Feb 02, 2026
メイズの話と優勝者の発表

みなさん、ようこそ
宇宙ステーションへ。
私は艦長のメイズ、
横にいるのは副官のオニールです。

カコは、ハリーの呪文でも
ピピが目覚めない現状をメイズに告げた。
やはりピピの見る夢は、
人間のみる夢とは異質なのね。
そもそもピピは夢をみる生命体だったのかどうか。
地球観光にこの宇宙ステーションに来てから、
夢というものを見るようになったのかもしれないの。

私たち魔族の中には、夢とは異なる、
異世界を生み出すことのできる者もいます。
夢や異世界には夢食いと呼ばれるものが侵入して
住み込むことがありますが、
その種類と作用は実に様々なので、
悪いことが起きているとも一概にはいえない。
何か夢の物語が進行していて、
一段落つけば自然に目覚めることもありますよ。
とハリーが言った。
そう期待していたんだけど、
かなり長い間眠っているから心配なのよ。
宇宙には様々な生命体がいて、
言葉でなく、直接夢や意識に働きかけてくるものもいる。
それはあなたたちのいう夢食いとは多分別種ね。
この船には定期的に食料や物資が運ばれてくるから
その貨物船に潜んでいた生命体が、
このステーションに潜入した可能性もあるの。
まだ同じ症状のものはいないけれど。
もし病気みたいに感染したら、
乗員がみんな眠ってしまうということですね。

私はピピとは結構仲良しだったんです。
去年のハロウィーンには、
バッグの中に入れて、広場を見物させてあげたくらい。
ピピはチョコレートが大好物だった。
とサラが言った。
ピピのチョコレート好きは有名ね。
最初に地球に来た時、
チョコレートを盗もうとして
人間に追われたという話をいつもしていたわ。
とカコが言った。
それって使えるかもしれない。
とシモーヌが言った。
どういうこと?
ピピにチョコレートの匂いを嗅がせるのよ。
そんなに大好物だったのなら、
気付け薬になるかもしれない。

みんなまさかの思いつきだとは思いながら、
試してみることで意見が一致した。
本当は宇宙連合の本部の
了承を得ないといけないんだけど、
今回は緊急事態なので、
私の責任で許可します。
とメイズが言った。
確かに宇宙船の中に鏡の扉を作るなんてね。
レプティリアンたちの作った転送装置はあるけど、
行けるのはアフリカの奥地なので、
チョコレートを入手するには時間がかかる。
広場のドルフィンの倉庫にはストックがあるはずだから、
私がすぐに取ってきます。
とサラが言った。

ハリーが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、鏡の扉が現れた。
ドアは開けておくからね。
とハリーが言った。

サラは、バー・デジャの店内の奥の壁に
常設されていた鏡の扉に抜けてきた。

広場では、ちょうど、
月初めのコスプレコンテストの
優勝者の発表が終わり、
万雷の拍手と歓声の中、
優勝したヘルミーネが、
トロフィを授与されているところだった。

驚きの受賞です。
とヘルミーネが言っている。
あなたはいつも広場にいるし、
その農作業スタイルがついに評価されたのよ。
コスプレコンテストなのに、
すごい評価基準ですね。
解説)
続きます。
Feb 01, 2026
宇宙ステーションで

サラたち一行は
宇宙ステーションに乗船した。

船内の通路を通っっていく。

地球は青かったのね。
そのセリフは古すぎるだろう。

到着した部屋のベッドには、
銀色の小さな宇宙人ピピが眠っていた。

ハリーは呪文を唱えて、
想念を送っている。
しかし変化はないようだ。
私も普段から器物に宿る精霊の声を
聞き取ることをしていますが、
何も反応がないわ。
深く眠り込んでいるみたい。
とシモーヌが言った。

しばらくして、ダックがやってきた。
みなさん、
艦長がお目にかかりたいと
おっしゃっています。
艦長は別のフロアにおいでです。

一行はまた通路を案内されている。

途中でエレナとルースに出会った。
サラ。この前はお寿司をごちそうさま。
ローラは元気にしてる?
私もあれから会ってないけど、
多分まだミラたちの家にいるはずよ。
とサラが答えた。
そちらは魔族のシモーヌさんね。
どうぞよろしく。
あ、こちらこそ。
どうして私の名前を?
あなたたちが来たことは
ダックが教えてくれたの。

広いフロアに到着すると、
艦長のメイズたちが現れた。
解説)
続きます。
Jan 31, 2026
ホテルでの会話

ハリーさん、お部屋に
お荷物を運んでおきました。
とシーザーが言っている。
ありがとう。
じゃあ、部屋で話そう。

ハリー夫妻は
いつも利用している部屋に向かっている。
よかったら、あなたたちも
一緒に来てくれない?
とカコが言った。
いいですけど。
夢や夢食いのことに詳しそうだから、
色々情報が欲しいのよ。

カコはハリーに、宇宙ステーションの中で、
宇宙人のピピが夢見る昏睡状態になってしまい、
その夢に夢食いらしき侵入者が
入り込んだらしいというようなことを話している。
ふむ。
その夢の世界が人間が見る夢や
魔族が作った異世界と同じだと考えれば、
夢食いが入り込むのは珍しいことじゃないな。
ただ夢食いというのは総称で、いろんなタイプがいる。
その上、そのピピというのは、
どこかの惑星で生まれた宇宙人なんだろう。
そういう生物の頭脳の中の夢の世界がどうなっているのかは、
ちょっと見当がつかないなあ。
宇宙ステーションには、
宇宙連合に加入している惑星の
多種多様な宇宙人たちが乗船しているんでしょう。
それぞれが高度な文明を発展させているはず。
それでも対処法が見つからないの?
とサラが言った。

