーリンの実の娘。
この前話したヴィヴィアンっていう悪魔よ。
確信はないけど、彼女ならできそうな気がする。
この頭蓋骨私に預からせて。

そうしてくれると私も嬉しい。
と二人のやりとりを聞いていたハンスが言った。
強力な魔術師を見つけてフミコを蘇らせるというのは
グリューンとの約束だったから。
その約束を果たせなかったまま死んだことが無念で、
私の魂は幽冥界に残されていたのかもしれないな。


娘との再会が叶わなかったのも、
無念だったんでしょう。
も、もちろんそうだよ。



解説)
続きます
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July 2024
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