Nov 29, 2025
散歩の続き

3人は見晴らしのいい高台から
湖の湖畔に降りて行った。
あれは恐竜?

庭園で見かけたフクロウたちがやってきた。
ディアナ様、お連れの方は、
やっぱりあの時の方だったんですね。
庭園でお見かけしてオウル様にお聞きしたんです。
散歩されているとのことで、
もしかしたらら、ここに来られるんじゃないかと
お待ちしていたんですよ。
庭園でアコーディオン弾いてた方たちね。
あの恐竜は?
あれはドラゴンドラと言って、
遊覧船なんですよ。
以前、観光にいらしたサラさんとピリカさんを、
お乗せしたこともあります。
湖を一周するんです。
お乗りになりますか。
楽しそうだけど、
今はあちこち見て回ってるの。
またいつかね。
とシモーヌが言った。

3人は話しながら、
森の中の細道を歩いている。
この世界を作るときに、
湖にあんな遊覧船を浮かべた記憶がないんだけど。
とシモーヌが言っている。
私も遊んだ記憶がないです。
とディアナが言った。
乗り物なんでしょ。フクロウたちが自分たちで
作ったんじゃないの?
あ、あそこにウサギがいるわ。
とアイスが言った。

アイスは、初めてこの世界に来た今年の6月に、
やはり森の中で三匹のウサギに出会って、
お城へ行く道を教えてもらったことを
思い出して、近づいていった。
やっぱりあの時のウサギだわ。
こんにちわ。

ウサギたちは驚いているようだ。
ディアナ戻ってきたのね?
それにこの世界の創造主のシモーヌも。
と一匹が言った。
私のことを知ってるのね。
私は昔のことをあんまりよく思い出せないの。
私は昔ここに住んでいたらしいけど。
とディアナが言った。
あなたたちはウサギのフィギアの精霊?
私も見覚えがないんだけど。
とシモーヌが言った。
それは無理ないわ。
あなたにお目にかかるのは初めてなのよ。
でもあなたのことはよく知ってるの。
私たちは洞窟を通ってこの世界に来て、
この森に住んでるの。
だったら隣の忘れられた夢の世界から侵入した
夢食いじゃないの?
とアイスが言った。
夢食いとも精霊とも違うわ。
でも詳しいことは秘密なのよ。
秘密秘密と、ウサギたちは
口々に言った。

3人は謎めいたウサギたちと別れて
散歩を続けることにした。

ずっと見に来なかった間に
この世界、随分変わっちゃったみたいね。
今のウサギたちは何だったのかしら。
とシモーヌが言っている。
私のこと覚えてたみたいだから、
ずっと前からいたみたい。
シモーヌさんのことも知ってるって
言ってたし。

セコイヤの大木の根元に
腹這いになっていた大トカゲが、
アイスたちに気がついたようで身を起こした。
前にもここで出会ったわね。
こんにちわ。
とアイスが言った。

ふむ。君とは五ヶ月ぶりだな。
おやこれはこれは、シモーヌさん。
なんとディアナも一緒か。
あなたのことは覚えてるわ。
フクロウたちと仲良くやってる?
とシモーヌが言った。
もちろんですよ。
とはいえ私は森の中で暮らしていて、
普段あんまり交流はないんですが。
私はね。ディアナのためにこの世界を作ってから
今までずっとここを訪れたことがなかったの。
それで忘れられた夢の世界でディアナと再会して、
彼女が長い間この世界から失踪していたことも知った。
彼女もよく覚えていないみたいなので、
その出来事のいきさつを知りたいのよ。
何か思い出せる?
とシモーヌが尋ねた。
ディアナがいなくなった時、
女王様がいなくなったと大騒ぎしていたから
フクロウたちの方がよく知っていると思いますよ。
ディアナは突然いなくなったらしいです。
フクロウたちは国中を捜索して、
雪山に洞窟を発見して、隣の世界にまで
捜索隊を出したと聞いています。
でも結局見つからずじまいでした。
ディアナ、今までどこに行ってたんだい。
と大トカゲが言った。
私は覚えていないのよ。
気がつくと記憶を失って森の中にいたの。
ずっとその森で知り合った夢食いたちと暮らしていた。
そこがこの国と洞窟で繋がっている隣の
忘れられた夢の世界だったって知ったのは最近のこと。
残念だけど、あなたのことも覚えていないの。
とディアナが言った。
ウサギたちのことは何か知ってる?
とアイスが尋ねた。
あれはいつの間にか森に住み着いた
気のいい無害な連中ですよ。
洞窟から来たって言ってたわよ。
それは初めて聞くなあ。
てっきりシモーヌさんが招き入れたんだとばっかり。
フクロウたちが洞窟を発見したんだと思ってましたが、
まだディアナがいなくなる前から
ウサギたちはこの森にいましたから、その頃から
洞窟は別世界と繋がっていたんでしょうね。

3人は洞窟まで行ってみることにして、
雪山を登っている。
色々聞いたけど、ディアナの失踪の時の様子について、
手がかりってほとんどつかめなかったわね。
逆に謎が増えたみたい。
解説)
続きます。
Nov 28, 2025
常春の国で

3人は城を出て散歩に出かけた。
オウルたちに見送られている。

庭園ではフクロウたちが
アコーディオンを弾いていた。
平和そうね。

今の人、あの方じゃない?
まさか。
と飛び上がって噂している。

この世界を作った時に来て以来ね。
近くに森や湖があるはずよ。
私、失踪する前に、
ここにいた頃のことは、
よく覚えてないんです。
でも歩いていると、
なんとなく思い出しそう。
とディアナが言った。
私は雪山の洞窟からお城までのルートは知ってる。
お城の周辺を散歩したセリーヌが、
湖があるって言ってたわ。
とアイスが言った。