そこがかえって問題なのよ。
それぞれが異なる惑星の文明圏から来ているし、
お互いのことを全てわかり合っているわけでもない。
弱点を知られてしまうと大問題になりかねないからね。
ピピは私と同じように親善大使という身分で乗船しているの。
彼が目覚めなければ、いずれは昏睡状態のまま
母星に搬送されることになると思うけど、
そうなると政治問題になるかもしれない。
そういうトラブルを利用したがる勢力もいるのよ。
何処も同じ秋の夕暮れね。
何それ。

さっきハリーが、
夢食いにはいろんな種類があるって言ったでしょう。
夢の世界を独占しようとするものもいれば、
夢の世界を外敵から守ろうとするものもいる。
ひっそりと夢に棲みついて暮らしたがるものもいれば、
気ままにいろんな夢を渡り歩くのが好きなものもいる。
例えば、メルティっていう女の子の夢には、
今では百猫の王って呼ばれる夢食いが棲みついていて、
その子のみる夢の世界を守っているの。
だからそのピピっていう宇宙人の夢に入って来たのが、
どんな種類の夢食いなのかによって、
状況は全然変わってくる。
とカーミラが言った。
お前随分詳しいな。
とハリーが言った。
あなたと一緒にいれば詳しくはなるわよ。
とカーミラが言った。
興味深いお話ね。
そう言えば、さっき食堂で、
サラは、大勢、夢食いの知り合いがいるって
言いかけてたわね。
とカコが言った。
ええ。今カーミラさんが言ってた
百猫の王シュレディンガーとも友達だし、
芸術家の夢に取り憑くサルバドールとも友達。
いつまでも消えない夢の世界に住む、
みすずやシノやシビルやセリーヌ、
カエル王女とも友達よ。

だったら、そのうちの誰かに
ピピの見ている夢の世界に行って、
様子を見てきて欲しいって頼めないかしら。
とカコが言った。
夢に入り込むのは、
夢食いといえども、そう簡単じゃないんですよ。
とハリーが言った。
大抵は何かのきっかけが必要なんです。
そのきっかけは偶然のように見える場合もあるけれど、
時には夢見る人の無意識の欲求や、
夢食いを引き寄せる原因になるような出来事が必要です。
言ってみれば縁ですね。
もちろん夢食い自身のパワーや意思や願望も必要です。
それらが重なった時、通路のようなものが生じて、
夢食いはその世界に行くことができるらしい。
夢の世界は普通、夢を見ている人の無意識の
防御壁に守られているわけです。
さっきカーミラが例に出したメルティの場合には、
病気だった彼女はピピと同じように昏睡状態で、
ずっと覚めない同じ夢を見続けていました。
その一人きりの世界から彼女は逃れたがっていた。
ある時、その強い思いを私が受け取ったのです。
そこで初めて彼女と交信できるようになり、
夢の世界の様子を聞くことによって、
とうとう彼女の夢に通じる鏡の扉を作るのに成功しました。
なるほど。この星の魔族は
鏡の扉をそんなふうにも使うことができるのね。
お二人の交信って、
テレパシーでのやり取りみたいなものに思えるけど。
そういうことが可能な宇宙人なら結構いるわ。
ハリーさん、みなさん。
これからステーションに来て下さらないかしら。
もちろんいいですよ。
お役に立てるかどうかわかりませんが。

一行は裏の広場にある
転送装置に向かった。
こんなに大勢で
押しかけて大丈夫なの?
サラはこの前の寿司パーティで
みんなと顔見知りだし、
ハリー夫妻はこんなことがなくても、
ステーションにお招きしたかったところ。
シモーヌさんは魔族の人だし、
装置がデータを検索してすぐに許可が出るわよ。

サラが空に吸い込まれるように
空中を登っていく。
あれ、気持ちいいのかな。
一度やってみたかったの。
私もなんだ。

宇宙ステーションについたサラは、
ダックに挨拶されている。
ああ、サラさん。
ピピが眠ったままに。
解説)
続きます。
Jan 30, 2026
ホテルへ

二人はホテルの入り口で
チンパンジーのリンリンに出会った。
サラさんこんにちわ。
お泊まりですか。

まだ決めてないのよ。
セリーヌさん、どうしましょう。
そうねえ、予定はないけど、
思いつきで来ただけだから。
とりあえずホテルの食堂で
お茶でも飲みましょう。

受付にはいつも通り
フンボルトがいて、
いらっしゃいませと挨拶している。
ロビーに行けば
裏の広場が見渡せるわよ。

二人がロビーに行くと、
先客がいた。
あ、あの人はカコ。

サラたちに気がついたカコは
さっそく手を挙げて、
歩み寄ってきた。
サラ。
この前はどうもありがとう。
おかげさまで、ステーションでの、
寿司パーティは大盛況だったわ。
カコさんに、お土産にいただいた
甲殻類の卵も
広場のみんなに好評だったわよ。
とサラが言った。

サラはカコにシモーヌを
紹介した。
ふーん。魔族の人か。
私はハリーさんと会う約束で
ホテルに来たんだけど、
まだ到着してないみたい。
あ、時間があるなら、
お茶でも飲まない?

3人はホテルの食堂で
コーヒーを飲むことにした。
実はね。
ステーションで問題が起きて。
あ、宇宙ステーションのことは、
シモーヌさんはご存じなの?
このホテルを介して、人間と、
宇宙人と交流があるということは
サラさんから聞きました。
普通の人みたいに見えますけど、
カコさんも宇宙人なんですか。
そうよ。
町で見かけてもわからないくらい
人間そっくりでしょ。

それで問題って?
とサラが尋ねた。
ピピが寝込んじゃったのよ。
昏睡状態なんだけど、検査の結果、
ずっと夢を見ているらしいことがわかったの。
ピピって、あの小さな銀色の宇宙人ね。
目が覚めない原因は分かったの?
どうもね。
どこか外部から原因になる生命体が
ピピの夢に侵入したらしいの。
それって夢食いじゃないですか。
とシモーヌが言った。
あなたたちはそう呼んでるらしいわね。
私も夢食いのことは
ハリーさんから聞いていたので似てるって思ったわ。
そのことを艦長のメイズたちに話したら、
ハリーさんに相談しようということにって。
夢食いの知り合いなら、
大勢いるわよ。
とサラが言った。
え、
夢食いは夢の中だけにしか存在しないんでしょう。
そうでもないんですよ。
と話を聞いていたシモーヌが言った。
人間のみる夢の世界と、魔族が生み出す異世界は、
よく似ていて、夢食いはどちらにも出現します。
それに通路があれば、夢食いたちは、
この現実世界とも行き来できます。
現実世界と言っても、
人間が共同で見ている夢みたいなものですから。
古来、妖怪とか幽霊と呼ばれるものの類は
夢食いの場合もあるんです。
ただ、ちょっとややこしいですが、
この現実世界の物象から生成される精霊とは微妙に違います。
精霊たちはその起源をその存在する世界に持っています。
夢食いは別の世界からもたらされたもの。
別の世界って?
その世界のことは私にもよくわかりません。
そこも特殊な異世界であることは確かだと思うんですが。

その時、リンリンがやってきた。
カコさん、
ハリーご夫妻がおいでになりましたよ。

ロビーに行くと、ハリーたちがいた。
カコさん、待たせてすまなかったね。
おや、君たちも一緒なのか。
偶然ここでさっき出会ったんです。
コート着てるんですね。
暑くないですか。
とサラが言った。
向こうは冷え込んでてね。
散歩中に約束を思い出して、
急いできたんだよ。
解説)
続きます。
Jan 29, 2026
村での会話

3人は集落のメインストリートを
歩いている。
マークは、アマンダを見かけて、
挨拶している。
あの人は?
村でハウスキーパーをしてくれている
アマンダさん。
住民が何日も家を空ける時、
頼むと留守番してくれるのよ。

ここは豹変亭っていうレストラン。
向こうにいるのは
経営者のローズとアンドレアよ。
歩いてお腹も空いたから
一休みして行かない?

サラは、すごく詳しいのね。
実はね。フラハの家の近くに
魔法生物たちのやっているホテルがあるの。
昨年のお正月にそこに泊まった時、
ホテルで知り合った宇宙人たちと、
この村を歩き回ったのよ。
このお店にもその時に来たことがあるの。
給仕をしにきた
アンドレアがそばで話を聞いている。

宇宙人ですって?
知り合いが多いのね。
ホテルのことはあまり知られていないんですよ。
村外れのフラハの家の、
そのまた奥の広場に立地しています。
僕も詳しくは知らないんですが。
きっと私の方が詳しいわね。
その広場には転送装置があって、
その装置を使って宇宙人たちが地球観光に来るの。
ホテルはほぼ彼らの御用達になっている。
あまり評判になると問題だから、
招待される人間はほぼホテルの関係者だけね。
サラはよく招待されたわね。
だってホテルの経営者は
マリアっっていう魔族の女性なんだけど、
実質的な経営者はヴィヴィアンですもの。
あの人、そんなこともやってるの。
ハリーさんたちも夫妻でよく利用してるのよ。
今も逗留しているかもしれない。
興味あるなら案内するわよ。
ちょっとこの村のことを説明しますと、
村には先住民はあまりいなくて、
住民はジャングルで遭難してたどり着いた人や、
事情があって都会から逃れてきた人が多いです。
ほぼ1日かけて行ける場所に古代遺跡があって、
遺跡調査にきた人たちも住み着いている。
最近では宇宙人たちも時々見物に来ますが、
そういう外来の人たちばかりなので、
特にトラブルはないですね。
住民はみんな知り合いなので
よろしければ紹介しますよ。
とマークが言った。

うーん。
ストーリーの分岐点見たいね。
ホテルに行くか、村を見て回って
村の人を紹介してもらうか。
どっちにしようかなあ。
どっちでもあんまり
変わらないと思うわよ。

結局、シモーヌは
ホテルに行ってみることを選んだ。
じゃあ僕は、これから家に帰って、
庭の雑草の手入れをします。
またお会いできるのを楽しみに。
とマークは言った。

3人が立ち去った後、
ローズとアンドレアが話している。
一年前にホテルができて、
宇宙人みたいな変わった風体の人が結構
来るようになったけど、
やっぱり広場に転送装置があるんだってさ。
地球征服がダメなら、
宇宙征服ね。
それって順番が逆じゃない?

二人は元きた道を引き返し、
村外れのフラハの家の前を素通りして、
さらにジャングルに分け入って。

ホテル・ナジャの入り口にたどり着いた。
随分瀟洒な建物ね。
あれは従業員用の宿舎。
ホテルはあの奥にあるの。
と言っている。
解説)
続きます。
Jan 28, 2026
マークの村へ

シモーヌは、
バルコニーに続く部屋に
案内している。
あら素敵なお部屋ね。
隣はディアナの部屋よ。
元々ディアナのために作ったお城だから、
私の部屋はなかったんだけど、
昨年来たときフクロウたちが私のために、
用意してくれたの。

世界を作ってくれた創造主の到来だから、
よほど嬉しかったのね。
私は仕事もあるし、
精霊たちには自分たちの力で生きてほしいし、
ここで暮らすつもりはないんだけど。
仕事ってアンティークの売買の仕事ね。
それと骨董品に宿ってる精霊を見つけて、
自由にしてあげるっていう。