天気が良くて、お花見日和ですね。
常春の国だからね。

あそこにカマキリがいますよ。

カマキリはシモーヌを見ると
近づいてきた。
もしかして、あなたは私をここに
連れてきてくれた方でしょう。
おかげ様で楽しく暮らしています。
それはよかったわね。

3人は、見晴らしのいい湖のほとりにでた。
怪鳥が近づいてくる。
今度は何かしら。

怪鳥は一行のまじかに急降下して
ホバリングしている。
アイスは胸ポケットの銃を抜いて、
とっさに身構えた。
おいおい、俺は怪しいものじゃないよ。
お城の庭園の彫像の家に住んでいる
アーキスっていうんだ。
ヴィヴィアンっていう悪魔と契約して、
この国の巡回パトロールしている。
あんたたちのことは、オウル様から聞いた。
この世界を作ったシモーヌっていう人が
来ているっていうんで、
巡回のついでに挨拶しに来たんだ。
それはわざわざどうも。
私がシモーヌよ。
とシモーヌが言った。
そうか、俺は夢食いのアーキス。
あんたは魔族なんだな。魔族は、
こんな世界を作れるんだからすごいものだな。
いろいろ話をしたいところだが、
あんたたちは散歩の途中みたいだし、
俺も巡回の途中なんだ。そろそろ行くよ。

アーキスは飛び去っていった。
この世界にも夢食いモンスターが住んでるの?
彼の名前を聞いて思い出したけど、
ヴィヴィアンが彼のことを言ってたわ。
雪山の洞窟を通って偶然この世界に
紛れ込んだ夢食いモンスターがいて、
この世界が気に入って定住したがっていたから、
望み通りにしてあげたって言ってた。
アーキスっていう名前もヴィヴィアンが
名付けてあげたんだって。
とアイスが言った。
もともと夢食いモンスターは
侵入した世界を征服したがるものでしょう。
だめだったら別の世界を求めて消えていくはず。
それが巡回パトロールをしてこの世界を守っているなんて。
悪魔との契約だからね。
ヴィヴィアンがどんな契約をしたんだか。
解説)
続きます。
Nov 27, 2025
常春の国へ

シモーヌさん。
あなたが作ってくれた
精霊たちの世界に行きませんか?
一度行ったきりっておっしゃってたでしょう。
と立ち上がってディアナが言った。
そうね。
世界を作ってあげたあとは、
住人の精霊たちに任せきりで、いっさい、
顔も手も出さないっていうのが私の方針なんだけど。
あそこは最初にあなたのために作った世界。
そのあとで自由に生きたいと望む
フィギアの精霊たちを送る場所にしたの。
みんなで楽しくやってるんじゃないかと思ってた。
あなたがここの夢の世界に置き去りにされてたなんて
あなたたちに聞いて初めて知ったのよ。
それはともかく、さっきまで私が話したことは
みんな私の推測だから、実際は何が起きたのかは謎。
行けば少しはわかるかもしれないわね。
と言ってシモーヌも立ち上がった。

向こうの世界にも鏡の扉が常設してあるのよ。
呪文を唱えて私も一緒に行くわ。
とアイスが言っている。
最初はどうやって向こうの世界を見つけたの?
この世界の西の果てに雪山があって、
そこに向こうの世界に抜けるトンネルがあったの。
この世界に来た夢食いが、
そこから向こうの世界に侵入したので、
今は雪で埋め戻してある。
色々あったのね。

アイスは呪文を唱えて
常春の国のお城の中にある
鏡の扉のイメージを思い浮かべている。

三人は鏡の扉を抜けて、
お城の中の一室に出た。

同じ顔の人が二人もいると
フクロウたちが混乱するから。
と言って、ディアナは
鹿の姿に変身した。

誰かいないかなあ。
と言いながら三人が別室に行くと、
執事のミネルバとイブーに出会った。
これはこれはディアナ様とアイスさん。
それにお連れの方は。
とミネルバが言った。
ああ、あなたは忘れもしない、
倉庫で私たちをこの世界に導いてくれた、
あの時の方ですか。
とイブーが言った。
そうなのよ、
この人はシモーヌさん。
感激です。
とミネルバが言った。
よろしくね。
とシモーヌが言った。

すぐにお昼寝中のオウル様に
声をおかけしてお呼びしますので、
応接間でお待ちください。
私がご案内します。
イーブは喜んでいる。

やがて三人が案内された応接間で待っていると、
寝起きのオウルがやってきた。
ディアナ様、シモーヌ様という
創造主が来られたと聞きましたが、
本当でしょうか。
あそこにいるのがシモーヌさんよ。
シモーヌはよろしくね。
と言っている。

シモーヌ様。感激のあまり、
なんと言ったらいいか、言葉もございません。
私は女王代理のオウルと申します。
私たちがシモーヌ様にこの世界に導かれて以来、
ただ一人の先住者であった鹿のディアナ様を
国の女王と戴いて仕えてきましたが、
ある時ディアナ様が失踪されたので、
私が臨時に代理役を務めていました。
先頃ディアナ様は一度戻ってこられたんですが、
自分は自由の身でいたいから、
国王の代理役を続けて欲しいとおっしゃられて、
現在に至っているわけなのです。