マークさんは、これからどうするの。
そろそろ村に帰ろうかなと思います。
去年ハロウィーン前に家を出て以来、
ずっと帰ってないんですよ。
マークさんは一人で
アフリカの密林を開墾したのよ。
そこが今では小さな集落になって、
マークの村って呼ばれてる。
とサラが言った。
そうだ。私たちも一緒に行かない?
その村には魔族の人が一人住んでるの。
シモーヌさんに紹介したいわ。

3人はマークの村に行くことにした。
平原から帰ってきたディアナたちと話している。
ディアナはエドがこの国に慣れるまで、
しばらくこの国にいると言った。
ウマが合ったのね。
とサラが言った。

サラはアイスに教えてもらった呪文を唱え、
3人は鏡の扉を抜けて、あっという間に
アフリカのフラハの家にやってきた。
おお、珍しいな。
それにマーク、久しぶりの帰郷じゃないか。

こちらはシモーヌさん。魔族の方です。
そちらはフラハさんよ。やはり魔族の人よ。
フラハさん、
お名前はハリーさんから伺っています。
ケントさんというお兄様がいらっしゃるという方ですね。
どうぞよろしく。
ふむ。ハリーはそんな話もしたのか。
まあ今や絶滅危惧種と言われる魔族の仲間と
知り合えるのは嬉しいな。
それでシモーヌさんは普段は何をされているのかな。
フランスにお店を持っていて、
骨董品の売買で生計を立てています。
もっとも、店は店員に任せて、
世界中を気ままに旅しながら
骨董品の買い付けをしてるんです。
なるほど、骨董の鑑定には魔力が活かせるか。
普通に人間社会に溶け込むと、
魔力を生かす機会は滅多にないからな。
魔族でも魔法を使うのをやめて、
私の兄みたいに新聞記者になるものもいる。
まずます絶滅に近づくというわけだよ。

マークの案内で、
3人は村を散歩することにした。
サラはフラハに挨拶している。
フラハの家は村外れで、
村までちょっとあるんですよ。
さすがに買い付けにアフリカの奥地まで
来たことはなかったから興味深いわ。
村には民芸品なんかもあるの?
先住民にとっては、
開拓者が作った新興の村なんで、
たまに住みつく者もいますが、
伝統的な民芸品というものは特にないんです。

3人はジャングルに分け入っていく。
フラハさんはどうして村外れに?
彼は人間の世界に馴染めなくて、
アフリカに来たと言ってました。
彼はこの土地を先住の部族の長から譲り受けたんです。
僕がここを開墾して住むことができたのも
彼のおかげなんですよ。

やがて
まばらに民家が見えてきた。
村に到着しましたよ。
解説)
続きます。
Jan 27, 2026
馬の話 そのなな

あの二人気が合いそうですね。
元々この世界はディアナのために作ったの。
彼女なら土地のことをよく知ってるから、
エドの話し相手になってくれると思って、
一緒に来てもらったのよ。
鹿せんべいはあげたの。
それはもう。

ミネルバがやってきた。
シモーヌ様、
オウル様がお目にかかりたいと
おっしゃっておられます。

シモーヌ様。
おかえりなさいませ。
年末年始にはお世話になったわね。
とシモーヌが言った。
それで何かあったの?
いえ。
ただ、いらっしゃったと聞いて、
お顔を拝見したくなりまして。
これでまた
心置きなく昼寝が再開できます。

サラは分かったばかりのエドのことを
オウルに教えてあげている。
なんと、あのヴィヴィアンさんの、
子供の頃の遊び相手だったのですか。
不思議なご縁ですなあ。
マークは、
お城は森に囲まれているんですね。
と言いながら外の風景を眺めている。

マークさんはここに初めて来たのね。
お城を案内してあげる。
もっと見晴らしのいい場所があるわよ。
と言って、
シモーヌは先導して部屋を出た。

上の階にバルコニーがあるの。

ほう。見事な景観ですね。

バルコニーからは、
遠くの雪を被った山々や
森林や湖の風景が見渡せた。

その頃、
お花畑を走り回ったエドとディアナは、
水辺で休憩していた。
解説)
続きます。
Jan 26, 2026
馬の話 そのろく

サラたちはお城に戻って、
オウルと面会している。

ふむ。君はエドという名前なのか。
この国は魔族のシモーヌ様が
生み出してくださった常春の国。
暮らしているのはフィギアや置物に
宿っていた精霊たちで、
みんな君と同じような身の上だよ。
では早速みんなに紹介しよう。
ミネルバ君。
はい、では広間の方に。

広間にフクロウの置物たちが
集まっていた。
オウルはエドを紹介している。
ここにいるフクロウたちはみんな、
同じ倉庫に並べて置かれているのを、
シモーヌ様が見つけてくださって、
この世界に送られてきたんだが、
それ以前の境遇は様々。
誰かこれまでに
馬のフィギアを見たものはいるかな。
馬のブロンズ像なら見たことがあります。
民芸品のチャグチャグうまっこならあります。

紹介が終わり、
サラたちはお城の一画の
眺めのいい部屋に案内された。
この部屋を自由に使っていいって言われたのね。
みなさん親切ですね。

話していると、
ミネルバがやってきた。
シモーヌ様がいらっしゃいましたよ。

シモーヌはみすずの家から、
ディアナを連れてきていた。

シモーヌは、
ディアナをマークとエドに紹介している。
お二人は姉妹なんですか。
お顔がそっくりですね。
とマークが言っている。
ちょっと訳があってね。
ディアナは鹿のフィギアの精霊なの。
とシモーヌが言った。

エドはシモーヌに
質問されている。
エドさん、あなた、広場で話した時、
また人を乗せて走りたいって言ってたわね。
ということは、以前にも、
精霊としてその姿になったことがあるっていうこと?
はい。そうなんです。
ずっと昔のことなんですが、
私が馬のフィギアとして骨董品のお店で売られていたとき、
フィギアの中に精霊の私が宿っているのを見つけて、
母親にせがんで買ってくれた幼い女の子がいたんです。
その女の子は私に名前をつけて、
牧草地まで運んで行って、この姿に変えてくれて
深夜に、私に乗って一緒に走り回って遊んでくれたんです。
ふーん。そうなの。
それからどうしたの。
やがて女の子は乗馬遊びに飽きちゃって、
私は子供部屋の棚の隅に置かれたままになりました。
よくあるパターンね。
それからどうしたの?
それから随分時間が経って、
女の子は大人になって外出が多くなりました。
ある日突然、彼女が帰ってきて、
その直後に、家具を残して一家は引っ越して行きました。
その家にはその子と母親が暮らしていたんですが、
母子ともども蒸発したみたいに消えて、
その後、残された空き家に盗みに入った盗賊が、
馬のフィギアである私を見つけて盗み出し、
盗品であることを隠してオークションにかけたんです。
それでそのフィギアを落札した
ジャンさんの手に渡ったというわけなんですね。
とマークが言った。
そうなんです。
本当の話なんでしょうけど、
フィギアに精霊が宿っているのを見抜いて、
変身させて遊んだなんて、
そんな呪力を持つ魔族の子供がいたなんて、
ちょっと信じられない。
とシモーヌが言った。
ずっと話を聴いていたサラが言った。
私何となく心当たりがある。
その女の子の名前はヴィヴィアンでしょう。
それでその子のお母さんの名前はカーミラじゃない?
そ、そうです。

え、どうしてわかったの?
幼い頃からそんな魔力を持っていたなんて、
ヴィヴィアン以外考えられない。
飽きっぽいのも彼女の特徴。
それとね。三年前に彼女はロンドンのカジノで
問題を起こして、地元のマフィア組織に追われていたの。
それで、お母さんのカーミラと一緒に、
別居していた魔術劇場のハリーさんのところに、
緊急避難してきたのよ。
そのまま今でも同居してるけど。
追われていたので、家具類を残したまま、
慌ただしく家を出払ったというわけね。
深夜に牧草地で遊んだって言ったでしょう。
彼女には半分ヴァンパイアの血が入っていて、
子供の頃は、日光が苦手だったって聞いたことがある。
その家ってトランシルヴァニアにあったんでしょう。
はい。
やっぱりね。
あ、ヴィヴィアンなら今、
幽霊船のエクレア号に乗ってるはず。
近いうちに再会できるわよ。
ただ、向こうが覚えてるかな?
なんか問題の多そうな人なのね。
でもエドの探してた人が見つかったのは
よかったわ。

エドはディアナと
野原を走りに行くことになった。
フクロウたちが
挨拶している。
解説)続きます。
Jan 25, 2026
馬の話 そのご

よく見ると、
エドは怪鳥に追われていた。

サラたちの姿に気がついたエドは
駆け寄ってきた。
怪鳥が追いかけてくる。

サラは、
大きな声で呼びかけた。
アーキスさん。
この馬は侵入者じゃないのよ。
シモーヌさんが新しくこの世界に送ってきた
馬のフィギアの精霊で、エドっていうの。

なんだと。そうだったのか。
てっきり侵入してきた夢食いかと思ったよ。
ふむ、あんたは俺がヴィヴィアンと契約を結んだ時、
そばにいたな。
シモーヌさんのことも知ってるなんて、
魔族の仲間なのか。
私はサラで、隣にいるのはマーク。
魔族じゃないけど、みんな友達よ。
私たちはエドに会いにきたの。
エドは新しい住人なのよ。
新しい住人か。まあ、よろしくな。
俺は巡回に戻るよ。

アーキスはそういうと
去っていった。

この世界に送ってもらって
嬉しくて平原を走り回っていたら、
あの怪鳥が追いかけてきたんです。
あれはアーキスって言って、
凶暴な夢くいのモンスターだけど、
この常春の世界が気に入ったらしく、
ヴィヴィアンと契約して
この世界に住まわせてもらう代わりに、
巡回パトロールをしてるの。
今ではガードマンみたいなものね。

そのとき、突然エドが前足を上げていなないた。
今度は何なの?

巨大なカマキリが近づいてきたのだった。

これはこれはサラさん。
また観光ですか。
とカマキリは言った。
あ、紹介するわ。
こちらはマークで、
この馬はエド。
あなたと同じフィギアの精霊で、
エドはこの世界の新しいお仲間よ。
そうでしたか。
それはどうぞよろしく。
あ、それからお花畑を走る時は、
前方に注意してくださいね。
時々私が寝てますから。

いったんお城に戻ってフクロウたちにも
挨拶した方がいいわよ。
あなたのことは話題になっているみたいだし。
分かりました。
そうしましょう。
ところで、あなたパニくると、
馬の声になるのね。
なぜかそうなんです。
解説)
続きます。
24日土曜日の更新が25日にずれ込んだので、
いつも夜の8時過ぎ頃にしている本日分の更新は、
お休みします。
Jan 23, 2026
馬の話 そのよん

サラとマークは、鏡の扉を抜けて、
常春の精霊の国のお城の一室に現れた。
随分立派な部屋ですねえ。

話声を聞きつけて執事のミネルバがやってきた。
これはこれはサラさん。
去年の9月以来のお越しですね。
また観光においでですか。
おひさしぶり。
今回はちょっとすることがあって。
こちらはマークさん。
これは肉まんのお土産よ。
国王代理のオウルさんは起きてる?
珍しく起きていらっしゃいます。
さっそくご案内しましょう。