それはご苦労様。
ディアナの失踪と帰還という出来事を除けば、
だいたい私の予想通りの展開ね。
あなたたちフィギアの精霊同士なら
みんな仲良くやっていけると思っていたわ。
あなたたちをこの世界に送り込んだまま、
私が一度も姿を現さなかったのは理由があるの。
けしてあなたたちを見捨てたわけじゃない。
それは全て生きていて生じる問題を
自分たちの力で解決して欲しかったからよ。
それはこれからも同じ。今日ここにきたのは、
ディアナの失踪にまつわることを
知りたいというのが大きな理由なの。
それと一つはやっぱり世界の変化を確かめたいことかな。
このお城、最初はこんなに立派じゃなかったし、
壁にはディアナの肖像画もなかった。
あなたたちがこの世界を作り替えているのよ。
さてと、もうこのお話は終わり。
散歩して戻ってくるから、
大袈裟な歓迎会なんてしないでね。
解説)
続きます。
Nov 26, 2025
みすずたちの会話

みすずたちが話している。

ディアナたち滝を見に行ったらしいけど、
二人だけで大丈夫かしら。
ディアナが一緒なら大丈夫よ。
このあたりの森は庭みたいなものだから。

二人は無事に戻ってきた。
お帰りなさい。
みなさん、居間にいらっしゃいますよ。
とヤッピーが言っている。

綺麗な滝だったわ。
何か思い出せた?
それがさっぱり。

でも、シモーヌが
フミコみたいに滝に向かって、
挨拶の呪文を唱えたら、
風が吹いて滝の上に綺麗な虹がかかったの。
とディアナが言った。
それは偶然じゃないわね。
とフミコが言った。

挨拶の呪文って知らないなあ。
とアイスが言った。
すぐ覚えられるわ。
挨拶したい相手に向かって、
挨拶の呪文を唱えて、
あとは心に思い浮かぶ言葉を唱えればいいのよ。
決まった言い方があるわけじゃないの。
呪文を唱えて、
行きたい場所の記憶の情景を思い浮かべれば、
鏡の扉が現れるのと同じ。
それで、ここに戻る途中で
色々考えてみたんだけれど。

私の想像なんだけど、
この夢の世界がいつまでも消えずに残っているのは、
魔法がかかっているからでしょう。
私は魔法をかけた覚えはないし、
夢そのものを忘れてしまっているの。
誰かが消えかかる夢に魔法をかけたとしたら、
夢の中に一人取り残されたディアナしか考えられない。
でももちろんディアナは魔法を使えないし、
自分がなぜここにいるのかも知らなかった。
魔力を持つ夢食いが侵入したことも考えられるけれど、
魔族のみる夢に夢食いが入り込むのは稀だし、
タイミングが良すぎる。
私やディアナのことを知っていて、
そんなことができるのは。
あなたのお婆さまね。
とアイスが言った。

そうなのよ。
この世界の夢を見ていたのが、祖母だと考えれば、
辻褄が合う。祖母は孫の私と私が大事にしていた
鹿のフィギアの精霊が森の中で遊ぶ夢を見ていた。
もしくは、私がディアナと遊んでいる私の夢の中に
入り込んでそれを見ていた。
夢は私が目覚めれば消えてしまう。
でも祖母は、その夢がいつまでも続くように魔法をかけたの。
どうしてそんなことを。
ずっとその夢を見ていたかったんじゃないかしら。
祖母は亡くなる前に、何日もの間昏睡状態だったのよ。

そう言われればわかる気もするけど、
私がこの世界に来た時、
最初に滝のほとりでディアナと出会ったのも
お婆さまの魔力のせいなのかしら。
とみすずが言った。
わからないけど、それはディアナが一人で
暮らし始めて随分経ってからのことでしょう。
祖母はその時にはもう亡くなくなっていたかもしれない。
でも一人きりのディアナの友達になってくれそうな
夢食いを引き寄せたのかもしれないわね。
亡くなった後でもそんなことができるなんて。
北の孤島に水晶玉が残されてたことも、
お婆さまが使っていたものだとすればわかるけど、
恐竜が沢山いるのは何故なのかしら。
この世界は恐竜たちの楽園でもあるんでしょう。
とアイスが言った。
子供の頃、祖母が大昔の恐竜やその絶滅のことを
話してくれたのはかすかに覚えているわ。
でも私はあまり関心がなかった。
祖母は恐竜が絶滅せずに生きている世界も
夢見ていたのかもしれない。
お婆さまは異世界を作る魔法を知っていて、
あなたみたいな呪力を持っていたの?
とフミコが尋ねた。
私に異世界を作る魔法を教えてくれたのは、
祖母だったからね。
解説)
続きます。
Nov 25, 2025
滝を見に行く

二人はみすずの家を出て
滝を見に行くことにした。

湖に恐竜がいたわね。
あれでもロボットたちが来てから、
あまり見なくなったんですよ。

そうでもないんじゃない?

あれは草食なので、
刺激しなければ安全です。
彼らが水を飲み終わるまで待ちましょう。

到着しました。
水の精霊のバルのおかげで、
今では滝壺の底から夢見の水が湧いているんです。

なにか思い出せませんか。
思い出せないけど、この風景、
私もどこか懐かしさを感じるわ。

ここでみすずに出会ったんです。
夢食いのみすずも、忘れられた夢の世界の噂を聞いて、
その世界に来たいと希っていたら、
この滝のほとりに来ていたと言っていました。
ここは通路になっているような特別な場所なんでしょうか。
そうなのかもしれない。
でも別の場所から夢食いがやって来たこともあるんでしょう。
色々考えたんだけど、よくわからないの。
前にみすずやサラやフミコと一緒に
ここに来た時、フミコが
滝に向かって挨拶の呪文を唱えたんです。
そうしたら大きな虹がかかったんです。