応接間に案内されると、
オウルがソファに座っていた。
これはこれはサラさん。
お元気でしたか。

サラはマークを紹介して、
つい最近、この世界に馬が
やってこなかったかと尋ねた。

はいはい。
報告を受けたばかりですよ。
それで昼寝を起こされたんです。
なんでもお花畑のあたりを
元気よく走り回っているとか。
あれはまたシモーヌ様が、
送り込まれたフィギアの精霊なんでしょうか。
そうなのよ。
さっそく会いに行ってみるわ。

オウルとミネルバに見送られて、
二人はお城を後にした。

随分、立派なお城と庭園ですね。
この世界をシモーヌさんが魔法で作ったんですか。
そうみたいね。
私たちの現実世界からいえば、
幻なんでしょうけど、
私たちの現実世界も人間の脳が
脳同士だけで分かり合えるように
生み出した幻想みたいなものだから、
同じようなものかもしれないわね。
難しいこと言いますね。

おお桜が満開ですね。
ここは常春の世界なの。

前に来たから覚えてる。
お花畑はこの辺りよ。

遠くで馬のいななく声がした。
あ、あそこにエドが。
解説)
続きます。
Jan 22, 2026
馬の話 そのさん

シモーヌさん、その魔法はここではまずいわ。
とルビーが言っている。

あ、ごめんなさい。
いつもは慎重に場所を選ぶんだけど、
なぜかついその気になっちゃって。
今、観光客はいないみたいだし、
ルビーに注意されても、
ヴィヴィアンはいつも平気で魔法を使うから、
住民はもう慣れっこ。
そんなに気にすることないわよ。
とサラが言った。

じゃあエド、
とりあえずあなたを
常春の国に送ってあげましょう。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
エドは元のフィギアの姿に戻ったように見えた。

このフィギアは。
精霊の元の体だから大事にしてね。
壊したりすると、精霊が戻れなくなるから。
なるほど、
精霊が抜け出しても元の器は残る。
兵士たちのフィギアと同じなんですね。

私はパリのアンティークのお店に戻る。
貝殻を金庫に保管して、お店の仕事を終えたら、
またみすずの家に行って、
ディアナたちに鹿せんべいを渡してから、
常春の国に行ってみるつもり。
それでサラ、
もしよかったら。
先に常春の国に行って
エドの話を聞いてあげてほしい、
っていうんでしょう。
よくわかったわね。
なぜかそんな普通の展開になる気がしたの。
いいわよ。
マークさんもいらっしゃる?
はい。お供します。
馬の姿でも、同じサイズのフィギアの
精霊仲間だと思うと、他人事とは思えない。
とマークは言った。

シモーヌが立ち去った後、
関係者はマンゴー亭で話し合っている。
ジャンさん。そのエドっていう馬のフィギアの
元の持ち主のことはわかる?
いえ、オークションで入手したので。
でも主催者に聞けば何かわかるかな。
今度会ったら聞いてみますよ。
とジャンが言った。
お願いね。
それからサラはルビーに、
船の旅やマーレのいた島の話などを
かいつまんで伝えた。
ハリーさんにも話しておきたかったけど。
わかったわ。
アイスやヴィヴィアンは元気なのね。
ハリーに会ったら伝えとく。

サラはバー・デジャの門番をしている
ヨシフにも話しかけている。
あなたたちとクックドゥーとは、
魔術劇場で寝泊まりしてるんでしょう。
はい、そういえば最近見かけませんが。
家事をしてくれているデュアンが
気にしてました。
あの人、海の世界で航海してるの。
しばらく戻ってこないかも。
そーなんですね。
みんなにも伝えておきます。

サラとマークは、
お土産の肉まんを買い込むと広場を去っていった。
サラたち、常春の国に行ったんですか。
いいなあ。
佳奈は長期休暇取ったばかりでしょ。
と言われている。
解説)
続きます。
Jan 21, 2026
馬の話 そのに

サラはジャンたちにシモーヌを紹介して、
一緒に肉まんを食べることにした。
シモーヌが骨董品の売買をしているというので、
フィギアの話題で盛り上がっている。
このお馬さん、1/6のスケールで、
けっこう精密に出来てるのね。
兵士のフィギアとセットで売られているのも
あるんですよ。

そういえばマークさんは、
フィギアの兵士の精霊なんでしょう。
以前にいたフィギアの世界には軍馬もいたの?
ほとんど覚えていないですが、
戦場だったので、当然いたと思いますよ。

この馬はちょっと歩き出しそうな
ポーズをしているのね。
それは骨董のオークションで手に入れたものです。
かなり年季が入ってますが、
微妙なポーズが面白いでしょう。
あら。この馬のフィギアには、
精霊が宿っているわ。
とシモーヌが言った。

え、やっぱりそうなんですか。
とジャンが言った。
普段、倉庫の陳列棚に置いてあるんですが、
時々移動してることがあったんです。
僕のコレクションしている兵士のフィギアには、
そういう精霊を宿したのが多くて、
彼らは異世界の村で暮らしていましたが、
色々な出来事の末に、
ハリーさんやヴィヴィアンさんが
魔法でサイズを変えてくれて、
今では、何人かはこちらの世界に移住して、
人間と同じように郊外で暮らしています。
ジョー軍曹やエルザや、
ギルダやロンメル将軍たちね。
とサラが言った。
僕も住む世界は違いますが、
別世界から来たフィギアの精霊らしくて、
彼らと同じ身の上のようです。
今でもどうも釈然としませんが。
とマークが言った。

この馬は、以前乗り手と一緒にいたらしい。
またその人を乗せて走りたいって言ってるわ。
シモーヌさんは魔族で、
これまで沢山のフィギアや置物に宿った
精霊たちを見つけては、
別世界を作ってそこに送って
自由にしてあげているの。
私その常春の国に遊びに行ったから知ってる。
とサラが言った。
そーなんですか。
だったら、ぜひその馬の願いを叶えてあげてください。
他の兵士フィギアの精霊たちも喜ぶでしょう。
とジャンが言った。
なにか始まるのかな。
とレイとアンナが興味津々で立ち聞きしている。