そうなのね。
ここが特別な場所なのは確かみたいだから、
私もご挨拶の呪文を唱えてみるわ。
シモーヌは滝に向かって
呪文を唱えた。

すると突然あたりに爽やかな風が吹き抜け、
空に大きな虹がかかった。
大地が挨拶の呪文に応えているのよ。
この世界に夢見る主体がいないわけじゃない。
とシモーヌが言った。
解説)
続きます。
Nov 24, 2025
忘れられた夢の世界で

アイスとシモーヌは鏡の扉を抜けて、
忘れられた夢の世界のみすずの家に
やってきた。
あら、新しいお客様ね。
とみすずに言われている。

なんだ、ディアナじゃないの。
そんなコート着てどうしたの。
顔はそっくりだけど、
この人はディアナじゃないの。
私はシモーヌと言います。

事情を聞いたみずずは、
早速シモーヌをディアナに紹介している。
あ、この方だ。
シモーヌさんていうんですね。
鹿のフィギアに宿っていた精霊の私を
見つけてくれて、
自由に暮らせる世界を与えてくれた人。
もう随分前のことね。
フィギアのあなたの体は
今でも大事に家に飾ってあるわよ。
フミコさんに人間の姿にしてもらう時、
あなたみたいな人になりたいと
思って念じていたら、
そっくりの顔になったんです。
そういうことってたまにあるのよね。

気がついたらこの世界にいて、
昔のことを全然思い出せなかったんです。
ずっとこの世界で鹿の姿で生まれて、
自分の中に精霊が宿ったんだと思ってた。
私もあなたと、
この世界に来た夢のことは覚えていないのよ。
ふつう夢はみんな忘れちゃうしね。
それでも何故かその夢の世界は残った。
私たち夢食いの間では、
こういう世界は貴重なんですよ。
夢見る主体がいないので何でも自由ですから。
とみすずが言った。
私の記憶から消えて、
夢の世界だけが消え残った時点で、
もう私の夢とはいえないわね。
夢自体の力が世界を支えている。
恐竜がいるって聞いたけど、
それは多分その夢自体が生み出したものよ。
そんな夢見たことがないもの。
夢が消える前に、
何かが来てシモーヌさんの夢を
のっとったんじゃないの?
とアイスが言った。
魔族のみる夢に入り込む夢食いって、
聞いたことがないわ。
危険が多すぎるもの。
とみすずが言った。

そこにフミコがやってきた。
随分賑やかね。
あら、お客様?

歓談が終わり、
フミコは、ミミコを
シモーヌに紹介している。
私もこの子も魔族なのよ。
この子は未来の世界で生まれたの。
なんだか事情がややこしそうね。
あ、そこにある水晶玉は。

この水晶玉は
魔族が天気予報の占いに使うものよね。
精霊が宿っているけど今は眠っている。
見つけたのはシビルっていう夢食いで、
北の孤島で見つけたって言ってたわ。
精霊が封印されていたのを私が解放したの。
そしたら火の精霊バーンも宿っていて
火山が噴火して鎮火するのに大変だったのよ。
何か覚えがある?
ディアナと一緒にいた夢のことは覚えていないのよ。
でも幼い頃、祖母が同じような水晶玉を
使っていたのは覚えているから、
夢に出てきても不思議じゃないけど。

この家には、火の精霊バーンの他に、
水の精霊バルもいるの。
二人とも器や壺の中で眠っている。
どちらも人間の姿になれる魔法が
かかっているから会話もできるわ。
会ってみる?
精霊の願いを聞いてあげるのが
私の趣味で使命だと思ってるけど、
元素の精霊たちにその必要はないわね。
寝てるのを起こすのも悪いし、
今はやめておくわ。

シモーヌはディアナに
家の中を案内されている。
ここに棲みついてるのは
夢食いばかりだと思っていたら、
ロボットもいるのね。
あれはお隣の未来の世界から来た
工作用ロボットなんですよ。
ややこしそうな事情がありそうね。

ディアナはシモーヌを屋外に
案内している。
近くに綺麗な滝があるんです。
私がこの世界で一人で暮らしていた時、
初めて夢食いのみすずさんと出会った場所。
そこによく水を飲みに行っていた。
私にはすごく懐かしい感じのする場所なので、
もし私たちが夢で一緒に遊んでいたとしたら、
二人でそこに行ったことがあるかもしれない。
私が忘れてしまった夢を
思い出すかもしれないっていうわけね。
行ってみましょうか。
解説)
続きます。
Nov 23, 2025
シモーヌとの対話 そのに

応接間での会話は続いていた。
私みたいなことは、
異世界を生み出せる魔族だったら
みんなやっていることじゃないかしら。
さっき広場やデジャっていうお店で見かけた
フィギアの精霊たちも、
ハリーさんが魔法で人間の姿にしてあげたんでしょう。
ジョー軍曹とギルダのことね。
彼らはもともと精霊たちの世界に住んでいたのよ。
でもその世界を作ったのはハリーさんじゃなくて、
いろんな力が重なった結果だって言われてる。
リリスっていう特別な魔族みたいな人形の精霊がいて、
彼女が中心だったのは確かだけどね。
この話を始めると何時間もかかるわ。

ジョー軍曹たちの暮らしていた世界は、
魔族の呪力が単独で生み出したものじゃないな。
セリーヌさんも異世界を生み出したことがあるなら、
ご存知のように、ああいう精霊たちの暮らす
異世界には様々な力が働いている。
精霊たち自身の夢見る力やその空間自体に潜む
場の力のようなものも。
人間のみる夢の世界でも精霊たちは生きられるが、
作用している力は千差万別だよ。

さっきちょっと思ったんですけど、
セリーヌさん、鹿やフクロウのフィギアたちのために
常春の世界を作ってあげたでしょう。
私そこに行ったのよ。

ふーん。
そういえば、そんなこともあったわね。
これまでいろんな精霊の夢を叶えたから、
すっかり忘れてた。
確か、あの常春の世界は、ディアナっていう
鹿のフィギアのために作ったの。
それから、とある倉庫で、
精霊の宿ったフクロウの置物を何体も見つけて、
後から彼らをその世界に送ってあげた。

でも私自身は、その世界に行ったのは
最初にディアナと一度だけ。
女王様になりたいわけじゃないから、
精霊たちに生きる環境をプレゼントして、
あとは立ち入らない方針なのよ。
今どうしてるか気にならないの?
とアイスが尋ねた。
ディアナなら、私の家にいつもいるわよ。
フクロウたちは見つけた倉庫に保管されているはず。
この世界では動かないフィギアや置物だけどね。
それらに宿った精霊たちは自由の身。
そういう精霊たちが沢山いるの。
特定のフィギアをえこひいきしたり、
何をしてるか心配していたらキリがないでしょう。

なるほどねえ。
広場の7月初めのコスプレコンテストで優勝した
ディアナっていう女性は、確か鹿の精霊だったね。
顔立ちが君にそっくりだった。
魔族のフミコが人間の姿に変身させたと聞いてるが、
自分の顔立ちを君に似せるのが、
きっとその精霊の願いだったんだろうね。

あなた、そういう女性の顔をよく観察してるのね。
とカーミラが言った。
シモーヌさん。
私の行った「常春の世界」は、
雪山の洞窟を介して「忘れられた夢の世界」に
繋がっているの。ディアナは
自分がその世界で生まれたと思っていたけど、
常春の世界のフクロウたちから話を聞いて、
以前の記憶を少し思い出したのよ。
あなたがディアナと一緒にいる夢を見て、
その夢がなぜかいつまでも消えずに残り、
ディアナだけがその夢の中にとり残されてしまった。
その夢には、やがて様々な夢食いたちが訪れて、
ディアナも夢食いたちと親しくなって、
一緒に暮らしているの。それが現状かな。

ディアナと遊ぶ夢を見たことは何度もあるわ。
でもその夢だけが、なぜ消えずに残ったのかしら。
夢の中で夢が残るような呪文を唱えちゃったとか、
何か大事なものを置き忘れたせいかもしれない。
でも忘れられた夢を思い出すことはできないわね。
その夢の世界はかなりユニークよ。
何故か恐竜が沢山棲んでるの。
とアイスが言った。
そんな夢見たことあったかしら。
百聞は一見に如かずよ。
とアイスが言った。

アイスが呪文を唱えると、
鏡の扉が現れた。
とりあえず、
「忘れられた夢の世界」に
行ってみましょう。
二人はハリーたちに挨拶すると、
アイスが呪文を唱えて、
二人は開かれた鏡の扉の中に飛び込んで行った。

あの人なかなかしっかりしてるみたいね。
人助けじゃなくて、
精霊助けか。今時、使命感を持った
魔族がいたなんて驚きだな。
ヴィヴィアンもあんなふうだったら。
あいつは悪魔だろう。
使命感もったら怖いよ。
解説)
続きます。
Nov 22, 2025
シモーヌとの会話

ざっと挨拶が終わって、
会話が始まった。

魔族の仲間に出会えるとは、
実に嬉しいね。
ご存知かどうかわからないが、
私は数百年前に魔術劇場で興行を始めて、
世界中の都市をあちこち回っていた。
その目的は、今では忘れられかけている、
神秘や魔法の存在を人々に宣伝するためだが、
もう一つの目的は、
世界中に離散して絶滅間近と言われている、
魔族の仲間を探すことでもあったんだ。

あちこちの都市に突然現れて、
魔法を見せる興行をして、突然消える
神出鬼没の不思議な建物。
魔術劇場のことは、一部では有名だけど、
それでも魔族の仲間との出会いは滅多にないのよ。
みんな素性が知られる危険を冒したがらないし、
仲間と知り合う必要性も感じていないみたい。
実は私もそうで、夫のハリーとは別居していたの。
でも娘とロンドンで暮らしていた時、
娘のヴィヴィアンが問題を起こしちゃってね。
ギャング組織に追われる羽目になって、
3年前の5月にここに逃げてきたわけ。
安全だし居心地がいいのでそれ以来同居しているの。
ハリーも何故かここの土地が気に入って、
世界ツアーをやめたみたいだし。
とカーミラが言った。

たまにスピリチュアル系の雑誌に載るので、
魔術劇場のことは知っていました。
でも私もあまり関心がなかったの。
どうせどこかの好事家のマジシャンが
やってるんじゃないかと思ってたわ。
でも祖母が200歳で亡くなる直前に、
魔術劇場は魔族のハリーっていう人が
主宰しているって教えてくれたの。

私の両親は私の幼い頃に亡くなっていて、
私は祖母に育てられたんですけど、
身寄りのない私が天涯孤独になることを
思い遣って教えてくれたのね。
それでハリーさんにお会いしてみたいと
思ったんです。
ハリーさんとは遠い親戚なんだって言っていた。

遠い親戚か。
私の家の血筋とも遠い親戚かもしれないわね。
魔族は魔族同士で結婚することが多いから、
過去を辿れば、だいたいどこかで繋がっている。

魔族はみんな自立心が旺盛だから
血縁を気にしない者も多い。
アフリカの奥地にはフラハという魔族の男がいて、
彼にはケントという兄がいるんだが、
その兄弟は、ずっと別々に生きてきて、
最近再会したんだ。
魔族は長寿だから軽く百年を越える話になるね。