ここでやっちゃうの?
善は急げでしょ。
シモーヌさんも、
ヴィヴィアンと同じようなことをいうのね。

シモーヌが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
広場に忽然と馬が現れた。

ベーカリーから
佳奈やルビーや舞が何事が起きたかと
やってきた。
今、煙の中から出てきたよね。
魔法なんでしょ。

ありがとうございます。
私はエドワードと言います。
エドと呼んでください。
と馬は話した。

う~まがしゃべる。
そ~んなパカな🎵
と大道芸人が歌っている。
古すぎる歌ね。
聞かなかったことにしよう。
とサラは思っている。
解説)
続きます。
Jan 20, 2026
馬の話

帰っちゃうと寂しくなりますね。
帰るって言っても、鏡の扉を使えば
いつでも来られるんだから、
全然感動の別れっていう感じじゃないけどね。
などとシノとクックドゥーが話している。
奥でもサラたちが話していた。
シモーヌはフミコと一緒に?
しばらく帰ってないし、
マーレからもらった祖母の貝殻を、
フランスのお店に保管しに戻るつもり。
サラは?
私は今度のことを
魔術劇場のハリーさんに報告しに行く。
クックドゥーが航海に出たことも、
知らせないと。
じゃあ途中まで一緒に行きましょう。
私、広場のマンゴー亭に
注文していたものがあるの。
ついでに肉まんでも食べましょう。

二人はサラたちの部屋に
戻ってきた。
お帰りなさい。
と言われている。

サラは、お土産のたこ焼きと
夢の見られる貝殻を持っている。
帰ってきて早々だけど、
ちょっと広場まで行ってくる。

これは美味しそうなたこ焼きだね。
あ、サラ、今日は風があって寒いから、
暖かくしていったほうがいいわよ。

さっそく二人は広場に出かけた。

今年の干支はうま。
丙午か。

マンゴー亭には先客がいた。

ジャンとマークが、
馬のフィギアを並べて話し込んでいる。
ジャンがコレクションのフィギアを
マークに見せるために持ってきたようだ。

注文していたもの出来てますか。
はい。これです。

何なのそれ?
特別に鹿せんべいを焼いてもらったの。
ディアナとピリカへのお土産よ。
味見してみる?
解説)
続きます。
Jan 19, 2026
新たな船出

おはよう。
昨晩はちょっと
飲みすぎちゃったみたい。

ダリオさんおはよ。
潮風が気持ちいいですよ。
みんな早起きなのね。

昨夜は楽しかったわ。
みんなこれからどうするのかしら。
フミコはみすずの家に戻るって言ってたよ。
砂漠の家でラルゴとシェルが留守番してるから、
セリーヌたちはたぶんそこに帰る。
私は、まだ何も決めてないけど、
ヴィヴィアン次第ね。
彼女のお目付け役のつもりなの。
とアイスが言った。
本当は一緒に冒険がしたいんでしょ。
クックドゥーはどうするのかしら。
船長なら向こうのテーブルにいるわよ。

クックドゥーとセリーヌは
海図を広げていた。
記憶だと、この海域の無人島に
クリスタル真珠があるんだ。
探しにいくんですか?
ずっとハリーさんたちにお世話になってたからね。
魔術劇場の皆さんにプレゼントしたいんだ。
クックドゥーさん、ちょっと。
とサラが声をかけた。

やあサラ、何かな。
どうやら海に戻る気になったみたいね。
そうなんだ。
みんな帰っちゃうみたいだけど。
サラも行っちゃうの?
ええ。それで思いついたんだけど、
あなたの船旅のお仲間を誘ってくるわ。
そういうとサラは
鏡の扉に向かった。

しばらくして、
サラは船に戻ってきた。
サラが連れてきたのは、
ジョー軍曹とエルザだった。
やあキャップテン。
去年のハロウィンでは
その海賊コートをお借りできて助かりました。
海賊は憧れだったんですよ。
とジョー軍曹が言った。
無人島で宝探しをするそうね。
ジョー軍曹は元上官。今では
仲のいい友達なので、お話を伺って、
私も寄せてもらいました。
とエルザが言った。
おお、
君たちでしたか。
やはり持つべきものは友人だなあ。

クックドゥーは、
軍曹たちに船を案内している。
潮風が気持ちいいわね。
おや、なんの音だろう。

エクレア号のマストに
帆がスルスルと張られ、
錨が巻き上げられて、
船は島の浅瀬から離れていった。

船は目的地に進路をとったようで、
島が次第に遠ざかっていく。
海図の必要ないんじゃない?
とサラが言っている。
解説)
続きます。
Jan 18, 2026
マーレとの会話

夕暮れになり、
サラとクックドゥーは
沈む夕日を見ていた。
サラはクックドゥーに
マーレのことを知っているかどうか
尋ねた。
姿は見たことないですが、
島に貝殻を拾いに行くたびに、
誰かがいるという雰囲気は、
いつも感じていました。

そこにマーレがやってきた。
あ、きてくれたんですね。
約束したからね。
クックドゥー、久しぶりね。
とはいえ、こうして直接会うのは初めてだけど。

私はあなたが初めて島に来た時から
覚えているわ。
あなたが夢見る貝殻の虜になって、
やがて航海中に嵐で死んでしまって、
骸骨になって蘇ってからのことは、
トンピリビから聞いているの。
そーなんでしたか。
あなたの愛したこの船。このエクレア号も
あなたと運命を共にしたけれど、
あなたは改心して夢の航海を諦めたでしょ。
集めた夢見る貝殻もサラに譲ってしまった。
そーなんですよ。
海の思い出は封印したんです。
それで乗り手がいなくなったエクレア号は、
あなたと一緒に航海したいという願いを抱いて
貝の見る夢の海を彷徨っていたのよ。
そーなんですか。
それは知らなかったなあ。
生前の世界に執着したあなたが
貝の夢に人を誘う死霊になって蘇ったように、
エクレア号も意思をもつ夢食いのような存在になったの。
それでこの船の中で不思議なことが起こるのね。
あ、マーレさん。
そろそろ船室に入りませんか。
みんながお話を聞きたがっています。
とサラが言った。