ケントっていう人は有名なデイリープラネット紙の
記者をやっているのよ。
ずっと普通の人間のように暮らしていて、
今では魔法とも縁がないみたい。
シモーヌさんはアンティークを売るお店を
経営しているって言ってたけど、
魔法を使う機会ってあるの?
それは大有りなのよ。
お店は単純に世を忍ぶ仮の姿。
私は祖母にいろんな魔法を教えてもらったの。
家には古い魔術の書もあったから呪文の勉強もした。
あなたみたいに鏡の扉も生み出せるわ。
もっとも、行き先は一度行ったことのある場所に
限られるけど。
それは私も同じ。
とアイスが言った。
魔法をどんなふうに使うかというと、
私の場合いろんな古い道具や人形などの
骨董品に宿っている精霊を見つけ出して、
彼らの願いを聞いてあげるの。
できれば夢を叶えてあげる。
そういうことが楽しいし、
魔族に生まれた私の使命だと思っているのよ。

アイスは、
この世界で絶滅しかかっている
ヴァンパイアたちのために、
別世界を作ってあげたというマーリンのことを
思い浮かべていた。
それに何よりも、フィギアの精霊たちのために
常春の別世界を作った謎の魔族の女性が
シモーヌだったに違いないと確信したのだった。
解説)
続きます。
Nov 21, 2025
魔術劇場で

アイスとシモーヌは
扉を抜けて魔術劇場にやってきた。
部屋ではフェルミーネが
花をいけていた。

ここはいつも変わらないわね。
お客様をお連れしたの。
ハリーさんはいらっしゃる?

今、あいにく散歩にお出かけなんですよ。
そろそろ戻られると思いますので、
お隣の部屋でお待ちください。

二人は応接間で
ハリーの帰りを待つことにした。
どうぞごゆっくり。
と言われている。

シモーヌさんは、
どちらから来られたの?
古い美術品や工芸品に興味があって、
パリでアンティークを売るお店をやってるの。
でもお店はほとんどスタッフに任せきり。
世界のあちこちに旅行して、
いろんな古道具を仕入れたり、
頼まれて鑑定したりもする。
ふーん。
それでフィギアに宿っている精霊なんて、
すぐに見分けられるわけね。

その時、カーミラが入室してきた。

魔術劇場にようこそ。
私はハリーの妻のカーミラです。

あなたは魔族の方ですね。
同族の仲間が訪ねてきてくれたなんて、
きっとハリーも喜ぶわ。
私もお目にかかれるのを
楽しみにしていました。
今でも生き残っている人たちは、
どのくらいいるのかしら。
実態は本当にわかりませんね。
魔族は絶滅危惧種とも言われていますが、
ほとんどネットワークもないし、
人間社会にカミングアウトする者はいませんから。
ヨーロッパでは、
わずかにネットワークが残っていますけど、
私は参加していませんでした。
みんな魔族であることを隠して生きているのが実情。
私も幼い頃に祖母に言われるまで、
自分が魔族だということを知らなかったんです。
とシモーヌが言った。

そこにハリーが入室してきた。
やあ。散歩していて
お待たせしちゃったようですね。
近くの林の銀杏の黄葉が見事なんで、
ついつい見惚れていました。

ハリー、こちらはシモーヌさん。
魔族の方ですって。
とカーミラが言った。
ハリーは、
ほー、と言っている。
解説)
続きます。
Nov 20, 2025
バー・デジャで

アイスはシモーヌを
バー・デジャに案内した。
コーヒーを二つお願い。
シモーヌは、ギルダに
目を止めている。

ヴィヴィアンはいないの?
セリーヌさんと
夢の世界の砂漠に行くって言って、
出掛けられましたよ。
全く落ち着けない人ね。
彼女にとっては
こっちの世界が退屈なのはわかるけど。
アイスも人のことは
言えないんじゃない?
とギルダが言った。

二人は着席して
コーヒーを飲んでいる。
シモーヌさん。
ハリーさんには会ったことがないけど、
繋がりはあるっておっしゃってたわね。
それってもしかして。
ええ。
ご想像の通りよ。
私も魔族なの。
そうか。やっぱりねー。

ちょっとそんな気がして、
ハリーさんの娘さんをあなたに
紹介しようと思ったんだけど、
行き違いだったみたい。
ところでさっき広場で、
ジョー軍曹を見ていて
声をかけたでしょ。
人違いだって言ってたけど、
あれも、やっぱり。

アイスさん。
それもご想像の通りよ。
あの人が人間じゃなくて、
フィギアの精霊だって分かったから
思わず声を出しちゃった。
このお店の中にも、
フィギアの精霊がいらっしゃるみたいね。

カウンターで二人の会話を聞いていた
ギルダが思わず振り向いた。

魔族にはいろんなことを
見抜く能力が備わっている。
アイスさんからも、
強い呪力のパワーを感じるわ。
あなたは普通の人間みたいだけれど、
お持ちの指輪のせいかしら。

サングラスを外した
シモーヌの顔を見た一同は、
6月のコンテストで優勝したディアナに
生き写しなので驚いている。
あら。
みなさん、どうされたの?
ああ、みんな
あなたの顔にそっくりな人を知ってるので、
驚いているのよ。
その女性はディアナっていいます。
彼女はもとは鹿のフィギアの精霊なんだけど、
フミコという魔族の女性が、
人間の姿に変身させてあげたの。
とアイスが言った。
シモーヌは、
何か思い当たる節があるようで、
興味深そうに聞いていた。

あなたが魔族の方だと分かったし、
私も安心してハリーさんに紹介できるわ。
魔術劇場に行きましょう。
とアイスが言った。
魔術劇場は
町の郊外の別荘地にあるんでしょう?

アイスが店の隅に行き、
壁に向かって呪文を唱えると、
鏡の扉が現れた。
扉のことはご存知だと思いますが、
この鏡の扉を使っていくんです。
直通ですよ。
あなたまるで魔族みたいね。
と言われている。
解説)
続きます。
Nov 19, 2025
シモーヌ

観光客との会話は続いていた。
それは残念。
私は魔術劇場の主宰者のハリーさんに
お会いできないかなと思って来たの。
ハリーさんとお知り合いなんですか?
とアイスが尋ねた。

知り合いっていうわけじゃないの。
でも繋がりがあるとも言える。
あ、私はシモーヌって言います。

シモーヌさんですか。
私はアイス。
ハリーさんご一家とは親しくさせていただいてるの。
ハリーさんにお会いになりたいのなら、
何かお役に立てるかも。

その時、ジョー軍曹が広場にやってきた。
舞と話している。
ジョーさん。こんにちわ。
やあ。遅くなっちゃったけど、
ハロウィーンの海賊のコスプレと、
サーベルを倉庫に返しに来たんだ。

ジョー軍曹はドルフィンに向かい、
リタにサーベルを返却している。
そろそろ寒くなるから、その海賊コートは、
そのまま着てたら?
そうですね。

ジョー軍曹の動きを見ていたシモーヌが、
あら。
あなたは。
と言った。

ジョー軍曹は、
驚いて振り向いている。

あ、ごめんなさい。
人違いだったみたい。
とシモーヌが言った。
シモーヌさん。
遠くからいらしたんでしょう。
立ち話もなんだから、
よかったらお茶でも飲みません?
とアイスが声をかけた。

アイスは、シモーヌを
バー・デジャに案内している。
このお店は、
ハリーさんの娘さんが経営してるの。
舞はその様子を見ていた。

今アイスとデジャに行った観光客の人、
誰かに似てると思ってたんですけど、
今思い出したの。
7月1日発表のコンテストで優勝した
ディアナさんに似てませんでした?
あ、あの人シモーヌっていうらしいよ。
顔立ちはそう言われればそんな気もするけど。
サングラスかけてたからよくわからないなあ。
とマスターが言った。
僕は7月には、ディアナさんと
サラやマンスフィールドさんと一緒に、
車で郊外の住宅地にある倉庫まで行ったけど、
ディアナさんとは声も違うし背丈も違う。
似てるのは顔立ちだけだね。
とジョー軍曹が言った。
解説)
続きます。
Nov 18, 2025
衣替えと訪問者

日が短くなって
広場はもう夕暮れ時だった。

ドルフィンのマスターと
アイスが話している。
もうジャンバーの季節なのね。
朝晩冷え込むようになってきたからね。

リタもさっそく
ドルフィンスタッフ用の
紺色のジャンバーを着込んでいる。

佳奈はどれにする?
倉庫にまだレンタル用の
いろんな種類の上着があるわ。
早い者勝ちよ。

私は来月旅行に行く予定なので、
このフード付きのがいいなあ。

広場に観光客らしき
女性がやってきた。

今井舞は、
どこかで見たような顔の人だなあと
思っている。

しばらく広場を眺めていた女性は
ドルフィンのマスターに声をかけた。

すみません。
ちょっとお尋ねしますが、
この広場に魔術劇場があるって
聞いたんですけど。

ああ、魔術劇場なら、移転して、
今は郊外のジルさんの別荘の庭に建っていますよ。
新聞やテレビで紹介されたり、
YouTubeに載ったりしたせいで、
たまにあなたのように
魔術劇場目当てに広場に観光に来られる方がいます。
別荘までの道順をお教えしましょうか?
ただ行っても今は特に興行はやっていないはずで、
丸くてとんがり屋根の小さな建物の外観が
見られるだけだと思いますけど。
とマスターが言った。
解説)
続きます。
Nov 17, 2025
お土産を配る

今日は晴天。
広場は少し冷え込んでいた。

高台の休憩所から、
ルルが水やりに来ている。
「砂漠のバラ」は元気?
ええ。これは今年の3月初めからあるの。
なんとか無事に夏を越したわ。
一度ルビーが転んだはずみで
倒れ込んで折れちゃったけど、
あちこちから新芽が出て、
瞬く間に回復したのよ。
さすがに多肉植物は丈夫ね。

サラは、カコからお土産にもらった
甲殻類の卵でお寿司を握って、
ベーカリーのスタッフにお裾分けをしていた。
これは癖になりそうな微妙な味ね。
と味見したフレイムが言っている。

甲殻類の卵は、
見た目はイクラにすごくよく似ていた。

宇宙ステーションのバー・エデンで
食べたことのあるアイスにとっては、
好物の一つになっていた。

これって毒はないんですか?
いろんな惑星の生物が食べてるそうだから、
たぶん大丈夫でしょ。
たぶんですか。

その頃、ペンギン前のテーブル席でも、
ローラが、ミラたちにお土産の
甲殻類の卵を調理して提供していた。

これは懐かしい私の故郷の星の味。
妹のカコは宇宙ステーションに取り寄せて
常食にしているのね。

ミラさんも取り寄せたらいかがです。
私が調理しますよ。
とローラが言った。
管理局では結構手続きが面倒なのよ。
カコは宇宙連合が派遣した
レプティリアン文明への親善大使だからね。
色々融通がきくんでしょう。
解説)
続きます。
Nov 16, 2025
サラたちの帰還