食堂にみんなが集まっていた。
大ダコのくれた足を調理したんですよ。
たこわさもタコの握り寿司もたこ焼きもあります。
素敵な歓迎をありがとう。
それではみなさん
質問をどうぞ。
とマーレが言った。

私たちは、忘れられた夢の世界から、
このエクレア号に乗って、
船の進むままにこの島に辿り着いたんですが、
ここも忘れられた夢の世界の一部なんですか?
それとも隣り合った別世界で、
どこか途中で境界を越えてきたんですか。
とシノが尋ねた。
忘れられた夢の世界って
あなたたちが呼んでいるのは、
シモーヌさんのお婆さまが見ていた夢の世界。
お婆さまは病で亡くなられたけれど、
最後まで見ていたその夢の世界に魔法をかけて、
消えないようにしたの。
その世界の中でお婆さまは今も生きているとも言えるわ。
この島はお婆さまの故郷で、最後に見た夢の一部分。
そういう意味では二つの世界に境界はないとも言えるけれど、
遥かな海で隔てられている。
お婆さまの夢の中でもその深さが違う世界なの。
別世界って言ってもいいくらいにね。
祖母は、私と鹿のフィギアの精霊のディアナを
その忘れられた夢の世界の森に招いたんです。
私たちはそこで楽しい時間を過ごした。
ディアナだけその世界に取り残されてしまったけれど。
祖母が私にオウム貝の貝殻を渡したかったのなら、
なぜその時、夢の中で渡してくれなかったのかしら。
とシモーヌが尋ねた。
お婆さまはもう亡くなる間際で、
夢の中であなたたちに語りかける力を
持っていらっしゃらなかったのよ。
ディアナだけが夢に取り残されたのもそのせいね。
お婆さまは、それで貝殻のことを私に託されたの。

お婆さまがマーレさんに指輪を託された時、
お婆さまはもう亡くなられていたのよね?
だとすれば、ここは一体。
とフミコが言った。
ここはお婆さまの故郷の島。
お婆さまにとっては夢の中だけど、
かって魔族の住む都があった実在の世界なの。
この島には古代の魔族たちのかけた
深い魔法がかかっている。
亡くなった魔族の魂はここに帰ってくるのよ。
フミコさん。
あなたも古代魔族の生き残りとか。
魔族が土地にかける魔法のことはご存知でしょう。
その影響で、グリーンマンや
マービーみたいな魔法生物が生まれるのよね。
とアイスが言った。
もしかして、あなたもそのお仲間?
古代の魔族がこの島にかけた魔法によって生まれた
魔法生物なの?
とヴィヴィアンが尋ねた。

私のことはなんといえばいいかしら。
古代魔族がこの島に移り住んで都を開く、
もっとっずっと前からこの島にいるわ。
土地の精霊みたいなもの?
それとも、バルやバーンやスーラみたいな
元素の精霊?
いろんな精霊を知ってるのね。
もし私が精霊だとしたら、たぶん海や貝の精霊ね。
自分のことはよくわからないんだけど、
オウム貝の貝殻のベッドで眠り、
アンモナイトの貝殻で夢を見ているの。
アンモナイトの夢って、
どんな夢なんですか?
とシノが尋ねた。
ジュラ紀や白亜紀の思い出の夢よ。
恐竜たちも出てくる。

質問攻めが一段落して
歓迎の宴も終わり、
アイスたちは甲板で休憩している。
ここに住んでいた魔族が、
魔法で貝殻に夢見る力を与えたって
噂があるらしいんですが本当なんですか?
また質問?
そうね。本当は少し違う。
もともとこの島の貝殻は夢見る力を持っていたのよ。
ここは精霊の宿った貝殻たちの墓所だったの。
島に来た魔族がそれを見つけて、
ここが特別な土地であることを知り、
この島に住むことを決めたの。
シモーヌのお婆さまのように、
事情があって島を離れた魔族は
故郷を偲ぶためにそんな貝殻を持っていった。
やがて島の魔族の都は滅び、長い時がたち、
離散した魔族が持っていた夢を見られる貝殻は、
人間の手に渡ることもあって、
手に入れれば、ひと財産築けると考える船乗りもいた。
だから何人もの冒険者が島のある場所を探しまくり、
運よく見つけた船乗りが、魔族の遺跡と関連づけて、
そんな噂を広めたんでしょうね。
クックドゥーもそんな冒険者の一人だった。
彼の場合は、貝の夢の依存症になっちゃったけど。

クックドゥーは
これからどうするの?
また魔術劇場に帰って平穏に暮らす?
なんでもご存知なんですね。
海の世界のことは諦めたつもりだったんですが、
エクレア号に戻ると懐かしくて。
船が船長を失って途方に暮れて
夢の海を漂っていたので、
シモーヌさんを呼ぶのを手伝ってもらったの。
今は操舵する乗組員がいなくても自力で航海できる
立派な幽霊船になったのよ。
苦労をかけたんですね。
だったら乗組員を勧誘しなくても
一緒に航海ができそうだ。
また宝探しをしようかなあ。

エクレア号はクックドゥーの言葉に応えるように、
一斉に船のあちこちに灯りを点した。
解説)
続きます。