宇宙ステーションでは、
寿司パーティが続いていた。
甲殻類の卵の軍艦巻き、
美味しいわね。
カウンターの中ではローザが、
流石にそろそろネタが切れるわ。
と言っている。

そこにサニーがやってきた。
こんにちわ。
あなたはサラさんでしょ。
噂は聞いてるわ。
そうですけど。
私はサニー、地球人よ。
飛行機事故で死にかけてたところを
ここの宇宙人たちに命を救われて
この宇宙ステーションで暮らしてるの。

サニーは古くからのルビーや少佐の友人で、
今ではアイス専用の円盤パイロットになっていることや、
今年の3月初めには久しぶりに地球に帰って、
町の住人たちと交流したことを話した。
この前アイスがこの船に来た時は、
二日酔いで寝てて会えなかったけれど、
彼女の動静は宇宙ステーションから
時々モニタリングしているの。
最近も面白いことしてた。
そーなんですか。
ロボット研究所から逃げ出したロボットが
捜索されていたんだけど、
わざと偽の証拠を残して、
迷いの森に逃げ込んだように見せかけて、
捜索を諦めさせたのよ。
ロボットは未来の世界に無事に逃げ延びた。
未来の世界って、
バーボンハウスのある世界ね。
そんなことがあったんだ。
あ、ここに来てからもう何日たつのかしら。
お米もお寿司のネタも尽きたみたいだし、
そろそろ私たちも地球に戻ります。
とサラが言った。

カコからお土産にもらった甲殻類の卵を
リュックに詰めたサラとローザは、
バー・エデンを後にした。

二人は転送装置で
アフリカのホテル裏の広場におりてきた。

広場を歩いていると、
シーザーに出会った。
サラさん、お戻りですか。
今温泉の掃除をしてたところです。
お寄りになりませんか。

二人は温泉に浸かって行くことにした。

ああいいお湯加減だったわ。
と言っている。

フラハの家から鏡の扉を使って
二人はサラたちの部屋に戻ってきた。
お帰りー。
と言われている。
解説)
続きます。
Nov 15, 2025
一件落着

数日後のこと、サラたちの部屋で、
ジェットはデイリープラネット紙を
読んでいた。
この前の、警備ロボットの捜索について、
ロボット研究所の謝罪記事が小さく載ってるよ。

失踪したと思われていた警備ロボットは、
研究所の中で発見されたって書いてある。
燃料切れで倉庫の隅で
固まっていたんだってさ。
「お騒がせして申し訳ない」っていう、
バトラー博士のコメントも載ってるよ。

おかしいわね。
レイチェルが未来の世界に連れ出したのが
本当のことでしょ?
捜索して発見できなかったから、
きっと大きな問題になるのを恐れて
虚偽の発表をしたんだよ。

でも記者会見の様子が、
写真付きで掲載されてるよ。
発見された警備ロボットと
バトラー博士のツーショット。
ドーリスも写ってる。
どういうことなんでしょうね。

その頃広場では、
CG本部から少佐がやってきていた。

研究所の謝罪記事読んだわよ。
いろいろ大変だったみたいね。
会議で捜索を打ち切る決定をするのに
ちょっと時間が掛かっちゃった。

経緯を説明すると、
この町の郊外の道沿いのフェンスのそばで、
うちの境界警備隊のパトロールが
警備ロボットが装着していた、
飛行用の燃料タンクを発見したという
報告があった。
それで捜索本部では、警備用ロボットは、
研究所から飛行して脱出して、
「迷いの森」の中に逃走した、
という結論に至ったの。
確かにあそこに逃げ込んでしまえば、
追跡するのは不可能ね。
それでも探索すべきだという
強硬意見はあったけれど、
探索部隊も森に迷い込んで
生還しない可能性が高いから、
どの部隊が行くかで揉めることになった。
結局議論の結果、警護ロボットが
研究所から逃走したという事実を
なかったことにして、
事態を収束することに決定したの。
警備ロボットが逃走したままだと知られると、
世間に不安が広がるし、研究所も非難されて、
計画の継続にも支障が出るということでね。
それで研究所の所長が記者会見を開いて
今回の新聞報道になったわけ。
写真に写っている警備ロボットは、開発中の
フェルミ02を使ったのよ。
それにしても、
警備ロボットを未来の世界に逃したなんて、
あなたたちから事前に異世界のことや、
鏡の扉のことを聞いてなかったら、
とても信じられなかったわ。
捜索の打ち切りに協力して欲しいって
アイスから言われて驚いたけど、
私は特に何もする必要がなかった。
郊外で燃料タンクが発見されたあとは
おおむね自然な推移だったのよ。
あれはあなたたちの仕業でしょ。

アイスのアイデアなの。
研究所の兵士ロボットの開発計画自体を
止められたわけじゃないけど、
結果的に少しは遅らせることになったわね。
あの開発計画は軍やCGの一部のグループが
特定の多国籍企業と組んで、
内密に行っていたことが問題になって、
今でも軍やCGの中で揉めている。
もっとも計画自体に反対する者はいないから、
要は利権絡みの内輪揉めよ。
何か進展があれば、また教えてあげる。
と少佐が言った。

少佐がワーゲンに乗って立ち去った後、
ルビーとアイスが話している。
これでどうにか一件落着ね。
こうなることを予想してたの?
研究所がいろんな住民に聞き回って、
捜索を始めていた事実は消せないから、
ああいう苦しい発表になったんでしょうね。
いつまでも捜索を続けると不安が広がり、
研究所の評判が悪くなる。
捜索を中止する口実を与えてあげれば、
飛びつくと思ったのよ。

マヤさん。
12月から休暇もらえそうなんですけど、
一緒にどこか行きませんか。
そうねえ。
解説)
続きます。